日本のプロフェッショナル 日本の会計人|2018年5月号

Profile

山下 剛史氏

税理士法人キャスダック
代表社員 税理士 行政書士 CFP®

山下 剛史(やました たけし)
1976年8月、大阪府生まれ。税理士資格取得後、2003年に「デンタルクリニック会計事務所」として独立開業。2009年、行政書士事務所開設。
2014年、税理士法人キャスダックに改組。2015年、税理士法人キャスダック東京事務所を開設。 著書:『歯科医院にお金を残す節税の極意』、『スタッフのヤル気が歯科医院を発展させる』、『あなたの歯科医院を90日で成功させる』、『キャッシュ最大化計画』、『金持ち歯科医になる!利益を出す経営の極意』(すべてクインテッセンス出版)

顧問先は100%歯科医院に特化。税理士は「子どもの憧れの職業No.1」になれる素晴らしい職業です。

 税理士法人キャスダックの代表社員・税理士の山下剛史氏は、「100%歯科医院専門の会計事務所」を標榜する「こだわりの専門家」だ。2016年の調査によれば、歯科医院業界の年間平均売上高は約4,000万円と言われる中、「約50%の顧問先が売上8,000万円以上を達成」と言うのだから、「こだわり」は大成功と言っていい。山下氏が税理士をめざした経緯から、歯科医院に特化した理由、一般の税理士法人との違いなど、ニッチな世界で活躍する方法、そして今後の展開までを伺った。

会計事務所勤務→会社経営者→独立開業

 「大学生協で資格のパンフレットを見た時、資格を取ったほうが強いんだなと思ったのが最初のきっかけでした。大学は商学部で数字も好きだったので、税理士に興味を持ちました。ほとんどの同期は、トヨタやソニーのような一流企業に就職しようと考えていました。でも、私は会社名ではなくて職業で仕事を選びたかったんです。だってトヨタに入ってしまったら、ホンダのクルマがいいなと思ってもトヨタ車を売らなきゃならないでしょう。それはどうかなぁ、と。もっと『世の中の全員に喜ばれる仕事がしたい』と思いました。
 税理士をめざした理由は、どんな人にも間違いなく喜ばれる仕事だから。受験をする時にはあまり税理士の仕事をよく知らず、節税をアドバイスして税金を安くするのが仕事だと思っていたんです。税金を安くできれば、どんな経営者でも喜ぶじゃないですか。ところが実際には、税理士は適正に税金計算をし、納税のお手伝いをする人で、税金を安くする仕事ではなかったんですよね」
 昔から商売が好きで、中学生の時には、親や学校には内緒で友人にレアなお菓子のオマケのシールを売ったり、大学生の時には、福袋の中身をばらしてネットオークションで売りさばいたりした経験もあるという。祖父が産業廃棄物収集運搬会社を経営していたこともあり、将来は漠然と「社長になりたい」という夢を持っていた。「将来社長になるためには、お金や税金の知識が絶対に必要になる」という考えからも、税理士は最適な資格に思えた。独立開業をするために税理士資格を取得したというより、「最短で社長になるためのパスポート」を取得したという感覚が強かった。
 そんなある日、転機が訪れた。山下氏が会計事務所に勤務して3年ほど経った時のこと、祖父が体調を崩し「会社を継いでほしい」と頼まれたのだ。商売が好きで、社長になりたいという夢もあった山下氏は、会計事務所を退職して祖父の会社を引き継いだ。
「営業に行ってこいと祖父には言われましたが、現場を知らないと営業はできません。ましてや社長であれば『三度の飯より現場の仕事が好き』でないといけないと思ったのです。『現場に行ってきます』と言って、ヘルメットを被り、作業服を来て現場に出ていました。ところが結局、現場の仕事にどうしても馴染めなかったんです。かなり危険な仕事もあるし、重労働で重たい荷物を持たなければならない…。最後まで現場の仕事を好きになることができず、辞める決心をしました」
 「私は異色なんです。変わっているんですよ」と、祖父の会社を継げなかった辛さをはね飛ばすように、山下氏は天性の明るさを見せる。
 再び振り出しに戻った山下氏だが、税理士資格と実務経験があった。そこで「税理士で起業するのが社長になれる一番の近道」と考えて独立することにした。
 どんな会計事務所にしようか、そんな時に頭に浮かんだのが「専門特化」だった。牛丼は「○○家」、カレーは「○○屋」というように、これからは会計事務所も専門特化の時代が来るのでは、と考えた。そこで、以前勤めていた会計事務所で担当が多かった歯科医院のことを思い出した。
「歯科医院のことならちょっとは分かるし、新規開業も多い。医療特化というのはよく聞くけど、歯科医院というもっとニッチに絞り込んで専門特化したらうまくいくのでは」
 こうして歯科医院専門の会計事務所、その名も「デンタルクリニック会計事務所」を開業したのである。

