子育てしながら税理士資格を取得!
TAC OGから学ぶ女性税理士座談会〔3/3〕
<目次>
- 合格までの道のり【1ページ】
- 4人の関係
- 税理士を目指したきっかけ
- 合格までの道のり
- 学習していく中での工夫【2ページ】
- 学習していく中での工夫
- モチベーションが下がったときの持ち直し方
- 現在の仕事内容
- 合格が先か実務が先か【3ページ】
実務を経験して、受験時代の学習が活きた経験
(司会)実際に実務に就いてみて、受験時代の学習が活きた、リンクした、あるいはちゃんとやっておけばよかったと感じた経験などはありますか?
(脇田先生)
私の場合、税理士の資格取得→それから仕事、でしたが、消費税とか、意味を分かって勉強しているつもりでも、実務について初めて「あ~こういうことか!」としっかり理解できたと感じました。
もちろん、簿記なども仕訳がわからないと仕事になりませんから、直接すぐに実務にリンクしますね。
(岡本先生)
私の場合、やっていてよかったと思うのは、法人税を体系的に勉強できたことです。消費税は範囲も広くないので、ほぼすべてが実務で経験できますが、法人税のあれだけの範囲は、実務の経験だけでは難しかったかと思います。というのは、例えば…外国税額控除、資本等取引、組織再編、グループ法人税制など、これらはある程度の規模が大きい法人でしか経験できないからです。受験生が苦手な論点ではありますが、実務でも苦手とする税理士が多い所でもあります。今、こういった取引が発生するような大きい法人も担当させてもらえるのは、TACで法人税を勉強できたおかげだと思っています。
逆に言うと、ちゃんとやっておけばよかったなというのは、科目選びです。所得税・相続税は、試験勉強をしていないので、毎回苦労しています。
(脇田先生)
私はそういう大きい会社は苦手というか、今の顧問先は中小企業ばかりです。そういう大きな法人を担当できるのは強みですよね。
(森島先生)
私は簿記・財表・所得を合格してから、まずはパート勤務での実務でしたので受験生時代の知識はすぐに活かせたと思います。もちろん法人税や消費税も合格してからのほうが自信をもって知識を使えたかもしれませんが・・・。
(定岡先生)
みなさんの話は本当に深くうなづくことばかりで…私が言いたいことは全部言ってもらえましたので、もうありません(笑)。ですので、少し私の経験談をお話すると、私は岡本さんと受験科目が近く、個人より法人のほうが得意というか、まだ自信があります。岡本さんが言うように、法人税を勉強したことで大法人の申告書でもアレルギーなく興味を持って対応できていますし、さらに知識をブラッシュアップしたい!という意欲もわいています。
個人と法人、どちらもある程度の知識は必要です。ただ、受験で身についた知識は一生ものですので、少しでも実務に役立つ科目を選んだほうが、将来的なモチベーションにもつながるし、自分の糧になると思います。確定申告時期は、所得税合格してる森島さんになりたいー!って思ってます(笑)。
合格が先か実務が先か
(司会)現在は求職者有利の売り手市場と言われていますが、採用側の本音としては、会計科目+税法1科目程度の合格または学習経験者を希望しているようです。ただし、そこまで待っていると、よい人が簿記論のみの合格や簿財合格時点で別の事務所で採用が決まってしまうため、1科目合格やこれから税理士受験を始めるという方でも採用するというように、採用のタイミングが早まっています。
「合格が先か、実務が先か」という悩みは、受験生の永遠のテーマだと思います。そこで、このテーマについて、早く実務を見ておいたほうがよいのか、あるいは、税法科目を何か学んでからのほうがよいのかなど、先生方のお考えとその理由についてお聞かせください。
(脇田先生)
難しいですね…。私自身は、勉強が先で、あとから実務でしたが、仕事の最初の頃はミスも多かったですし、たとえば、税務署と都税事務所の違いなどは、実務をして初めて知りました。ほかにも「あ~!あの勉強はこういうことだったのね」って、気づくこともありました。
