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司法書士と宅建士の違いは?ダブルライセンスの魅力を解説!

司法書士と宅建士の業務の関連や試験の違いと関連、ダブルライセンスの魅力について解説!

司法書士と宅建士は、実務においても、試験においても関連が深く、ダブルライセンスに最適です。この記事では、試験の違いと関連、ダブルライセンスの魅力について解説します。

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業務の関連・兼業のメリット

宅建士の業務と司法書士との関連

宅建士(宅地建物取引士)とは、宅地建物取引業法に基づく国家資格であり、不動産取引の専門家です。不動産取引の知識に乏しい一般国民が、宅地や建物の売買、貸借などの不動産取引上の過誤によって不測の損害を被ることを防止するために、これらの契約が成立するまでの間に、一般国民に対し、契約の対象となる不動産につき、一定の重要事項について、重要事項説明書の交付と説明を行います。
不動産登記手続の代理をその主たる業務とする司法書士とは、不動産の売買(立会)の局面において深いつながりがあります。

司法書士の主な業務

司法書士とは、司法書士法に基づく国家資格であり、主に不動産登記や商業登記につき、登記申請書作成や登記申請の代理などを行う専門職です。その他にも、供託手続の代理や裁判所に提出する書類の作成なども行います。

宅建士と司法書士の兼業で収入アップ!

全国的には数は少ないですが、宅建士と司法書士の資格を取得した方が、宅地建物取引業法上の営業許可を得て、個人事業主として不動産業と司法書士業を兼業する例もあります。自身が不動産取引を仲介し、かつ、宅建士の仕事をこなして成立した不動産の売買契約に基づいて発生する所有権移転登記を司法書士として受託することで、不動産の仲介手数料(売主と買主から受領)と司法書士報酬(主に買主から受領)を得ることができます。

自身が専任の宅建士として不動産業と司法書士業を兼業するためには諸々の要件がございます。

試験の違いと関連・宅建士試験からのアドバンテージ

試験科目・合格率・難易度の比較

令和5年度 宅建士 司法書士
試験範囲 民法等、宅建業法、法令上の制限、その他関連知識 憲法、民法、刑法、商法(会社法含む)、民事訴訟法、民事保全法、民事執行法、司法書士法、供託法、不動産登記法、商業登記法
受験者数 233,276 13,372
合格者数 40,025 695
合格率 17.2% 5.2%
難易度 ★★★ ★★★★★

宅建士合格者のアドバンテージ

司法書士試験の全配点中約60%で、宅建士試験の学習で学んだ知識が活かせます。特に司法書士試験科目の「民法」において大いに有効であり、その他にも民法と密接に関連し、民法の知識を活かせる科目が多くあります。

司法書士試験科目 問数/配点【配点割合】 宅建士試験からのアドバンテージ
憲法
択:3問/9点【2.6%】
-
民法
択:20問/60点【17.1%】
刑法
択:3問/9点【2.6%】
-
商法・会社法
択:9問/27点【7.7%】
-
民事訴訟法
択:5問/15点【4.3%】
民事保全法
択:1問/3点【0.9%】
民事執行法
択:1問/3点【0.9%】
司法書士法
択:1問/3点【0.9%】
-
供託法
択:3問/9点【2.6%】
不動産登記法
択:16問/48点 記:1問/70点【33.7%】
商業登記法
択:8問/24点 記:1問/70点【26.9%】
-
択:択一式 記:記述式(出題数や配点は過去10年の内訳と、法務省より発表された令和6年度試験以降の記述式問題の配点変更を受けた配点割合です。)
◎:知識がそのまま使える・大いに有効 ○:知識が活きる

「司法書士×宅建士」セミナー

「司法書士×宅建士」ダブルライセンスの魅力を解説!

