読めばモチベーションUP?ビジネスや会計の気になる「あの本」を紹介 萌さんとカッキーの読書室 #8
仕事と資格マガジン『TACNEWS』から生まれた会計小説『女子大生会計士の事件簿』のメインキャラクター、公認会計士・藤原萌実(萌さん)と新人スタッフ・柿本一麻(カッキー)のふたりが、気になる本について激論を交わす…?!ゆったり、まったり、時に激しい、「楽しく、ためになる読書室」です。

『マンガでわかる管理会計 はじめてでもわかる儲けのからくり』
著者 :原尚美
出版社 :オーム社
初版 :2020年
萌さん 今回は、管理会計の話よ。
カッキー えーっ、そうですか……。
萌さん なんで露骨に嫌そうな顔をするのよ。
カッキー 嫌じゃないんですけど、もうほとんど覚えていないんですよ。会計士受験のとき、管理会計論の勉強はしましたけど、監査法人に入ってからは製造業のクライアントが少ないから触れていないんです。たまに工場の往査があっても、在庫の確認とかばかりで、原価計算までは見なかったりしますし。
萌さん まあ、管理会計の主軸とも言える原価計算って、そもそも工場で効率的に大量生産するために生まれた会計技術だからね。いまの日本の製造業の割合って、GDP比で2割を切ってるから、存在感が薄まりつつあるのは否めないわ。
カッキー ですよね。だからもう管理会計なんて、勉強しなくてもいいじゃないですか!
萌さん 甘い!甘いわよ、カッキー。製造間接費の配賦率がきれいに割りきれるぐらいに甘いわ!
カッキー 知らないですよ、そんなこと。
萌さん 管理会計は、利益を生み出すために考えられた技術よ。あらゆる経費を変動費と固定費に分けて、いくら売り上げたら儲けが出るのか?その損益の分岐点となるのはどこなのか?を知るための技術。これ自体に業種の差はないわ。
カッキー でも、サービス業とかは固定費の割合が高すぎて、変動費が少ないから、管理会計を使わないんじゃないですか?
萌さん それも最近はそうとも言えないのよ。サービス業でも、アウトソーシングが進んで変動費の割合が増える会社も出てきているし、人事評価で「その人がどれだけ利益を出したか」を尺度にするために管理会計を導入しているベンチャー企業もあるんだから。
カッキー 「どれだけ利益を出したか」って、まさに管理会計の『貢献利益※』の考え方ですね。
※貢献利益 = 売上高 - 変動費 - 直接固定費
1章 管理会計で意思決定する
2章 損益分岐点分析の基本を知る
3章 管理会計で現状を分析する
4章 管理会計でコストダウンする
5章 管理会計で新規事業を検討する
(目次より)
萌さん で、この本なんだけど、ストーリー仕立てのマンガだからわかりやすいわね。
カッキー ふむふむ。女子高生が主人公で、この子のお父さんが和菓子会社の経営者なんですね。工場でどの和菓子を作って、どの和菓子をやめるべきかで悩む……って話ですか。

萌さん まあそれだけじゃないんだけど、経営で悩んだときに使うのが管理会計だから、管理会計の概念「損益分岐点分析」「原価計算」「キャッシュフロー分析」などを駆使して判断していくわけよ。
カッキー ほうほう。そして最初の判断が、スイーツフェアに出品するために饅頭10万個を製造するかどうか。
萌さん 但しこれは、原価80円の饅頭を60円で販売する、という条件付きよ。
カッキー だったら、そんなの100%出品しないで決まりじゃないですか。判断に迷う余地がありませんよ。
萌さん ところが、管理会計の世界ではそうとも限らないの。そして、このケースでは「出品する」が正解になったのよ。

カッキー えっ、何でですか!?
萌さん 管理会計で計算したら、そのほうが利益をもたらしたのよ。具体的にどういう計算だったのかは、このマンガで確認してね。
カッキー マンガ以外の会話のところは、LINE風なんですね。
萌さん そうね、今風ね。今に合わせているという点だと、新型コロナウイルスの影響を受けて、デパートに入っている店舗を撤退するかどうか、という話題も入っているの。結局、時代時代に応じて管理会計は活躍の場がたくさんあるんだと思うわ。
[『TACNEWS』2020年12月号│連載│萌さんとカッキーの読書室]
山田真哉(やまだしんや)
公認会計士・税理士。TAC梅田校出身。中央青山監査法人(当時)を経て、現在、芸能文化税理士法人会長。株式会社ブシロード等の社外監査役。著書に『女子大生会計士の事件簿』シリーズ、『世界一やさしい会計の本です』『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』等。
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