特集 「健康経営」にも取り組む中小企業診断士×行政書士の活躍
盛澤 陽一郎(もりさわ よういちろう)氏
ビーン合同会社
ビーンコンサルティング
ビーン行政書士事務所
中小企業診断士 行政書士
1986年1月生まれ、東京都出身。2008年、早稲田大学商学部卒業。新卒で金融機関に勤務したのち、税理士事務所に転職。2014年、中小企業診断士試験合格、同年、中小企業診断士登録。その後、公的機関に勤務し、2019年8月、中小企業診断士として独立開業。ビーン合同会社、ビーンコンサルティングを開設。2022年、行政書士試験合格。同年3月、行政書士登録し、ビーン行政書士事務所を開設。 ▶著書『鬼滅の刃から学べ! チームを幸せに導くリーダーのあり方』(ロギカ書房)
働きながら中小企業診断士資格を取得し、2022年春には行政書士にも登録。2つの資格を手に、自由な発想で業務展開しようとしている盛澤陽一郎氏。「資格の価値を十分に自覚し、使い倒したい」と語る盛澤氏の、資格を取得した経緯、重ねてきたキャリア、そして独立開業後のワークスタイルや今後の方向性などについてお話をうかがった。
簿記や経済の勉強を通じて経営に興味
──中小企業診断士(以下、診断士)として活躍しながら、2022年3月には行政書士にも登録された盛澤さん。診断士試験が初めての資格受験でしょうか。
盛澤 高校時代に日商簿記検定2級に合格したのが最初です。高校が商業科でしたので、商業簿記や経済などの授業があり、経営に興味を持ちました。そのため大学選択の際は、経営やビジネスとの距離感が近いと考えて早稲田大学商学部に進学しました。
──大学卒業後の就職先として信託銀行を選ばれていますが、その理由を教えてください。
盛澤 多くの企業や人と関われる金融機関で仕事をしてみたいと考え、保険会社なども検討しました。最終的には幅広い支援メニューを持っていて、個人の資産運用にも法人の金融にも携われる信託銀行に新卒で入行しました。
──信託銀行ではどのような業務に携わりましたか。
盛澤 入行後はリテールと言われる個人向けの保険商品・投資信託の販売を中心に経験し、その後法人向けの社債管理の仕事を担当しました。
当時の銀行は預金額の獲得から手数料ビジネスへの転換期にありました。顧客の相続に関われる喜びはありましたが、民間企業ですから数字も追わなければなりません。顧客のことよりも自社の利益を優先させることが増え、次第に仕事内容に違和感を覚えるようになりました。
そのさなか、勤務先の信託銀行が他行に合併されることになったのです。その後の待遇などに不安を感じたため、自身の将来を考えて合併を機に退職することにしました。
──退職後の進路はどうされましたか。
盛澤 今度は勤め先の状況に振り回されないように、そして何があっても食べていけるように、資格を取得して手に職をつけたいと考えました。そこで、高校・大学で学んできた商学の知識を活かそうと思い、税理士事務所に転職しました。
当初は働きながら税理士資格の取得をめざすつもりでしたが、改めて調べると資格取得までの道のりの長さに驚きました。税理士になるには5科目の合格が必要で各科目の合格率も低いため、毎年1科目ずつ合格すると仮定すると5年がかりになる計算です。
一方で、早く自分のアイデンティティを確立したい、専門分野が欲しいという思いにも駆られていました。そこで、もう少し短期間でめざせるような、経営に関する資格を取得しようと方向転換したのです。
──どのようにして資格を選びましたか。
盛澤 大型書店の資格コーナーに行って調べました。自分の成長のためにも勉強のしがいがありそうな資格にチャレンジしたいと思い、大学で学んだことを活かしつつ、知識をアップグレードできそうな資格として、診断士に着目しました。書店に並ぶ参考書を見て、簡単ではなくてもがんばれば手が届くのではないかと考え、勉強を始めることにしました。
税理士事務所に勤務しながら診断士をめざす
──税理士事務所勤務と診断士受験を両立されたのですね。
盛澤 はい。税理士事務所に入った当初は実務を学びながら税理士受験をしようと考えていましたが、大幅な計画変更になりました。今でこそ税理士と診断士には関連があることを感じていますが、当時は仕事と受験勉強の二重生活で忙しい状況でした。
