人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第73回 住友林業株式会社

野原 貴敏(のはら たかとし)氏(写真左)
住宅事業本部 人財開発部 副部長
鈴木 歩(すずき あゆみ)氏(写真右)
人事部
脱炭素社会の実現に向けて
「Mission TREEING 2030」を策定。
共感してくれる人財を求めています。
住友林業は1691年、住友家が別子銅山(愛媛県新居浜市)に持つ山の森林経営から始まった。2025年で335年目を迎える非常に長い歴史のある会社だ。300年以上にわたって人と地球環境にやさしい「木」を活かし、環境、社会、経済に貢献してきた。人材を「人財」と呼び、人を大切に育てる住友林業には、どのような人財育成制度があるのだろうか。住宅事業本部 人財開発部 副部長 野原貴敏氏と人事部 鈴木歩氏にお話をうかがった。
「木」を軸に事業を展開する
──住友林業は、どのような事業を展開している会社ですか。
鈴木 住友林業は、300年以上の間育まれてきた「住友の事業精神」を大切に、本業で環境、社会、経済に貢献しています。
現在、資源環境事業、木材建材事業、住宅事業、建築・不動産事業、生活サービス事業の5つの事業を展開しています。資源環境事業では国内外の約29万ヘクタールに及ぶ森林を保有・管理するなど、大規模な森林経営を展開しています。
木材建材事業は、木材商社として製造・流通事業を展開しており、国内取扱高は日本一です。住宅事業は、国内で住友林業の家を提案・販売する事業で、戸建ての注文住宅をメインに展開しています。建築・不動産事業は海外での戸建住宅の建築・販売を中心に集合住宅やオフィスの開発、国内外での中大規模木造建築事業を展開しています。生活サービス事業は介護ビジネス、地域創成といったソフト面で木のぬくもりをお届けする事業です。
いろいろな事業を行っている会社ですが、すべて木を軸に事業を展開しています。ハウスメーカーとも商社とも呼べない、独自のビジネスモデルを展開している会社です。
「Mission TREEING 2030」への共感
──木を軸に事業を展開している住友林業では、どのような職種で新卒採用を行っていますか。
鈴木 総合職は、住宅営業を担う住宅営業職、住宅事業の設計・施工管理をする建築技術職、そして、事業領域が広い住友林業の既存事業の管理及び新規事業の企画を担う業務企画職の3つに分かれています。そのほか、事務企画職という一般事務職があります。
──2024年4月入社の新卒は何名でしたか。
鈴木 176名を採用しました。そのうち住宅営業職と建築技術職が61名ずつ、業務企画職44名、事務企画職が10名となっています。
──住友林業の新卒に「求める人物像」とはどのようなものでしょうか。
鈴木 4職種それぞれに必要な要素はありますが、共通しているのは2022年に打ち出した長期ビジョン「Mission TREEING 2030」に共感し、達成に向けてともに働くことができる「人財」です。脱炭素社会に向けて住友林業がどのようなことをしていくのか。新卒採用においても「Mission TREEING 2030」で住友林業がめざす未来を伝え、共感していただける方を求めています。
手厚いサポートで入社1年目の資格取得をめざす
──新卒採用の選考プロセスで「Mission TREEING 2030」に共感してもらうために何か工夫していることはありますか。
鈴木 住友林業を知っていただくための各種イベントやインターンシップで「Mission TREEING 2030」を説明し、住友林業がめざす脱炭素社会を伝えています。インターンシップでは特に、選んだ職種がどう「Mission TREEING 2030」に関わるのか。それを伝えた上で、共感いただければ次のステップに進んでいただいています。
──2024年4月入社の方への内定者フォローや課題について教えてください。
野原 2024年4月入社の内定者には、10月1日に内定式を開催、内定式後はそれぞれの職種に必要な内容を事前学習してもらいました。例えば、住宅営業職は、内定式の翌日から2級ファイナンシャル・プランニング技能士(以下、FP2級)の学習をスタート。入社後の5月に合格するスケジュールで進めます。設計職と生産職(施工管理)を合わせた建築技術職は、入社1年目に二級建築士をめざして勉強をスタートしています。業務企画職は日商簿記検定2級取得をめざします。それぞれの職種で資格を推奨しており、会社としてサポートしています。手厚く支援してよいスタートを切ってもらいたいという思いです。
