人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第25回 株式会社マクロミル

Profile

倉島 進氏

株式会社マクロミル
人事部 人材採用ユニット長

新卒から3年間、教育業界に従事し、その後エンジニアを中心としたスカウト型エージェント、採用コンサルティング会社を経て2012年、マクロミルに入社。採用を中心に人事企画なども兼務。現在、人材採用ユニット長として新卒採用、中途採用を担当する。

株式会社マクロミルは2000 年の創業以来、クライアントのよりよい意志決定を支援するため、最新テクノロジーをいち早く取り入れたマーケティングリサーチのサービスやソリューションを提供し、業界を牽引してきた。デジタル領域における知見やグローバルな展開を武器に、様々なマーケティング課題を解決に導いていく「マーケティングパートナー」として成長を続けている同社の人材戦略と、2021年~2022年の採用計画についてうかがった。

インターネットリサーチのパイオニア

──マクロミルについて教えてください。

倉島 マクロミルは、2000年のサービス開始からインターネットリサーチ事業を核に、ネットリサーチという新しい市場を開拓し「インターネットリサーチといえばマクロミル」といわれるまでに、日本にインターネットリサーチを根付かせ、業界を牽引してきた存在です。
 年間3万件以上の案件がマクロミルに寄せられており、クライアントは4,000社以上、広告代理店、コンサルティングファーム、各種メーカーなど、業界を問わず多岐に渡ります。近年ではさらに、多様化が進む生活者動向を捉えた今後のマーケティング戦略立案を支えるために、従来強みとしてきたインターネットリサーチにマクロミルが保有する生活者の実行動データや購買データ等を掛け合わせることで、高い付加価値を提供しています。さらには行動データも可能な限り正確に多面的に収集し、これらにクライアントのデータを組み合わせることで課題解決していく「マーケティングパートナー」としての機能も担っています。また、事業展開は国内だけでなく、海外20ヵ国に50拠点、調査実施可能国は90ヵ国に上り、2024年までに「グローバルTOP10」「日本及びアジアNo. 1」の企業になることを標榜しています。

──マクロミルの理念と「求める人物像」を教えていただけますか。

倉島 マクロミルは、あらゆる企業の真のマーケティングパートナーとなるために、行動指針として「ThinkNew, Think Deep」「Act Now, Act Together」「Be True, Be Open」「Own It, Enjoy It」の4つのValuesを策定しており、このValuesへ共感できるか、自分の価値観と重なっているかを第一の基準にしています。
 また新卒・中途の採用で共通して求めているのは、何より「知的好奇心が強い人」です。マーケティングリサーチは世の中で何が売れているのかに興味・関心のアンテナが立っていなければ、仕事としてのおもしろみがありません。「なぜあの新商品はこんなパッケージに変わったのだろう」「なぜ今この商品が売れているのだろう」など、疑問に思ったら徹底的に調べ上げる。そのような能力や価値観を大切にしています。
 加えて、やり切る力、他人のせいにせずに自分ごと化できる自責性、柔軟性、誠実さも大事にしています。

2021年度新卒は職種別選考を実施

──新卒採用と中途採用についてお聞かせください。

倉島 新卒に関しては例年60名前後の採用で推移しており、2021年も60 ~ 65名で着地する予定です。中途採用は多いときには年間150名ほど採用していましたが、最近は新卒採用が増えたため50名前後に落ち着いています。

──新卒採用の募集概要を教えていただけますか。

倉島 2021年の新卒採用では、本社採用コースと仙台採用コースの2つのコースを設けました。
 本社採用コースでは、マーケティングコンサル職(営業職またはリサーチャー職)、データアナリスト職、およびエンジニア職と、職種別の選考にしました。仙台採用コースではエリア総合職として採用し、リサーチディレクター業務を担っていただきます。

──それぞれの応募学部はどのようになっていますか。

倉島 全コースいずれも基本的に学部・学科を問いませんが、経営学部、社会学部、心理学部で、統計や社会心理学、マーケティングを学んできた学生の方が比較的多い傾向にあります。
 ただし、データアナリスト職は基本的に何かしらのデータ分析やデータ解析を経験してきた学生を採用しているため、データサイエンス系の学部の方からの応募が多いです。
 エンジニア職については、システム系学部はもちろんですが、最近は学生時代にアプリやWebサイトを自分で作って運用しているような学生もいますので、文系理系問わず何らかのシステム構築やプログラミング経験のある学生からの応募が多いです。