1年でも早く資格を取得したかったので、毎朝早く起きて1~2時間、仕事を終えて帰宅後に2~3時間、そして土日は丸々1日、勉強に取り組む日々が続きました。また、多角的な理解を深めたいと思い、日商簿記検定やITパスポートなども同時に勉強しました。
──診断士試験合格までの経過を教えてください。
盛澤 1年目は本試験まで時間がなかったので、苦手な法律科目を重点的に勉強して科目合格を、2年目で1次試験合格をめざしました。ですが、2年目も一部科目を取り逃し、3年目で1次試験と2次試験に合格することができました。
──税理士事務所での実務との両立はいかがでしたか。
盛澤 本試験の実施される時期がお客様の決算期と重なっていて、勉強時間がまったく取れなかったですね。土日も出勤、平日も終電で帰って朝早くに出勤という状態でしたので、通勤時間中くらいしか時間が取れず、心身共に苦しい時期でした。
──ハードな受験生活を乗り越えて合格されたのですね。診断士登録のために必要な実務補習はどのように行ったのですか。
盛澤 実務補習が実施される期間が確定申告期と重なっていることもあり、スケジュール調整が難しいだろうと感じましたが、一度は経験したいと考えて5日間のコースを受講しました。足りないぶんは担当していた関与先の事例を診断する実務従事の形で登録しています。
結局、税理士事務所には4年弱いましたが、診断士の世界を見てみたいと思い、診断士登録後に事務所を退職しました。
公的機関で様々な支援業務を経験
──診断士として、どのようにキャリアを重ねたのですか。
盛澤 税理士事務所をやめる頃には、診断士の勉強会やイベントに参加するなど、診断士活動も徐々に充実してきました。
そこで、より診断士らしい仕事をしてみたいと思い、東京都の中小企業向けの施策を行う公的機関である東京都中小企業振興公社に転職しました。民間企業とは異なる考えのもとで仕事をする、公的機関ならではの新鮮な経験をしましたね。売上至上主義や過度な社内競争もなく、純粋に中小企業の経営をどうサポートするかに集中して、経営者に寄り沿う仕事に楽しさとやりがいを感じました。
──具体的にはどのような業務を担当されたのですか。
盛澤 コーディネーターとしての仕事が多かったのですが、3つの業務に携わりました。
最初の業務は商店街の振興に関わるもので、商店街のお店の経営相談や、お祭りやイベントを通じて商店街のファンを増やし、お店の売上につなげる企画のお手伝いなどを行いました。私は下町生まれ下町育ちなので、人と人とのコミュニケーションを大切にしたいという思いとマッチしたこともあり、土日も商店街のイベントをはしごするなど、文字通り走り回りました。この仕事では「テナントとテナントオーナー」「若年層と高齢層」といった利害関係で対立することも多く、その調整の難しさも味わいました。
──次に担当されたのはどのような業務ですか。
盛澤 東京・丸の内の皇居の近くに、「TOKYO創業ステーション」という起業に興味がある方から起業の準備を進めたい方までの相談施設があり、そこで相談に乗ったり、起業・創業に関するイベントやセミナーなどの企画・実施をしたりしていました。ちょうど小池百合子都知事が就任したタイミングで、東京都の創業率を上げる、創業者を増やすという方針が打ち出されていました。国も女性活躍を掲げ出したこともあり、「女性創業者を増やす」という政策目標を実現するための仕事をしました。
──その後はどのような業務を担当されたのですか。
盛澤 大田区の製造業を中心とした企業の新製品開発支援を担当しました。大田区は自動車や航空製品、宇宙関連などの下請け企業が多く、比較的大きな設備や高い技術力を有しているという特徴があります。しかし私が担当した頃、大田区の製造業は全盛期に比べると企業数にして約3分の1に減少しており、下請けからの脱却が注目されていました。そこで、自社製品を作ることによってメーカーへの転進を促し、製品の開発から販路開拓、デザイナーとのマッチングなど、幅広いサポートをさせていただきました。
──公的機関には何年間勤務されたのですか。
盛澤 5年間です。スタッフは通常、現場の次は内部の事務系の仕事に異動するのが一般的ですが、私は幸い複数の現場部署を経験することができました。でもさすがに次の異動では事務系の仕事になり現場から離れてしまうだろうと考え、それならばと独立を決意しました。
