日本のプロフェッショナル 日本の会計人|2022年9月号
山手 洋二氏
エバーグリーン税理士法人
代表社員税理士 所長
山手 洋二(やまて ようじ)
1962年、東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。新卒で大手メーカーに就職し、人事労務を8年、営業を2年間経験。その後、退職して税理士試験をめざし、2年間受験勉強に専念。1996年、公認会計士・税理士𠮷冨幹泰会計事務所に入所。1999年、税理士試験合格。2000年、税理士登録。2003年、税理士法人よしとみパートナーズ会計事務所に改組にともない、社員税理士となる。2009年、代表社員税理士、副所長に就任。2018年、所長に就任。2021年、エバーグリーン税理士法人に名称変更。
フラットで自由なチーム制の総合型税理士法人。
顧客増にともなう積極採用を行っています。
東京・大森駅近くにあるエバーグリーン税理士法人は、スタッフ数80名、顧問先数1,300件超の総合型税理士法人である。現在、代表社員税理士・所長を務めているのは大森出身の山手洋二氏だ。山手氏は大学卒業後、約10年間の大手メーカー勤務を経て会計業界に転身している。そんな山手氏の歩みと事務所の成長理由、先代から代表を引き継ぎ所長となった経緯、そして今後の展望までを詳しくうかがった。
大手メーカーで労務管理を経験
東京・大森駅近くにあるエバーグリーン税理士法人。その前身は、1980年に設立された公認会計士・税理士𠮷冨幹泰会計事務所である。公認会計士・税理士の𠮷冨氏が設立した事務所は順調に成長を遂げ、税理士法の改正に合わせて2003年には税理士法人よしとみパートナーズ会計事務所に改組している。この当時、スタッフは15名、顧問先は約300件だった。その後も順調な成長を遂げ、現在の名称、エバーグリーン税理士法人に改称したのは2021年。このときにはスタッフ75名、顧問先は1,350件を数えるまでになっている。
現在、このエバーグリーン税理士法人を率いるのは税理士の山手洋二氏。税理士法人に改組した2003年に縁あって社員税理士として入所した山手氏は、2009年から代表社員税理士・副所長を務め、2018年に所長に就任した。創業者である𠮷冨氏は、山手氏が所長になるタイミングで、社員会顧問に退いている。
ここからは、そんな経歴を歩む山手氏が税理士となり、所長となるまでの経緯を詳しく見ていきたい。
大森で生まれ育った山手氏は、中学からずっとバスケットボールに打ち込んできた。始めたきっかけは友人の誘いだったという。
「私立の中高大一貫校に入るため、小学校高学年は受験勉強の毎日でした。無事に進学することができ、『せっかく中高で6年間過ごすのだから、何か打ち込めるものを見つけたい』と思っていた矢先、たまたま友人に誘われたのがバスケットボールだったのです。大学に進んでからも、コーチとして後輩の中学生たちの指導をずっとしていました。今でも、運動終わりのビールを楽しみに、月1回は仲間と集まって汗を流しています (笑)」
今でこそ税理士という国家資格を手に活躍する山手氏だが、大学時代は資格取得をめざすことや会計業界で働くことはまったく想定していなかったという。
「時間があればバスケットボールかアルバイトをしているような日々で、税理士というキャリアは露ほども考えていませんでした。同級生たちと同じように、普通に就職活動をして大企業に入るのだろうなと思っていましたね。実際、バスケットボール部の先輩に誘われて、先輩が勤務する大手メーカーに応募し内定をもらって、そのまま就職しています」
新卒で入社した山手氏は、工場の人事労務の部署に配属となった。
「『整員』という、人事管理や労務管理の仕事を担当しました。工場の人事では花形のポジションで、製品の増産などにともなって人員を計画に沿って動かしたり、採用したりという業務です。中には労働組合との団体交渉という仕事もあり、とても勉強になりました。
ただ、ずっとこの部署に居続けると、自分のキャリアの方向性が『人事労務のスペシャリスト』に決まってしまうと思い、他の道も模索するために営業部門への異動希望を出し続けました」
こうして8年間、工場の人事労務担当を務めたあと、希望が叶い、山手氏は営業部門に異動になった。
“父親の導き”で税理士と出会う
