特集 2021年度外務省専門職員採用試験合格者にインタビュー

 

言語を武器に世界各地で
対日関係の維持と改善に尽くしたい

外交の最前線で活躍する地域・言語のスペシャリスト、外務省専門職員。世界各地の赴任地で、世界情勢に敏感に対応して日本の外交を支える、重要な責務を負う仕事です。今回は、2021年度外務省専門職員採用試験に合格したTAC・Wセミナーの合格者3名に、挑戦のきっかけや勉強法、入省後の目標などについて語っていただきました。

※WセミナーはTACのブランドです。

左から

■鳥井 渉(とりい わたる)さん
神奈川県出身
一橋大学国際・公共政策大学院(在学中合格)
受講コース:答練セレクト憲法本科生/ 教室講座(渋谷)
受験語:英語
外務省での研修語:中国語

■小林 菜月(こばやし なつき)さん
群馬県出身
東京外国語大学言語文化学部(在学中合格)
受講コース:セレクト憲法本科生(英語対策カットType)/ 教室講座(渋谷)
受験語:ロシア語
外務省での研修語:ロシア語

■仁平 知希(にへい ともき)さ ん
神奈川県出身
法政大学グローバル教養学部(既卒合格)
受講コース:総合本科生プレミアム/ Web通信講座
受験語:スペイン語
外務省での研修語:スペイン語

激動の時代で日本のために グローバルな仕事ができる外交官

──この度は外務省専門職員採用試験の突破、おめでとうございます。皆さんが外交官をめざした理由や、外交官という職業に感じる魅力を教えてください。

小林 計3回のロシア留学で、日本と海外の壁を感じたことがきっかけです。ロシア人の友人から「ロシアは日本から一番近い国なのに、心理的には距離がある」と言われ、人的・文化的な交流が充分に行われていない現状を目の当たりにしました。当初は両国間で進まない相互理解の解決の糸口を「報道」を通じて提供できればと、新聞記者をめざして民間企業への就職活動を行っていました。ただその中で「問題提起をするだけでなく、その問題を解決するところまで関わりたい」という思いがはっきりしたことで浮かび上がってきた職業が、外務省専門職員です。二国間の関係を様々な分野から直接アプローチして維持し、改善へ導くことができるのは、外交官ならではの魅力です。

鳥井 私が留学したエストニアは、現在も隣国との緊張関係が続いているのですが、そこで日本で当たり前のように享受してきた平和が永続的なものではないと実感しました。だからこそ、この「当たり前」を守り続けていきたいと考え、外交官を志しました。進路選択にあたっては、子どもの頃から「職人のように、専門分野を極める仕事がしたい」という希望を持っていたことに加え、外務省の説明会で職員から「外交官は日々勉強、常に学び続ける仕事」と聞いたことで、「これしかない!」と背中を押された気持ちになりました。

仁平 もともと語学学習が好きで、大学で国際関係について勉強したこともあり、将来は国際社会で活躍したいと思っていました。大学に入学した頃、衝撃的なトランプ政権の誕生やブレグジット(英国の欧州連合からの離脱)国民投票など、世界的に保護主義が広まるのを実感し、国際情勢を自分のこととして捉えるようになりました。この不安定な国際情勢で求められる日本と諸外国との関係の在り方に貢献したいと考え、国際会議の実施や条約締結など国際情勢に影響を与える決定をする場面に立ち会い、それらを裏で支える外交官をめざすことにしました。

合格への最短ルートを進める、 上質なカリキュラムとサポート体制

──いつ頃から試験対策を始めましたか。また、TAC・Wセミナーを選んだ理由を教えてください。

仁平 大学4年の春にメキシコ留学から帰国し、2020年5月から受験勉強を開始しました。それまで受験指導校に通うという経験がなかった私にとって、圧倒的な情報量で受験勉強をマネジメントしてくれる点は、とても大きな魅力でした。「今、何をどれだけ勉強すればいいか」などを自分で手探りすることなく、合格への最短ルートを歩むことに集中できました。それまでにやってきたような、ただがむしゃらに参考書を読むという勉強方法では、きっと通用しなかっただろうと思います。

小林 勉強を開始したのは大学3年の10月です。大学2年の2020年3月にロシア留学から帰国し、6月までオンライン留学を続け、民間企業への就職活動を始めていました。それに加えて大学の授業もあったので、効率的な勉強が必須でした。TAC・Wセミナーに通えば試験の傾向研究や対策を自分で行う手間が省けますし、本試験を意識した頻出分野に重点を置いた講義を受けられます。今まで触れたことのない国際法や憲法も、初学者が勉強すべき順序や方法を提示してくれるので安心です。そして外務省専門職の合格者の約9割がTAC・Wセミナー出身で、私の通う大学で合格された先輩方もほぼTAC・Wセミナー生だと知り、外務省専門職員をめざすならここしかないと決めました。