また、公的機関だからこその考え方なのですが、「公平な支援」でなければならないことにも限界を感じていました。税金で運営される公的機関ですから、全員に同じレベルの対応をすることが求められます。逆に言えば、どんなに困っている人がいても、その人だけに特別な対応をしてあげることはできないのです。そのため自分自身のスキルアップにも限界を感じました。支援の際は独立診断士の方と仕事をする機会が多く、彼らが自己研鑽を重ねながら生き生きと仕事をしている姿がまぶしくて、自分も挑戦してみたいという気持ちが大きくなっていきました。
ビーンコンサルティング誕生
──その想いから独立開業されたのですね。
盛澤 2019年8月に独立開業しました。屋号は「ビーンコンサルティング」とし、翌年「ビーン合同会社」も設立しました。「ビーン」という名称にしたのは、私の外見が映画『Mr.ビーン』の主人公に似ていると言われるためです。ユニークな名称で覚えてもらえるよう、差別化を考えたわけです。
──おもしろい戦略ですね。独立当初はどのようにして仕事を獲得したのでしょうか。
盛澤 独立前は公的機関勤務でしたので、副業は禁止されていました。企業内診断士の方のように、週末に個人として活動するといったやり方はできなかったのです。
そこで開業当初は、創業支援で得た知識や経験を活かすことを意識し、まずは今までに培った能力が活かせる分野で固定収入を得ることを意識しました。
──具体的にはどのような業務ですか。
盛澤 業務委託として、補助金コンサルティングと人材コンサルティングの仕事を週2~3ずつ掛け持ちして固定収入を確保しました。そして同時進行で指名の仕事の獲得へのチャレンジを続けました。資格取得直後から人脈構築を意識して活動してきましたので、幸いなことに知り合った多くの方々から紹介を受けたり、指名を受けたりするようになって仕事が増えていきました。そのぶん徐々に業務委託を減らして完全な独立状態に移行しました。
自分の意志で仕事を選び、多岐にわたる業務分野を確立
──現在はどのような分野の業務をされているのですか。
盛澤 様々な仕事に関わることを重視していて、分野としては経営相談、経営診断、健康経営、融資・補助金サポート、社員研修、事業承継など多岐にわたっています。
診断士には独占業務がありませんが、そのぶん、幅広い仕事に関わることができる可能性がある資格です。独立したからこそ自分の意志で仕事を選べる、自身のキャリアを切り拓くことができると考え挑戦してきました。その結果として多岐にわたる仕事に関われるようになりました。
──資格の特徴をうまく活かしたわけですね。商工会議所からの依頼もあるのでしょうか。
盛澤 中小企業の事業承継のご相談が多い印象です。親族内で承継するパターンもあれば、後継者はいないけれど会社を残していきたいのでどうするかと考えるパターンもあります。ただ、純粋な意味で事業承継だけに的を絞った対応なのかというと、そうではありません。その裏に、様々な課題を抱えているケースがほとんどですね。
──どのような課題ですか。
盛澤 後継者がいない会社であれば、そもそも人を雇用できる状態ではなかったり、後継者がいても赤字続きで継ぎたくない・継がせたくないくらい経営状態が悪化していたりするケースが多々あります。それに追い討ちをかけるようにコロナ禍で借入が増え、むしろ精算してしまったほうがいいのではないかというケースも見受けられます。ですから、事業承継の相談から入っても、本当に必要なのは経営改善だったということもよくあります。
──事業承継を進める以前に、経営改善が必要なケースもあるのですね。
盛澤 はい。むしろ単純に後継者がいなくて困っているというだけのケースはレアですね。まずは資金繰りを良くしたり、採用力を強化して社員の若返りを図ったりと、会社が続く形作りを考える必要があります。
つまり、「どうやって会社を残していくか」がまずあって、残せるのであればどのような方法で次につなげるかを考えます。もちろん、残せない場合には売却するのか、精算するのかを考えなければなりません。会社を続けても赤字が増え続けるなら、リタイアすることも実際の選択肢として提案します。