──業務に必要な資格は早い段階で取得できるよう支援しているのですね。
野原 特に建築技術職は、二級建築士資格がないと研修後の実務ができなくなるので、入社1年目はその取得が仕事と言えるくらい力を入れています。

人事部 鈴木 歩氏
二級建築士 1級建築施工管理技士
2013年、新卒で住友林業に入社。建築技術職として7年間住宅施工管理、その後3年間住宅事業本部で本部業務に従事。2023年4月から現在の人事部に異動、新卒採用を担当している。
入社3年間の綿密な育成プログラム
──2024年4月入社の新入社員研修はどのように実施されましたか。
野原 入社式が終わったその日から20日間、新入社員研修を実施しました。この研修は日ごとに綿密にカリキュラムが組まれています。
研修後はそれぞれの部署に配属されますが、住宅営業職、建築技術職、それぞれに入社後3年間の育成プログラムを用意しています。
住宅営業職の場合、4月の新入社員研修のあと、5月、7月、9月、11月と2ヵ月ごとに課題を決めた研修を設定。2年目は営業プロセス、ローン、ソーシャルスタイルについて学ぶ研修、3年目は仕上げの時期としてロールプレイングを中心に「土地のないお客様へのアプローチの仕方」「構造の説明の仕方」「ライフプラン」「お金の説明の仕方」といった研修を受講し、3年間でひとまず卒業になります。建築技術職も同じように3年間育成研修を受け、その後、階層別研修を行います。
3年目の育成プログラムには、全職種で住友林業発祥のほか、四国別子銅山へ行く1泊2日の山林研修も用意しています。
──丸3年かけてようやく一人前ということですね。
野原 ひと通りの育成は終わりますが、研修期間は3年で終わりではありません。その後も各グレードに応じた適切なタイミングで階層別研修を実施しています。

住宅事業本部 人財開発部 副部長 野原 貴敏氏
一級建築士 宅地建物取引士 2級ファイナンシャル・プランニング技能士
ゼネコンでの設計技師を経て、1999年、住友林業に入社。住宅事業本部で14年間東京を中心に住宅営業に従事。その後4年間の営業責任者を経て、人財開発部に異動。新卒研修から営業責任者研修など、営業グループの研修責任者を務める。
充実したウェルビーイングな働き方の支援制度
──四国での山林研修は、住友林業らしい研修と言えますね。
鈴木 礎となる住友林業発祥の地をしっかりと学ぶために、全職種にわたって登山をする研修です。会社のこと、先人たちが培ってきた歴史をより深く知ってもらいたいという思いで、3年目に実施しています。
野原 手挙げ式のリテラシー研修も用意しています。「構造に弱いから構造の研修に出席したい」「インテリアデザインを学びたいのでインテリア研修に参加したい」という各自の意気込みに任せています。育成研修は、マネジメントやスキルアップに特化したものばかりではありません。例えば、定年が60歳から65歳に引き上がったことを受け、50歳時研修を設けてジェネレーションによるギャップを理解する考え方の研修などを実施しています。
鈴木 産休・育休に関しては、法定の休業を用意した上でさらに相談窓口を設けています。産休・育休を取得した先輩が少ない部署・拠点に所属している場合、制度の利用方法や復帰後の働き方のイメージが付きづらいと思います。どのような働き方が自身や家族、ともに働く仲間にとってベストか。どのような働き方ができるかを知ってもらうために、育児休業から復帰したあとの働き方支援も実施しています。また、育休を取得する社員だけでなくその上司にも支援方法を伝えています。社内掲示板に産休・育休を取った社員のインタビュー記事を掲載し、経験談を閲覧できるようにもしています。
野原 男性も育休を取得できます。先日の産休・育休研修では、3名登壇したうちの1名が男性でした。「長期育児休暇を取得し、仕事に支障がないか不安や心配がある中、支店や上司の理解があって、いろいろフォローしてもらえた」という話をしていました。まだ男性の取得は多くありませんが、活用を検討する男性社員は増えています。
鈴木 大学の講義を聴講する研修も手挙げ式で実施し、かかった費用は会社負担になる制度もあります。住友林業は人材を「人財」と呼んで、人をとても大切にしている会社です。しっかりと育ってほしいという会社の思いがあらゆる研修に込められています。
──社内制度として住友林業らしいものをご紹介ください。
鈴木 社内制度としては公募制度とFA制度があります。どちらも年に一度の制度で、公募は募集に対して名乗りを上げて応募する制度、FA制度は自主的に手を挙げる制度です。