複数の資格を持つことは実務の幅を大きく拡げる助けになります。当セミナーでは、宅建士・行政書士・司法書士に全て合格した竹内義博講師が、「司法書士×宅建士」ダブルライセンスの魅力を解説します。

竹内 義博 講師 (たけうち よしひろ)(司法書士・Wセミナー専任講師)
2015年3月、大学卒業後、同年の司法書士試験に合格。2015年12月より池袋の司法書士事務所に勤務。同時期に母校である日本大学法学部司法書士科研究室講師となる。2018年9月、自身の事務所を開業。以降、企業法務を専門とし、外部法務部としても、個人事務所としても活躍している。

本試験問題にチャレンジ!

司法書士試験では、宅建士の知識をお持ちであれば既に解ける問題も多く出題されます。過去の本試験問題でその一部をご紹介します。ぜひチャレンジしてみてください!(司法書士試験の択一式問題は5肢択一です。)

平成27年度 午前の部 第4問 【問題】

【問】
未成年者に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうち,どれか。

ア 未成年者が法定代理人の同意を得ないでした法律行為を自ら取り消した場合には,その未成年者は,その取消しの意思表示をすることについて法定代理人の同意を得ていないことを理由に,その取消しの意思表示を取り消すことはできない。
イ 養子である未成年者が実親の同意を得て法律行為をしたときは,その未成年者の養親は,その法律行為を取り消すことはできない。
ウ 未成年者と契約をした相手方が,その契約締結の当時,その未成年者を成年者であると信じ,かつ,そのように信じたことについて過失がなかった場合には,その未成年者は,その契約を取り消すことはできない。
エ 未成年者が婚姻をしたときは,その未成年者は,婚姻後にした法律行為を未成年であることを理由として取り消すことはできない。
オ 未成年者が法定代理人の同意を得ないで贈与を受けた場合において,その贈与契約が負担付のものでないときは,その未成年者は,その贈与契約を取り消すことはできない。

【選択肢】
1 アエ  2 アオ  3 イウ  4 イオ  5 ウエ

平成27年度 午前の部 第4問 【解答・解説】

<正解 3>

ア 正しい
未成年者が法定代理人の同意を得ずになした法律行為を取り消す場合,その者に意思能力がある限り,単独で取消しの意思表示をすることができ(民§120Ⅰ),その際に法定代理人の同意を得ることを要しない。未成年者単独での取消権の行使を認めても,その者に不利益を被らせることはなく,また,取消しにも行為能力を要求すると,未成年者が単独でした取消しは取り消すことができる取消しとなるなど,かえって法律関係が複雑になってしまうからである。
イ 誤り
未成年者のした法律行為であっても,法定代理人の同意を得たものについては,未成年者であることを理由に取り消すことはできない(民§5ⅠⅡ参照)。未成年者の法定代理人は原則として親権者であり,父母の親権に服するが(民§818Ⅰ),未成年者が養子であるときは,養親の親権に服することとなる(同Ⅱ)。したがって,養子である未成年者が実親の同意を得て法律行為をしていた場合でも,養親が同意をしていない限り,取り消すことができる。
ウ 誤り
未成年者と契約をした相手方が,契約締結当時,その未成年者を成年者であると信じ,かつ,そのように信じたことにについて過失がなかったときでも,未成年者は,当該契約を取り消すことができる。未成年者による法律行為の取消しが認められるのは,未成年者保護のためであるから,未成年者の側から積極的に自己が成年者であると誤信させるために詐述を用いた場合を除き(民§21),相手方の主観によって取消しの可否を決すべきではないからである。
エ 正しい
未成年者が婚姻したときは,これによって成年に達したものとみなされる(民§753;成年擬制)。成年擬制により,未成年者としての私法上の行為能力の制限は解除されるから,婚姻後にした法律行為を未成年者であることを理由に取り消すことはできない。
オ 正しい
未成年者が法律行為をするには,その法定代理人の同意を得なければならないが,単に権利を得,または義務を免れる法律行為については,この限りでない(民§5Ⅰ)。そして,負担のない贈与契約については,一般に単に権利を得るだけの法律行為と考えられることから,法定代理人の同意を要する行為には該当しない。そのため,法定代理人の同意を得ないで贈与を受けたとしても,同条同項の規定に反する法律行為とはならないから,当該贈与契約は取り消すことができない(同Ⅱ参照)。


