特集 2023年度国家総合職試験合格者にインタビュー
社会や文化を支えることで、
魅力ある国づくりに貢献したい
中央省庁の幹部候補(官僚)として、政策企画立案、法案作成、予算編成などに携わる国家総合職。国家をデザインするダイナミックな仕事を行うのが特徴です。今回は、2023年度国家総合職試験に合格したTAC・Wセミナーの内定者3名に、官僚をめざしたきっかけやTAC・Wセミナーの活用方法、これから実現したいことなどをお聞きしました。
※WセミナーはTACのブランドです。
左から
■吉田 統磨(よしだ とうま)さん
秋田県出身
早稲田大学法学部(在学中合格)
受講コース:1.5年政治・国際本科生(教室+Web講座・早稲田校)
受験区分:政治・国際
内定先:外務省
■髙田 萌奈(たかた もえな)さん
岡山県出身
東京外国語大学言語文化学部(在学中合格)
受講コース:1.5年法律本科生(教室+Web講座・新宿校)
受験区分:教養
内定先:農林水産省
■北 圭佑(きた けいすけ)さん
広島県出身
横浜国立大学経済学部(在学中合格)
受講コース:経済本科生(ビデオブース講座・横浜校)
受験区分:経済
内定先:デジタル庁
大切な人たちや故郷を守り、支える仕事がしたい
──国家総合職への内定、おめでとうございます。皆さんが国家総合職をめざしたきっかけを教えてください。
吉田 最初のきっかけは、中学時代に『アテルイ』という舞台に取り組んだことです。私は秋田県鹿角市という岩手県に隣接している街で育ちました。アテルイとは平安初期に岩手を本拠としていた蝦夷の族長の名前です。自分の家族や国を守るため、朝廷と果敢に戦ったアテルイを演じたことで、「自分の命をかけて大切な家族や生まれ育った故郷を守ってくれた人たちがいたからこそ、今の自分たちがいる」と気づくことができました。さらに大学浪人時代に、太平洋戦争や特攻隊をテーマにした小説『永遠の0(ゼロ)』を読んで、平和や安全が守られることの重要性を痛感。外交官となって、国と国との関係を取り持ちながら日本を支え、次の時代へとつなげていきたいと思い、国家総合職をめざしました。
髙田 母が英語教室の講師、父が遺跡発掘調査の専門職と、両親ともに自分の興味を仕事にしていたため、私も自分が最も関心のある「食」の分野で社会の役に立ちたいと考えるようになりました。生まれ育った岡山県は山と海に恵まれていて、「ママカリの酢漬け」や「ばら寿司」など郷土料理も豊富。幼少期からいろいろな食べ物を楽しんでいく中で、次第に海外の食文化、特に地域色豊かなイタリアの食文化にも強く惹かれるようになりました。国家総合職に挑戦しようと思ったきっかけは、「食」に対する思い入れから農林水産省の説明会に参加したことです。人口減少や地方の過疎化をはじめとする課題と向き合いながら、暮らしの中で「豊かさ」を実感できる手段でもある「食環境」を維持したいという強い気持ちがめばえました。
北 中学生の頃から人のためになることに率先して取り組む性格で、漠然と「多くの人の役に立つ仕事がしたい」と感じていました。高校以降は、地元の過疎化や失われつつある地域間のつながりを心配していたため地方創生に関心を抱き、財力面から地域の活性化ができる地方銀行で働こうと考え、大学は経済学部に進学しました。実際に国家公務員に興味を持ったのは大学1年生のときです。広島の祖父と話をした際、実は祖父が元地方公務員で、町の助役を務めた経験があると聞きました。そんな祖父から「あなたは思いやりの心が強い。きっと国家公務員に向いているから挑戦してみなさい」と強くすすめられ、説明会などに参加するようになりました。そこで自身が抱いていた人の役に立ちたいという思いと、初めてお会いする官僚の方々の公共に積極的に貢献しようとする熱意が重なり、自分も国家公務員という仕事を通じて地方も含め万人の役に立ちたいと思い、志望しました。
一つひとつの選考プロセスに徹底的に寄り添ってくれるTAC・Wセミナー
──国家総合職をめざすにあたって、なぜ独学ではなくTAC・Wセミナーを選んだのでしょうか。
髙田 実績の高さと情報量の多さからです。他校と比較して、国家総合職試験に関する情報やノウハウの量はTAC・Wセミナーが圧倒的だと感じ、迷わず申し込みました。受験勉強を始めたのは大学3年次の冬、2021年末頃からです。本当は年明けから派遣留学でイタリアの大学に行くことが決まっていたのですが、コロナ禍の影響が大きく、2021年夏に派遣留学を辞退することを決めました。年末頃から自分の就職について真剣に考え始めるようになり、派遣留学に行っているはずの時間を国家総合職の勉強に使おうと心を決めました。