開業初年度の年商はたったの70万円

 山下氏が開業したのは27歳。独立する税理士としては若いほうだ。よく言えばフレッシュ、逆を言えば経験値が少ない。もちろん顧問先も「ゼロ」だ。
「正直に言って顧問先は1件もないし、ブランクがあるので決算書の作り方も、毎年行われる税制改正へのキャッチアップも不安でした」と、開業当時を振り返る。それでも歯科医院専門にこだわったのは、次のような理由からだった。
「開業する時にいろいろ戦略を考えました。歯科医院について検討してみると、特徴がいくつかありました。まずひとつは、経営が厳しいと言われながらもほとんどつぶれないこと。そして新規開業が多いこと。顧問になるには一番最初、開業当初から入るのが入りやすいので、新規開業が多いのはこちらのチャンスにもつながります。さらに理系の有資格者で大学の時に経営の勉強などをしないで開業するドクターがほとんどなので、実際に経営で苦労しているところが多い。こうした特徴をトータルで見ると、歯科医院だけでもマーケットとして大きいのではないかと考えました。そこで特化すると決めたんです」
 まず、歯科医院の経営セミナーに参加。そこを皮切りに集客に努め、自ら経営セミナーを開催し、飛び込み営業、ファックスDM、Webサイトと、ありとあらゆる営業方法を試みた。だが、結果は鳴かず飛ばず。1年目の売上は年商でたったの70万円だった。2年目に入っても顧客は思ったように増えず、預金通帳の残高はどんどん減っていった。また、お金がないので、できることは全部自前でやった。Webサイトも自分で作り、SEO対策も書籍から学んで自ら取り組んだ。名刺もパソコンと家庭用プリンターを使っての手作りだった。
「事務所は自宅兼オフィスのワンルームマンション。そこに中古の複合機と電話とパソコンと自分のベッドを置きました。事務所で打ち合わせしたいというお客様がいると、『会計事務所は守秘義務があるので事務所で打ち合わせはできないんです』と言って、必ず近くの喫茶店で打ち合わせをしていました(笑)。
 その頃、『歯科医院専門なんてやめときゃよかった。せめて医療専門と銘打っておけばよかったな』と、どれほど思ったことか…。もっと間口を広げておけば、一般企業の集客もできたかもしれない。一般企業にも営業をしましたが、何しろ「デンタルクリニック会計事務所」というネーミングのおかげで顧客の幅が広がらない。どうにか知り合いの紹介で、何件かの一般企業が顧問先になってはくれたのですが、半分は顧問契約解除、残りの半分はつぶれてしまいました。そんな顧問先が増えない日がずっと続きました」
 ところがある日、「一度話を聞かせて」とかかってきた一本の電話で転機が訪れる。その電話は、セミナーで知り合った著名な歯科医師からだった。その医師が顧問先になった途端、「あの先生が頼んでいるなら」と歯科医師の口コミで顧問契約が増え、Webサイトからの問い合わせも急増。山下氏の歯科医師対象の経営セミナー、開業セミナーは口コミやWebサイトで広がり、本の執筆、雑誌連載にもつながった。
 独立3年目に事務所を自宅から移転。初めて男性スタッフ1名をパートで採用した。当時、クライアントは20件弱ほどになっていた。その後は、3年単位で事務所を移転する勢いでスタッフが増え、そこからは人の採用にも加速がついていった。やっとデンタルクリニック会計事務所のスタイルが固まり始めたのである。
 そして「デンタルクリニック会計事務所」は、2014年の法人化の際「税理士法人キャスダック」(以下、キャスダック)に名称変更された。