平成23年度 午前の部 第18問 【問題】

【問】
転貸借における原賃貸借の賃貸人(原賃貸人)と転借人との法律関係に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。

ア 原賃貸人の承諾を得て建物の転貸借が行われた場合には,転借人は,原賃貸人に対し,雨漏りの修繕など,建物の使用及び収益に必要な行為を求めることができる。
イ 原賃貸人の承諾を得て転貸借が行われた場合には,原賃貸人は,転借人に対し,原賃貸借の賃料額と転貸借の賃料額のうち低い方の額を限度として,賃料を直接請求することができる。
ウ 原賃貸人の承諾を得て転貸借が行われた場合において,その後に原賃貸借が合意解除されたときは,原賃貸人は,転借人に対し,目的物の返還を求めることができる。
エ 建物所有を目的とする土地の賃貸借において,借地権者が地上建物を第三者に譲渡するに当たり,その第三者が土地の転借をしても原賃貸人に不利となるおそれがないのにその承諾が得られない場合には,借地権者は,原賃貸人の承諾に代わる許可を裁判所に申し立てることができる。
オ 原賃貸人に無断で転貸借が行われた場合には,転借人は,原賃貸人の承諾を得られるまでの間,転貸人(原賃借人)からの賃料の支払請求を拒むことができる。

【選択肢】
1 アイ  2 アオ  3 イエ  4 ウエ  5 ウオ

平成23年度 午前の部 第18問 【解答・解説】

<正解 3>

ア 誤り
原賃貸人の承諾を得た適法な転貸借契約が締結された場合,転借人は,原賃貸人に対して賃料の支払いや目的物の引き渡しなどの義務を直接に負う(民§613前段)。これに対し,転借人は,原賃貸人に対して何らの権利も有しない(通説)。原賃貸人が義務を負うべき契約の相手方は,あくまで賃貸借契約を結んだ賃借人(転貸人)であるからである。
イ 正しい
原賃貸人の承諾を得た適法な転貸借契約が締結された場合,転借人は,原賃貸人に対して賃料の支払いや目的物の引き渡しなどの義務を直接に負う(民§613前段)。ただし,賃貸人が転借人に対して請求できる賃料には制約があり,賃借料と転借料のうち,いずれか低い方の額しか請求することができない。賃貸人はそもそも賃貸借契約上の賃料債権しか有しておらず,他方,転借人は転貸借契約上の転借料についての債務しか負担していないからである。
ウ 誤り
原賃貸人が承諾した適法な転貸借契約が締結された場合において,原賃貸人と賃借人(転貸人)との間で,賃貸借契約を合意解除した場合,当該合意解除が信義則に反しないような特段の事情がない限り,当該合意解除の効力を転借人に対して対抗することができない(最判昭37.2.1)。原賃貸人と賃借人(転貸人)との間の合意のみで転貸借契約まで消滅させてしまうことは,転借人の目的物の使用収益の利益を不当に害するからである。
エ 正しい
借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において,その第三者が賃借権を取得し,または転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず,借地権設定者がその賃借権の譲渡または転貸を承諾しないときは,裁判所は,借地権者の申立てにより,借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる(借地借家§19Ⅰ前段)。
オ 誤り
賃借人は,賃貸人に対して目的物の使用・収益に対する賃料を支払う義務を負う(民§601)。原賃貸人の承諾のない転貸借契約であっても,賃貸借契約であることに変わりはないから,転借人は転貸人からの賃料請求を拒むことはできない。