吉田 私は大学2年次の2022年2月頃から勉強を始めました。TAC・Wセミナーを選んだ理由は、外務省に入省したゼミやサークルの先輩が多く通っており、テキストや問題演習のアドバイスをもらいやすかったからです。また校舎の窓口の方も親切で、受講相談に行った際も「この前、吉田さんの先輩が遊びに来ましたよ。勉強がんばってねと言っていました」など気さくに声をかけてくださり、安心して通うことができました。
北 私も吉田さんとほぼ同じ、大学2年次の3月から受験勉強を始めました。国家総合職試験は大学受験などと比較して情報収集が難しいため、独学ではなく受験指導校を利用すると決めていました。TAC・Wセミナーを選んだのは、初めて勉強する人でも自信を持って官庁訪問まで乗り切れるようなサポート体制が整っているからです。私も髙田さんと同様、他校にも相談してみましたが、カリキュラムはもちろん、受講生と講師の距離の近さ、内定した先輩への相談のしやすさ、窓口や電話対応の丁寧さなど、すべての面でTAC・Wセミナーがベストだと感じました。一つひとつの選考プロセスに徹底的に寄り添ってくれる場所だと思います。
──皆さんが受験区分を選んだ際のポイントを教えてください。
北 経済学部に所属していたので、経済区分を選択しました。政治国際区分とも悩んだのですが、数学が得意な一方で暗記は苦手だったこともあり、経済区分のほうが自分の持っている力を発揮できると考えました。秋に実施される教養区分は、夏に留学予定があったため受験しませんでした。
髙田 教養区分の存在を知った段階で、当区分の受験を決めました。当時はイタリアへの派遣留学を辞退したあとでしたが、学生のうちに海外渡航をしたいという気持ちも強くありました。そのため秋に試験があり、約半年ほどの期間を置いてから官庁訪問に参加できる教養区分は私にとってありがたいスケジュールだと思いました。私の場合は、大学4年次の秋に教養区分の試験を受けたあと、大学を1年休学し、2023年1月にイタリアへ渡りました。1ヵ月間ローマに滞在して卒業論文の情報や資料を集め、2週間北イタリアの農家で農泊を行い、地域性に溢れた食文化を体験してきました。他にも、教養区分は専門試験が課されず人物重視であること、民間企業の就職活動も併願して行えることなど、魅力の多い区分だと思います。
吉田 当初は秋の教養区分と春の試験の両方に備えるつもりでいました。ところが実際に勉強を始めてみると、教養区分試験までの期間にやりたいことが多くあり、自分にとって両立は現実的ではないことがわかりました。そこで、大学2年次の冬に両方の試験で共通している数的処理のみ勉強し、大学3年の秋までは受験勉強を中断。大学のゼミや国際法研究のサークル活動、省庁や企業でのインターンなど、その時期しかできないことに打ち込みました。それらが一段落した2022年10月初旬からは勉強に集中し、大学4年次に春試験を受けました。区分は政治・国際です。政治学や国際関係、国際法など自分にとって興味・関心がある科目ばかりなので、勉強していて楽しく、選んでよかったと思います。
──受験勉強を進める上で、どのようにモチベーションを維持しましたか。
北 気になる省庁の説明会には定期的に参加し、自分がその省庁で働いている様子を想像しながら、どのように貢献できるかを考えていました。また職員の方はもちろんのこと、参加している学生の方々と会話する中で、雰囲気は合いそうか、熱量に差はあるかなどを分析して自身の理想像を描くことでモチベーションを高めました。加えて、ほぼ毎日身体を動かして、常にポジティブなマインドでいられるように心がけていました。ランニングしたりジムでトレーニングしたりしていたのですが、運動している間にも頭の中で自己分析をすることで、自身の迷いや不安を整理することができたと思います。
吉田 気分に左右されない“精神的な軸”を持って受験勉強に臨んでいました。大学浪人時代から感じていたのですが、受験に集中できるのは、世の中が平和であり、いろいろな面で自分が恵まれているからなんですよね。自分の力だけではなく、故郷の家族や恩師の支えがあってできていることなので、いつも「恩返しする」という気持ちを忘れないようにしていました。そうすると「勉強したくない」という弱い自分が出てきても、自然と大切な人たちの顔が浮かんで机に向かうことができます。