「メーカーの営業ですから、直接一般のお客様に営業するのではなく、販売店や特約店の方たちに間に入ってもらい一緒に営業を行っていました。誰かに商品を売るというよりも、世の中にブランドを一所懸命浸透させる活動といったほうが近いですね」
希望して異動した営業部門だったが、次第に山手氏は自分に営業の仕事は合っていないかもしれないという思いを抱くようになった。
「ちょうどそんな時期に、相次いで両親が他界しました。営業の仕事でくすぶっていましたので、自分で納得がいく仕事がしたいと思い、会社をやめて会計業界への転職、税理士資格の取得を決意しました」
このとき、山手氏が「露ほども考えていなかった」会計業界、税理士をめざそうと思った背景には、“父親の導き”があった。
「父は獣医師で、大森で動物病院を経営していました。もちろん税理士のお世話にもなっていたのですが、あるとき突然『世話になっている税理士の先生に会わせるから』と言って、食事会を開いてくれました。そのときに会ったのが、当事務所の創業者である𠮷冨だったのです。父が亡くなったのはその会食の直後でした。何か知らせがあったのでしょうかね。
大正生まれで厳格な性格の父が『先生、先生』と呼ぶくらいすごい職業なのだな、というのが税理士という職業の最初の印象でした」
振り返ってみると、小さい頃から算数は好きだったし、大学の商学部で学んだ会計学にも興味を持っていたという山手氏。「ちょっと勉強して、先生と呼ばれる税理士になれればいいなと思い、会社をやめて税理士試験に挑戦することを決めました。このときは、ちゃんと勉強すればすんなり受かるだろうと安易に考えていましたね」
会社をやめた山手氏は2年間、受験指導校に通って税理士試験の勉強に専念した。
「1年目に財務諸表論に一発で合格できたので、2年目は欲張って簿記論と所得税法、法人税法の3科目を受験しましたがすべて不合格。でもこの2年間の受験専念期間で、所得税法、法人税法などを一通り勉強できたので、残りの4科目は会計事務所で実務経験を積みながら勉強しようと考えました。そして真っ先に訪ねていったのが、父に紹介してもらった𠮷冨の事務所だったのです」
2年間の税理士受験専念期間にピリオドを打った1996年に、𠮷冨氏の事務所を訪ねたところ、𠮷冨氏は快く入所を認めてくれたという。
「当時はまだ個人事務所でしたし、スタッフも10名前後だったと記憶しています。私に社会経験があったからか、入って間もなく担当の顧問先を持たせてもらいました。前職で営業の経験もありましたので、お客様とのコミュニケーション自体には慣れていました。ただ未経験の業種でわからないことも多々出てきますので、自分より年下の20代前半の先輩たちに教えてもらいながら、実務を覚えていきました。試験勉強もうまく両立でき、働きながら簿記論、所得税法、住民税法、国税徴収法に合格しました。のべ5年間の受験になりましたね」
担当したのは顧問契約を結んでいる中小企業や資産家が多かったが、確定申告期にはスポットのお客様や、案件が入れば相続も担当できた。
「これは今も変わりませんが、当時からあらゆる相談に対応する『総合型』の会計事務所でした。そのため顧問先以外からもいろいろな案件が舞い込んできます。案件に対して、自分から手を上げれば何でもチャレンジさせてもらえる環境でした。このおかげで幅広い経験ができ、スキルアップにつながったと思っているので、今でもこの方針は変えていません」
依頼は決して断らない
何でもチャレンジできる環境で、着実に実務経験を重ねてきた山手氏は、自身の成長とともに事務所の成長をも支えてきたひとりとして、今日では代表社員税理士、所長となっている。事務所の成長の要因はどこにあるととらえているのだろうか。
「毎年、着実にお客様が増えて、スタッフも増えてきました。多少の波はありますが、お客様の紹介で順調に業績を伸ばし今日に至っている事務所です。
なぜお客様の紹介を受けられるのか。これは𠮷冨の代から今の事務所に引き継がれている『依頼は決して断らない』という姿勢があるからだと思います。難易度が高い案件も多々舞い込みますが、そういった依頼に対応することにより、お客様にとても感謝されます。満足度の高さがご紹介につながっているのです」
中には事務所として経験がない、手がけたことがない依頼もあるというが、その場合でも決して断らないという。
「難しい依頼にチャレンジすることで、結果的に事務所のスキルや経験値もどんどん高まっていきます。それに、もし『それはできません』と断ってしまったら、お客様はその時点であきらめるしかありません。変化の時代で中小企業の皆さんが苦労されている今、自ずと困難な依頼は増えています。それでも創業以来、事務所としては一貫して断らずにやり切るという姿勢を貫いています」
