人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第69回 株式会社エイトレッド

Profile

岡本 康広(おかもと やすひろ)氏

代表取締役社長

1971年、島根県生まれ。1990年に上京し、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。1994年、営業職として株式会社ソフトクリエイト入社。現職に至るまで2度ソフトクリエイトグループを離れ、富士ソフト株式会社、合同会社DMM.comへ転職。2017年、ソフトクリエイトグループへ3度目の入社。2018年、株式会社エートゥジェイ代表取締役副社長、2019年6月より株式会社エイトレッド代表取締役社長に就任。システムエンジニア、営業、事業企画、アライアンス、広報、マーケティング、新規事業など幅広い経験を積み、現在は経営者として社内外のコラボレーション推進に取り組んでいる。

エイトレッドの中途採用は、
スピードと直感重視。
エイトレッドを好きになって、
入社してもらいたい。


2007年設立の株式会社エイトレッドは、ワークフローシステムの開発・販売を行い、これまでに業種・業態を問わず4,500社を超える国内の企業、公共、教育機関に導入されている。その強みは「開発・販売・サポート」の三位一体の体制にある。ワークライフバランスを大切に、働きやすさに配慮するエイトレッドでは、どのような人材を求め、どのような採用を行っているのだろう。代表取締役社長の岡本康広氏にエイトレッドの人材観や教育体制などについてお話をうかがった。

SaaS型ワークフロー市場で売上国内第1位

──最初にエイトレッドについて教えてください。

岡本 エイトレッドは、ワークフローシステムを自社開発しているプロダクトベンダーです。2007年に設立して今年で17年目を迎えますが、親会社のソフトクリエイトホールディングス(当時はソフトクリエイト)で2003年に開発した中小企業向けワークフロー「X-point(エクスポイント)」から事業はスタートしているので、実は製品としては20年目になります。
 「ワークフロー」、つまりワーク(業務)+フロー(流れ)という言葉はよく使われます。企業内には稟議書や物品購入申請、有給休暇申請など、様々な申請があります。担当者が起案・申請して、上長が確認・承認し、さらに最終決定者が決裁をする社内申請手続きの流れを「ワークフロー」と呼びますが、これをシステムで対応できるようにソフトウェア開発をしているのがエイトレッドです。
 製品ラインナップとして現在は、中小企業向けクラウド型ワークフロー「X-point Cloud(エクスポイント クラウド)」と、大企業向けワークフローシステム「AgileWorks(アジャイルワークス)」を展開しています。

──テレワークの普及もワークフローシステムへの注目につながりましたね。

岡本 ワークフローシステムは、昨今ニーズが高いDX、電子化で進むペーパーレス化、テレワーク導入で問題になった押印のための出社「ハンコ問題」の解決などで“ど真ん中”の業務です。さらにJ-SOX法(内部統制報告制度)で上場に際して様々な社内ガバナンス、社内体制、業務効率体制の徹底がルール化されたことで、物品購入ひとつ取っても承認履歴を残す、そのためのIT化を求められる中、特にIPOをめざす企業にはワークフローシステムが必須になります。
 エイトレッドは、これまで業種・業態を問わず4,500社を超える国内の企業、公共、教育機関にワークフローシステムを導入いただき、SaaS型ワークフロー市場ベンダー別売上金額推移で12年連続シェアNo.1(※)(2011年度~2023年度)も獲得しています。
 ※ 出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所 『ハイブリッドワークの最適解をもたらすコラボレーション・モバイル管理ソフトの市場展望2023年度版』

──開発・販売はどのような体制で行っているのですか。

岡本 当社は従業員数80名ほどですが、自社で製品開発をして、マーケティングや営業活動によって販売につなげ、購入後のサポートまですべて一貫して行っていることが、大きな特徴といえます。販売面では、売上の約9割が全国の販売パートナー経由で、全国のお客様に向けて製品をお届けしています。
 お客様はワークフローだけを求めているのではなく、「ほかのソフトウェアも組み合わせて検討したい」「サーバー導入や比較検討などをまとめて相談したい」といった根本的なニーズを持っています。その際、各々の製品メーカーに頼むより、SIer(エスアイヤー)やITサービスベンダーに一括で相談したほうが、自社のDX推進にふさわしいシステム提案、構築にも対応できるので、パートナー経由の販売が多くなっているのです。