鳥井 外務省専門職員採用試験に合格した先輩から勧められたのが、TAC・Wセミナーでした。2019年に一度入会して受験しましたが合格することができず、2020年12月から、2度目の受験のためにアウトプット中心の答練セレクト憲法本科生を受講し始めました。受験にあたり、特に国際法の科目を体系的に学べる受験指導校は少ないので、基礎から始めて本番でしっかり合格レベルの答案を書けるようになるまで実力を引き上げてくれるクオリティのカリキュラムは、TAC・Wセミナーならではの良さだと感じています。

専門試験の科目選択や併願状況は 適性と学習のしやすさがポイント

── 一次試験の専門試験(記述式)では、必須科目の国際法に加えてもう1科目、憲法と経済学から1種類選択が必要です。皆さんはどのようなポイントで選択科目を選びましたか。

仁平 もともと数字やグラフを扱うのが苦手で、憲法と経済学で基本マスター講義視聴後の復習時間に倍の差が出たことが決め手となり、憲法を選びました。憲法担当の早川講師が明るくエネルギッシュな方だったので、「自分もがんばろう」と思えたことも大きいですね。当初はおもしろみを感じなかったものの、これまで当然に感じていた私たち国民の権利は、憲法のおかげで成り立っているのだといった気づきもあり、意欲的に取り組むことができました。

鳥井 私は受験を2回していますが、いずれも法学部で学習経験のあった憲法を選択しました。初学ではないとはいえ、試験範囲が広く、暗記すべき内容も多くて、解法の見つけ方に苦労しました。1回目の受験では、憲法の試験内容が本当に難しく、怖ささえ感じたのですが、続く2年目も継続して勉強に力を入れたことで、成績を伸ばすことができました。大変ですが、努力が反映されやすい科目だと思います。

小林 私は勉強を開始した時期が遅かったので、最初から選択科目を絞って勉強を始めるつもりでした。計算が苦手な一方、暗記は嫌いではなかったこと、高校の授業で触れたこともあったことから憲法を選択しました。ただ、法律の基礎知識がないところからのスタートだったので、最初は苦労しましたね。憲法はいかに条文を正確に覚えて答案に書き写せるかがポイントなので、暗記が得意な人にはおすすめだと思います。また憲法を学ぶと、ニュースで見かける社会問題と法律が関連していることに気づきます。勉強中にちょうど「選択的夫婦別姓は違憲か合憲か?」といったトピックが話題になっていたので、身近なニュースと照らし合わせて勉強もしました。社会問題に関心の高い人にも憲法は向いているのではないでしょうか。

──民間企業や他の試験種との併願状況について教えてください。

仁平 横浜市、防衛省専門職、国際交流基金、国立大学法人の4つを受け、横浜市から最終合格をいただきました。私はあくまで外務省専門職員が第一志望でしたので、併願先を選ぶ基準は、それぞれの職務に興味があったこと、外務省専門職の勉強をする中で他に特別な対策を必要としないことの2点でした。外務省専門職一次試験の2週間前に国際交流基金の面接試験の不合格通知を受けたこと、1週間前に防衛省専門職の一次試験で手ごたえを感じられなかったことで、「あとは外務省専門職しかない!」と背水の陣で挑むことができました。

小林 防衛省専門職と新聞社を受け、両方合格しました。防衛省専門職は外務省専門職の勉強が活かせますし、興味を抱いている防衛分野でロシア語を使った仕事ができる点に魅力を感じました。外務省専門職員採用試験のために勉強した国際法や憲法は時事問題に関連することも多く、新聞社の試験対策としても役に立ちました。ただ最終的に、自分の関心や特性を最も活かせるのは外務省専門職員だと思い、心を決めました。

鳥井 安全保障外交に関心を持っていたため、政策が重なり、語学力が活かせる防衛省専門職を受験し、最終合格をいただきました。ただ、平和を保つという目的は同じでも、防衛省は軍事力で平和を維持するのに対し、外務省は外交交渉を通じて平和を維持するという違いがあります。悩んだ末に、国際法・軍縮など外務省でしか携われない仕事があると考え、外務省専門職員を選びました。

