人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第36回 ウェルスナビ株式会社
小山 浩平氏
ウェルスナビ株式会社
人事チーム マネージャー
新卒で楽天株式会社に入社し、人事部門の大阪支社立ち上げやエンジニア採用責任者などを歴任。その後株式会社メルカリに転職し、海外採用の拡大やHRBP組織の立ち上げなどを経て、2020年6月、ウェルスナビに転職。急成長するスタートアップ企業の中で、人事・総務領域全般を担い、IPO後の組織の急拡大や、リモートワーク下での社内コミュニケーション活性化などに取り組んでいる。
預かり資産・運用者数で国内No.1(※1)のロボアドバイザー「WealthNavi(ウェルスナビ)」を提供するウェルスナビ株式会社。2016年7月のリリースから約5年で預かり資産5,000億円を突破(※2)し、運用者数は現役世代を中心に28万人以上(※3)に成長してきた。「働く世代に豊かさを」をミッションに、日本の働く世代の豊かな老後に向けた資産形成サポートのニーズに応えるウェルスナビのキャリア採用について、人事チームマネージャーの小山浩平氏にうかがった。
ミッションは「働く世代に豊さを」
──ウェルスナビ株式会社は、どのような会社ですか。
小山 ウェルスナビは、ロボアドバイザーと呼ばれる、自動で資産運用ができるサービス「WealthNavi(ウェルスナビ)」をオンラインで提供している会社です。「働く世代に豊かさを」というミッション、「ものづくりする金融機関」というビジョンのもと、日本の働く世代の豊かな老後に向けた資産形成をサポートしています。
資産運用を自分ですべて行おうとすると、時間も専門的な金融知識もかなり必要になってきますが、WealthNaviを使えば自動で行うことができます。
5つの質問に答えるだけで資産運用プランを提案し、投資の知識や経験、資産の額に関係なく、世界約50ヵ国1万1,000銘柄への分散投資を自動で行います。預かり資産・運用者数ともに国内No.1(※1)のロボアドバイザーであり、2021年7月時点で預かり資産は5,000億円(※2)を超え、28万人を超えるお客様(※3)にご利用いただいています。お客様のうち、20~50代の働く世代が約9割を占めていることも特徴のひとつです(※4)。
当社はメンバーの約半数がエンジニア・デザイナーなどのクリエイターという「ものづくりする金融機関」であることを特徴とし、誰でも利用しやすく、フィデューシャリー・デューティー(受託者責任。金融機関が投資家に対して果たすべき責任のこと)を徹底したサービスづくりを心がけています。プロダクト開発力を活かし、新機能の開発に加え、継続的で地道なサービス改善に日々取り組むことで、お客様から高い支持をいただいています。
「長期・積立・分散」の投資を続けられるよう、お客様をサポートする様々な取り組みも実施しています。2020年の新型コロナウイルス感染拡大の際は、ビデオメッセージやコラムを配信し、お客様をサポートしてきました。また、コロナ禍で開催しているオンラインセミナーは、1年間で累計15.6万人(※5)の方にご視聴いただきました。
さらに、提携パートナーの拡大も推進しており、2021年7月時点では19社と提携しています。
──2021年のトピックがありましたらお聞かせください。
小山 2021年2月に、新機能「おまかせNISA」をリリースしました。日本で初めて(※6)NISA口座で自動でおまかせの資産運用ができ、初心者にも扱いやすいため、多くの方にご利用いただいています。
NISAは将来に備えて資産形成をするための有効な制度ですが、「どの商品を購入すればよいかわからない」「投資の知識がないと難しそう」といった不安から、NISAを活用した資産形成を始められない方もいらっしゃいます。こうした切実なニーズがあることから、約1年をかけて新機能を開発しました。
「おまかせNISA」により、お客様は投資の経験や知識の有無にかかわらず、非課税のメリットを活かしながら、自動でおまかせの「長期・積立・分散」の資産運用を行うことが可能になります。これまでNISA制度を活用したくても一歩踏み出せなかった方々をサポートしていきたいと考えています。
ポジション別のキャリア採用
──ウェルスナビの採用について教えてください。
小山 当社の採用における大きな特徴は、ポジション別採用として各領域のスペシャリストを採用している結果、100%中途採用となっている点です。現在、正社員が約100名いますが、金融機関出身者とIT業界出身者、大きく分けてこの2つの領域の出身者が多いのが特徴です。それ以外にも様々なバックグラウンドを持つ、各領域のスペシャリストがワンチームになって、新しい機能開発やサービス改善に日々取り組んでいます。
