税理士試験の選択科目をズバリ解説! 簿記論・財務諸表論の学習内容・合格率・難易度は?
税理士試験の11科目のうち、はじめに合格しておきたいのが「簿記論」「財務諸表論」です。今回はそれぞれの科目の特徴や学習上のメリットについて詳しくご紹介します!
税理士5科目合格の登竜門となる会計科目「簿記論」「財務諸表論」をなるべく早期に合格するためにも、科目の特徴を知っておきましょう!
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簿記論の内容・合格率・学習メリット
簿記論とは
簿記とは会社の帳簿を記録するためのルールです。企業活動において日々取引が発生しますが、その記録や集計、計算方法など一定のルールを学ぶのが「簿記論」という科目です。税理士の「簿記論」は日商簿記検定と出題範囲の多くが重複していますので、日商簿記検定を学習された方なら、その知識が税理士「簿記論」の学習において大きなアドバンテージとなることでしょう。
日商簿記の知識はどれくらい役立つんですか?
さつきさん
国税先生
簿記論の出題範囲と比較して、
簿記3級で30%、2級で60%、1級なら90%は学習済みになるね。
日商簿記検定試験とは出題形式が違うので、しっかり学習する必要はあるけれど、
アドバンテージは大きいよね!
簿記論の出題傾向
試験時間は120分で、簿記論はすべて計算問題になります。三問形式の出題となり、第一問、第二問は個々の論点ごとに出題される個別問題。第三問は決算整理を行う総合問題が出題される傾向にあります。
試験時間内では解答しきれないボリュームが出題されるため、即時の判断や計算スピードといった対応力も問われる試験となります。
解ききれないボリュームってどうやて対応するんですか?
さつきさん
国税先生
簿記論は、僕たち講師でも全部解くには3時間くらいかかるボリュームが出題されるんだ。
税理士試験は満点を目指す試験じゃなく、上位15%が合格する事実上の競争試験なので、
時間をかけずに解ける基礎的な問題を優先させるといった
解答のテクニックも身につけてもらう必要があるんだよね。
簿記論の標準学習時間
450時間 ※TACの講義時間を含みます。
簿記論の計算問題
第一問、第二問の「個別問題」は大学教授といった「学者試験委員」が作成し、簿記の原理や仕組みを理解しているかを、個別の論点ごとに問うような出題がされます。過去の税理士試験では、「推定簿記」「株主資本」「本支店会計」「リース取引」といった論点の出題がされました。
第三問では税理士や公認会計士といった「実務家試験委員」が、決算整理を行う「総合問題」を作成します。実務的な計算力があるか、膨大な取引を正確に処理できるかといった実務力を問うような出題がされ、具体的には、決算整理前残高試算表(前T/B)と決算整理事項が示され、個々の仕訳を切り、決算整理後残高試算表(後T/B)を作成することが総合問題のゴールになります。
「学者」が作る問題と「実務家」が作る問題でどんな違いがあるんですか?
さつきさん
国税先生
大学教授といった学者の先生は、会計を学問として捉えているので、
「簿記の仕組みをしっかり理解しているか」を問う問題を出題するんだ。
それに比べ税理士や公認会計士が作る実務家が作成する問題は、
君たちが「将来税理士として即戦力となる実務的な能力があるか」
を問う問題を出題するんだよね。
簿記論の合格率
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |||
---|---|---|---|---|---|
令和5年 | 16,093名 |
2,794名 |
17.4% | ||
令和4年 | 12,888名 | 2,965名 | 23.0% | ||
令和3年 | 11,166名 | 1,841名 | 16.5% | ||
令和2年 | 10,757名 | 2,429名 | 22.6% | ||
令和元年 |
11,784名 |
2,052名 | 17.4% |
比較してみると、最近は随分と合格率が高くなっていますね!
さつきさん
国税先生
そうなんだ!
近年、簿記論は合格率が上昇傾向にあるんだよね。
年によって受験者数や出題の難易度も違うから単純な比較はできないけど、
これから簿記論を学習する人にはいいニュースだよね!
