人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第32回 株式会社インターファクトリー
田下 優里氏
株式会社インターファクトリー
マーケティング戦略部 ヒューマンリソースチーム マネージャー
2012年に新卒で広告業界に入り、提案営業に従事。2018年8月、インターファクトリー入社。入社後は現在のヒューマンリソースチームで採用を担当。現在は、新卒・中途採用、新入社員研修など人事・採用フィードで活躍中。
2003年6月に創業した株式会社インターファクトリーは、クラウド型ECプラットフォームの開発で業界をリードしてきた。2020年には東証マザーズに上場を果たし、成長し続けている。「日本一のECプラットフォームになる」というビジョンのもと、人としての在り方を大切にする社風を持つ同社の採用活動と人材育成について、マーケティング戦略部ヒューマンリソースチーム・マネージャーの田下優里氏にうかがった。
日本のビジネスを変える「日本一のECプラットフォーム」をめざす
──株式会社インターファクトリーとは、どのような会社ですか。
田下 インターファクトリーは、EC事業者様が自社で運営するECサイトを構築するためのクラウドコマースプラットフォーム「ebisumart(エビスマート)」を提供・保守している会社です。累計650サイトを超えるECサイトを構築し、お客様のEC事業の成長をお手伝いさせていただいています。
ebisumartの特長は、クラウドサービスでありながら、お客様の希望に応じたきめ細かなカスタマイズができることです。つまり、クラウドの利点を活かし、時流に沿ったシステムのアップデートを適宜行いつつも、クラウドでは難しいとされているフルカスタマイズを可能とし、EC事業者様ごとのニーズに最適化されたサイト構築を実現できます。
開発がメインとなるため社員の6割がエンジニアで、「集中ルーム」や「シエスタ制度」など生産性を高めて開発に集中できる環境づくりにも力を入れています。
──どのような事業目標を立てていますか。
田下 今後も成長が見込まれるEC市場で「日本一のECプラットフォームになる」というビジョンを掲げていますので、現在1,100億円の流通総額を1兆円規模にすることをめざしていきます。
「必ずリアルで実施する」最終面接へのこだわり
──「求める人物像」について教えてください。
田下 当社では、スキルや経験以上にインターファクトリーの理念「私たちは関わる従業員、お客様、取引先様の幸せを実現します」への共感を大事にしています。
私たちは理念に基づいた「インターファクトリーの道」と題した8つの行動指針を大切にしていて、スキルだけではなく、人としての在り方を大切にする社風があります。この社風にマッチしているかどうかを軸に、人物像を重視した選考を行っています。
──社員数に占める新卒と中途採用の割合はどうなっていますか。
田下 2021年4月現在、社員数133名中、2021年入社を含めた新卒は全体の34.5%で、中途採用の割合が高くなっています。
──2021年4月入社の新卒は何名ですか。
田下 ビジネス職2名、エンジニア職4名、合計6名を採用しました。採用時は新型コロナウイルス感染拡大の影響が未知数だったため、枠を縮小しての採用となりました。
4月の入社式はオンラインで開催し、4〜5月の新入社員研修もすべてオンラインの実施です。本来なら直接、入社への意気込みや決意をうかがいたい気持ちもありましたが、4月入社の新入社員は地方在住の方が多く、緊急事態宣言下で上京しての家探しができないという事情を考慮して、すべてオンラインでの実施となりました。
2022年の新卒採用はビジネス職5名、エンジニア職10名、合計15名の採用を目標に動いています。
──新卒採用の選考ステップを教えてください。
田下 ビジネス職、エンジニア職ともに、まず説明会や人事面談に参加していただきます。その後、現場面接、役員面接と適性検査をはさみ、社長との最終面接になります。当社は人物像をとても大切にしているので、最終面接は必ず対面で実施し、当社側と学生側両面のマッチを図っています。適性検査はあくまで最終面接前の参考材料として受検していただいており、適性検査のみでの合否判断は行いません。
ビジネス職は社内全体のローテーション後に配属
──2021年採用の内定者フォローはどのように行いましたか。
田下 オンラインで、入社前に内定者同士や先輩社員とコミュニケーションが取れる懇親会を実施しました。例年は社内イベントの「ファミリーデー」に任意で参加してもらっています。
他には、当社が大切にしている理念を理解するために課題図書を読んでもらい、「どのように感じたか」「社会人になって自分がどういう行動をしたいか」を考えてもらっています。
──新入社員研修は6月末までの3ヵ月間とのことですが、どのような内容でしょうか。