税理士登録するには2年の実務経験が必要なので、いつかは仕事しなくてはいけません。家庭の事情や保育園の事情などもあるので一概に言えませんが、正社員で働きながら試験にしっかり合格するのって(子育てがあればなおさら)かなり大変ですから、今、私の考える理想は、「最初勉強だけ→1科目か2科目くらいでパート勤務→全部合格したら正社員」がよいのかなと思います。
(岡本先生)
どちらが先かは難しくて悩ましい問題ですよね。個人的には、税法の場合は、実務を先に、もしくは実務をしながらの勉強というのがよい気がします。
本試験で、答練通りの問題が必ず出るなら、勉強だけしていればよいですが、そんなことはないですよね。初見の問題でも、実務の勘で答えられるのは相当な強みだと思います。今の試験制度を考えても、1科目ずつ合格できるというのは、裏を返せば、実務をしながらの勉強が前提なのかなとも思います。あとは、自分のライフプランと照らし合わせて…というところでしょうか。
私の場合、元々ライフプランとして出産・育児を考えていたので、簿財合格→実務経験→出産・育児しながらまた勉強→実務に復帰しつつ勉強&合格で、思い描いていた順番通りにはなっています。最後の合格までが予想以上に長くなってしまったのは、実務しながらの勉強あるあるってことで(笑)。
(森島先生)
実務が先か、合格が先か、というのは受験を始める年齢や、何年で合格を目指すかという個人の事情で難しいところですが、私はある程度の年齢までは勉強(合格)を優先させたほうがよいのではないかと思います。どんな仕事をしたいのか(資産税がやりたい、大手税理士法人で働きたい等)希望があれば、仕事に繋がる勉強を先にしておいたほうが自信をもって仕事ができるのではないかと思います。特に30代から40代にかけて、結婚や出産や育児、仕事、受験の3つを同時にこなすのは本当にハードだと思いますので、求職者有利の売り手市場であれば、5科目合格まではしていなくても、もしくは勉強に専念して合格科目を増やす期間があったとしても、就職には不利にはならないのではないかと思います。それと、実務経験が長くなればなるほど仕事の責任や負担も大きくなって勉強時間が取れなくなりがちかな、と思います。
(定岡先生)
皆さんが言うように、税法は実務とリンクさせながら吸収するほうがよいのかなと思います。法人税の試験は数年前に私が受験したときは、昔より実務に直結する事例問題が多くなっていると聞いています。税理士としての適正を問う試験であれば、ただの暗記試験より考えさせる問題のほうがよいと思うので、税理士試験自体もこれから変わっていくのかなと思います。なので、実務は早い段階で、経験はしていたほうがよいのかなと思います。
ただ、私の場合、育児と勉強と正社員は時間的にきついと思ったので、試験に合格するまではパート勤務でした。パート勤務だと入力業務しかさせてもらえない事務所も多いですが、お客様担当もさせてくれる事務所にいたことで色々と学べました。
自分がこの仕事に向いてるのかどうか、見極めるためにも、とりあえず1科目でも合格したら実務にチャレンジしてみる、という流れがよいと思います。いろんな税理士事務所がありますし、いろんなお客様がいます。これは理想ですが、同僚やお客様にも試験勉強を応援していただけるようになれば、さらにやる気に繋がるんじゃないかと思います!
最後に
(脇田先生)
今、税理士として働いてみて、税理士になって本当によかったと思いますし、子供たちも「ママは主婦だったんだよね?税理士になって本当に良かったね」って言ってくれます。だから、現在勉強を続けている方には、大変だけど、頑張って税理士になってほしいと心から思います。
今回の座談会も、少しでも受験生のみなさんのお役に立てれば嬉しく思います。
(司会)先生方、本日は貴重なお話、ありがとうございました。