平成17年度 午前の部 第20問 【問題】

【問】
A所有の甲建物をAから賃借したBがAの承諾を得て甲建物をCに転貸した場合に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。

ア Cは,Aに対し,賃料の支払義務を負うが,Aからの請求に対しては,Bの賃借料とCの転借料のうち,いずれか低い方の金額を支払えば足りる。
イ Aは,Cに対し,甲建物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
ウ Bの賃料支払債務の不履行を理由にAB間の賃貸借契約を解除する場合には,Aは,あらかじめCに対して賃料の支払を催告しなければならない。
エ CがAから甲建物の所有権を譲り受けた場合には,これにより,BC間の転貸借関係は,消滅する。
オ AB間で甲建物の賃貸借契約を合意解除した場合であっても,このために,甲建物の転貸借に関するCの権利は,消滅することはない。

【選択肢】
1 アウ  2 アオ  3 イウ  4 イエ  5 エオ

平成17年度 午前の部 第20問 【解答・解説】

<正解 2>

ア 正しい
賃借人が適法に賃借物を転貸したときは,転借人は,賃貸人に対して直接に義務を負う(民§613Ⅰ)。そのため,転借人は,賃貸人に対し,賃料の支払義務を負うことになる。ただし,賃貸人が転借人に請求できる賃料額については制約がある。すなわち,①賃借料の方が低い場合,賃借料の額しか請求できず,②転借料の方が低い場合,転借料の額しか請求できない。賃貸人はそもそも賃貸借契約上の賃料債権のみしか有しないし,転借人は転貸借契約上の転借料についての債務しか負担していないからである。
イ 誤り
賃貸人は,賃貸物の使用および収益に必要な修繕をする義務を負う(民§606Ⅰ)。しかし,賃貸人が転貸借について承諾(民§612Ⅰ)を与えた場合でも,賃貸人と転借人の間に直接の契約関係が生じるものではない。そのため,賃貸人は転借人に対し,直接に使用・収益に必要な修繕義務を負うわけではない。
ウ 誤り
適法な転貸借関係が存する場合に,賃貸人が賃料支払債務の不履行による解除をするときでも,特段の事情のない限り,転借人に対して催告をして弁済の機会を与えなければならないものではない(最判昭37.3.29,同平6.7.18)。転借人に対する催告義務を認める明文の規定はなく,また,賃借人の帰責事由による解除の場合にまで,転借人の地位について配慮しなければならないとすることは,賃貸人に酷だからである。
エ 誤り
転借人が賃貸目的物の所有者たる賃貸人の地位を承継した場合でも,当事者間に合意のない限り,転貸借関係は当然には消滅しない(最判昭35.6.23)。このような場合に転貸借関係が消滅するとすれば,目的物の所有者となった譲受人は転借権に基づいて使用収益することができなくなるばかりか,賃借権の存在により,所有権に基づいて目的物を使用収益することもできなくなり,不合理だからである。
オ 正しい
承諾を得て転貸がなされているときは,賃貸人と賃借人の合意により賃貸借契約を解除しても,当該解除を転借人に対抗することはできない(最判昭62.3.24)。賃貸人がいったん転貸を承諾した以上,賃貸借契約につき解除権を行使できる場合等の特段の事情がない限り,賃貸人と賃借人の合意により転借人の利益を害することを認めるべきでないからである。


平成27年度 午前の部 第7問 【問題】

【問】
不動産の物権変動に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記1から5までのうち,どれか。

