不動産鑑定士試験をズバリ解説! 不動産鑑定士試験の合格率は?合格ラインは?難易度は?
不動産鑑定士試験の例年の合格率は、短答式試験が32%前後、論文式試験が14%前後です。また、合格ラインは、短答式試験が200点満点中140点前後、論文式試験が600点満点中360点前後です。
当ページでは、不動産鑑定士試験の「合格率」や「合格ライン」について、過去の試験結果データをもとに「難易度」にも触れながら分析しました。講師と受験生の会話を交えて詳しくご紹介します。
登場人物
不動 知恵(ふどう ちえ)さん
不動産の売買でひと儲けしようと考えている会社員。最近宅建士の資格をとりダブルライセンスを狙っている。 自宅で2匹の猫(サラチとタクチ)を飼っている。
鑑(かがみ)先生
現役不動産鑑定士。不動産鑑定業の面白さを伝えるべく、予備校の不動産鑑定士講座で鑑定理論を教えている。趣味はアウトドアで、マシュマロは焼いて食べる。
不動産鑑定士 短答式試験の合格率・合格ライン
短答式試験の合格率
短答式試験の合格率は例年33%程度。500~600人程度が合格しています。
過去7年間で最高の合格率は36.3%(2021年・2022年)、最低の合格率は32.4%(2019年)です。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |||
---|---|---|---|---|---|
平成29年(2017年) | 1,613名 | 524名 |
32.5% | ||
平成30年(2018年) | 1,751名 | 584名 | 33.4% | ||
令和元年(2019年) | 1,767名 | 573名 | 32.4% | ||
令和2年(2020年) | 1,415名 | 468名 | 33.1% | ||
令和3年(2021年) | 1,709名 | 621名 | 36.3% | ||
令和4年(2022年) | 1,726名 | 626名 | 36.3% | ||
令和5年(2023年) | 1,647名 | 553名 | 33.6% |
30%が多いのか少ないのか…イマイチわかりづらいですね。
知恵さん
鑑先生
そうだね、では、他の資格と比較してみようか。
最近の傾向だと宅建士が15~17%ほど、行政書士が8~15%ほど、
通関士が10~14%ほどだね。
受験人口も採点方式も全く違うから単純な比較はできないけど。
比較してみると、難関資格と言われているのでちょっと意外な数字ですね。
不動産鑑定士試験は2段階式だからね。
より難易度が高くて学習時間を割かなければならないのは論文式試験の方なんだ。
短答式試験は「論文式試験を受験するための切符」を手に入れる試験だという人もいるね。
コロナ感染症が問題になった令和2年は例外としても、
合格者数は安定していますね、先生?
そうなんだ。実は合格者数は増加傾向にあって、かつ合格率も年々上がっているんだ。
受験チャンスが到来しているともいえるよね。
短答式試験の合格ライン
短答式試験の平均点は例年200点満点中120点程度。合格ラインは140点程度です。
過去7年間で最高の合格ラインは150点。最低の合格ラインは132.5点です。
満点 | 平均点 | 合格ライン | |||
---|---|---|---|---|---|
平成29年(2017年) | 200点 |
117点(=58.5%) |
135点(=67.5%) | ||
平成30年(2018年) | 200点 |
122点(=61%) | 138点(=69%) | ||
令和元年(2019年) | 200点 | 122点(=61%) | 140点(=70%) | ||
令和2年(2020年) | 200点 | 118点(=59%) | 133点(=66.5%) | ||
令和3年(2021年) | 200点 | 124点(=62%) | 140点(=70%) | ||
令和4年(2022年) | 200点 | 134点(=67%) | 150点(=75%) | ||
令和5年(2023年) | 200点 | 115.8点(=57.9%) | 132.5点(=66.3%) |
国土交通省の公表とおり、おおむね70%で合格なんですね。
そう、そしてココで一番大事なことは「満点を狙う試験ではない」という点だね。
短答式対策は論文式対策と並行して対策をおこない、時間を有効に振り分けるべきだね。
1年目に短答式試験、2年目に論文式試験と2段階で合格を目指す場合でも、
2年目の論文式試験を常に意識しながら学習を進めてほしい。
不動産鑑定士 論文式試験の合格率・合格ライン
論文式試験の合格率
論文式試験の合格率は例年15%程度。120人程度が合格しています。
過去7年間で最高の合格率は17.7%(2020年)、最低の合格率は14.5%(2017年)です。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |||
---|---|---|---|---|---|
平成29年(2017年) | 733名 | 106名 |
14.5% | ||
平成30年(2018年) | 789名 | 117名 | 14.8% | ||
令和元年(2019年) | 810名 | 121名 | 14.9% | ||
令和2年(2020年) | 764名 | 135名 | 17.7% | ||
令和3年(2021年) | 809名 | 135名 | 16.7% | ||
令和4年(2022年) | 871名 | 143名 | 16.4% | ||
令和5年(2023年) | 885名 | 146名 | 16.4% |
気になったのですけど、直近の2年は例外と考えると、
合格者数は安定していますよね、先生?合格率って毎年あまり変わらないのですね。
試験実施団体が意図して同じ合格率にしているということでしょうか。
良いところに気が付いたね。
国土交通省は明言をしていないのだけど、不動産鑑定士試験は他の受験生との競争試験、
つまり「相対試験」であることが理由だろうね。
明確に「何点とれば必ず合格する」とは言えない試験なんだよ。
「目安」だけど、論文式試験では60%以上を得点しつつ、受験生の上位15%以内に入れば合格可能性がイチバン高くなる、ということがこの表から読み取れるね。
上位15%にいなければいけないということは、
他の受験生を意識しながら勉強しないといけないですね。
その通りだね!