加えて、社員の約半数をデザイナーやエンジニアが占める「ものづくりする金融機関」として、プロダクト開発力が高いことも大きな特徴です。お客様からいただいた声は毎朝カスタマーサポートチームからエンジニアチームなどに共有されて、2週間に1回のペースでアプリの改善を続けています。WealthNaviのアプリがお客様から高い評価をいただいている理由には、このような背景があると思います。
平均年齢は現在38.3歳ですので、スタートアップ企業としては年齢層が高めであることも特徴です。ポジション別に採用を行い、私たちが求めているスキルを持った人材を厳選する採用を行っているため、バックグラウンドや持っているスキルは人それぞれですが、通底するのは我々のミッション、ビジョンへの共感になります。
──ポジションを意識した採用のため、ターゲットの年齢も高めになることが多いのですね。
小山 平均年齢が高くなっているのはあくまで結果論ではあるのですが、私自身、入社前と入社後の一番大きなギャップはその点でした。「創業5年目の渋谷にあるフィンテック・ベンチャー」と聞くと「若そう」というイメージを持たれると思いますが、実際は、年齢だけでなく、人柄も落ち着いている人が多い会社です。「大人のベンチャー」という印象を個人的には持っています。
足元では、預かり資産1兆円という目標に向け、よりよいサービスの開発・改善に力を入れています。また2021年4月から、新規事業を専門に立ち上げるチームもできています。そのため欠員補充的な採用はほぼなく、事業拡大と新規開発メインの採用になっています。
──新規事業となると「求める人物像」は変わってきますか。
小山 まだ全社で100名程度の組織なので、新規事業であっても基本的には同じ会社、同じカルチャーで、同じ方向を向いている仲間を探しています。
──採用計画、人員計画については、どのようになっていますか。
小山 事業計画にもとづいて、その達成に必要な人員を経営、および各グループ長と議論を重ねて決定します。事業環境の変化に応じて、採用計画は柔軟に見直しを行っていきます。
──募集はどのような方法で行っていますか。
小山 スカウト、エージェント、自社の採用ページなど、幅広く活用しています。採用戦略的にいえば、こうしたチャネルもそれぞれに強みと弱みがありますので、求める人材に応じて使い分けています。一般的には、1つのエージェントに採用したい全ポジションをまるごとお願いする会社が多いと思いますが、私たちはエージェントごとに得意なポジションを依頼することを意識しているのです。スカウトにもそれぞれ媒体特性があるので、その特性にマッチしたポジションの募集に特化してお願いしていますね。
100名規模の「顔が見える距離」の会社
──選考ステップを教えてください。
小山 基本のフローは、書類選考後に面接が3回となっています。1次面接が現場担当者、2次面接は役員レイヤー、3次面接がCEOの柴山となっています。これが基本の選考ステップですが、候補者の状況に応じて適宜社内のいろいろなメンバーに会っていただくなど、働くイメージを少しでも鮮明に持っていただけるように柔軟に対応しています。
──入社後の研修はどのような流れになっていますか。
小山 まず全体のオリエンテーションと、当社の事業紹介を含めた金融勉強会、人事制度の説明、リスク・コンプライアンス研修を実施したあと、各部署によるOJTに入ります。その後は入社1週間後、1ヵ月後、3ヵ月後といったタイミングで、所属部署の上司が面談を行っています。
現在はリモートワークで勤務する社員が多いとはいえ、まだ社員数は100名規模で、比較的組織の状態が見えやすいのは安心な点であり、私たちの一体感を生み出している理由だと思います。
ただ一般的には100名を超えると、全社員の顔と名前を把握するのが難しくなってくると言いますから、今後一層、新しく入ってきた方が活躍できるような環境整備や、リモートワーク前提で企業カルチャーをどれくらい伝えられるかといったことが重要になってくると思っています。
──リモートワークが多い中で、環境整備や社内コミュニケーションのために、人事部門の主導で行っている工夫はありますか。
小山 コロナ禍によってリモート勤務が増えたとはいえ、SlackやZoomミーティングを活用していますので、コミュニケーションの機会はそれほど減っていないと思っています。ただ、どうしても業務上必要なやりとりが中心になるので、雑談をする機会がない点が気になっていました。「チームメンバーの顔と名前はわかるけれど、雑談がないのが息苦しい」という意見も社員から上がってきたので、社内の雑談を活性化しようということで、オンラインで楽しめる季節ごとのイベントを実施したり、雑談専門のSlackチャンネルを作り、たわいのない話をする機会を設けたりと、いろいろと模索しています。