依頼を断らないという姿勢を貫けるような、あらゆる依頼に対応できるオールマイティな組織は、どのような体制から成り立っているのだろうか。
「事務所としては、共同事務所のスタイルを取っています。現在は社員税理士が中心となった5~7名のチームが9チームあります。ピラミッド型ではなく、できる限りフラットで自由な組織をめざしています。
あるチームでは経験がない案件でも、他のチームが事例を持っている場合があります。そういったときは、持っている事例を共有することで依頼に対応したり、本当に難しい案件は複数のチームであたったりしています。例えば『相続専門チーム』や『医療専門チーム』など専門特化したチームを抱える事務所もありますが、うちは総合型なので、どのチームも『総合型』として業務にあたっています」
つまりエバーグリーンでは、どのチームも節税・資金調達・事務合理化、組織再編・事業承継・M&A、遺言・信託・相続対策、海外進出と国際税務、医療法人・MS法人・一般社団法人その他の特殊法人活用といった多彩な業務に対応しているのである。
「採用の際も、総合型であることを打ち出して求人をしています。この点に惹かれて応募してくださる方も大勢いますね。総合型事務所で幅広い経験をしたいと入所したのに、相続専門のチームに配属されて相続しかできないとなったら、応募者に対する裏切りになってしまいます。この意味からも、すべてのチームを総合型としているのです」
総合型である意味はお客様から幅広いご相談を受けていることの証でもあり、お客様からの信頼に応えるためでもある。
「お客様からの依頼内容が未経験の分野だったり専門外の話だったりする場合もあるでしょう。でもそこで『その内容は専門外のため、他の担当と代わります』と言ってしまったら、お客様は安心して依頼できなくなってしまいます。信頼をしているからこそご相談くださるのに、できないので他に代わるでは、お客様からの信頼を損ねることにもなりかねません。そうならないためにも、対応力向上のために事例の共有に力を入れています」
専門特化している事務所に負けないために、法人内にはチームとは別の横断的な部会を用意しており、そこではゼミナール形式で専門知識を掘り下げる取り組みを行っている。部会では、資産税、国際税務、医療法人、公益法人、NPOなどの特殊法人などを扱っているという。
「こうした学びの場を用意して、専門特化している税理士法人と競合しても負けないクオリティのサービス力を身につけられるようにしています。毎月2回、研修も実施していて、税制改革などの知識のアップデート、事例の共有などを計画的に実施しています」
“技術”と“ハート”を養ってほしい
ピラミッド型ではなく、フラットな組織をめざしているエバーグリーン税理士法人では、どのような人材を求めているのだろうか。
「チャレンジして、自分のスキルを磨いていきたいという向上心のある方を求めています。入社する人にはよく『“技術”と“ハート”を養ってほしい』と伝えています。“技術”は専門力や応用力。“ハート”は依頼に応えよう、打開しようとするエネルギーです。“技術”があっても“ハート”がないと役に立ちませんし、“ハート”があっても“技術”がともなわないと空回りしてしまいます。だから両方を養ってほしいし、できるだけそういう素養がある人を迎え入れたいと考えています」
山手氏自身は税理士試験1科目合格の状態で入所したが、資格の有無についてはどう考えているのだろうか。
「税理士資格や実務経験がある方や、ある程度勉強が進んでいる方に入所していただければ、それだけ早く仕事に注力してもらえるというメリットはあると思います。そういう方に入所していただけるのはもちろんありがたいですが、資格の有無にはそれほどこだわっていません。試験休暇など、働きながらの受験が可能な体制を整えています。私自身もそのひとりですが、実際に入所後に合格している税理士が何人もいます」
現在、エバーグリーン税理士法人のスタッフ総数は80名、うち公認会計士1名、税理士27名、社会保険労務士1名が在籍しており、顧問先件数は2021年12月末時点で1,349件に上る。着々と規模感を広げているが、今後の採用計画はどのように考えているのだろうか。