田下 新入社員研修の最初の2ヵ月間は、ビジネス職、エンジニア職ともに共通研修を受けてもらいます。内容は仕事の一連の流れを理解するために、全チームの業務説明と簡単な業務体験を行うというものです。自身が配属された部署の仕事しか知らずに働くのと、会社の業務全体を把握した上で働くのとでは視野や業務への捉え方が異なってくるからです。
3ヵ月目からはビジネス職とエンジニア職でそれぞれの研修が始まります。ビジネス職は配属の可能性のあるチームをすべてローテーションで回り、より実務に近い業務を体験してもらいます。エンジニア職は当社のメイン言語であるJavaの基礎研修や、社内で使うツール、開発のルールを学んでもらいます。
──ビジネス職は社内をひと回りしてから、配属先に落ち着くのですね。
田下 はい。そのため中途入社のメンバーより新卒メンバーのほうが社内のことをよく知っていたりしますね(笑)。
──入社半年から1年後の間に、フォローアップ研修は行いますか。
田下 新卒メンバーが全員集まるフォローアップ研修は特別実施していませんが、配属部署のチームマネージャーと半期に一度、目標設定とその目標への振り返り、かつ評価を含めた面談を行っています。そこで自分自身の振り返りと今後のキャリアについてかなり細かく話をしています。
──2022年4月入社の新卒採用について、進捗状況を教えてください。
田下 ほぼオンラインでの実施になっています。ただし最終面接は必ず対面で行いますので、最終面接で初めて会社に来た方が9割近くになります。私たちも画面越しでしか会ったことがなかったので、「いざ会ってみたら、思ったより背が高いね」など、イメージとの違いに驚くこともあります(笑)。
中途採用は現場メンバーが最終面接
──Webサイトの中途採用ページを拝見すると、エンジニア職を中心に幅広い募集があります。中途採用は不足しているポジションを補完する目的でしょうか。
田下 そうですね。中途採用が増えている背景には、各部門の業務をより拡大したいという意向があります。当社は2020年に東証マザーズに上場し、成長フェーズに入っているため、多くのチームから「もっと人が欲しい」「こんなことに挑戦したいから新たにこんなスキルを持ったメンバーを増やしたい」といった要望がとても多く寄せられています。
──中途採用の選考ステップを教えてください。
田下 書類選考の後、エンジニアに関しては一度スキルテストを挟み、その後上長による1次面接、役員による2次面接を経て、現場のメンバーによる最終面接の流れになっています。
一般的には、最終面接は役員が担当するという企業が多いと思いますが、当社では一人ひとりが権限を持って動くことや主体性を持って働くことをとても大切にしていますので、共に働くメンバーの目で、一緒に働きたい人を最終決定してもらっています。もちろん最終面接で不採用になるケースもあります。
メンバーが採用に関わることで、親近感が湧いて入社後の教育にもより力が入るでしょうし、応募者側も一緒に働くメンバーに会って魅力を感じられれば、「この人と一緒に働きたい」というモチベーションアップにつながると考えています。実際、最終面接で「インターファクトリーに入りたい」と言ってもらえることがよくあります。
──中途採用の場合、入社後の研修はどのような流れになっていますか。
田下 入社後3日間で社内のオリエンテーションとルール説明、インターファクトリーが大切にしている思いや業界についての基礎知識の研修を実施しています。その後は配属先のOJT研修に入ります。
また当社では師弟制度を設けていて、新卒・中途を問わず新入社員には先輩社員が1名師匠として設定されます。「誰に質問してもいい」と言っても、入社したばかりでは誰に質問すればいいのかわからず迷ってしまうでしょうから、担当の師匠を設定しています。師匠側は弟子の進捗管理や成長度合いを把握しながら育てていきます。
一方でメンター制度も別に設けていて、仕事面での悩みや相談事は師匠に、プライベートや会社生活、業務以外の部分で何か悩みや相談事があればメンターに相談するといったように、社員の相談窓口を2つ設けています。
理念を土台とし、人としての在り方を大切にする社風
──人材を大切にされていることがよくわかります。福利厚生や人事制度などでもこだわりある制度がありそうですね。
田下 ご紹介したい制度の1つ目は「ikunari(イクナリ)」と呼ばれる社内教育制度です。「育つ」と「成る」という自発的な成長をイメージした造語で、「会社側が育てる」というニュアンスではなく、「社員が自発的に育つ」という意味合いを込めています。主にLT(ライトニングトーク:短いプレゼンテーション)大会をメインに実施しており、社員の誰もが登壇できます。インプット・アウトプットの場や、社員研修、業務に役立つ情報を共有する会などを企画・推進して、社員が自ら学びたいと思う場を提供しています。自己成長やスキルアップをするためにも、自分以外へアウトプットすることは、自分ひとりでインプットするよりも大きな成果が出ると考えています。