──中途採用の職種構成と採用時期はどのようになっていますか。

倉島 当社の場合、期初である7月に中途採用の年間の人員計画を立てスタートします。
 職種はかなり細分化されていて、ビジネスサイドでは営業職や、実際に調査を実施するリサーチディレクター、データ分析するリサーチャーとデータアナリストがあります。加えてエンジニアや、企画・管理部門など幅広いポジションがあり、かつ子会社の採用も一部行っているので、中途採用の求人一覧はかなり多くの職種が並ぶことになります。

3月以降、すべての選考・フォローをオンライン化

──新型コロナウィルスの影響下での2021年度新卒採用はいかがでしたか。

倉島 2021年採用は、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い緊急事態宣言前から完全オンラインでの選考に切り替え、3月以降の会社説明会や面接もすべてオンラインで実施しました。
 オンラインでの採用活動に関しては、対面に比べて熱量や雰囲気が伝わりにくいという懸念もありましたが、複数回実施していく中で、そのような懸念も小さくなっていきました。また、応募者には地方の学生が多いので、彼らの時間と経費を考えれば双方にとってメリットが大きく、意外にもすんなり馴染んだと感じています。
 現在は2022年度採用向けのインターンシップをオンラインで実施しているところです。

──選考プロセスそのものは、オンラインとオフラインで変わりませんでしたか。

倉島 エントリー、説明会、面接、内々定という選考フローは基本的に変わりません。ただし、選考の内容をグループワークから個人で受ける適性検査に変えるなど、初期選考の内容は若干変更しました。初期選考は基礎能力を見極めるためのものですので、グループワークから適性検査に変更しても、応募者の方の基礎能力は問題なく把握できると判断しました。

──2021年4月入社の新卒内定者とはどのようにコミュニケーションを取っていますか。

倉島 オンラインでの実施ですが、同期とのつながりや先輩とのコミュニケーションの場として内定者懇親会を開きました。10月の内定式もオンラインで実施します。また、内定式当日に、事前に取り組んでもらっているデータ分析課題を発表してもらう予定です。
 実は、このように事前課題を渡して内定式でアウトプットさせるということはここ数年行っておりませんでしたが、今回改めて「マクロミルのビジネスをしっかりと理解した上で入社してもらおう」という趣旨のもと、実施することになりました。理由としては、新型コロナウィルスの影響によって来社することができなかったり、社員と直接コミュニケーションを取る機会が少なかったりすることによって、マクロミルの業務について理解が薄い状態で入社を迎える可能性もあると考えたためです。だからこそ、コミュニケーションの一環として分析ワークをはさみ、ビジネスの厳しさも感じてほしいと考えました。

──例年は入社前に課題などは出さないのですね。

倉島 空いた時間があればタイピングを練習しておいてほしい、こういった本を読んでほしい、といったことは伝えますが、必ず提出しなくてはいけない課題というのは、ここ数年出しておりません。今回のデータ分析課題は、ここ最近での新しい試みになっていますので、どのようなアウトプットが出るのかとても楽しみです。

──現在はすべてオンラインによる採用ということですが、オフラインでの実施が可能になれば、従来のような採用方法に戻すのでしょうか。

倉島 何を決め手にするのか、なかなか判断が難しいので、現時点ではオンラインで進めていくしかありません。今後の明確な方針はまだ決まっていませんが、入社前に最低でも一度は会社に来て自分の働く職場を見てほしいという思いはあります。

──大変な状況の中で、2020年4月の入社式はどのように行いましたか。

倉島 今年の入社式は大変でしたね。ちょうど新型コロナウィルスの第1波のピークで、かつ緊急事態宣言が出される前でしたので、ぎりぎりまで検討して、入社式予定日の直前に式の中止を決定しました。新入社員約60名には分散して出社してもらい、パソコン支給とセッティング、労務手続き等を行い、そこからすべてオンラインで新入社員研修を実施しました。人事部預かりの期間が1ヵ月なのでゴールデンウィーク前まで人事部の基礎研修を行い、そこから各部門に分かれて2~3ヵ月から半年間の研修に入っています。

