特集
資格でキャリアチェンジ
―ダイビングインストラクターから司法書士へ―
佐伯 知哉(さえき ともや)氏
司法書士法人さえき事務所 代表
司法書士
1980年生まれ、大阪府出身、高知大学理学部卒。オーストラリアでダイビングインストラクターの資格取得後、パラオでガイドインストラクターとして勤務。帰国後は心機一転司法書士をめざし、司法書士事務所の補助者として働きつつ勉強、3回目の挑戦で司法書士試験に合格。2013年、町田市で独立開業、2016年には事務所を新設して南町田へ移転。相続関係の手続き、相続の生前対策、不動産の登記、会社法人の登記を中心に業務を展開し好調に業績拡大中。2020年にスタートしたYouTubeチャンネルは登録者数7,000人を超える。趣味は筋トレとキャンプ、週6回は早朝からジムに通う。
ダイビングショップ経営の夢を持ち、パラオでダイビングのガイドインストラクターとして活躍していた佐伯知哉氏は、結婚を機にキャリアチェンジを決意した。海に近い地方に住んでも仕事ができるという理由から佐伯氏が選択した職業は司法書士。独立開業して10年、自社事務所を構えWebやSNSで情報発信するなど、「比較的おとなしい人が多い」と言われる司法書士業界の中で注目を集める活躍をしている。「司法書士は人生の選択肢を増やしてくれる資格」と語る佐伯氏に、受験時代のエピソード、独立開業後に事務所を軌道に乗せるまでの手法、司法書士という仕事のやりがいなどについてうかがった。
ダイビングショップ経営が夢だった20代
――現在、司法書士として活躍中の佐伯さんですが、学生時代は理系を専攻されていたのですね。
佐伯 はい。もともと生き物が好きだったので、生物を学びたくて和歌山工業高等専門学校(以下:高専)に進学しました。高専の物質工学科は4年次から化学と生物にコースが分かれますので、僕は生物を選択して、巻貝の一種であるタニシの研究をしました。生態というより農薬の研究ですね。担任教授が、稲作に被害をもたらすジャンボタニシが嫌がる忌避剤を作る研究をしていて、その研究を一緒に行いました。
高専卒業後、実は一度就職をしています。大学へ行きたかったのですが、親の意向によって進学はあきらめ、地元の有機化学会社の研究部へ入社しました。その会社では高専卒業生に対する評価が高く、私は幹部コースと思われていました。でも、入社間もないうちに上司から「お前は将来役員になるから」というようなことを言われて、「将来のレールが決まっているなんて、おもしろくないな」と、気持ちが一気に冷めてしまったのです。入社から3ヵ月後の6月に会社を辞めて、大学の編入試験がある7月までの1ヵ月、受験勉強に集中して、高知大学に編入しました。
――高知大学に進学されたのはなぜでしょうか。
佐伯 高専ではタニシの研究をしましたが、本当は魚類を研究したかったのです。奨学金を借りて、学費がそこまで高くない国公立大学に進学しようと考えました。高専は全寮制で、寮を出て5分で海に飛び込めるような環境だったので、サーフィンに素潜りに、海まみれの毎日。だから大学も「地元の大阪よりも南で海のきれいな場所」という条件で調べて、自然が豊かで魚類の研究も盛んだった高知大学を選びました。
――その当時はどのようなキャリアビジョンを持っていましたか。
佐伯 魚類の研究者になりたいと思っていました。サングラスをかけて船を走らせて「あそこにお目当ての魚がいるぞ!」とアクティブに活躍するイメージを思い描いていたのです(笑)。でも実際の研究者の仕事は、ひたすら魚をルーペで見て、さばいて、お腹の中身を調べ、データを取るような地味な作業が中心でした。自分はもっと現場へ出て人と接するような仕事をしたいと思いましたね。大学3年のときに高専時代からの親友と高知の柏島という所へダイビングライセンスを取りに行った際、インストラクターの方に「上手いね。そのレベルならインストラクターになれるよ」と言われたのをきっかけに、その親友と一緒にダイビングショップをやるという夢を抱くようになりました。
――そうして卒業後、スキューバーダイビングのインスラクターになるためオーストラリアへ向かわれたのですね。