新卒はグループ一括採用

──エイトレッドの「求める人物像」を教えてください。

岡本 ひとことで言えば「明るく元気でやる気がある」。現在、採用しているメンバーはその視点で採用しています。特に最近の営業の中途採用はIT業界経験者がほぼゼロで、異業種でも明るく元気でやる気があれば、入社後にIT知識を習得できると考えて採用しています。
 エイトレッドは、2024年4月に「MISSION・VISION・VALUE」を刷新しました。幹部メンバーと何度もディスカッションを繰り返し、みんなの意見を踏まえて決定したMISSION「人・仕事・組織のつながりを円滑にして、成長と笑顔あふれる未来を共創する」を始めとする企業理念への共感も重要視しています。

──エイトレッドでは新卒採用と中途採用、どちらをメインに考えていますか。

岡本 エイトレッドが直接採用するのは中途採用のみで、年間10名前後を採用しています。新卒採用については、親会社のソフトクリエイトホールディングスで毎年100~120名を一括採用して、各事業会社に割り振ります。エイトレッドにも毎年4~6名の新卒が入社しています。

──2024年4月にエイトレッドに入社した新卒は何名ですか。また、新入社員研修についても教えてください。

岡本 2024年4月入社は営業2名、開発2名、カスタマーサポート1名の5名でした。ソフトクリエイトホールディングスグループでの入社式、マナー・ビジネス基礎研修など、グループ共通の研修を受けたあと、営業や企画などのビジネス系はすぐに各社に配属されます。エイトレッドに配属された新卒は、次に会社全般に関することや製品について学びます。そして、まずカスタマーサポート部門に1ヵ月所属して、お客様対応をしながら製品知識を覚えます。その後、インサイドセールス部門を経てフィールド営業に移るケースや、そのまま配属になることもあります。
 開発系は、グループで約3ヵ月間の研修を受けてから、各社へ配属されます。システム開発に関する基礎研修を一緒に受けてから、素養やスキルなどによってエイトレッド配属、あるいは他事業会社に配属されます。

選ぶのではなくて、選んでもらいたい

──エイトレッドの中途採用方針を教えていただけますか。

岡本 人材採用が必要なときに人材紹介会社に依頼してニーズに合う人材を紹介してもらい、面接しています。私たちはかなり生産性が高いと自負しているので、メンバーに無理な加重を負わせることも、余力人員を確保することもしていません。全職種、急速に増やすのではなく、ビジネス状況を見ながら随時募集をしています。

──エイトレッドの職種とその比率を教えていただけますか。

岡本 おおよそ、営業とマーケティングのビジネス系3割、ソフトウェア開発系4割、カスタマーサポート系3割です。平均残業時間は全社で一人あたり毎月約10時間程度なので、IT系企業としてはかなり少ないほうだと思います。ワークライフバランスをきちんと考え、残業も少なく有給休暇消化率も8割と、かなり働きやすい環境です。

──職種によって採用選考フローは違うのですか。

岡本 営業、開発、カスタマーサポートなど職種を問わず、基本はリーダークラスが1次面接をして、2次の最終面接を私もしくは開発担当役員で行います。面接でわかることは限られているので、回数を増やすのではなく、直感も含めスピード重視です。
 1次面接のあと、とても良いと感じたら私を呼び出してもらい、立て続けに2次面接をすることもあります。あと逆パターンで先に私が面接をして、そのあとに現場担当面接を実施するというケースもあります。人から見るか、ビジネス的にマッチするかどうか専門的スキルや相性から見るか。そこは直感的に決めています。