「人員計画では、2022年はマンパワーを増強させることが、大きな柱のひとつです。積極的な人材採用と人材育成を行っていきます。というのも、ご依頼が増え続けているため、新しい業務を担っていく新しい人材が必要なのです。良い方がいれば5名といわず10名でも採用していきたいと考えています」
企業勤務時代は人事労務に携わった時間が長い山手氏だが、そこでの経験は人材採用などに活きているのだろうか。
「ものすごく活きていますね。中小企業のお客様は『人』に関する悩みが多く、労務相談を受けることもありますので、自分の中ではジャンル違いの経験だという感覚はありません。その際は、当時の経験や、もちろん事務所経営での経験も活かしてアドバイスをすることが多いですね。
皆さんにお伝えしたいのは、『役に立たない経験は何ひとつない』ということです。2年間の営業経験はもちろん、大学時代にバスケットボールのコーチをしていたことも役立っています。どうやって中学生の力を引き出すかは、スタッフをどう育てるかとまったく一緒ですからね。皆さんが受験や学生生活でや仕事で経験していることは、今後の人生で必ず役に立ちます。今取り組まれていることに一生懸命臨んでいただければと思います」
事業承継、M&Aの相談に対応
総合型事務所として、お客様から寄せられる幅広い相談に対応しているエバーグリーン税理士法人。そんな中で注力している業務はあるのだろうか。
「ご多分に漏れず事業承継のご相談が非常に増えていますね。全国の中小企業数は全企業数の99.7%を占めています。また、後継者がいない中小企業も多くあるので、今後も事業承継のご相談は増え続けるでしょう。
国もこの現状に対して、円滑な事業承継を推進するために事業承継税制を用意するなど施策を打っていますが、実際には別の手段を使ったスキームでの事業承継を行うケースが多いですね。事業承継税制はどちらかというと課税の繰り延べになるので、承継者に繰り延べられた税金を背負わせてしまうことになります。つまり、承継者の将来をしばってしまうため、あまり活用されていないのが現状です」
事業承継に次いで多いのはM&Aの相談だという。
「事業承継の一環としてM&Aを活用することもありますが、M&A単発のご相談も多く、金融機関からご紹介いただくケースもあります。相手先となる企業を探すのは提携しているM&A仲介会社にお任せしていますが、私たちは具体的にどういう承継方法にするかのプランニングをして、重い課税関係にならないようにお互いのニーズを汲み取ってM&Aのスキームを作ります。事業譲渡なのか、株式承継なのか、合併か分割を使うのかと、いろいろとスキーム構築することはたくさんあります」
事業承継やM&Aの相談を寄せる中小企業経営者の年代についても聞いてみた。
「中小企業の社長さんはそれぞれの才覚でがんばってこられた方ばかり。『まだまだやれる』という思いで経営を続けていらっしゃる方が多いので、そろそろ事業承継を考えたいと私たちに依頼をくださる方は若くても65歳くらいで、70代ぐらいの社長さんも相当数います」
入所当時から事業承継を準備
中小企業からの事業承継の相談を受けている山手氏だが、自身も事業承継を経験している。先代の𠮷冨氏から他者承継というかたちで引き受けた自事務所の事業承継は、どのように進めてきたのだろうか。
「私が𠮷冨に拾ってもらって、事務所に入った頃から、事業承継準備委員会が稼働するなど、事業承継に向けた準備はすでに行われていました。𠮷冨には事業を承継できる親族がいなかったので、早い時期からそうした準備を行っていたのです。先ほど共同事務所形式で運営しているという話をしましたが、事務所のあり方もそこで検討して決まっていきました。そして税理士法人の設立が認められるようになったタイミングで、すぐ法人化を行ったのです。そんな中で私が代表社員になり、副所長になって、所長として全体をマネジメントすることになりました」
現在は所長である山手氏を補佐するために2人の副所長が在籍している。
「マネジメントに関しては、副所長と役割分担してそれぞれで担っています。また、現在も事務所の事業承継委員会は活動を続けています。私もいつまでも所長でいようとは思っていないので、65歳になったら代表から離れると公言しています。今年ちょうど還暦を迎えましたのであと5年ありますが、3年前あたりから計画を立てて具体的な次の体制作りをしていくことになると思います」