ちなみに私はFA制度で人事部に入りました。枠にとらわれることなく、自分が挑戦したい仕事に希望を出せること、どのようなキャリアを歩みたいか考えられることが魅力です。
138資格を会社が補助
──FP2級、日商簿記検定2級、二級建築士など、内定期から資格取得をめざして学ぶ機会が豊富ですが、どのようなサポート体制で費用補助やフォローを行っていますか。
鈴木 会社側では138項目の資格一覧を作成し、それに対して補助をしています。資格によって補助の方法は様々ですが、建築士資格であれば、資格取得に必要な申込費用の補助のほか、合格祝金と準備金を合格時に受け取ることができます。
あとは業務上必須の資格はもちろんですが、人事制度上、階級が上がる際に必須となる資格規定があるので、日々働く中でそういった資格は取得していくよう社員に促しています。
野原 例えば、住宅営業職では損害保険募集人資格、木造ハウジングコーディネーター、ハウジングライフ(住生活)プランナー、宅地建物取引士(以下、宅建士)、日商簿記検定2級、 FP2級、宅建士のみが取得できる「スムストック住宅販売士」という長期にわたって安心を保証する住宅診断士的な資格など、多くの資格が推奨されています。建築技術職では一級建築士、1級建築施工管理技士、インテリアコーディネーターなどもグレードによって推奨されています。
鈴木 また、これまで年功序列だった人事制度を撤廃し、若い担当でも活躍でき、役職を上げ難易度の高いポジションで仕事ができるように制度改変をしています。その一環として、推奨する資格が増えてきました。
野原 資格を取得していれば名刺に書けるというメリットがあります。「若くて見かけは頼りないけれど、宅建士を持っているんだ」「FPを持っているからお金に強いんだね」と、資格があることでお客様の見方も変わってきます。
資格取得が売上に与える影響を裏付けるデータもあります。入社2~5年目までの新卒社員に2024年1月から6月までの平均受注棟数データを取ったところ、無資格者116名の数値は2.17棟、FP2級だけ取得している社員は2.6棟、宅建士資格を持っている社員は2.97棟、宅建士とFP2級ダブル有資格者は3.18棟と、資格保有者ほど好業績な結果になりました。やはり資格があると自信がつき、またお客様からの信頼の獲得につながる。そうしたエビデンスを示されて、住宅営業職社員は資格取得のモチベーションが上がっています。
加えて、人に対しての説明の仕方や対応性を学ぶソーシャルスタイル研修も実施しています。
──138項目の資格は建築系、施工管理系の資格が多いですか。
鈴木 法律系もありますし、TOEIC® L&R TESTなどの語学系資格もあります。
野原 例えば、建築技術職は二級建築士、一級建築士資格がマスト、住宅営業職の場合は宅建士と FP2級資格があると好ましく、かつ一定の役職に就く際には必須になってきます。
人財開発部ではTACにお願いして週に1回、13時~17時までの4時間、宅建士と FP2級の講座を実施しています。手挙げ式、費用は会社負担で業務時間内に受講できます。住宅営業職約1,400名中、毎年100名前後が参加しています。
──最後に、資格取得やスキルアップをめざしている方に向けてメッセージをお願いします。
鈴木 私は1級建築施工管理技士を取得しています。現在の人事部の仕事には直結していませんが、資格を持っていることで、自信につながることは大いにあります。何より取得する中で様々な学びがあるのが資格のすばらしさです。
野原 資格は、何よりもお客様の信頼と安心につながる点が一番大きいと思います。さらに学習することで、知識が身につき、取得することで自信につながります。ぜひともがんばってめざす資格の合格を達成してください。
TOEIC is a registered trademark of ETS.This web page is not endorsed or approved by ETS.L&R means LISTENING AND READING.
[『TACNEWS』人事担当者に聞く「今、欲しい人財」|2025年2月 ]

世田谷の展示場
会社概要
社名 住友林業株式会社
設立 1948年2月20日 創業 1691年(元禄4年)
代表者 代表取締役社長 光吉敏郎
本社所在地 東京都千代田区大手町1丁目3番2号(経団連会館)
事業内容
資源環境事業、木材建材事業、住宅事業、建築・不動産業、生活サービス事業
従業員数
単体:5,235名 連結:24,815名(2023年12月末時点)
URL