人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第57回 株式会社エル・ティー・エス
太田 貴博氏(写真左)
人事部 新卒採用グループ
グループ長
新卒で小売業界に入り、LTSに転職。コンサルタント職を経験した後、人事部に。2010年に退社し、2013年に復帰。現在は新卒採用領域で活躍している。
舩木 いくみ氏(写真右)
人事部 組織人財開発グループ
グループ長
新卒でLTSに入社。コンサルタント職を経て人事部に。組織開発、人財開発領域で活躍している。
2002年に創業し、2017年に東証マザーズ市場に上場、2020年には東証一部(現在、プライム市場)へ市場変更したコンサルティング会社の株式会社エル・ティー・エス(LTS)。LTSが成長の源泉としているのは、唯一無二の資本である「人財=社員」。社員一人ひとりのポテンシャルを解き放ち、思い切り可能性を広げていくことを標榜し、ミッションとして「可能性を解き放つ」を掲げている。社員が持つ可能性を大切にするLTSの企業風土とはどのようなものか。人材観や採用方針、人材育成、社内制度について、人事部の舩木いくみ氏と太田貴博氏にうかがった。
自立・自律型人財の採用と育成をめざすコンサルティング会社
──株式会社エル・ティー・エス(LTS)ではどのような事業を展開していますか。
太田 LTSは、企業や官公庁、NPOを含めた様々な組織に対して、課題や変革テーマに応じた支援をワンストップで提供するコンサルティング会社です。2002年の創業当時、コンサルティング業界は「戦略の提案」までに留まる会社がほとんどでした。そんな中、「戦略を考えたコンサルタントが、変革の実行支援まで行っていく会社を作ろう」という目的でスタートしたのが当社です。支援の過程でエンジニアリングやプラットフォームサービスも生まれ、現在、企業コンサルティングを中心とした幅広いプロフェッショナルサービス事業を展開しています。10年以上前から、国内企業の海外進出や海外拠点設立もサポートしてきました。国内に本社のある日本法人の海外戦略において、システム案件や新戦略の実行部分を現地に任せることは難しいので、現地に同行しての実行支援も行っています。
「2030年、社員3000人 売上500億」を掲げ、採用・育成を強化
──自立・自律した人財を大切にするLTSでは、具体的にどのような方を求めていますか。
太田 新卒採用とキャリア採用、どんな職種であっても共通して言えるのは、「可能性を解き放つ」ために「これまでの自分を超えていく」「一緒に未来を作っていくことに情熱を燃やせる」点を求めていることです。加えてプロフェッショナルサービスを生業とする私たちは、「賢く、フットワークが軽く、粘り強い、いい人」を求めています。
コンサルティング職、エンジニア職、ビジネスプロデュース職、ITサービス職、ビジネスマネジメント職のすべての職種に通底するのは、経営課題を構造的に捉え、きちんとその原因にミートした解決策を実行していける賢さ、現場の実行まで関わっていくためのフットワークの軽さ、相手の胸襟を開いていけるコミュニケーション力、うまくいかないことに取り組む粘り強さが大切である点です。
この「賢く、フットワークが軽く、粘り強く」という部分は同様の人材像を求めている企業も多いと思いますが、そこに加えて「いい人」という人材観が加わっているのがLTSらしさです。「いい人」とは、「コンサルタントである前にひとりの人間として、当たり前のことがしっかりできる仲間であってほしい」ということです。お客様に「また一緒に仕事をしたい」「この人と一緒に仕事をしたことによって、出会う前と後で意味ある変化が起きた」と思っていただけるような仕事をしてほしい。そんな思いが込められています。
──採用計画ではどのような方針が軸となっていますか。
太田 掲げているのは「社員全員で採用し、社員全員で育成していこう」です。コンサルティング会社にとって「人」は「商材」そのものです。「いい人」に入社してもらい、育て、活躍してもらうことが重要なので、大切な人材を社員全員で育てていく方針を掲げています。