65歳で代表を離れるという山手氏だが、それは税理士自体をやめるということではまったくない。そこからはマネジメントを離れて一プレーヤーとして税理士業務に打ち込んでいきたいと考えているのだ。
「私も副所長も、マネジメントに専念しているわけではありません。きちんと税理士として、プレーヤーとして活躍できるようなやり方にしています。組織が大きくなると、代表はマネジメントに専念せざるを得ないという話をよく聞きますが、私はプレーヤーであることをやめていませんし、自分の経験が活かせる相談だと思えば、今でも若手と一緒に現場に出ています」
組織の個性を活かしての成長をめざす
人員計画では積極採用を打ち出すと話していた山手氏だが、規模的には事務所の今後についてどのように考えているのだろうか。
「お客様からのご紹介が増えていますので、積極採用を打ち出しています。人的規模も業務量に合わせて自然と大きくなるでしょう。でも、私たちの個性、チーム制を活かして、なるべくフラットで自由な組織を維持していきたいと考えています。所長や副所長でもプレーヤーとして活躍でき、事例を共有しながらみんなで成長していきたいですね。ただ、今のスタイルをどうやって維持していくのかは、これから検討する必要も出てくるでしょう」
山手氏はピラミッド型にならず、フラットで自由な組織という個性を活かしての成長をめざしている。
「個々人の価値観については、方向性がビシッと揃っていなくとも、いろいろな価値観があっていいと思います。一方で、組織の中でお互いにメリットを感じて、この組織の中で一緒にやっていこうと思えるような組織でなくてはならないと考えています。私も大手メーカーにいましたが、組織が大きいとどうしても個人が組織を動かすための“歯車”になってしまいがちです。苦労して勉強して資格を取得した人たちが、“歯車”としての働き方しかできない事務所になることは避けたい。そのために個人が自走して能力を発揮できるしくみを保ちながら組織を大きくしていくことが、私のミッションなのでしょうね」
言われた仕事をこなすだけの状態だと、一生懸命勉強した割にはおもしろくない仕事と思われかねないので、そうはならないようにしていきたいと山手氏は語気を強める。
「組織の中にいてもそれぞれに自由度を持って、税理士としてお客様を紹介してもらったり、依頼に応えて感謝されたりするサイクルや達成感を感じられる職場でありたいと思います」
組織運営としては、事務所内のコミュニケーションをきちんと取れるように気を配ってきているという。
「コロナ禍でここ数年はできていませんが、以前は毎年宿泊をともなう事務所旅行をしていました。忘年会もありますし、4月と10月には半年間に入社した新入社員歓迎会も全体で行っていましたね。今年は、日帰りでも事務所旅行ができないかを計画中です。
また、チーム単位で毎月1回は対面の会議を行っていますし、そのあとにはできる範囲で予算を組んで食事会などを行うようにしています。今後、さらに人数が増えても、お互いのコミュニケーションが取れる企画やイベントは実施していきたいと思います」
士業はまだまだ求められている
大手メーカーから会計業界に入った山手氏。その転身を振り返ってどのように考えているのだろうか。
「今、非常に充実していますし、税理士を選択してよかったと考えています。ご依頼にお応えして、素直に感謝されて、それが次のお客様のご紹介につながる。さらには自分のスキルアップにもつながるというサイクルを、直接感じられることがやりがいになっています。大手メーカー時代は、『自分は組織の歯車のひとつでしかないのだろうか』と思うこともありました。しかし今は自分の専門力を活かし技術とハートでお客様に接することができ、お客様からも感謝の声をいただけます。とても充実していますね」
最後に税理士を始めとする資格の取得に挑戦中の読者にアドバイスをいただいた。
「どんな士業も、お客様のご依頼があってこそ。お客様に対して、その技術とハートを持って臨めば、非常にやりがいのある、達成感を味わえる仕事になりますし、もちろんお客様が増えれば、経済的にも充実します。受験自体は大きなハードルですが、そこを越えればスタート地点に立つことができます。AIに代替されるのではと言われることもありますが、技術とハートさえ磨いていけば、士業は日本の社会でまだまだ求められている存在だと思います。ぜひ皆さんが資格を取得して活躍されることを願っています」
[『TACNEWS』日本の会計人|2022年9月号]