コロナ禍でも計画的にペースを保ち地道な勉強を継続

──どのように勉強を進めていったか、心掛けた点や工夫した点があれば教えてください。

仁平 苦手科目の数的処理や国際法から逃げないことを意識していました。大学受験のとき、苦手だった数学から逃げたばかりに志望校へ入れなかったという苦い経験から、同じ後悔はしないと決意したのです。数的処理は解法を覚えるだけでなく、基礎を理解する必要があります。まずは中学受験レベルの参考書やドリルから始めて基礎から学び、過去の本試験問題10年分を繰り返し解きました。反復によって解ける問題と解けない問題がはっきりするので、本番での時間配分や取捨選択にも役立ちました。
 国際法は『基本マスター国際法』のテキストをバイブルに、井能講師を信じて学習し続けた結果、5月の最後の公開模試では手ごたえを感じ、得意科目のひとつに昇華させることができました。よくやった勉強法は「音読」です。受験勉強はインプットに偏りがちなので、講師になったつもりで講義内容を口述してみるなどして強制的にアウトプットの機会を作っていました。理解できないところは言葉が出てこないので、理解度の客観的な指標にもなります。

鳥井 私も苦手科目を作らないことを意識し、TAC・Wセミナーの『基本マスター』『論文マスター』の両テキストをひたすら繰り返しました。合格に必要な内容が集約されているので、この2つをきっちり完成させれば、国際法はマスターできると思います。またオプション講座の「論文対策ゼミ」は、多角的に物事を観察して理解する訓練になり、本番で初見の問題が出たときの対応力強化にもつながります。英語や時事論文などについては、独学では正解をつかみにくい分野です。合格者アドバイザー制度を利用してチェックしてもらうことで、外務省が志望者にどのようなことを求めているのかという視点に気づくことができてとても有意義でした。

小林 学習範囲が膨大なので、計画を立てて自分の勉強ペースを保つことを心がけました。1ヵ月単位で学習計画を立て、逆算して今週、そして今日すべき勉強内容まで落とし込みます。とはいえ予定通りに進まないときや答練(答案練習)で思うような成績を取れないときなど、計画に不安を感じてしまう時期もありました。そこで担任カウンセリング制度を利用して井能講師に相談し、「今はここを勉強すべき」という具体的な指標を示してもらっていました。自分では試験の全体像すらあやふやな中で、過去何年もの本試験を熟知した講師に学習方針を示してもらえるのは本当に心強かったですね。
 工夫していた勉強法として、私は寝る前にベッドの中でその日学んだ内容を頭の中で再現するようにしていました。人間は寝ている間に記憶が定着すると聞いたからです。また、目覚めた直後は思考がクリアなので、文章構成を考えることもありました。横になったまま手軽にできるので、おすすめの学習方法です(笑)。

──受験勉強を続ける中で、モチベーションの低下など苦労することはありませんでしたか。また、コロナ禍での学習で大変だったことや工夫したことを教えてください。

仁平 コロナ禍では自由な外出や会食ができないため勉強に集中できた一方で、気持ちがふさぐこともありました。そのようなときは、留学中にお世話になった人や、これまでの人生で応援してくれた人へ恩返しする気持ちでモチベーションを保っていました。また、担任カウンセリングや合格者カウンセリングを利用して、志望動機や勉強法を改めて確認していました。気が沈むとどうしても視野が狭くなりがちですが、合格者の話を聞いて、苦しい時期は自分だけに来るのではないと気づくことができました。また、散歩をして「何も考えない時間」を作るのも、凝り固まった頭をほぐすのに一役買ってくれました。

小林 私はもともと「家では休息、外で勉強」とメリハリをつけたく、かつ夜に勉強がはかどるタイプ。ですからコロナ禍でカフェや図書館などが閉鎖されたり稼働時間が短縮されたりして勉強場所の確保が難しくなったのには苦労しました。自宅周辺で夜でもオープンしている店や公共施設をしらみつぶしに探し、試験1ヵ月前の直前期には、朝7時から夜12時まで、有料自習室を借りて勉強しました。行き詰まったときは、留学中の写真を見返したり、ロシア語を流暢に話す非ネイティブの方の動画を観たりして意識を高めていました。また、私はルームシェアをしていたので、ルームメイトと散歩しながら勉強と関係のない話題で盛り上がるのも、いい気分転換になりました。