ア Aがその所有する甲建物をBに売り渡し,その旨の所有権の移転の登記をした後,Bは,甲建物をCに転売してその旨の所有権の移転の登記をした。その後,AがBの強迫を理由にAB間の売買契約を取り消した場合,Aは,Cに対し,甲建物の所有権を主張することができる。
イ Aがその所有する甲建物をBに売り渡し,その旨の所有権の移転の登記をした後,Aは,Bの詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消したが,所有権の移転の登記の抹消をする前に,Bが甲建物をCに売り渡してその旨の所有権の移転の登記をした。この場合,Cは,Aに対し,甲建物の所有権を主張することができる。
ウ Aがその所有する甲建物をBに売り渡し,その旨の所有権の移転の登記をした後,Bは,甲建物をCに転売した。その後,AB間の売買契約が合意解除された場合,Cは,Bから所有権の移転の登記を受けていなくても,Aに対し,甲建物の所有権を主張することができる。
エ Aがその所有する甲建物をBに売り渡し,その旨の所有権の移転の登記をした後,Aは,Bの債務不履行を理由にAB間の売買契約を解除した。その後,Bが甲建物をCに転売し,その旨の所有権の移転の登記をした場合,Aは,Cに対し,甲建物の所有権を主張することができる。
オ AがBと通謀してAの所有する甲建物をBに売り渡した旨仮装し,AからBへの所有権の移転の登記をした後,Bは,Aに無断で,AB間の売買契約が仮装のものであることを知らないCに甲建物を売り渡した。この場合,Cは,Bから所有権の移転の登記を受けていなくても,Aに対し,甲建物の所有権を主張することができる。

【選択肢】
1 アイ  2 アウ  3 イオ  4 ウエ  5 エオ

平成27年度 午前の部 第7問 【解答・解説】

<正解 4>

ア 正しい
強迫による意思表示は取り消すことができ(民§96Ⅰ),その法律行為は初めから無効であったものとみなされる(民§121本文)。そして,取消権者は取消前の第三者に対して登記なくして対抗することができる(民§96Ⅲ反対解釈;大判昭4.2.20)。強迫においては,表意者を保護する必要性が大きいからである。
イ 正しい
詐欺による意思表示は取り消すことができ(民§96Ⅰ),その法律行為は初めから無効であったものとみなされる(民§121本文)。そして,取消権者と取消後の第三者とは,対抗関係に立つ(民§177)ため,登記の先後で決せられ,登記なくして取消しの効果を対抗することができない(大判昭17.9.30)。登記ができるのに放置する者は不利益を受けてもやむを得ないからである。
ウ 誤り
当事者の一方がその解除権を行使したときは,契約に基づく法律関係は遡及的に消滅し,契約が当初から締結されなかったのと同様の効果が生ずるが,第三者の権利を害することはできない(民§545Ⅰ)。第三者とは,解除前に利害関係を取得した者であり,この第三者が保護されるためには登記を具備する必要がある(大判大10.5.17参照)。解除権者の不利益を最小限にするため,利益衡量を図るものである。そして,合意解除前に利害関係を有するに至った第三者も,同様である(最判昭33.6.14)。
エ 誤り
解除権者と解除後に利害関係を取得した第三者とは,対抗関係に立つ(民§177)ため,登記の先後で決せられ(最判昭35.11.29),解除権者は登記なくして解除の効果を対抗することができない。解除による所有権の復帰と解除後の新たな物権変動とは,二重譲渡と同視することができるからである。
オ 正しい
相手方と通じてした虚偽の意思表示は,無効であるが,善意の第三者に対抗することができない(民§94ⅠⅡ)。通謀虚偽表示によって作出された外観を信頼した第三者を保護して,取引の安全を図る趣旨である。善意の第三者が保護されるためには,登記を具備している必要はない(最判昭44.5.27)。真の権利者である表意者は,虚偽の外観を作出したことについて重大な帰責性があるため,第三者が保護されるための要件が緩和されているのである。


平成27年度 午前の部 第10問 【問題】

【問】
A,B及びCが甲土地を共有している場合に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記1から5までのうち,どれか。