佐伯 はい。渡航にあたっては、費用を稼ぐために自動車メーカーの期間工をしました。工場の中で一定期間、寮に住み込んで働く仕事です。2月の卒業論文発表が終わってすぐ働き始めたので、大学の卒業式も出ていません(笑)。半年働いて120万円位貯めて、それからオーストラリアに渡って約半年後にライセンスを取りました。ビザは1年間あったので、残りの半年はサーフィンをしながらオーストラリアを一周しようと考えていたのですが、指導官から「仕事をしたいならパラオのショップを紹介するよ」と提案されたのです。それなら遊んでいるよりもインストラクターとして経験を積むほうが良いだろうと、オーストラリアを離れてパラオへ行くことにしました。
▲ 東京司法書士会公認キャラクターの「しほたん」も取材に同席。
結婚を機にキャリアチェンジを決意し士業をめざす
――人と触れ合いながら大好きな海で働ける、パラオでの生活はいかがでしたか。
佐伯 パラオは海が美しく天国のような場所でしたね。妻とはオーストラリアで出会って、僕がパラオに行くことになった際に「一緒に来て欲しい」と伝え、パラオ滞在中に一時帰国して日本で式を挙げました。僕が26歳の時です。
ただ、いざ結婚して彼女の人生を背負うとなって、将来を考えてしまいました。子どももほしいけれど、短期大学しかないパラオにいて子どもの教育は大丈夫なのだろうかとか、医療水準は十分なレベルなんだろうかとか、様々な面に不安がありました。また、日本人がパラオでダイビングショップの経営者となるのは厳しいという現実や身体的なリスクなども踏まえると、この仕事をずっと続けるのは難しいという判断に至りました。そうして2008年に帰国し、心機一転、司法書士をめざすことにしたのです。
――キャリアチェンジにあたって、士業を考えたのはなぜでしょうか。
佐伯 10代の頃から漠然と、自営で仕事をやりたい気持ちを持っていました。人の指図を受けて動くのがあまり好きではないので、企業に勤めるよりも独立開業したかったのです。士業の仕事は在庫を持つ必要がないので開業時の初期費用があまりかかりません。また、ある程度難易度が高い資格であれば、誰にでもできる仕事ではないという意味でビジネス的にも安定しやすい。そうした観点から、独立開業に適した資格を探しました。
理系出身なので数字を扱う税理士も考えましたが、税理士は試験合格に加えて2年間の実務経験がないと開業できません。当時は資格を取得したらすぐ独立しようと考えていたので、2年も待っていられないと思い、税理士は候補から外しました。結果的には、独立するまで3年司法書士事務所に勤めたので、実務経験を積んだあとの独立になったわけですが(笑)。
他にも司法試験、公認会計士、弁理士などが候補に挙がりましたが、法人や組織に勤めることが多かったり、都会のほうがニーズが高かったりする資格は、自分にはあまり合わないと思いましたね。やはりいつか海の近くで仕事をしたいという気持ちがありましたから。
――お祖父様が司法書士だったことも、資格の選択に影響していますか。
佐伯 そうですね。祖父が司法書士で、曾祖父が司法代書人という司法書士資格ができる前の仕事に就いていたので、私も学生時代は親に司法書士を勧められたこともありました。当時は特に興味は持てなかったですが、どこか潜在意識で影響を受けていたかもしれませんね。
司法書士試験には受験資格がありませんので、僕のように法律とはまったく無関係なダイビングインストラクターでも挑戦できるし、都会でも地方でもできる仕事内容なので、住む場所も自由に選択できます。複合的に考えた結果、司法書士をめざそうと決めました。
「モチベーション」より「習慣化」
――受験勉強はどのように進めましたか。
佐伯 最初の試験の際は週5回、スポーツジムでインストラクターのアルバイトをしながら、夜間に当時お茶の水にあったWセミナーへ通っていました。1回目の試験は勉強が追いつかなくて合格基準点に届かず不合格。その後は新横浜の司法書士事務所に勤めて補助者をしながら勉強を続け、3回目の受験で合格しました。
――補助者としてフルタイムで仕事しながら、どのように勉強時間を確保しましたか。
