vol7【2019年度内定者海外体験記】 エジプト①
外専LA(2019年度内定)の藤木郁理(ふじきかおり)です。
私は,2017年9月から2018年6月に大学の協定校であるエジプトのカイロ大学に留学していました。
カイロは一言でいえば「混沌とした街」です。
砂埃が飛び,人々の怒号や客引きの声が飛び交い,車のクラクションの音が鳴り響き, 2011,2013年の二度の革命以降は,ごみ,野犬,ホームレス,物乞いで溢れるようになりました。
一方で,遺跡や観光名所がいたるところあり,砂漠や海,山などもあるのでサバイバルにはうってつけの国です。また,道に迷っていると,「おい,大丈夫か」といろんな人が助けてくれ,笑顔で「エジプトにようこそ」と話しかけてくれる,人の温かさ溢れる国です。
私は留学中,①外専受験を視野に入れ,大学の専攻であるアラビア語の運用能力向上,②バイトとインターン,③遊びに勤しんでいました。
まず,①について。アラビア語にはフスハー(アラブ・イスラーム圏の公用語)と地域に固有のアンミーヤ(方言)があります。外専の試験ではフスハーが用いられるのですが,フスハーはメディアやアカデミックな場面でしか用いられません。そこで,一般のエジプト人とコミュニケーションを取るためには現地のアンミーヤを習得する必要があります。しかし,アンミーヤは大きな地域差があり,とりわけエジプト・アンミーヤは文法・発音・単語等フスハーとかなり異なっています。
例えば,よく使う「元気ですか?」は,
フスハーでは
كيف حالك؟ (かいふぁ・はーるか)
アンミーヤでは
عامل ايه؟ (あーみる・えー)
となります。
全然違うでしょう(笑)
そのため,いうならば2言語を同時に習得する必要に迫られていました。
私の勉強法は「量は質を兼ねる」です。語学学校や大学でフスハー,午後は家庭教師の先生や友達に教えてもらってアンミーヤを勉強し,毎日10時間以上勉強していたのではないかなと思います。最初の半年はフスハーとアンミーヤがごちゃまぜになってしまっていましたが,徐々に要領を得て,半年目以降からスイッチを切り替え,両者を使い分けれるようになっていきました。
次に,②バイトとインターンについて。
留学時,私はエジプトの日本商工会で事務として働いていました。様々な日系企業や,JICAやJETROをはじめとする政府機関,そして在エジプト日本大使館から代表者が集い,経済事情・治安情報等について意見交換をする場所です。職務の中で,エジプト日本科学技術大学(E-JUST)設立や,大エジプト博物館の建設等のODAプロジェクトへの,現地での注目度の高さを感じました。
一方,エジプト家電最大手のELARABYでインターンをし,現地用の冷蔵庫の設計プロジェクトに通訳・翻訳として参加しました。日本人とエジプト人が協働して事業を達成した経験を通じて,文化や宗教,言語,思考様式が違っても,互いのことを理解しようと努めれば,ともに何かを成し遂げることができるのだと感じました。
最後に③遊びについて。
鬼のように勉強し働いていましたが,たくさん遊んでもいました。
友達と遊びにいったり,紅海沿いのリゾートに行ったり,中東スイーツを食べ歩いたり。
それから,ヨーロッパへの航空券が格安で取れるので,ヨーロッパへの旅行にも行きました。
勉強や仕事と遊びのバランスが肝ですね。
留学をして感じたのは,周りの人のありがたみと「世界は広い!」ということです。
留学中,悩んだり落ち込んだりするときもありましたが,友達や家族,先生などいろんな人に支えてもらって,長期留学を終えることができました。
また,自分とは異なる生活,文化,考え方,価値観を持つ人たちは無数にいて,人生には無数の答えがあって,私が正義や正解だと思ってきたことは,絶対的なものではないと思うようになりました。
これからアラビスト外交官として働くことになりますが,日本のために働くという確固たる芯をもちつつ,多様な価値観を深い洞察力をもって理解・受容できる外交官を目指し,自己研鑽し続けたいと思います。