──新人研修後に再び新入社員を集める研修はありますか。

倉島 毎年「1年後振り返り研修」という、入社後の1年間を立ち止まって振り返る集合研修を行っています。それ以降は基本的に全員対象の研修はなくなり、階層別の新人マネージャー研修、OJT研修、英語研修といったように、それぞれのレイヤーと対象者ごとに研修を行っています。

各部門で自主的に資格取得に挑戦

──新卒採用では、学生時代に資格を取得している方をどのように評価されますか。

倉島 当社の新卒採用については、資格取得はマストではありません。資格がないよりはあったほうがいいというスタンスで、当社の実務に近いところで言えば、統計検定®やTOEIC® L&R TESTなどが仕事に活かせる資格ですね。在学中にこうした資格取得の勉強をしてきたプロセスや、学業やアルバイトと受験勉強を両立した点、その資格を取ろうと思った意思決定の判断材料や、時間の使い方、どのような工夫をしたのかといった点をお聞きして、努力できる人かどうかといった適性や、目的意識の高さなどについて評価しています。

──入社後、社員として持たなければならない必須の資格はありますか。

倉島 必須の資格はありませんが、「この資格はビジネスに重要だからメンバーみんなで取ろう」といった形で、各部門で取り組むことはあります。例えば、データコンサルティング部は扱う仕事にコンサルティングの要素が入ってくるので中小企業診断士の資格、データ系の部門では統計検定®、また我々人事部では衛生管理者など、それぞれ資格取得を推奨しています。

キャリア形成をサポートする制度が充実

──マクロミルらしいユニークな制度があれば教えてください。

倉島 「挑戦と成長」が文化として根付いているマクロミルらしい制度の1つ目には、「Talent Exchange( 交換留学)制度」が挙げられます。マクロミルグループの海外展開では、日系クライアントを中心に主に東南アジア方面で展開するマクロミル、韓国のMacromill Embrainと欧米事業を担うオランダのMetrixLabというリサーチ会社があります。このように海外にも多数の拠点があり積極的にグローバル化を進めていることから、希望者がエントリーし選考に合格すれば、海外のグループ会社に半年から1年間短期留学できるという制度で、欧米やアジアのリサーチやマーケティング、文化や働き方を学ぶいい機会になっています。
 2つ目に挙げられるのは「Global Job PostingBoard(公募異動制度)」です。こちらはキャリア形成促進の目的で、国内外問わず、オープンポジションがあれば上司の許可なしで異動希望のエントリーができる制度です。「自分のキャリアは自分で作る」というコンセプトで、いろいろな部署のいろいろな職種のキャリアパスを社内ポータルサイトに載せ、社員が自らのキャリアを考え、自ら選ぶ機会を作っています。

──資格試験やキャリアアップをめざして勉強中の方々に向けてメッセージをお願いします。

倉島 資格取得に向けて学ぶことで、体系的にものごとがわかるようになります。基礎を固めることでブレがなくなるので、資格取得で得た知識を保った状態で就職活動をすれば、評価されやすくなるのではないでしょうか。例えば社会保険労務士のような法律系資格であれば、頭の中に社会保険や労務のデータベースがあるので意思決定の大きな判断軸になります。それはとても大きな武器になるでしょう。
 マクロミルでは、特に統計系資格や社会保険労務士、マーケティング系資格を勉強されている方を歓迎します。私自身、今、社会保険労務士と英語系資格の勉強をしているのですが、モチベーション維持と学習時間の捻出には苦労しています。資格取得に行き着くプロセスとそこで得た知識は、資格を取得した先に通ずる大きな財産です。ぜひ、目標に向けてがんばっていただきたいと思います。

[『TACNEWS 』2020年12月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]

会社概要

社名  株式会社マクロミル
設立  2000年1月31日
代表者 代表執行役社長 グローバルCEO 佐々木 徹
本社所在地 東京都港区港南2-16-1 品川イーストワンタワー 11F

事業内容

マーケティングリサーチ事業、グローバルリサーチ事業、デジタルマーケティングリサーチ事業、データベース事業、セルフ型リサーチASP事業、その他マーケティングに関するコンサルティング事業

従業員数

単体 1,029名 連結 2,470名   ※2020年6月時点

URL: https://www.macromill.com/

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