全社員に証券外務員資格の取得を促す
──全社員必須の資格などはありますか。
小山 当社では、業務理解の目的で、全社員に証券外務員資格の取得を促しており、すでにエンジニアも含めた多くの社員が取得済みです。取得に際しては参考書購入補助や、金融専門家によるサポートも行っています。
また、ポジションごとに必要な資格や勉強会があれば、書籍代や外部セミナー参加費用を補助しています。例えば、社内から「より金融の知識を広げるために、FP(ファイナンシャル・プランナー)の資格を取りたい」という意見が多かったので、2020年からサポートすることになりました。今後も社員からの声が上がってきたり、会社の環境が変化していく中で必要な資格が出てきたりすれば、柔軟にサポートしていくつもりです。
──ポジションによっては、情報処理系資格や証券アナリストなどの資格が要件になる募集も出てきますか。
小山 入社段階で資格を必須にしているポジションはありません。もちろん資格はその人の経験を知る意味で、書類選考では重要な判断材料になると思いますが、面接では実務をどれくらいこなしてきたかを判断材料にしています。特にエンジニアに関してはその傾向が強いですね。
金融機関でありIT企業でもある ユニークなカルチャー
──新しく入ってくる方を迎える際は、どのような点を重要視していますか。
小山 新しく入ってくる方たちには、以前からいるメンバーと同じ目線を持って、ビジョン、ミッションの理解度を深めてもらうことがとても重要だと思っています。「誠実に、正直に、お客様のために」「助け合おう、向き合おう」「一歩を重ねて、大きな前進を」というバリューについては、3ヵ月に1回、「バリューチャンピオン」という、これらのバリューを体現した社員を表彰する制度もあります。こうした表彰制度自体は他社にもあると思いますが、そこにかける経営陣の思いがかなり強いのが当社の特徴です。受賞者の選定にもかなり時間をかけて議論していますし、発表の際もCEOの柴山が一人ひとりの受賞者に対して、その人のどのような取り組みがバリューの体現として評価されたのかについて、ものすごく熱量を込めてコメントしています。そういったところで、我々の体現すべきバリューやめざすべき行動規範を意識的に社内で共有しています。
──社内制度でユニークなものがあれば教えてください。
小山 当社ならではと言われるのは、社内の金融専門家が定期的に開く金融勉強会です。難しい資産運用の話や最近のお金のトピックを話してもらえるのが、当社ならではの福利厚生だと考えています。その他、お総菜やお菓子、ドリンクが安く買えるといったITベンチャーらしい補助制度もあります。
全社員で集まって情報共有する「All Hands」というミーティングや、金曜日の夕方にドリンクを飲みながら話す「Happy Hour」といったスタートアップならではのイベントもあって、金融業界から来た方にはとても新鮮でおもしろいと言っていただいています。
ウェルスナビのカルチャーは、金融業界とIT業界が融合したユニークなカルチャーだと感じます。どちらの業界から来た方にも新鮮な驚きがあって、幅広いバックグラウンドの方にご活躍いただくための基盤となっていると思います。
──最後に、資格取得やキャリアアップをめざしている読者にメッセージをお願いします。
小山 「資格取得」という新しいことに取り組み、結果を出すというプロセスはとても大事だと思います。そんな前向きな方なら、スタートアップ企業である当社のカルチャーにぴったりだと思いますので、ぜひご応募いただきたいと願っています。
(※1) 一般社団法人日本投資顧問業協会「契約資産状況(最新版)(2021年3月末現在)『ラップ業務』『投資一任業』」を基にネット専業業者を比較、モーニングスター社調べ(2021年6月時点)
(※2) 2021年7月13日時点
(※3) 2021年6月30日時点の運用者数(1万人未満は切り捨て)。「運用者」とは1円以上の預かり資産がある顧客を指す
(※4) 2021年6月30日時点
(※5) 当社主催オンラインセミナーの参加者。2020年7月~ 2021年6月の1年間累計
(※6) 一般社団法人日本投資顧問業協会「契約資産状況(最新版)(2020年9月末現在)『ラップ業務』」を基に各社HP等をウェルスナビ株式会社にて調査(2021年2月12日時点)
[『TACNEWS 』2021年11月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]
※画面はイメージです。
会社概要
社名 ウェルスナビ株式会社
設立 2015年4月28日
代表者 代表取締役CEO 柴山和久
本社所在地 東京都渋谷区渋谷2-22-3 渋谷東口ビル9F
事業内容
金融商品取引業、関東財務局長(金商)第2884号
従業員数
98名(2021年6月末時点)