──2023年の新卒は何名でしたか。
舩木 2023年4月に入社した新卒は66名でした。実は2022年度までは例年20〜30名程度の新卒採用でしたが、2023年から倍増しました。プロフェッショナルとして成長し、活躍いただける資質を持つ仲間との出会いが重要ですから、ポテンシャルを持つ方々にこれだけの人数合流いただけたことは、あとから会社の成長を振り返ったときに大きな節目にもなるのではと感じています。経営計画で掲げている「2030年、社員3000人売上500億」という成長を実現させるために欠かせない仲間が多数加わってくれました。
──新卒の入社から配属までの流れをお聞かせください。
舩木 2023年は、4月にまず入社式を行い、ビジネスマナー、ドキュメンテーション、ロジカルシンキングなどの基礎スキルと、プロジェクトマネジメント、統計などの応用スキルを学ぶ2ヵ月間の新入社員研修を実施しました。その後6月から職種別研修に進み、コンサルタント職とビジネスプロデュース職は6月末まで、エンジニア職は7月末まで研修を続け、ITサービス職はすぐに現場でOJTに入ります。先ほどの話の通り、新入社員研修にも多くの社員が関与してくれます。経営者と現場の社員が非常に協力的な点も、LTSの誇れる文化だと感じています。
新卒は、各現場に配属されたあとも3ヵ月に1回のペースで同期が一堂に会する研修を設けています。加えて毎月の上長との1on1ミーティングや人事との定期面談で細やかにフォローしています。
学生との接点は面接6回。非選考面接を含めると10回以上
──2024年4月入社の新卒は何名を計画されていますか。
太田 60名超の計画で進めています。「2030年、社員3000人売上500億」という計画に則っていますので、現在総勢600名の組織は、今後5倍の成長曲線を描いていく計画です。日本のコンサルティング、エンジニアリングサービスで、そのような成長角度を本気で実現しようとしている会社は決して多くないと思います。
──新卒採用の選考フローで、ミスマッチを防ぐために工夫している点があればお聞かせください。
太田 選考だけで面接6回、非選考の面接を含めると10回以上、学生と接点を持っている点が特徴です。
当社は、応募者に「受けてよかった」と思っていただける応募者体験をしてほしいと考えています。テクニカル面は入社後いくらでも育成していけるので、コンサルティング業界の選考でよく使われる「フェルミ推定」のような思考力を試す面接は行いません。何よりも人物評価をしっかりできる選考にするために、選考中盤に入った応募者に対して専任の社員を1名つけます。そして自己分析サポートや、どのような志を持った社会人をめざすのかを小論文にまとめる課題のサポートを行います。結果的に内定辞退になっても、社会人になってからビジネスでLTSとつながる方もいらっしゃいますので、つながりを大切にしながら選考を行っています。「自分自身をしっかりと見た上で内定を出してくれた」「一緒に伴走してくれた」と、選考中の関わりに温かさを感じてくださる応募者は多いようで、大量採用する他社から内定を得た場合でも最終的にLTSを選んでくれる内定者が多いのはうれしい限りです。
──人となりを見極めつつ、応募者とのつながりを大切にする。すばらしい選考方法ですね。どのようにして内定者を厳選していくのですか。
太田 コンサルティングであれ、ビジネスプロデュースであれ、エンジニアであれ、どれも自分が商品となって価値を生み出す仕事ですから、ただ優しいだけではクライアントの伴走者にはなれません。そこには厳しさと強さが絶対に必要です。選考の序盤で甘く通してしまっては誰もハッピーにはなれませんので、選考前半で職種のプロとして活躍してもらえるかを見極めます。その上で、選考後半に会社とのマッチングや、その方にとってLTSを選択することが一番いいことなのかを最終判断していきます。
──2024年入社の内定者を対象にした入社前の研修課題は用意していますか。