髙田 TAC・Wセミナーでは試験ごとに細かいボーダーラインが設定されているので、本番で何点取れればいいかが一目瞭然です。それを参考に、各試験の目標点数を数値化し、ゴールに向かって学習を進めることがモチベーションになっていました。また、受講生仲間や同じ大学の友人と切磋琢磨しながら勉強できたのもよかったです。友人とは教養区分の企画提案試験対策でプレゼンテーションシートを添削し合ったり、欠けている視点を補い合ったりしていました。官庁訪問前は、日本経済新聞一面の気になる記事を毎日1つピックアップし、1週間に一度、最も気になった記事について議論する「1日1記事」の時間も取っていました。
──受験期間中に心がけていたことや、おすすめの勉強法、書籍等はありますか。
北 心と体の健康を大事にしたかったので、 友人と温泉に行ったり日常的に運動したりと、勉強以外のことも躊躇せずにやっていました。おすすめの書籍は、厚生労働省の事務次官をされていた村木厚子さんの著書『公務員という仕事』(筑摩書房)です。国土交通省内定者のゼミの先輩から教えてもらったのですが、「公務員ってそもそも何をするべきなんだろう」という疑問に答えてくれる本です。国家公務員と地方公務員の違いについても実情を含めわかりやすく書かれていて、どちらの視点も重要だと感じましたし、その上で自分は、分野横断的な仕事ができ、より多くの人と関わる調整役を担う国家公務員になりたいと改めて気づきました。
髙田 常に新しい学びを定着させることを心掛けました。特に、準備期間が比較的短い2次試験の対策では、新たな気づきや重要だと感じたポイントを毎日メモしておくことで、限られた時間の中で可能な限りの成長を達成することをめざしていました。
吉田 日々の学びをリンクさせるようにしていました。私は国際法を軸に勉強しているので、国際法ゼミで扱ったトピックを国家総合職の論述試験対策でも使ってみたり、外務省が発行している外交専門誌『外交』で取り上げられていたテーマをゼミでの話題にしてみたり、論述対策で使ったり…。そうすると、学んだことと実務の現場との関連性なども見えてきて、ますます勉強が楽しくなりました。
官庁訪問では自分の考えを素直に、「想い」をのせる
──官庁訪問攻略のポイントは何だと思いますか。
髙田 自分の考えを素直に表現することだと思います。私は官庁訪問に向けて、過去の原体験を思い出しながら、自分自身の内なる思いを言語化するという準備をしていました。その結果、自己理解がさらに深まり、実際の官庁訪問では自分でも納得できる、一貫性のある志望動機を述べることができたように思います。また原課面接(担当職員との面接)では、これまでの自分の経験を踏まえた質問や意見、その場で浮かんだ疑問などを率直に職員の方々にお伝えすることを心がけていました。自分自身の関心に沿ったお話や政策分野に関するタイムリーな話題をたくさんうかがうことができ、密度の濃い時間を過ごすことができました。
北 日常生活で違和感を抱いたことを原体験として覚えておき、「どう変えたいのか」という目的や「そのために自分はどう行動するか」という手段をセットで人に伝えられるように意識していたのがよかったと思います。例えば「自治体の財政研究をする際に、自治体ごとのホームページの質に大きな差があると感じた(原体験)。訪問者が必要としている情報をより簡単に収集できるようにするため(目的)、自治体が必要に応じて選択できるホームページや標準化された基幹システムの提供をしたい(手段)」と伝えました。積極的に説明会に参加したり、ニュースを見たりして、自分の考えをまとめておいたのも役立ったと感じます。
吉田 自分の言葉に「想い」をのせることが重要だと思います。実は夏の外務省インターンに参加したとき、事務作業の量に驚き、職員の方についネガティブな言葉を漏らしてしまったことがありました。それが伝わっていたのかどうかはわかりませんが、官庁訪問の担当の方には「入省したら雑務が多いですが、本当に大丈夫ですか?」と何度も質問されました。それに対して私は「過去に初心者からテニスや国際法弁論を始めたときのように、憧れの先輩たちの姿を間近で見ながら、『自分もいつかあんな風に活躍したい』と前向きな気持ちで下積み期間を過ごすつもりです」と、スポーツでも国際法弁論でも憧れを追い求めながら乗り越えてきた実体験をもとに答え、納得していただくことができました。官庁訪問では等身大の自分であり続けることがポイントだと感じます。
──民間企業での就職活動や、他の公務員試験との併願はしましたか。
北 一切しませんでした。理由は大きく2つあって、1つは民間企業で利益を追求するよりも、国家総合職として国民のために尽くすことに強い憧れとやりがいを感じたから。もう1つは、国民だけでなく公務員に対しても、公務員としての誇りを持ってより働きやすい環境を作りたいと思ったからです。この2つは国家公務員、かつ総合職でなければ実現できないことなので、他の公務員試験との併願もしませんでした。