──岡本社長は面接でどのようなところを見ていらっしゃいますか。

岡本 私は普通に雑談をします。気になったことを話して、そこから会話を膨らませ、コミュニケーション力や考え方を見ています。仕事の話をすれば仕事の話が返ってくるのは当然ですが、そこはある程度、シミュレーションもされているでしょうし、経歴は履歴書にも書かれているので、聞くのは入社後のことです。「当社に入ったら何ができそうか」「当社にどのような位置づけで入ってくれるのか」「ムードメーカーなのか」「知識が豊富で知恵袋的にいろいろな人を助けてくれるのか」など、特にひな型も質問も決めていません。
 正直に言えば、面接では私から聞きたいこともありますが、逆に聞いてほしいこともあります。質問するより、むしろ質問してもらいたい。こちらが選ぶのではなくて、選んでもらいたい。そしてエイトレッドをより理解した上で、好きになってもらって、心から「入社したいな」と思ってもらいたいと考えています。

──中途採用の場合、全体研修後に配属部署でOJTに入るのですか。

岡本 基本的にはOJTメインです。特に開発系はもともとプログラム言語の知識や開発経験がある人が入ってくるので、プロジェクトでのOJTが一番理想的です。カスタマーサポートと営業は当社の製品を通じてお客様と関わる仕事をするので、営業であれば2週間から1ヵ月、カスタマーサポート部門に入ってサポート業務を通して製品について徹底的に学んでもらいます。

GoHome休暇やコーヒーブレイク。ユニークな社内制度が充実

──教育研修制度で特徴的なものがあればご紹介ください。

岡本 OJTがベースではありますが、希望すれば若手から定期的に、ビジネススキル系の動画研修を受講できるようにしています。またエンジニアは技術を学ぶためのセミナーに参加したいという希望が多いので、書籍購入の支援や、個別対応をすることもあります。

──社内制度でユニークなものを教えてください。

岡本 いわゆる法定の福利厚生だけでなく、当社にはいろいろユニークな制度があります。ここ最近では残業低減、ワークライフバランスに特に注力しています。勤務形態としてはコロナ禍でのフルリモートワークもありましたが、現在は週2日在宅勤務を推奨、それ以外は出社することでバランスよく働けるように配慮しています。出社時間は8時、9時、10時の3択時差出勤形式で、社員の希望で選べるようにしています。
 有給休暇も1時間単位で取得可能で、小刻みに使えば急な子どもの送迎にも利用できます。特別休暇には、年に1回の記念日を設定して取得できるアニバーサリー休暇があります。例えば、子どもやパートナーの誕生日など、何か特別な日を自分で決めて、年に1回、休みを取れる制度です。7~8月には4日間の休暇を自由に取得できる夏季休暇もあります。夏季休暇4日間に有給休暇をプラスして、長期休暇として利用してほしいですね。
 家族や身内が突然体調を崩した場合など、緊急時に実家に帰る費用を負担するGoHome休暇制度やベビーシッター補助制度もあります。

──GoHome休暇はめずらしい制度ですね。社内でイベントを行う機会はありますか。

岡本 上期、下期それぞれ全社で集まる全体会議を実施しています。全体会議(業績報告や今後の戦略など)のあと、毎回懇親会を開くのですが、そのときのビンゴ大会は外れがないので全員に当たりますし、すべてがそれなりの景品です。
 部活制度も作っていて、ボードゲーム部、マージャン部ができました。何名か集まれば部として立ち上げられて、飲み会も含めてその部に補助が出ます。
 さらに、部門ごとに半期達成といった節目には、要望があれば会社がお金を出して打ち上げ会なども促進しています。
 ほかにはコーヒーブレイクといって、コーヒーとお菓子を用意し、みんなでコーヒーブレイクを楽しんでもらいながらコミュニケーションを取ってもらう制度があります。同じビルにあるスターバックスからテイクアウトして、Slackで休憩時間情報を事前告知します。その1時間はワーッと人が集まって立ち話しながらの休憩タイムです。いろいろな部署のメンバーが集まるので、中途入社のメンバーが組織横断的に話をする良いきっかけにもなっています。社員の意見で自由にやってもらっている企画ですが、この費用も会社で負担しています。
 あとは働きやすさを推進するためのIT環境の整備も重要で、当然ワークフローは整備されていますが、当然ながらそれ以外のツールの改善も順次進めています。