鳥井 コロナ禍で大学院の授業からTAC・Wセミナーの講義まですべてがWeb上で受けられるようになり、通学時間のぶんを勉強時間に充てることができた点はよかったです。ただWeb学習は自分の好きな速度で講義を視聴できるなどのメリットがある一方で、目の前で講師がチェックしてくれるわけではないので、学習の成果が身についているかどうか、アウトプットを意識して取り組む必要性を感じました。惰性で勉強してしまうとインプットに偏りがちなので、時間を決めてミニテストに取り組むなどアウトプットを重視し、教室講義と同じクオリティを保てるように心がけました。モチベーションが低下しそうなときは外務省のオンライン説明会に参加し、めざす職場で働いている方の生の声を聞いてやる気を出しました。それでも気分が乗らないときは、睡眠時間をしっかり確保し体を休めるよう心がけました。また、なかなか行けなくなってしまった海外旅行のプランを練るのも気持ちが前向きになりましたね。長期的に見てメンタルや体調をキープできるよう、気をつけていました。

客観的なアドバイスがもらえる カウンセリング制度や自主ゼミを重宝

──受講を終えて、TAC・Wセミナーならではの魅力はどのような点にあると感じましたか。

仁平 担任講師制度、合格者アドバイザー制度、面接試験対策と、どれをとっても魅力的でした。担任の井能講師は常に冷静で的確なアドバイスをくださるので、信頼して勉強に励むことができました。初回で「合格者に共通している点」について質問した際の「忍耐力、タフさ、社交性」という回答は、勉強中いつも心に留めていた言葉です。TAC・Wセミナー本科生が参加できる「外交官をめざす人のコミュニティ」というポータルサイトは合格者によるブログ記事が充実していて、モチベーションアップにも息抜きにもつながりました。また、面接試験対策で自主ゼミを組み、TAC・Wセミナー生同士で指摘し合えたことは、最後までがんばれた理由のひとつでした。井能講師の面接練習では、自分の長所の根拠をうまく答えられなかったことがあったのですが、本番前の1週間はそこを重点的に練習することで自信を持って本番に臨めました。

鳥井 私も月1回の担任講師のカウンセリングに助けられました。外務省専門職員採用試験は科目数が多く、勉強の結果が出ないと視野が狭まって、ますます手につかなくなる悪循環に陥りがちです。そんなとき、井能講師は「今、必要なこと」を具体的に教えてくれるので、「ここまではやらなければ」と意識できて再び勉強に身を入れることができました。また、勉強のペースをつかむという点では合格者アドバイザー制度もよかったです。再チャレンジ期にはどの時期に何を学ぶか、実際の合格者からアドバイスをもらうことで明確にできました。また私は特に面接に苦手意識を持っていましたが、自主ゼミで仲間に面接カードをチェックしてもらい、模擬面接をする中で手ごたえが増していきました。2年目は「この1年で成長した自分をどう見せるか」をテーマに、一緒に対策してきたTAC・Wセミナー生同士で励まし合い、最後までがんばれました。

小林 私は他のTAC・Wセミナー生と行った二次対策が最も有意義で印象に残っています。二次試験は日本語で行う個別面接のほかにも外国語面接、グループ討議など、自分ひとりでは満足に対策できないものばかりです。本番さながらの模擬面接で周囲を観察して得られるものは多く、面接官役を通して自分の弱点も発見できました。特に外国語面接ではロシア語受験者が少なく、一次試験に手ごたえを感じられなかったこともあり、もし独学だったら不安に押しつぶされてしまっていたと思います。でも、同じ志をもつ仲間たちと心配する暇もないくらい面接練習を繰り返したり、同じロシア語受験者と知り合って情報交換したりする中で、自然と二次試験へ向けて気持ちを高めることができました。

得意の語学力を活かして 日本と赴任地をつなぐ架け橋に

──4月からはいよいよ外務省に入省となりますが、どのような仕事をしていきたいですか。

仁平 中南米地域について学び、日本と中南米地域との関係強化に貢献したいです。中南米諸国は日本からの距離が遠いものの、歴史的な関わりは深く、親日の人も多いです。日本に関心を持つ中南米の人々や、中南米に興味を抱く日本人を増やして交流を促進したいです。言語については、スペイン語を母語話者レベルに高め、国際会議での通訳などに通用するところまで上達させたいです。また、キャリアを通じて常に勉強し続け自分の可能性を広げるとともに、芯の通った信頼される外交官になりたいです。中南米の人々は「人生を楽しむ」という考えが根底にあり、音楽を愛する人間らしさにあふれていますから、私もギターを練習して、同じ風土で楽しみたいですね。

小林 国際社会情勢に敏感で、担当地域の政治経済から日常生活、文化まで幅広い教養を身につけた外交官になるのが目標です。たとえば相手国との会談ひとつとっても、相手の文化を理解した上での振る舞いや言葉選びができるか否かで、その成果は大きく変わります。ロシアは旧ソ連国や東欧とも関係が深く、米国や中国との関係も重要で、様々な地域と関係の深い国だけに、広く「世界から見たロシア」という視点も忘れずにいたいです。また、海外に滞在していると、日本の宗教や文化について問われることがよくありますが、これまではうまく答えられず悔しい思いをしていました。これからは、自国についてもより深く理解し、世界へ出る日本人として、日本の魅力を多言語で説明できる能力を身につけるべく勉強していきたいです。