髙田 民間企業のインターンシップや説明会には10~20社ほど参加しましたが、本選考では志望度の高い民間企業に絞って応募し、内々定をいただきました。他の公務員試験は受けていません。
吉田 趣味でブログやYouTube上での学習コンテンツ作りに取り組んでいた関係で、Web広告系の民間企業で1年間の学生インターンを経験し、別のWeb広告系企業から1社内定をいただきました。
──国家総合職試験を受けるにあたり、経験しておいてよかったと思うことがあれば教えてください。
北 ゼミで箱根町の役場の方と交流したことです。決算書や都市計画書を拝見して疑問をぶつけ、財政面に関して議論をしました。地方自治体がどのようなプロセスを踏んで政策を実行するのか、政策にかかる費用の内訳など具体的に知ることができました。仕事量に対して公務員の数が少ない自治体があるという問題も目の当たりにし、複数の地方自治体間で業務のノウハウや情報を簡単かつ安全に共有できるような業務システムの開発が必要だと気づくことができました。
髙田 部活動をはじめとする大人数での活動経験です。人物面接や官庁訪問では、自分の人柄を示すための具体的なエピソードとして、幹部をしていたスペイン舞踊部での経験を話しました。コロナ禍で練習や発表の場が制限されて部全体のモチベーションが落ちてしまったときに、幹部としてどう動き、どのような役割を果たしたかを説明することで、集団の中で私がどう貢献できるかを伝えられたと思います。
吉田 国際法模擬裁判に力を入れた結果、日本大会で優勝し、国内最優秀弁論者賞も獲得できたことは貴重な経験でした。また、国際法ゼミでのJAXA訪問や現役外交官へのプレゼンテーションも、学生の立場でありながら専門分野の方と踏み込んだお話をすることができ、得るものが多かったです。
試験前も合格後も頼りになった内定者アドバイザーの存在
──TAC・Wセミナーを選んでよかった点はありますか。
北 官庁訪問のサポートが手厚かった点です。『官庁訪問体験記』というテキストのおかげで省庁ごとの特色をつかむことができましたし、デジタル庁の志望者と自主ゼミでつながり、横の交流を築けたことでモチベーションを保ったり考えを整理したりすることができました。
髙田 試験に関する有益な情報が豊富に蓄積されている点と、内定者アドバイザーの存在です。私の場合、「そもそもなぜ国家総合職なのか」がうまく言語化できなかったのですが、アドバイザーの方3、4人とお話しする中で考えをまとめることができました。また、教養区分内定者の知り合いがいなかったため不安な気持ちがあったのですが、アドバイザーの先輩に試験の詳細や官庁訪問までの過ごし方などを聞くことができ、心強かったです。
吉田 講義内容やテキスト、講師陣が信頼できるところです。問題演習をしていてわからない点があっても、板書に戻ると必ず答えが書いてあるので安心感がありました。難しい話も多いのですが、講師の話を聞き洩らさなければ得点できるカリキュラム設計になっているのがよかったです。
──講師とのやりとりで印象に残ったエピソードがあれば教えてください。
北 模擬面接の担当講師から「なぜ国家総合職を志望しているのか」と聞かれたことです。理由が漠然としていることすら自覚していなかったので、志望動機が曖昧だという指摘を受けたことで改めて自分の思いを客観視できました。一度立ち止まって「なぜ国家一般職や地方公務員ではなく国家総合職を志望しているのか」をじっくり考え直すきっかけになり、官庁訪問の軸にもなりました。
髙田 最終合格から官庁訪問までの期間、自分の行っている対策を改めて見直す機会として、担任カウンセリング制度を何回も利用しました。漠然とした悩みから具体的な対策まで何でも講師に相談していた中で特に印象に残っているのは、第一志望以外の省庁の官庁訪問対策です。その省庁が現在どんな政策に特に力を入れているのか、それぞれの省庁でどんな対策方法をとるべきかなど、自分に合った詳しいアドバイスをもらえたので、安心して志望度の高い農林水産省に注力できました。
吉田 普段はオンラインで講義を受けていたので、政治学や行政学でお世話になった山本講師に、報告会で直接感謝の気持ちを伝えられたことがうれしかったです。講義中、試験に出る箇所以外のお話もしてくださるのですが、論述試験の際は自分の言葉だけでは足りない部分を、山本講師が話してくれた知識や言い回しを使わせていただくことで補完することができました。
(上から左回りに)
吉田さんはTACの教材以外にも、外務省が発行している専門誌なども読んでいたそう。
髙田さんのノートと食文化に関する本、ポストカード。「好き」や「興味」を仕事にしたいと考えていた。
