タックス ファンタスティック! 第80回テーマ 母がいなければ事業承継もママならない?Part3

田久巣会計事務所の代表の田久巣だ。前回、前々回では、母が事業承継の成功に果たす重要な役割について語った。今回はさらに、エミリ・ブロンテの『嵐が丘』を取り上げて、母親がいない場合、家族がどのように混乱し、相続が揉めるかを考えてみたい。この小説は決して母に焦点を当ててはいないものの、家族の悲劇・相続的な悲劇を描いており、現実の相続・事業承継にも多くの示唆を与えてくれるからだ。


監 子 あー!ラッシー飲みたい!


税 太 え?あのカレー屋さんとかにあるインドのヨーグルトテイストのあの飲み物ですか?これまたなんで?


監 子 ちょっとちょっと、説明がだいぶ芝居がかってない?なんでかっていうと今回のお客様、カレー並みにから~い相続案件だったのよ。やりがいはあったけど。


税 太 から~いって…。かなり揉めてヒリヒリするって感じですか?


監 子 そう!お客様には実のお子さんでない養子がいたんだけど実の子以上に溺愛されていたのよね。孤児でとてもかわいそうだったんだけど、実の子としては愛情を奪われたように感じてしまって、それが今でも尾を引いているの。だけど、その養子の方もしたたかで、逆襲してぎゃふんと言わせるのよね。


襟 糸 むむむ、それはまさに『嵐が丘』じゃないか!


監 子 あー、そうそう襟糸先輩、それ宝塚で観たことある!


税 太 アラシガオカ?あらを探す物語ですか?


監 子 前回あたりからその反応パターン多いわね…。ジピッテくんない?(注:Googleで検索をググると言うのと同様にChatGPTで調べろの意)


ChatGPT 税太君。『嵐が丘』は、父が亡くなったあとに家族の均衡が崩れ、兄のヒンドリーが義弟で孤児のヒースクリフを徹底的に冷遇したことで彼の壮絶なる復讐が始まるのである。もし、母親がいたら、兄弟間の力関係が崩れるのを防ぎ、家族の調和を保てたかもしれない。


税 太 おっと、すごい!前回までよく話題に出ていた母親の不在をいきなり指摘しましたね。監子さんの案件でも同じくお母さんがいないのですか?


監 子 いや、私のお客様には幸いそれがいるのよ。だから、まだ何とかお母さんが諫められそうなのが救いなのよね。そろそろ「いいかげんにしなさい」があると思うんだけど。


襟 糸 語弊があって失礼かもしれないが、それはラッシーだな。


監 子 (間髪入れず突っ込んで)ラッキーね。


襟 糸 (聞いてないかのように)『嵐が丘』の場合、相続においてキーパーソンである母が不在のため、感情論に支配されすぎて暴走を抑える歯止め役がいないんだ。それゆえ財産の維持どころか破壊につながっている。これ、母がいない現実の相続でもよくある話だ。


税 太 じゃあ、士業としてどうすればいいんですか?あ、代表!


田久巣 『嵐が丘』かぁ、学生の頃19世紀英文学の大傑作だという推薦を受けて読んだものだ。士業としてはまず、相続の前に家族会議を開いて、全員の意見を整理しておくことが大切だ。母がいる場合は、母を中心にコミュニケーションの場を設けるのが理想的だな。


監 子 でも、母がいない場合は?


田久巣 その場合は、士業が感情を整理する役割を担うことが求められる。特に、兄弟姉妹が冷静に話し合える環境を作ることが重要だ。『嵐が丘』みたいに、感情的になって過去の恨みをぶつけ合ってるときこそ俯瞰する姿勢が必要だ。


AI税太 (横から)私AI税太が「冷静な調停役」としてお手伝いします!家族が『嵐が丘』にならないよう、データを整理し、公平なアドバイスを提供できます!


税 太 お、AI税太。GPTに対抗か?でも、お前には『嵐が丘』の情熱的な感情はないだろ?


AI税太 ご安心ください!代わりに理性100%です!冒頭の監子さんのセリフ「あ、ラッシー飲みたい」は『嵐が丘』の「あらし」から取りましたね! 「芝居がかってる」というセリフも『嵐が丘』がお芝居でもよく演じられるからですね!


襟 糸 おっ、めっちゃ冷静!でも、理性だけでも駄目だと思うよ。本当に、相続を円滑に進めるには、感情に寄り添えるような感受性が大事だっていうぞ。


AI税太 「母の不在」が嵐を呼ぶなら、「母の存在」は家族をつなぐ虹です!


税 太 お、虹とは感受性豊か!「にじ」ゅうまるあげよう!

【今回のポイント】

『嵐が丘』の悲劇は、非嫡出子的存在であるヒースクリフによる復讐が鍵のように見えるが、元凶は実はその環境にあるように思う。他の文学作品と同様に、「母親の不在」が兄弟関係の悪化の原因ともいえるからだ。現実でも母は家庭の中心人物で父も子も皆の気持ちを客観的にわかることが多いため、相続における役割は非常に大きい。もし、母がいない場合は、士業がその役割を担い、感情に寄り添いながら冷静な話し合いを導くことが求められる。士業も他の業界と同様男性がまだまだ多いが、女性こそ適任ではないかと思うのはこういった相続実務の時の母としての役割を求められる時だ。作者であるブロンテも女性だが、まさに彼女も、相続を見守る士業と同様、この『嵐が丘』自体を客観的に冷静に見守る「母」として存在しているようだ


[『TACNEWS』タックス ファンタスティック!|2025年3月|連載 ]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員。慶應義塾大学・同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でSEとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人等で会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後相続専門約60年の税理士法人レガシィへ。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年に士業事務所間で仕事を授受するWebサービス「Mochi-ya」、2020年にシニア世代向けの専門家とやりとりするWebサービス「相続のせんせい」、2024年に士業のためのSNS「サムシナ」をリリース。主な著書『相続でモメる人、モメない人』(2023年、講談社/日刊現代)。2023年、YouTubeチャンネル「相続と文学」配信開始。

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