ダイエット経験をコンサルティングに活かす
──先ほど「健康経営」にも関わっているとうかがいましたが、これには盛澤さんご自身のダイエット経験が活かされているそうですね。
盛澤 その通りです。実は私は社会人1年目の頃に体重が最高110kgになりました。とにかく食べるのが好きで、普通の人の倍の量を食べているような状況だったのですが、そこから一念発起して運動と食事に気をつけ、1年間で40kg落とすことができました。
──1年間で40kg減はすごいですね。どのような方法を採られたのですか。
盛澤 運動は踏台昇降から始めました。体重が100kgを超えると、歩くのもきつくなりますから、まずは踏台昇降で体重を落としていき、そこからジョギングやサイクリングを始めて、さらにスイミングを取り入れて…、という流れで進めました。
食事については、量と内容に気をつけることと、野菜をきちんと摂ることです。当たり前の食事を当たり前にする。特別なことをするわけではなく、この「当たり前」をしくみ化することがとても大切です。例えば毎朝必ず体重計に乗るとか、週に1度は運動をするとか、健康的な生活を習慣化することです。これらの習慣を今でも続けていることで、体重を維持しています。
──そうしたダイエット経験が今日の仕事にもつながっているのでしょうか。
盛澤 振り返るといろいろなところでつながっているように感じますね。ダイエットはとてもストレスがかかる取り組みですが、ダイエットの成功体験を通じて、ストレスマネジメントができるようになりましたし、「取り組みを習慣化することで無理なく続けられる」という自信にもつながりました。
また、ダイエットと経営コンサルティングには非常に共通している点があります。それは、すぐに効果が出たり、一発逆転したりする絶対的な方法はないということです。
──コンサルティングにもつながるのですね。
盛澤 はい。健康経営のコンサルティングでは自身のダイエット経験を活かして、従業員の健康の維持・増進をサポートしながら、業務効率の改善などによって長く働ける職場作りのお手伝いをしています。
ダイエットで成果を出し続けることは、会社の利益を出し続けることとよく似ていて、どちらも結果を出すためにはそれまでと違う習慣・しくみに変える必要があります。太る人が太る習慣を続けてしまっているように、赤字体質の企業は赤字になる習慣を続けてしまっているので、改善するためには「適度なストレス負荷」の範囲で改善していく必要があります。早くどうにかしたくても、「適度」でなければ途中で挫折してしまう可能性が高くなりますからね。このあたりもダイエットと共通しています。
──過度なストレスにならない程度にしくみを変えるということは、つまり急激な変化は求めないわけですね。
盛澤 その通りです。ダイエットも経営改善も、無理なくできる範囲で地道に継続するしかありません。ただ、即効性がないぶん、本当に成果が出るのか不安になると思いますし、取り組み当初は順応するためにパフォーマンスが落ちたり停滞したりする時期もありますので、見守る時間も必要です。ですが、地道に続けていくことで成果が出始めれば自信につながりますし、前向きになります。このあたりはダイエットと関連させてお話しすると、とても共感してもらえます。
また私自身が40kgのダイエットに成功したということは、何か一つ信念を持ってやり遂げることのできる人だととらえていただけますので、お客様からの受けもいいです(笑)。今もダイエットを続けていてリバウンドもしていないので、ストイックな人に見られることもありますが、そんなことはありません。しくみ化・習慣化のコツが掴めれば、ストイックな取り組みを続ける必要はないと思っています。
──独立のタイミングでお子さんが生まれたとお聞きしました。
盛澤 そうですね。独立したのは子どもが生まれたばかりのタイミングでしたから、家事・育児をしながら働く「主夫」的な働き方をイメージしてスタートしました。ですから、所得目標も低めに設定し、子どもの成長に合わせて少しずつ家事・育児の割合を減らし仕事を増やしていく計画を立て、精神的な負荷を下げようと想定していました。
── 「主夫」的な働き方は今も継続しているのでしょうか。