北さんが「なぜ国家総合職なのか」と振り返るきっかけとなった書籍。家族からの手紙やお守りも。
利便性が高く、誇りを持って暮らせる社会を作りたい
──入省後、実現したい夢や目標を教えてください。
北 先ほども少し触れたのですが、デジタル化によって、国民の方はもちろん、生活の基盤を作る公務員の方にとっても働きやすく誇りを持って暮らせるような社会を作りたいです。国民の方にとっては、現在、医療や教育の分野で手続きが煩雑な部分が多いという課題があると感じています。情報の受発信が難しいのも問題です。デジタル化が実現すれば行政と国民の距離が縮まり、国民からの情報も行政が受け取りやすくなるので、それに基づいた精度の高い行政サービスを提供できる環境を作りたいです。また公務員の方に対しては、日常的な業務をAIやテレワークなどの導入で改善し、本来やるべき政策に十分な時間を割ける環境を整えたいです。デジタル庁の特徴である服装の自由やフレキシブルな働き方なども各省庁に広げていき、公務員の魅力をさらに上げることができたらいいですね。
髙田 日本の「様々な食」を守るためには、日本各地の生産基盤の維持が不可欠であると身をもって感じています。生産基盤をより強固にすることで、「様々な食」を将来世代に引き継ぎたいです。具体的には、地域資源である「農・食」を活用した他産業との連携や、輸出による販路の拡大をはじめとする政策に携われたらと考えています。地方に住む人が減少傾向にあり、人口減少により日本全体の消費量が縮小する現状の中で、地域そのものの魅力や地域性のある食に対する需要をさらに高めたいと思います。
吉田 開発協力であっても、国連外交であっても、国同士の一対一の経済外交であっても、あらゆるジャンルで活躍することで日本を支え、守っていきたいと思います。日本国民の方が誇りを持ち、生まれてよかったと思えるような国づくりを実現したいです。
──これから身につけたいスキルはありますか。
北 民間企業出身のエンジニアの方と対話しながら一緒に仕事をしていくことになるので、正確で実行性のあるデジタル化戦略を打っていくためにも、プログラミングの知識をつけたいと思います。また、語学力も磨きたいです。デンマークを中心に欧州諸国は電子政府としてデジタル化が普及しているため、彼らが発信している情報は日本の行政デジタル化にも役立つはずです。欧州圏の言語を学び、リアルタイムで有益な情報を収集し日本に還元したいです。
髙田 適切な表現を用いて、正確な文章を書く力を身につけたいです。入省後は、国民の方々に省の施策や見解をお伝えする機会があると思います。その際は、いろいろな環境や立場、考えの方々がいることを忘れず、言葉を大切に選んでいきたいです。また、実用的な英語力を高めたいとも考えています。農林水産省の幅広い政策の中には国際的なものもあるため、公的な場で通用する英語を身につけたいです。
吉田 私も髙田さんと同様に、英語力を磨きたいです。外交官の強みは、武力でも経済力でもなく「言葉で相手を動かす」ところだと思います。私は国際法弁論を通じて日本語で相手を説得する練習を積んできたので、英語でも同じことができるように勉強を続けていくつもりです。交渉の場では言葉の使い方ひとつで利益や不利益が左右される可能性もあるので、一言一句に神経を張り巡らせていく必要があると感じています。
──最後に、国家総合職をめざす方にメッセージをお願いします。
北 国家総合職をめざす過程で一番魅力的なところは、現役職員の方とお話しする機会がふんだんにあるところです。説明会や面談などでは現場の声や自分自身の知らなかった面を知ることができ、とても価値のある経験でした。現役の国家公務員の方たちと面と向かって自分の考えを話せる時間は貴重なので、ぜひ大事にしてもらいたいですし、その経験は皆さんの就職活動のみならず人生の糧にもなるはずです。たくさんの学びを活かし、晴れて国家総合職になれることを祈っています。
髙田 内々定までの道のりは長いように感じていましたが、振り返ってみると、自分自身と向き合い、国の役割などを深く考えることができた、有意義な時間だったと思います。ぜひ皆さんにもこの実りのある経験を味わってもらいたいです。
吉田 国家総合職を志望できる環境にいるというのは、とても恵まれたことだと思います。せっかくチャンスを与えられているのだから、自身が選んだ道として責任を持って応えてほしいです。官僚になって成し遂げたい将来像がある方を、心から応援しています。
──皆さんのご活躍をお祈りしております。本日はありがとうございました。
[『TACNEWS』 2024年2月号|特集]