佐伯 早朝を勉強時間にあてました。勤め先は不動産売買の登記業務を専門とする忙しい事務所で残業も多かったので、夜は時間が読めません。でも始業時間は毎日変わらないので、平日は朝5時には起きて出勤まで勉強しました。不動産登記業務は、当時まだオンライン申請が普及せず補助者は外回りの仕事が多かったので、電車での移動時間も勉強にあてました。休日出勤はほぼなかったので、冠婚葬祭以外のイベントは全部断って、土・日・祝日は10~12時間勉強しました。
――合格まで、モチベーションをどう維持しましたか。
佐伯 モチベーションが下がるということは、僕の場合あまりなかったですね。1回目の試験では合格基準点に届きませんでしたが、2回目の試験は総合合格点まであと1点というところでの不合格。見方を変えれば「不合格者の中ではほぼトップ」ですよね(笑)。その当時の司法書士試験は合格率が約3%。簡単な試験ではありませんが、受験者が約3万人いたので900人は合格するのです。「僕より成績が上の受験生たちは今回合格して抜けたのだから、来年は自分がトップだ」と考えました。
僕はあまり「モチベーション」というものを重視しません。物事を始めるときには多少やる気が必要ですが、長期間モチベーションや調子を保ち続けるのは難しいので、続けるにはむしろ「習慣化」のほうが大事だと思います。自分にとってやり易い環境を作って、モチベーションに頼らず、勉強を毎日の習慣にする。習慣化すると「やらないほうが気持ち悪い」となるんです。筋トレと同じですね(笑)。そうやって勉強を繰り返していけば、必ず結果は出ると思います。結果、2011年の試験で合格し、2012年12月で勤めていた司法書士事務所を辞めて、2013年1月に妻の地元の町田市で独立開業しました。
着実にやれば司法書士事務所はつぶれない
――開業にあたって、資金はどう準備されましたか。
佐伯 貯金はほとんどなかったのですが、ありがたいことに事務所が退職金を積み立ててくれていました。その退職金と、不足分は信用金庫で借りました。当面は事務所に僕ひとりなのでランニングコストも多くありません。事務所を構えるにあたって、さほど細かいコスト計算はしませんでしたね。また、勤めていた事務所のボスが独立後は外注先として仕事を依頼すると言ってくれたのです。不動産決済の際は有資格者が立ち合わなくてはいけないので、決済案件の多い事務所は慢性的に人手が足りていません。以前から外部の司法書士の方に立ち会いをお願いしていた事務所でしたので、「最低でも月10件は仕事をお願いするよ」と言ってくれました。立ち合いは1件3万円でしたので、開業後も月30万円の売上が確保されている状況はとても心強かったです。
――理想的なスタートですね。ご自身での営業活動もされましたか。
佐伯 飛び込み営業みたいなことはしませんでした。僕自身が飛び込み営業をされるのが苦手なので、自分が嫌なことは人にしたくなかったからです。異業種交流会には少し行きました。他の士業の方と知り合いになって、仕事を紹介してもらったら全力で対応しました。丁寧に、感じ良く、レスポンス速く仕事をすれば、また他の仕事を紹介してもらえます。JC(青年会議所)にも加入しましたが、こちらは仕事を得るためというよりは人脈作りが目的でしたね。
その他に力を入れて反響も大きかったのはWebでの集客です。2013年当時の士業はまだWeb対応が遅れていたので、プロに頼んでしっかりしたホームページを作り込んだところ、比較的短期間で町田市の司法書士事務所の検索トップに出るようになりました。そのため当時はWebからの集客がかなり良かったですね。ホームページ制作費は50万円ほどかかりましたが、司法書士業務を何件か受注できればいずれ回収できます。どんな仕事もそうですが、自分で対応すると手間がかかりそうなことはプロに外注して、自分は本業に注力するほうが良い結果につながると思いますね。
――餅は餅屋のスタンスで経営してこられたのですね。
佐伯 そうですね。僕の事務所は爆発的な成長はしていませんが、起業して10期目の今まで一度も売上が下がったことはなく、ずっとなだらかに右肩上がりで推移しています。この仕事の良い点として、1回つき合ったら余程のことがないと司法書士を替えないということがあると思います。変な対応をされたとか不満があったら替えられると思いますが、誠実な仕事をしていれば顧客が減ることはないので、年数を重ねるほど増えていく。事務所をつぶした司法書士というのは、僕の知る範囲ではいないですね。