第三者のお墨付きをもらえる唯一の指標は資格

──エイトレッドには資格取得のための支援制度はありますか。

岡本 資格取得支援制度では、営業職ならITパスポートと日商簿記検定試験、マーケティング職であればマーケティング・ビジネス実務検定®など、それぞれの推奨資格があります。取得費用は会社負担で、合格したら奨励金が出ます。今後、少しずつ資格の選択肢を広げていく予定です。
 技術系は非常に幅広い資格がある中で、情報セキュリティマネジメント試験から始めようと開発責任者の意見をもとに、まずはこの資格をみんなで取得して、そこから徐々に広げていく予定です。

──資格取得支援制度を活用してITパスポートなどの取得をめざす方は多いのですか。

岡本 もともと資格は、自分が取得したいと思っている人が勉強するものなので、会社が負担したから増えるというものではありません。実際、制度ができたからビジネス系の人がITパスポートを急激に受験するようになったということはありません。しかし、こうした制度はすぐに成果が出るものではないので、いろいろ手を打ちながら、徐々に選択肢を増やしていくことが大事だと考えています。一方で技術系メンバーはもともといろいろな資格を取得している人が多いですね。
 私自身も、中小企業診断士の勉強でTAC渋谷校に通い、「中小企業経営・中小企業政策」を受講したことがありました。それまで通信教育アプリなどで勉強していたのですが、この科目だけはどうしても難しかったので、TACに通ったんです。その時期は資格の勉強中心の生活で、1年間合格をめざして仕事が終わった帰宅後や土日も勉強していました。ただ、そのタイミングでエイトレッド社長就任の話が来て、そこから非常に忙しくなり、中小企業診断士の勉強はできなくなって断念しました。今思えば、本試験は受ければよかったと思いますが…。ただ、経営全般の勉強ができたことは今の仕事に大いに活きています。

──中途採用の募集要項に必須資格を設けることはありますか。

岡本 必須資格を要件に募集したことは過去にありません。ただ「資格があれば尚可」と記載すれば、経験値の指標にはなるでしょう。例えば、簿記の資格を持っているとわかれば業務知識があってお金の流れについては大体理解しているだろうと推測できるので、営業の素養として大事だと思います。ただ資格が採用の決定打になることは、今のところありません。

──最後に資格取得やキャリアアップをめざしている「TACNEWS」の読者に向けてメッセージをお願いします。

岡本 簿記、珠算、基本情報技術者(当時は第二種情報処理技術者)など、実は私は昔から自分で勉強して資格をたくさん取得してきました。何かを学びたいと思ったら、資格が手っ取り早いんです。なぜなら本を読んでもアウトプットがないので、自分の実力はわかりません。でも、資格は合否が明確です。書籍に加えインターネットや動画など、今はインプットするツールはいろいろあります。でも「あなたはこの力がある」という判断基準として、第三者のお墨付きをもらえる唯一のものが資格だと思います。
 自分を高めていくきっかけに、資格はとてもわかりやすいと思います。将来を見据えて幅広い知識が必要になったとき、それを体系的に学べるのは資格のメリットです。ぜひ今勉強している資格で合格をめざしてください。

[『TACNEWS』人事担当者に聞く「今、欲しい人財」|2024年10月 ]

会社概要

社名     株式会社エイトレッド
設立     2007年4月
代表者    代表取締役社長 岡本 康広
本社所在地  〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2丁目15−1 渋谷クロスタワー

事業内容

ワークフローシステムの販売・開発及びクラウドサービスの提供

従業員数

80名(2024年3月31日時点)

URL

https://www.atled.jp/

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