舩木 複数用意しています。会計知識の基礎として簿記3・2級、ITの基礎知識としてITパスポートや基本情報技術者、MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)等の資格取得を推奨しています。加えて、学生から社会人へとマインドチェンジするためのプログラムも用意しています。
東証プライムへの上場で、外資系コンサルティングファームからの転職者増加
──中途採用は年間で何名計画していますか。
太田 中途採用も年間で新卒とほぼ同数の70名超をめざしています。各事業部の求人ニーズに基づき、人事部の中で事業部担当者を設定して、適切な候補者をスピーディに面接につなげられるように進めています。
職種によりますが、中途採用の選考フローはほぼ2回です。新卒採用で応募くださる学生の方々は、1年かけてじっくりといろいろな会社を見て判断する時間がありますが、中途採用の場合は短期間でスピーディに企業と出会い転職先を決めていく求職者の方が多いので、選考は2回に抑えています。ただ新卒と同様、「LTSを受けてよかった」という応募者体験をしていただくことを大原則にしています。
──中途採用で入社された方には研修制度を用意していますか。
舩木 入社時に3日間のオリエンテーションを実施し、まずはLTSを知り、馴染んでいただく時間にしています。コンサルティング業界未経験者の入社も増加しているため、ロジカルシンキングやライティングといった基礎スキル教育も開始しました。現在、さらなる充実をめざして準備中です。
──どのような業界からの転職が多いのですか。
太田 東証プライム上場以降、外資系大手ファームや外資系コンサルティングファーム、大手人材派遣会社からの転職者が目立って多くなりました。また、当社の平均年齢は33歳ですが、中途入社の方は20〜30代を中心に、20代から50代までとかなり幅広くいらっしゃいます。それだけ経験値の幅の広い方たちが関わってくれるのを感じます。
「自分たちの手でいい会社を作っていく」ための社内制度構築
──研修制度などでLTSらしい制度があればご紹介ください。
舩木 新卒の教育研修では、共通、職種別、その後のフォローまで手厚いのが特徴です。そこに現場の社員も大勢関わり、皆で育成していこうとする点は、LTSらしさと言えます。その他、階層別教育やテーマ別教育も実施しています。
また、LTSでは社員がオーナーとなって勉強会を開催するカルチャーがとても盛んです。業務上重要なトピックは有志で勉強会を立ち上げて、広く社内でメンバーを公募し、継続的な勉強会を開催しています。これまでには、会計やWebシステム開発、データサイエンス、デザイン等、様々なテーマで勉強会が開催されてきました。それをオフィシャルにやろうと、毎年7月に「LTSグループカンファレンス」というグループ会社も含めた学び合いのイベントを実施しています。プロジェクト事例や個人的に学習しているテーマなど、自分が共有したいものを持ち込み、本人が講師となったセッションを開催するというものです。
また当社は2023年で創業20周年を迎えます。そこで創業間もなくから社長CEOである樺島弘明が、次世代を育成するための「樺島塾」を開催しています。毎期20人ほどが参加して、社長と一緒に読書会を開催し、皆でディスカッションしてコアな部分の共通認識を持っていきます。
──人事制度についてはいかがでしょうか。
舩木 キャリア形成面では「キャリアリンク」という制度を用意しています。社内で人を必要としているポジションを公開し、興味のある社員が本人の意思で気軽に応募できます。社内全体で個々人のキャリアプランを応援しようという風土がある点もLTSらしさです。
「ボランティア休暇」という制度もできました。新卒入社し経験を積んだ社員が、2年前にLTSに籍を置いたまま青年海外協力隊に参加し、帰国後にそこでの学びを仕事に還元する約束をしたのが発足のきっかけです。こうした社員のキャリアを後押しするような仕掛けはどんどん作っていきたいと考えています。
太田 LTSは創業からずっと「すばらしい会社に入るのではなく、自分たちの手でいい会社を作っていこう」という言葉を掲げて発展してきた企業です。