ア Aが,B及びCの同意を得ずに,農地である甲土地について宅地造成工事をしているときは,Bは,Aに対し,その工事の差止めを請求することができる。
イ Aが,B及びCの同意を得ずに,甲土地の全部を占有し,使用しているときは,B及びCは,Aに対し,甲土地の全部をB及びCに明け渡すことを請求することができる。
ウ 甲土地につき,真実の所有者でないDが所有権の登記名義人となっている場合,Aは,B及びCの同意を得なくても,Dに対し,その抹消登記手続を請求することができる。
エ A,B及びCの間で甲土地についての共有物分割の協議が調わず,Aが裁判所に甲土地の分割を請求したときは,裁判所は,Aが甲土地の全部を取得し,B及びCがそれぞれの持分の価格の賠償を受ける方法による分割を命ずることはできない。
オ Aが死亡し,その相続人が存在しないことが確定し,清算手続が終了したときは,その共有持分は,特別縁故者に対する財産分与の対象となり,財産分与がされず,当該共有持分が承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定したときにはじめて,B及びCに帰属する。

【選択肢】
1 アイ  2 アウ  3 イエ  4 ウオ  5 エオ

平成27年度 午前の部 第10問 【解答・解説】

<正解 3>

ア 正しい
農地を造成して宅地にする工事は共有物に変更を加える行為といえる。そして,共有者の1人が他の共有者の同意を得ることなく共有物に変更を加える行為(民§251)をしている場合,他の共有者は,各自の持分権に基づいてその変更行為の全部の禁止を求めることができる(最判平10.3.24)。
イ 誤り
共有者の一部の者が他の共有者の意思に反して共有物全体を独占的・排他的に使用している場合,共有持分の価格が過半数を超える者であるか否かに関わらず,共有物を単独で占有する他の者に対して,当然に明渡しを請求することはできない(最判昭41.5.19)。
ウ 正しい
不動産の共有者の1人は,単独でその持分権に基づき,当該不動産につき真の所有者でないにもかかわらず登記記録上所有名義を有する者に対し,その登記の抹消を請求することができる(最判昭31.5.10)。これは,いわゆる保存行為(民§252ただし書)といえるからである。
エ 誤り
共有物分割は,まず当事者の協議によりなされなければならないが,協議が調わないときは裁判所に分割の請求をすることができる(民§258Ⅰ)。そして,裁判所は,当該共有物の性質および形状,共有関係の発生原因,共有者の数および持分の割合,共有物の利用状況および分割された場合の経済的価値,分割方法についての共有者の希望およびその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し,当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ,かつ,その価格が適正に評価され,当該共有物を取得する者に支払能力があって,他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められるなどの特段の事情が存するときは,共有物を共有者のうちの1人の単独所有または数人の共有とし,これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法を命じることもできる(最判平8.10.31)。
オ 正しい
共有者の1人が死亡して相続人がいないときは,その持分は他の共有者に帰属する(民§255)。しかし,相続人がいないことが確定した場合でも,家庭裁判所は,被相続人と生計を同じくしていた者,被相続人の療養監護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって,これらの者に清算後残存すべき相続財産の全部または一部を与えることができる(民§958の3)。したがって,特別縁故者に対する財産分与がなされず,共有持分を承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定したときにはじめて,民法255条により他の共有者に帰属する(最判平元.11.24)。

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20ヵ月本科生
<入門総合本科生>
教室講座
ビデオブース講座
¥561,000 ¥451,000
Web通信講座 ¥561,000 ¥451,000
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上記受講料は、教材費(六法・過去問題集等は除く)・消費税10%が含まれます。

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割引期間内にTAC各校受付窓口、e受付(インターネット申込)、郵送にてお申込みください(郵送の場合は消印有効)。TAC取扱代理店(大学生協・書店等)ではお申込みいただけません。

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司法書士と他資格との比較・関連

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法務手続き、不動産、相続、訴訟等、司法書士は様々な士業と隣接・関連しています。続きを読む »

司法書士×宅建士

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司法書士×行政書士

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司法書士への第一歩はココからスタート!

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