「キャッシュ」と「ウィッシュ」の最大化がミッション

 キャスダックの業務内容は、歯科医院経営全般に必要な幅広いラインナップとなっている。まず歯科医院の申告書作成、納税シミュレーション、節税の提案から財務分析、経営コンサルティング。具体的に言えば、財務分析では、キャッシュフロー経営、歯科医院経営に必要な数字のグラフの作成・分析、他歯科医院との比較によるベンチマークの検討、労働分配率から適正な人件費や目標売上の予測計画など。経営コンサルティングでは、Webサイトやツールを使った増患対策、他歯科医院での成功ノウハウのシェア、歯科医院のスタッフミーティングの運用など。税務調査についても歯科の税務に精通し、名実ともに歯科医院特化を強みとしている。
 特筆すべきなのは、現在の顧問先約170件すべてが歯科医院であること。「業種特化を売りにする事務所は増えてきましたが、100%歯科医院はおそらく日本でもうちだけでしょう」と山下氏は断言する。2015年には東京へも拠点を展開し、顧問先数は関東だけで約30件になった。
 そうは言っても、実は開業から何度となく「他業種にも間口を広げていこうか」と、事務所内で話し合ったことがあるという。
「医科のマーケットを開拓しようと計画して、医科の担当税理士を立て、他の担当をほとんど持たせずに専念してもらったことがあります。そうしたら2年後、『独立します』と。この業界ではよくある話ですよね。仕方ないです、いい勉強になりました(笑)。
 そんなこともあり、よくよく考えてみると、医科で広げるより、歯科で今の倍に増やすほうが楽なんじゃないか。ブランディングできていないところから新規で立ち上げるより、今のマーケットに専念したほうが大きくなるんじゃないか。そう考えていくうちにブレないようになっていきました。」
 ブレずにやっていこう。そう思ったきっかけがある。歯科医院専門でやっていこうと決心しても、やはり苦しくなったり、悩んだりする時がある。ある時、コンサルタントに「医科もやろうかと思っているんですが」と相談したら、「私は反対です。山下さんは歯科専門でやってきた。それなのに医科に手を出すのは、お客さんに対して不義理だと思います。私はいろんな会社を見てきましたが、不義理で大きくなった会社は見たことありません」と言われた。新たな気づきでもあった。そこからはブレずに歯科医院専門を貫いている。
 自分が歯科医院専門を貫いていくとしたら、どんな展開があるのか。スタッフが増えた今思うのは、スタッフが医科に特化した別の会計事務所を作ることだ。
「いろいろな専門に特化した税理士法人のグループ化。医科の中でも細分化して専門特化して、それをグループ化していく夢を持っています」
 それもあってデンタルクリニック会計事務所から名前を変えようと考えた。将来的に違う業種を含めたグループ化の可能性もあるなら、法人化のタイミングで変えたほうがいい。
「何より名前を変えた一番大きな理由は『採用』です。求人で『デンタルクリニック会計事務所』と謳うとなかなか人が集まらない。学生など求職者からするとやはり特殊で、『歯科オンリー』は就職先として魅力を感じにくいと思うんです。私が求職者だったとしてもそう思うでしょう。いろいろな業種を見たいし、いろいろな会社を担当できる会計事務所に入りたい。うちはその逆を行っているのだから変えようと思いました。まずは名前だけで就職先の選択肢に入れてもらえないことは避けるようにしたんです」
 もうひとつの理由は自分だけの言葉を作りたかったから。「キャスダック」は山下氏の造語だ。「お客様の『キャッシュ』と『ウィッシュ』を最大化しようというミッション。キャスダックは、英字表記で「CASDAK」。これはCash Saidaikaの文字を組み合わせた名前で、商標も取りました。キャスダックで検索したらうちしか出てきません」
 専門特化事務所は、学生からすると魅力を感じにくいかもしれないが、メリットがないわけでは決してない。むしろ大きなメリットがたくさんあると山下氏は強調する。
「デメリットはいろいろな業種が見られないこと。歯科には詳しいけど他の業種はわからない点です。一方で、業務ノウハウが蓄積しやすい。しかも、キャスダックはお客様の経営のパートナーとして活動しているので顧問先との距離感がとても近い。それはなぜかというと、特化して経営の話ができるからなんです。だからこそやりがいを感じているスタッフは多いし、お客様からは頼られています。歯科医院専門だからこそ、一般には会計事務所に聞かないようなことまで聞かれるんですね」
 勤務医として良いドクターはいないか。スタッフを採用するならどの媒体を使ったら良いか。息子に誰かいい人はいないか…。相続も含め、ありとあらゆる相談をされる。税務以外の相談が多すぎて、会計や税務の話をほとんどしないで帰ってくることも多い。
「会計事務所の本当のやりがいは、そこにあるんじゃないかと思います。数字を全部見て、あらゆる面でのサポートをする。それができると本当に喜んでもらえるんです。確かに業種はひとつ。でも経験は幅広い。いろいろな相談に乗れるし、頼られる。そこを楽しいと思える人にとって、キャスダックは最高の職場だと思います。ただ、事業再編や組織再編をやってみたい人には向きません。うちには組織再編が必要な顧問先はありませんから。
 勉強する分野がぎゅっと凝縮されているのが専門特化のメリットです。逆に他の分野を勉強する機会は少ない。働く人にとってはメリット、デメリット両方ありますね」