簿記論の学習メリット
税理士試験において必須科目の筆頭が「簿記論」です。税理士になるためには必ず合格しなければならない科目であるばかりでなく、その知識がなければ、学習ができない税法科目もあります。「簿記論」の知識は「財務諸表論」にもそのまま役立ちますし、会計業界への就職・転職においても強力なアピール材料になります。税理士試験にチャレンジするにあたり、はじめに学習すべき科目が「簿記論」です。
科目合格でも履歴書に書いていいんですか?
もちろん!
特に会計事務所や税理士法人では科目合格者を積極的に採用するので、履歴書や職務経歴書には合格科目はもちろん、合否判定待ちの科目も記載しておくことがオススメだよ。
財務諸表論の内容・合格率・学習メリット
財務諸表論とは
財務諸表とは会社の利害関係者(株主や銀行)に経営成績や財産状況を開示するために作成される資料のことを言います。「財務諸表論」では財務諸表の作成方法やその考え方、ルールを学ぶ科目になります。なお、「簿記論」と「財務諸表論」は科目関連性が高く、同時学習には最も適した科目になります。
簿記論と財務諸表論の違いってなんですか?
さつきさん
国税先生
ひとことで言うなら、
簿記論は「記録」、財務諸表論は「表示」かな。
簿記論は取引を帳簿に「記録」することが目的。財務諸表論はその帳簿を第三者に「表示」することを目的としているんだ。
正確に「記録」するのが簿記論で、誰でも分かるように「表示」するのが財務諸表論と覚えておいてもいいかもしれないね。
財務諸表論の出題傾向
試験時間は120分で、理論(25点/25点)と計算(50点)に分けて出題されます。理論は穴埋め問題、記号選択問題、論述形式などで出題されます。計算問題は決算整理型の総合問題となり、財務諸表を作成することを主題とする出題がされます。例年、120分でほぼ解き切れるボリュームで出題されています。
財務諸表論の標準学習時間
450時間 ※TACの講義時間を含みます。
財務諸表論の計算問題
計算問題では、会社法の規定に則って財務諸表を作成する能力を問う問題が出題されます(実務家試験委員が作成)。「簿記論」の第三問と同じく、決算整理前残高試算表(前T/B)と決算整理事項が示され、個々の仕訳を切り、財務諸表(損益計算書P/L・貸借対照表B/S)を作成することが総合問題のゴールになります。なお、計算問題は「簿記論」より易しめの出題になります。
簿記論の第三問にそっくりに見えますね?
さつきさん
国税先生
そうなんだ。出題形式は簿記論第三問の総合問題に似ているよね。 でも財務諸表論では規則により定められている「表示科目」や「表示区分」というものがあって、それらを意識しながら解答する必要があるんだ。
財務諸表論の理論問題
理論問題は学者試験委員が作成します。学問的な立場で会計の真理や制度趣旨を問うような出題が多く、穴埋め問題、記号選択問題、論述問題といった形式で出題されます。企業会計の原則や、「なぜこのような会計処理を行うのか」といった根本的な理解力を問う問題が出題され、TACでは理論学習用の教材を使用し対策していきます。
理論問題って暗記が重要なんですよね?
覚えることができるか心配です。
さつきさん
国税先生
財務諸表論では、暗記したものをそのままべた書きするような問題より、出題から考えて作文するような形で解答するような問題が出題されやすいんだ。だからTACでは、内容の理解を最優先に考えた講義を展開し、暗記の負担は最低限になるよう心掛けたカリキュラムにしてるんだよ。
丸暗記しなくてもいいなら、
苦手意識が薄まりますね!
財務諸表論の合格率
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |||
---|---|---|---|---|---|
令和5年 | 13,260名 |
3,726名 |
28.1% | ||
令和4年 | 10,118名 | 1,502名 | 14.8% | ||
令和3年 | 9,198名 | 2,196名 | 23.9% | ||
令和2年 | 8,568名 | 1,630名 | 19.0% | ||
令和元年 |
9,268名 |
1,753名 | 18.9% |
財務諸表論の学習メリット
ニュースなどで目にする企業の決算報告などの話題について理解が進むため、学習していて楽しい科目の1つです。また、他の科目に比べ出題傾向も安定しており、努力が実を結びやすい科目とも言われています。「簿記論」の学習を検討されている方は、同時学習、もしくは「簿記論」の次の受験科目として「財務諸表論」に挑戦してみてください。
簿記論より財務諸表論から先に学習してもいいんですか?
