タックスファンタスティック Tax Fantastic!!第32回テーマ ウィズコロナの現実、税理士は何ができる?

監 子 税太君、Web会議で話すのもなんだけど、大事な報告があります!


税 太 大事ってことは仕事ではないですね(笑)。前月号でダメ男に貢いで反省していたところだったのに、やっぱりまた歴史を繰り返してしまったというわけですか?


監 子 毎度察しがいい税太君もとうとう焼きが回ったわね。その反対で、今度はダメ男ではなくて仕事をバリバリしているし稼ぎもいい人なのよ。マッチングアプリで知り合って、今度オンラインデートをすることになったの!


襟 糸 「愛、それは女性のすべてだ」byヴァージニア・ウルフ。


監 子 毎度おなじみの襟糸先輩による文豪の名言を使っての乱入、今回は冷静に受け止められるわ。あれから心を入れ替えて私も変わったからね。で、その引用は祝福してるの?軽蔑しているの?恋愛中毒な女性への差別的発言だったら許さない!


襟 糸 全然冷静ではないし、むしろ攻撃されている気がするぞ。もちろん祝福なので安心したまえ。20世紀を代表する女性小説家で、フェミニズムの先駆者的存在でもあるウルフの言葉を引用したのだから、差別のつもりはまったくない。ただ、赤ずきんちゃん、夢だけでなく現実を考えるのもお忘れなく。


監 子 は?なぜに赤ずきんちゃん?襟糸先輩だって現実を見ずに女性の気持ちをわかろうとしないからいつまでも独身なのでは?


税 太 まあまあおふたりとも。これじゃあよく漫画に出てくる「惹かれ合う前の険悪な男女」って感じですよ。読者に誤解を与えちゃだめですって。


襟 糸 ところで税太君、早速その「現実」に話を戻したいのだが、コロナ禍でできる税理士の仕事って何だい?


税 太 第一波が猛威をふるっていた第22〜24回でもその話題になりましたね。給付金や補助金の要件確認・手続き、資金繰り対策、Web面談による相談…。


襟 糸 確かにそうだ。では過酷な現実で何ができるか?という質問に変えよう。パンデミックだけでなく、戦争や震災が起きたとき、世界史的観点で考えると?


税 太 そういえば、18世紀フランスの哲学者・文学者ヴォルテールが『カンディ―ド』という小説の締めくくりで書いていましたね。主人公が欧州内の悲惨な戦争やリスボン大震災での人間や自然の残酷さを散々見てきたあとの場面に、すべては善であるという楽天主義を捨て、「私たちの庭を耕さなくてはいけない」って。


監 子 まずは目の前にある現実的なできる仕事を着実にやらないと、ってことね。耳が痛いかも。会計士はどちらかというと大企業を相手にしているからか、こういった時代ではDXとか非現実的な理想を語りがちかも。でも税理士はそれこそ「小さなことからコツコツと」、一生懸命顧客のために自分たちができることをやっている気がする。「それが一番大事」だものね。


襟 糸 Great!監子君による懐かしい引用はさておき、そう、僕が言いたかったことはまさにそうだ。だから、オンラインデートを控える監子君にも言いたいことは…。


監 子 ようやくわかった!ヴァージニア・「ウルフ」だけに、赤ずきんちゃん、きちんと現実を見て残酷なオオカミ(=ウルフ)には気をつけてってことね?ご忠告、感謝するわ。


【今回のポイント】

14世紀に大流行したペストは人々のそれまでの価値観や社会のしくみなどに大きな影響を与え、より人間性を賛美したルネサンスや宗教改革をもたらしたと一説に言われている。では税理士は、新型コロナウイルスが大流行している今、ルネサンスを興せるのか?税理士もDXといった企業変革に携わることができると前回申し上げた。それは事実だが、しかし現実として大きな改革を行えるほどの余裕がない会社も多い。休業を余儀なくされて資金が回らない会社や個人を前にしてDXを唱えても無意味だ。しかし税理士という仕事が素晴らしいのは、様々な仕事の中でもより現実的であるということだ。「庭を耕す」にあたって食べていけるように主にお金まわりの問題解決をしながら寄り添うことができる。襟糸君が引用したウルフには他にもこんな名言がある。「逃げ回る人生では、平和を見出すことはできない」。税理士も勉強しているみんなも、コロナから逃げずに現実としてできることをまず行い、平和を一緒に見出そう!


[TACNEWS 2021年4月号|連載|タックスファンタスティック]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ副代表/代表社員パートナー。慶應義塾大学卒業、同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でシステムエンジニアとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人兼コンサルティング会社に入り、会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後日本で最大級の相続税申告数実績のある税理士法人レガシィへ入社。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年7月には会計事務所向けWebサービス「Mochi-ya」をリリース。2020年8月にはシニア世代向けWebサービス「相続のせんせい」をリリース。主な著書『改訂版 はじめての相続・遺言100問100答』(2017年、明日香出版、共著)。

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