税理士の一番のライバルは…

 顧問先の内訳は、新規開業約4割、他事務所からの変更が約6割と、他事務所からの変更が多いことも特徴だ。新規開業はセミナーがきっかけになることが多い。新規開業の場合、ゼロから事業計画を練り、融資、立地選定の対応・紹介、開業地の診療圏分析まで行う。スタッフ採用の媒体選出、初任給や勤務時間の決定など、すべて一緒に寄り添っていく。だから、開業してたった数年で年収2,000万円を超える顧問先も多い。
 では、他事務所から変更で顧問先になる歯科医院は、どういった理由が多いのか。一番多いのが、「経営のアドバイスをしてもらいたいのに、してくれないこと」だという。
「これは歯科だけではありません。中小企業の経営者は、税理士が経営の相談に乗ってくれると思っています。でも実際は税金の相談には乗りますが、それ以外の経営の相談には乗れない事務所が多いように思います。顧問料を払っているのに、経営のアドバイスがない。そんな不満が歯科医院の場合は圧倒的に多いですね。今の売上でいいのか、果たしてこの売上でやっていけるのか、わからずにずっと経営しているのは、ドクターも不安なんです。
 キャスダックは、そこに家庭教師的な役割で関わります。あれしましょう、これしましょう、とアドバイスするのがコンサルタント。そうではなくて、『これどうなっているんですかね?』とお客様に聞かれたら、それに答える家庭教師なんです。それを私は『顧問』と言うのだと思っています」  単なる計算なら今はクラウド会計や安価なソフトが出てきている。「だから、税理士はAIの出現で『10年後に消える仕事ナンバー2』って言われてしまうんです」と山下氏は指摘する。実は、開業した頃から「税理士の一番のライバルは公認会計士じゃない。インターネットの検索サイトだ」と言ってきた。 「15年前、開業当時にはいろいろな税務相談会で相談者の対応をさせていただきました。相談者がいろいろな質問をしてくるので、たまにわからない質問があるんです。そこでネット検索をすると、すぐに答えが出てくる。私たち税理士より、検索サイトのほうがよく知っているというのは、とてもまずいんですよ。そこに価値がなくなるんですから。
 最近は会計ソフトも進化しているので、いずれ申告までできるようになるのではないかと思っています。開業当初は、今のようなクラウドソフトはありませんでしたが、いずれは申告までボタンひとつでできる時代が来るのではないか。いずれそんな時代が来るのなら、それ以外の強みを作っておかないと生き残れないと思ったんです」
 先見の明とはまさにこのことだ。このときの時代の先取りが、今の成功の礎と言っていい。歯科医院専門のノウハウは、以前に比べて引き出しが広くなり、大きくなった。それでも成長の布石は打っていく。
「会計事務所の業務は、年末調整でも確定申告でも、毎年同じ業務で決まった時期に決まった顧問料が入ってきます。
 だから昨年より今年、今年より来年、来年より再来年、お客様に『なんか新しくなったな』と思ってもらえるサービスを提供していかないとだめだと思います。お客様に飽きられないために、今年はこんなことやっていこうと、仕掛け作りをやっています」
 現在計画しているのは歯科医院のデータベース活用だ。これまでキャスダックに蓄積された情報を、例えばドクターの出身大学別に売上高を出し、どこの大学出身のドクターがどのぐらい売上げているかを算出。偏差値が歯科医院の売上には関係ないという結果が出ればひとつの提案になり、子どもの大学選びの判断材料につながる。こうしたデータをうまく活用して、顧問先に還元していく。サービスは日進月歩で進んでいる。