自分が受験生の中でどれくらいの順位にいるのか、
他の受験生が解けて自分が解けない問題はどれか、
などを常に意識しながら勉強できる環境に身を置いてほしい。
それにしても、必要な点数は60%か。
それなら私が得意な民法に全力投球しちゃおうかな。
経済学って勉強したことがないですし。
それは結構難しいかもしれないな。
学習を始める上で注意してほしいことがある。各科目には「足切り制度」がある点だね。
足切りですか?
そう。各科目で一定水準の点数が取れなかった場合、たとえ総合計で合格点に到達していても不合格にされてしまう可能性があるんだ。
この点も不動産鑑定士試験の難易度を高めている理由だね。
ええ!?厳しいですね!
わ、私の民法全振り作戦が通用しない…!
そうなんだ。だから全体をある程度バランスよく得点できるように、
各科目の進捗を客観的に確かめながら学習していく必要があるということだね。
それなら得意科目を作る必要はないということですか?
いや、「ある程度」バランスよく学習して欲しいとは言ったけど、配点比率が高い鑑定理論は特に時間を掛けて学習して、得意科目にしてほしい。
次の図を見れば理由がわかるよ。
鑑定理論は論文式試験の半分のウェイトを占めているんだ。
だから、鑑定理論でしっかり得点できれば、民法・経済学・会計学の負担を大きく減らすことができる。
鑑定理論を得意科目にして、全体の底上げを図るのがこの試験の攻略の鍵だよ。
なるほどですね!
鑑定理論は資格をとった後も実務で使っていく科目だから、
しっかり高得点を狙っていこう!
論文式試験の合格ライン
論文式試験の平均点は例年600点満点中270点程度。合格ラインは370点程度です。
過去7年間で最高の合格ラインは380点、最低の合格ラインは347点です。
満点 | 平均点 | 合格ライン | |||
---|---|---|---|---|---|
平成29年(2017年) | 600点 |
249点(=42%) |
347点(=58%) | ||
平成30年(2018年) | 600点 |
266点(=44%) | 376点(=63%) | ||
令和元年(2019年) | 600点 | 244点(=41%) | 353点(=59%) | ||
令和2年(2020年) | 600点 | 281点(=47%) | 380点(=63%) | ||
令和3年(2021年) | 600点 | 281点(=47%) | 380点(=63%) | ||
令和4年(2022年) | 600点 | 274点(=46%) | 369点(=61%) | ||
令和5年(2023年) | 600点 | 273.3点(=46%) | 369点(=61%) |
平均点と合格ラインの点数が結構離れていますね。
理由はいくつか考えられるけど…。
まずは、論文は書き慣れて点が取れるようになるまでに時間がかかる点。
短答式試験との大きな違いだね。
知識を正確にインプットして、さらに白紙の答案用紙に書き起こす作業には練習が必要なんだ。書いた答案が正しいものか、点がもらえるものかは独学では判断しづらいからね。
そのために、論文が書ける人とそうでない人の差が開く傾向にあるんだ。
確かにそうですね。大学の定期試験では苦労しましたよ。
もう1つは、試験範囲が広い点。
論文式試験を攻略するには、各科目の論点をまんべんなく押さえなければならないから、独学だとすべての論点を洗い出して覚えるまでに時間がかかるんだよ。
しかも、鑑定理論・民法・経済学・会計学は学問的に横のつながりがうすいことも時間がかかる要因になっている。
私も鑑定理論、経済学、会計学の勉強は初めてです。
鑑定理論に力を入れて欲しいのもそのためだよ。
配点比率の高い鑑定理論で「まとまった点」を安定して取れるようになれば、他の科目の弱点を補うことができるようになる、ということだね。
不動産鑑定士試験のことが少しずつ分かってきました。
鑑定理論はマストな科目だと思って頑張ります!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
不動産鑑定士試験について、「試験制度がもっと知りたい」、という方は次のページもご参考になさってください。
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