それはオススメできなんだ。
財務諸表論は受験のセオリーから言って簿記論の次に受験する科目なんだ。だから本試験は簿記論の学習経験者との争いとなるんだよね。はじめて学ぶ科目は簿記論、財務諸表論はその次と考えてほしいな。
じゃあ、簿記論と財務諸表論を一緒に学習するのはどうでしょう?
それは断然オススメ!
簿記論と財務諸表論は科目関連性が高いので、一緒に学習することで相乗効果が期待できるんだ!
簿記論・財務諸表論の同時学習
簿記論・財務諸表論の同時学習のメリット
会社の取引の記録や計算方法を学ぶ「簿記論」と、財務諸表の作成方法やその考え方、ルールを学ぶ「財務諸表論」は、税理士試験の対策上、なるべく早めに合格しておきたい科目です。この両科目は、それぞれの学習において、学習範囲や計算方法、仕訳の処理、解答の手順に重複する箇所が非常に多く、同時に学習することで相乗効果が期待できる科目です。合格可能性を高めるためにも、2科目分の学習時間を確保できるなら同時学習がオススメです。
「2科目分の学習時間を確保できるなら」ってありますが
同時学習にはどれくらいの時間が必要なんですか?
さつきさん
国税先生
簿記論と財務諸表論のそれぞれの標準学習時間は450時間だから、単純計算で900時間だけど、同時学習ならそれぞれで重複する論点は飛ばすこともできるんだ。
だから、TACの講義時間も合わせて750時間ほど見積もっておけばいいと思うようよ!
学習時間が減るなら、
なんだか同時学習のほうがお得ですね!
そうなんだ!負担の軽減だけじゃなく、理解が進むってことは本試験の合否にも大きく影響するんだよね!でもTACの講義を受ける回数が減るわけじゃないのでその点は注意が必要だよ!
同時学習のメリット 計算問題の重複
「簿記論」も「財務諸表論」も決算整理型の総合問題が出題されます。「簿記論」の知識のみで「財務諸表論」の計算問題をクリアできる訳ではありませんが、「簿記論」の学習で培う仕訳の能力や計算スピードは「財務諸表論」の実力の底上げとなることが期待できます。
同時学習のメリット 会計処理の理解が深まる
「簿記論」では、個々の論点の会計処理を学んだ上で、正しく仕訳が切れるよう反復学習を行いますが、「財務諸表論」ではその会計処理の考え方や背景、表示方法を学習します。そのため、同時に学習すれば会計処理の知識に厚みが増すことになりますので、仕訳や勘定科目が記憶に定着しやすいという相乗効果が期待できます。
同時学習のメリット 学習時間の短縮
「財務諸表論」では「簿記論」と同じく仕訳も学習しますが、「簿記論」の学習と重複しますので、理解の確認程度でスキップすることが可能です。つまり、学習に必要な時間も短縮できます。個人差はありますが、同時学習なら「財務諸表論」の学習時間は30~50%程度短縮可能と思われます。
令和5年度の合格者アンケートで
「最初に受験した科目は何ですか?」って質問をしたとろ、
回答の52.8%が簿記論・財務諸表論の同時受験だったという結果が出ました。
簿記論・財務諸表論の学習って、
その後の税法科目にもメリットあるんですか?
いいところに気が付いたね!
メリットという訳ではないけれど、税法科目の中でも法人税法や所得税法は簿記論・財務諸表論の学習が済んでいないと始められない科目があるんだ。また、税法科目は学習の性質が簿記論・財務諸表論と異なる部分が多いので、なるべく先に合格しておきたいってところもポイントだね。
なるほど!簿記論・財務諸表論のことが少しずつ分かってきました。
早く税理士試験に合格できるように頑張ります!
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