2つ目は「19時30分ルール」という制度で、原則19時30分以降の残業を推奨していません。夜間の残業を減らすことで日中の生産性と質の向上につなげます。やむをえず19時30分を超えてしまう場合には申請が必要になります。
また当社ではコアタイムなしのフレックスタイム制度を導入しています。もともと朝礼のために朝がコアタイムになっていたのですが、コロナ禍でリモートワークにシフトしたのをきっかけに、働き方をより柔軟にしようとコアタイムなしのフレックスタイム制にしました。コアタイムがないので10時出社の社員もいれば、朝早く出社して16時に退社する社員もいて、所属している部署ごとで調整を行っています。その他「ノー残業デー」の実施など、福利厚生として魅力的な制度はたくさんあります。
産前産後・育児休業に関しても取得しやすい環境で、職場復帰率は100%です。復帰後はお子さんの入園状況などに合わせて育児短時間勤務もできますので、かなり柔軟に働ける環境です。もちろん男性の育児休業体制も整えていて、2週間程度の短期間ではありますが取得した男性社員もいます。
──コロナ禍の社内コミュニケーションで、工夫されたことはありますか。
田下 チームごとに様々な工夫が凝らされています。月に1回対面での集合日を設定しているチームや、コミュニケーションを取る時間を設定しているチームもあります。以前は隣の席に同僚がいて、最近見たテレビドラマの話など業務に関係のない雑談もできていたと思いますが、リモートワーク中心の現在はそういうこともできないので、オンラインミーティング内に15分間、雑談だけする時間を作るなど、チームごとに工夫していますね。
また社内ではチャットツールのSlackを利用しているので、業務中はSlackを使ってのコミュニケーションも活発です。わからないことがあればテキストベースですぐに連絡して、必要に応じて電話やオンラインミーティングを活用しています。
資格は「持っていること」より「どう活かしているか」を重視
──資格に関して、社内で推奨しているものはありますか。
田下 社員全員に取得を義務づけている資格はありませんが、ビジネス系の資格からエンジニア系の資格まで、現在は72の資格に対して支援制度を設けています。その資格を取得すると、合格一時金が支給されるだけでなく、合格した際の受験料も会社負担になります。例えばビジネス系では日商簿記検定1・2級、税理士、公認会計士、行政書士などがあり、エンジニア系では基本情報技術者、応用情報技術者などが対象になっています。資格のグレードに応じて合格一時金を5千円から3万円支給しています。また、グレードが高い資格については上限1万円として月額で資格手当を支給しているものもあります。
当社ではAWS(アマゾン ウェブ サービス)のシステム環境を使っているので、AWS認定プログラムにおいてもいくつかのグレードに分けて対象としています。
──資格取得やスキルアップのための費用補助はありますか。
田下 当社には自己啓発支援金制度があるので、書籍購入やセミナー参加のための費用を年間1人2万円まで会社で負担しています。この制度の目的はあくまで社員のスキルアップ支援ですので、幅広い分野に使用することができます。私も人事担当としてエンジニア系スキルについて勉強する際に、この制度を利用して書籍を購入しました。
──新卒の応募者が学生時代に取得した資格については、どのように評価しますか。
田下 当社では、あくまで参考資料という見方が強いです。もちろんエンジニア職が技術系資格を持っていた際には基礎知識の担保にはなりますが、それ以上に資格取得で得たスキルをもとに、どのようなことに取り組んできたかを重視しています。
中途採用に関しては、特定の資格を持っている方や、ある一定レベルの業務経験のある方といった条件付きでの募集をすることはありますが、この資格を持っているから確実に採用するといったラインの引き方はしていません。新卒採用と同じで、持っている資格をどのように活かしてきたかを重視します。
──最後に、資格取得やキャリアアップをめざしている方にメッセージをお願いします。
田下 「受動的に」ではなく「自主的に」学ぶことは、自己成長の上でとても大切です。中でも資格取得は目標が見えやすいので、成長の第一歩として積極的に挑戦していただきたいと思います。そして資格取得後は、ぜひその資格を活かすことを意識して、いろいろな物事にチャレンジしてください。
[『TACNEWS 』2021年7月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]
会社概要
社名 株式会社インターファクトリー
設立 2003年6月
代表者 代表取締役 兼 CEO 蕪木 登
本社所在地 東京都千代田区富士見2丁目10番2号飯田橋グラン・ブルーム4F
事業内容
クラウドコマースプラットフォーム「ebisumart」事業
従業員数
133名(2021年4月末現在)