――とはいえ司法書士には顧問業務がないので案件数で売上が上下すると思います。そこはどのように安定させましたか。
佐伯 確かにWebの集客やBtoCの仕事は多少上下しますが、BtoBの他士業事務所や金融機関などの仕事は継続的に発注してくれますから、そういう法人チャネルを多く持つようにすれば、売上は安定すると思います。僕の場合は、開業後、徐々に忙しくなってパートスタッフを雇用し始めた頃からチャネル作りに力を入れました。人件費など固定で出ていくお金が多くなると売上を上げる必要が出てきますので、気合いを入れて営業しましたね。不動産会社のリストを作り、電話をかけて会いに行きました。テレアポも、受ける側はうっとうしいと思うのですが、飛び込み営業よりは負担が少ないと思います。また、僕は先方の困りごとを解決しに行くことが営業だと思うので、「登記簿の見方について社内研修もします」とアプローチしましたね。先輩社員が新人に教えるとなると営業活動が滞ってしまうので、専門家による研修には需要がありますし、勉強会もやりましたね。そうやって繋がりを作り、少しずつチャネルを増やしました。
業務領域を絞ってクオリティを高める
――開業3年で南町田に事務所を新設と好調なご発展ですが、なぜこちらに移転したのでしょうか。
佐伯 理由はいくつかあります。当時、南町田は大規模商業施設の「グランベリーパーク」(2019年オープン)が作られることが決まっていたので、このエリアが活気づいていくだろうという予測がありました。また、移転前に事務所を借りていた町田駅の周辺には他にも司法書士事務所がある一方で、南町田周辺にはほぼないため、エリア的なアドバンテージが取れると考えました。法務局からは離れますが、その頃にはオンライン申請も普及していましたし、書類を取得したい場合もインターネットで申請すれば郵送してもらえるので、大きな問題はないと判断しました。でも一番大きな理由は、自宅の近くで働きたいと思ったことです。妻が闘病中だったため、少しでも近くにいてあげたいと思ったのです。子どももまだ小さいので、自宅の近くで働ければ何かあったときにすぐ対応できると考えて決めました
――場所を選ばず働けるのは独立しているからこそですね。現在のお仕事について教えてください。
佐伯 現在は主に相続関係の手続きや、遺言・家族信託といった生前対策、不動産登記、法人の登記を中心にしています。開業当初こそ依頼された仕事は何でもやる総合事務所としてスタートしましたが、司法書士の業務は広範ですからすべてに精通するのは難しいと思います。小規模事務所は業務の領域を絞ったほうがクオリティも上がります。僕は簡裁訴訟代理等関係業務認定会員ではありますが、業務としては行っていません。領域を絞って専門外の分野は他の専門家にお願いする形にするほうが、「それなら相続の案件をお願いできない?」と、仕事を仕事で返してくれる関係性も生まれると思います。
――専門領域を決める際、相続と不動産登記をメインにしたのはどんな理由からでしょうか。
佐伯 不動産登記は補助者時代から数多く手掛けた業務なので知識も経験値も十分あります。また、先ほどお話したようにBtoB案件が多く事務所経営をある程度安定させることができるので、司法書士事務所としては持っていたほうがいい仕事だと思っています。
ただ、僕個人としてはBtoC案件が好きなのです。一般のお客様は、ご自身でも何に困っているのか整理できていない状態で相談に来られることが多いので、そういうときこそ私たちの出番です。相続のご相談をされるお客様の家族関係のお悩みを司法書士という立場でお聞きして、解決のお手伝いができることにやりがいを感じます。僕だけでなく事務所で働いてくれているスタッフも、定型的業務だけでなくいろいろな仕事に携われるほうが楽しいし、経験値を上げられるはずです。
――定型的な業務と柔軟な対応が必要な業務は、経営面からもやりがいの面からも、どちらも大切なのですね。これからのビジョンについてはどうお考えでしょうか。