鳥井 研修語に決まった中国語をしっかりと身につけ、専門家として日中外交を陰から支えていきたいです。中国は長い歴史を持つ奥の深い国なので、言語の裏側にある歴史、文化、政治などまでしっかり学ぶつもりです。その上で、安定した国際秩序を維持するために、自分に任された分野で貢献していきたいです。これから中国を深く理解するとともに、見解の異なる場面ではしっかりと主張できる外交官になりたいですね。

──これまでにやっておいてよかったと思うことや、経験すべきと考えることがあれば教えてください。

小林 中学からの夢だった留学を大学時代に実現できたことで、自分とまったく違う価値観を持った人々と出会えたことです。様々なバックグラウンドを持つ人たちとの会話や異なる文化圏での生活を通して、世界各地で起こる物事を多面的に見る習慣と、本質を捉える力を身につけられたと自負しています。こうした経験や学びは、外務省専門職員をめざす上での大きな武器になりました。

鳥井 私も大学で留学制度や長期休暇を利用して、20以上の国を訪れたことが大きいですね。どんなに過酷な場所でも楽しく元気に暮らせる自信を得ました。特に留学先のエストニアで、ヨルダンやジョージア、マリ共和国などこれまで知らなかった国の人たちと親交を深め、人間関係を築いた経験は、外交官に求められる素質としても活かされると思います。もっと早いうちからやるべきだったと思うのは、英語の勉強です。かなり対策に時間がかかってしまったので、早く勉強を始めるに越したことはないと思います。

仁平 心から「がんばった、やってよかった」と思える体験と出会うことが大事だと思います。熱意をもって取り組む経験は、外務省専門職の受験にも活きてきます。そのためには常に興味のアンテナを張り、いろいろな場所を訪れてみるのがおすすめです。私の場合は、アメリカやメキシコへの留学やスペイン旅行といった国際的な経験に加え、大学でのイベント企画の委員会活動が今に大きく役立っています。イベントの魅力を伝えて関心を持ってもらう活動は外交官の仕事と重なりますし、それぞれ思いの強いメンバーと、ときに衝突し妥協点を探りながら協力する行程は外交官として働く際も経験するものであると思います。一方で、外交官をめざす上で必ずしも国際的な経験が必要とは思いません。留学経験のない合格者もいますし、外交への思いや語学への熱意を表現できれば、門戸は開かれていると感じます。

──最後に、外務省専門職員やスキルアップをめざす方々にメッセージをお願いします。

仁平 試験勉強期間は、そのまま自分の弱さに立ち向かう日々となります。予定通りに学習を進められたり結果を出せたりすることよりも、うまくいかないことのほうが多いかもしれません。そこで「つらい、苦しい」という表面的な感情に支配されず、「外交官になりたい!」という自分の「内なる声」を素直に受け止めて少しずつ理想に近づくことが大切です。内なる声に従って着実に行動できる人が、最終的に納得できる結果を得られると思います。応援しています!

小林 長期にわたる外務省専門職員への道の途中、思うように勉強が進まなかったり、公開模試の成績が目標に届かなかったりといったスランプがやってくるかもしれません。私自身、そのたびに合格への道が遠ざかるような気がして、民間企業への就職に切り替えるべきか迷いが生じたこともあります。でも、そこで立ち止まって考えたことで、勉強開始時に抱いていた外務省専門職員への思いを再認識することができました。スランプに陥っても「絶対にここからもう一度がんばる」という気持ちへ持っていけるか、それを最後まで維持できるかがカギです。初心を忘れず努力を続ければ、ゴールはどんどん近づいてくるはず。長い道のりですが一歩一歩、毎日前進していると信じて諦めないでください。陰ながら応援しています!

鳥井 外務省専門職の勉強は試行錯誤の連続だと思います。失敗を乗り越えて再び起き上がったぶんだけ、目標に近づくと思います。どんな失敗も、「マイナスのこと」としてではなく、「夢の実現のために必要な過程」と前向きに捉えることで必ずチャンスが巡ってくると思います。皆さんが後悔のない進路にたどり着かれることを祈っています。

──これから進む外交という仕事へかける熱い思いが伝わってきました。皆さんの世界各国でのご活躍をお祈りしています。

[『TACNEWS』 2022年3月号|特集]

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