制度設計には、そのようなメッセージが込められています。人事制度ひとつ取っても、人事部門の主導ですべて作り込んでリリースするのではなく、総勢600人の社員全員で制度を作って運用していきます。報酬制度も含めて、社員の自立性に働き掛けて、いろいろな制度ができています。
──福利厚生面で特徴的なものもありますか。
舩木 外部の福利厚生サービスを導入しています。提携メニューを割引価格で利用できることに加え、カフェテリアプラン(予め支給されたポイントを使って各種福利厚生メニューが利用できるしくみ)も導入しています。カフェテリアプランでは、子育て・介護(家族を育む・支える)、健康(身体をいたわる)領域のポイントレートを2倍にし、支援を手厚くしています。
また、従業員の持株制度や、ファイナンシャル・プランナーに何度でも無料で相談できる制度を用意し、社員が自分で人生設計できるしくみを整えています。ご家族を含めたイベントも盛んで、20周年イベントでは社員の家族も招待して、日頃の感謝を伝えると共に、楽しい時間を過ごしました。
資格取得のための充実した支援制度
──コンサルティングやエンジニアリングといった業界には、様々な国家資格を持った方が在籍されていると思います。LTSではどのような資格を持った方が活躍していますか。
舩木 コンサルタント職では中小企業診断士やPMP等、プロジェクトマネジメントの学習や資格取得をする方がいます。またLTSではコンサルタント職に限らず幅広い職種の方々が活躍していますので、資格もエンジニアリング領域(AWS認定資格等多数)や人事領域(社会保険労務士やキャリアコンサルタント等)等、非常に多岐に及んでいると思います。
業務上、取得や保有が有効と認められている資格も多数あり、その中で約150の指定資格をレベル別に分類しています。合格時には受験のための費用や会場への交通費と併せてレベルに応じた報奨金を支給し、資格取得のための自学を推奨し支援しています。公認会計士、税理士、ITストラテジスト等は上位のレベルに分類しています。
太田 プロジェクトや仕事を進めていくのは真っ暗なトンネルを進むような面があります。「資格」というサーチライトで足もとを照らしながら進めることは大変有意義だと思っています。
舩木 現在の担当業務と直接関係なかったり、資格取得支援制度の適用外の資格であったりしても、個人のキャリアプランに必要な研修や資格については受講や取得に向けた金銭的バックアップを行っています。年間で支援する資格の数に上限はありませんので、めざすキャリアの実現に向けて、積極的なチャレンジを推奨しています。
──最後に、資格取得やキャリアアップをめざしている方へメッセージをお願いします。
舩木 資格は、取得するまでのプロセスがとても重要です。大人になると日常的にテストを課されることはありませんので、そんな中で成功体験を積むこと、自分の努力が形になって実を結ぶこと、コツコツ努力してがんばれること自体、とても大切だと感じます。採用においても、エントリーシートに保有資格の記載があれば、どのようなモチベーションで勉強を始めたのか、どのようにやりくりして勉強時間を捻出して資格取得に至ったのか、その過程から何を学びどのような工夫をしたのかをお聞きしたいと思います。
太田 学びには、知らないことを知っていく喜びがあります。TACで資格のプロフェッショナルにガイドしてもらい、体系立った良質なテキストで勉強されている皆さんには、自信を持って学ぶことを楽しんでいただきたいと思います。応援しています。
[『TACNEWS 』2023年11月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]
会社概要
社名 株式会社エル・ティー・エス
設立 2002年3月
代表者 代表取締役 樺島 弘明
本社所在地 東京都港区元赤坂1丁目3-13
赤坂センタービルディング 14階
事業内容
ストラテジー&イノベーション、ビジネスプロセス&テクノロジー、ソーシャル&パブリック
従業員数
454名(単体)629名(グループ連結)(2023年6月末日現在)
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