佐伯 相続分野を伸ばしていきたいと思っていますが、中長期的な目標は立てていません。先行きの見えない時代ですので、5年後、10年後の計画をしても上手くいかない可能性もあります。ですから、日々自分の仕事を着実に少しずつ改善していこうというスタンスですね。現在、事務所は正社員が有資格者1名と補助者2名の計3名、そしてパートの方が1名で、僕を入れて5名ですが、もう少しだけ規模を大きくしたいとも思っています。自分が完全に実務から離れない規模、大体7~8名位の事務所にしたいと考えていますね。経営だけにはなりたくないし、プレイングマネージャーでいたいと思います。実務知識で他のメンバーに負けるのも嫌ですしね(笑)。
▲ 2023年7月のメンズフィジーク(ボディメイク)の大会では東日本5位の成績(向かって右端が佐伯氏)。
コロナ禍を機に始めた動画配信はチャンネル登録7,000人超
――YouTube『司法書士さえき事務所チャンネル』も好評ですね。
佐伯 ありがとうございます。2020年の始め、「この1年は相続に関するセミナーに注力していこう」と考えていたのですが、その矢先にコロナ禍になって人を集めてのイベントが開催できなくなりました。ゴールデンウイークの予定もキャンセルになり時間ができたので、思い立ってYouTubeを始めることにしたのです。相続関係を押したかったので相続や遺言をテーマに動画を配信したところ、司法書士でYouTubeをやっている方があまりいなかったこともあってチャンネル登録者数がどんどん伸びましたね。当初は企画・撮影・編集とすべて自分で行い週5本アップしていましたがもの凄く大変だったので、チャンネル登録者が1,000人になった時点で編集作業は外注に切り替えました。プロに頼むとクオリティも違うし圧倒的に効率が良いですね。外注と同時に配信頻度も週1回にペースダウンしましたが、すでに200本以上コンテンツがあるので、過去のコンテンツを見に来てくださる方もいらっしゃいます。
――発信活動をすることで、どんな効果がありますか。
佐伯 文字情報は整理されて分かりやすいのですが、動画は視覚からも情報を伝えられるので、雰囲気、話し方、事務所内のイメージなど、言語化できないことも伝わるし、拡散もされやすいので認知度が上がります。特に同業者にはよく知っていただいていますね。一般の方に向けた動画が多いでのすが、資格受験や司法書士開業をテーマにした話もしているので、資格受験生や同業者の方の視聴も多く、事務所メンバーのリクルートに使えることもあると思います。
――X(旧Twitter)は、ボディメイクを押し出したアイコンやアカウント名にされていますね。
佐伯 はい(笑)。以前はダイビングインストラクターやジムのトレーナーをしていたのに、受験中は勉強と仕事で忙しく運動ができなくて、合格した頃にはだらしない身体になっていました。事業主となったら身体が資本になるだろうということで健康のためにジムに通い始めたのですが、週3回通えばOKとしていたのが徐々に増えて週6回になり、趣味が筋トレになり、ボディビルの大会にも出場するようになりました。事務所には筋トレ用のスペースもありますし、YouTubeでも筋トレ動画を出しています。司法書士に筋肉を求める方はいないみたいで、アクセスは少ないのですが、「司法書士なのにこんなことをしている人がいるんだ」と認知してもらえますし、不動産業界には割と筋トレ好きな方も多いので、コミュニケーションのきっかけにもなっています。
――健康面だけでなくマーケティング面でもいい効果があるのですね。最後に、キャリアに悩む方や資格取得を考えている方にメッセージをお願いします。
佐伯 司法書士試験には受験資格がないので、僕のようにそれまで法律に縁がなかった人でも挑戦できる資格です。地方にも都会にも仕事があって、開業もできるし勤務者としても働けます。仕事の選択肢、もっと言うと自分の人生の選択肢が増える資格だと思います。セカンドキャリアを考える人や人生をリスタートさせたい方にはおすすめの資格なので、めざすと決めたらぜひ全力でがんばってほしいですね。応援しています。
[『TACNEWS』 2023年11月号|特集]