「子どもの憧れの職業No.1」をめざして

 「日本全国の歯科医院数は、コンビニの2倍以上と言われています。しかし、そんな厳しい環境でも毎年利益を上げている『勝ち組医院』がたくさんあることも事実です。キャスダックと契約している歯科医院の約50%が平均売上の倍以上を達成しています」
 成功する歯科医院には、ある特徴があるという。
「院長が勉強熱心なこと。そして情報への投資を惜しまないこと」
 山下氏は歯科医院の院長を、会社の社長に例える。
「社長は会社を発展させることが仕事。会社を発展させることができない社長は経営者失格です。これからの院長は経営者感覚が必須なのです。
 経営者に必要なスキルは4つ。1つ目はマーケティングスキル、2つ目はセールススキル、3つ目は財務のスキル、そして最後はマネージャーとしてのスキルです」
 マーケティングスキルとは、患者を医院に呼ぶ力。セールスは患者に自費診療などを成約させる力、財務は自ら決算書を読んだり数値管理を行ったりする力、マネージャースキルはスタッフをうまく教育・育成する力だ。これらのスキルをバランスよく磨くことは、院長ひとりでは到底できることではない。歯科医院に造詣が深く、有益な情報を提供してくれるブレーンが必要だ。そこにパズルの最後のピースとして、ピタッとはまってくるのがキャスダックなのだ。
 実は歯科医院と会計事務所の経営はとてもよく似ている。会社の規模感は親方ひとりに社員数名。独立開業に資格が必要なビジネスで、独占業務があるので参入障壁も高い。しかし、手に職があるので、せっかく雇用した社員が独立していく可能性も高い。スタッフ教育で悩む。採用で悩む…。
「歯科医院経営も、会計事務所経営も、やり方は基本的に一緒だから、うちのスタッフは独立してもきっとうまくいくでしょう。実は私も、大きい歯科医院を見て、どうやって大きくしているのかを参考にしたりします。そしてわれわれの事務所が大きくなれば、『山下先生もがんばっているんだから、僕らもがんばろう』とお客様は言ってくださるんです」
 自分たちは顧問先のためにも大きくなる必要がある。現在スタッフ総勢約20人。今後は3年以内に30人をめざす。もともと、山下氏自身は事務所の規模感を大きくしたいと思ってこなかった。自分とスタッフ3~4人で、何とか食べていければいいと考えてきた。
「でも、いざ自分でやってみると、お客様が応援してくれる。それならがんばらなあかん、と思うようになったんです。我々ががんばっている姿をお客様に見ていただく。お客様のお手本となるため、常に走り続けて、元気を与えて、大きくなったらお客様が喜んでくれる。私は、税理士は『子どもの憧れの職業No.1』になれると思っています。子どもの憧れの職業になるためには、まずは仕事にかっこよさを追求しなければ。アイドルのようにね(笑)」
 振り返ってみると、税理士は本当に良い仕事だ。
「まず顧問というのがいい。ずっとお客様とお付き合いしていけるのが楽しい。それに、商品がないから、やり方次第でいくらでも変えられる。だから税理士は本当に良い仕事だと思います。本当に喜ばれるし、絶対に頼られる。しかも、お客様から『ありがとう』と言ってお金をもらえる数少ない職業。だからこそ自分は頼られる税理士になりたいし、社員にはお客様に寄り添って頼られる税理士になってほしいんです。
 計算だけやって安い顧問料で頼られなかったら、楽しくないでしょう。うちは歯科しかやっていないから伝票も統一化されていますし、その効率化された分の時間をお客様のために使えるんです。
 税理士は開業できないとか食えないとかいろいろ言われていますが、失敗するのはやり方がまずいから。初期投資もいらいなし独占業務もある。やり方さえ間違えなかったら、飲食業で成功しようとするより税理士で成功するほうが100倍簡単だと思います。私が歯科専門でブランディングできたように、医科の中でもまだまだ専門特化できます。良いことばかりだと思いますから、資格取得をめざす人は絶対にがんばってください」
 「税理士は子どもの憧れの職業No.1になれる素晴らしい仕事」と言ってはばからない山下氏は、未来の税理士にそう魅力を語りかけた。

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