盛澤 はい。子育ても私がメインですし、炊事、洗濯など家事も私が行っています。仕事に関しては想像以上に依頼が増えたことと、コロナ禍によって在宅でできる仕事が増えたことから、当初の計画はいい意味で前倒しに進みました。子どもが小学生に入る頃までを見据えて、今後も「主夫」業とのバランスを取りながら仕事をしていく予定です。
士業連携を強化するために行政書士資格を取得
──現在、注目しているのはどのような分野ですか。
盛澤 士業連携です。コロナ禍で士業の環境が大きく変化するとともに、経営に対する支援ニーズは高まっていると感じています。士業への影響として見ると、税理士業界ではクライアントによる顧問税理士の切り換えが進んでいるようです。背景としてはコロナ禍直後の給付金や融資制度などの情報提供・対応不足によって、クライアントがより有益なサポートをしてくれる税理士を求めるケースが多かったためと考えられます。また、雇用に関わる助成金対応ができる社会保険労務士(以下、社労士)は依頼が増えていますし、併せて経営支援の補助金の相談を問い合わせる経営者が増えています。
厚生労働省管轄の助成金は社労士、経済産業省管轄の補助金は診断士が得意とする分野ですが、経営者の方にとってはその区別は難しく、すべてまとめて対応してくれる相談相手を求めているのが現状ですね。
──コロナ禍によって、士業に求められる内容に変化が生まれたのですね。
盛澤 そうですね。クライアントの要望に応える対応力が重要になってきていると考えられますし、診断士を求める声が増えていると実感しています。実際、コロナ禍を通じて診断士の価値は大きく向上したのではないでしょうか。コロナ禍直後は給付金の認定機関として診断士が認知され、全国各地の経営相談窓口に配置されました。また給付金だけでなく補助金も多くの企業や個人事業主に知れ渡ったことから、申請を支援する診断士が注目されるようになりました。
──診断士に期待と注目が集まっているのですね。
盛澤 そう思います。私自身もこの数年で弁護士、税理士、社労士、司法書士、行政書士など多くの士業の提携先が増え、紹介案件も大幅に増えました。そうした士業の皆さんに診断士の可能性を知ってもらうことで、補助金だけでなく、事業承継やM&Aのお問い合わせもいただくようになりました。また他士業と力を合わせることでクライアントへの提案の幅が広がり、トータルサポートができるようになりました。そのような経験もあり、士業連携には可能性と将来性を感じています。
──行政書士資格を取得したのも、士業連携の一環でしょうか。
盛澤 受験のきっかけは、他士業の友人が業務拡大を見据えて行政書士を勉強していることを知ったからです。私自身も法的な問題に相対する場面が増えましたし、他士業の友人と一緒に仕事をしたいという思いのもと、法律に対する苦手意識を払拭すべくチャレンジしました。行政書士登録をすることで、連携する仲間をもっと増やしていきたいと考えています。
──今後はどのような業務をお考えですか。
盛澤 私の一番身近な顧客は、他士業の仲間であると考えています。お互いの価値観を尊重しながら、本当にクライアントのためになる仕事をしていきたいので、まずは他士業の友人と協業していきたいと考えています。そしてアフターコロナを見据えて、診断士としても相談をいただいている外国人材の採用や相続に関する業務に取り組んでいきたいですね。
また、税理士・公認会計士、社労士の仲間とともに今夏には人気コミック『鬼滅の刃』を題材とした経営のエッセンス本を出版する予定です。士業同士のシナジーを形にして、その輪を広げていければと思っています。
資格がなければ独立も考えなかった
──最後に、現在資格取得をめざす方々に向けてアドバイスをお願いします。
盛澤 私は診断士、行政書士ともに本試験で何回も不合格になっています。診断士試験で苦労したので行政書士試験は一発合格を、と意気込みましたが、1問足らずの不合格が何回も続きました。その間、診断士資格だけで十分ではないか、受験を続ける意味があるのかと自問自答し、途中でやめようかと思ったことも何回かあります。その度に励ましてくれたのは、家族や友人など周りの声でした。今では友人たちと仕事で関わり、期待に応えることが自分のモチベーションになっています。
診断士資格を取得してから、単に仕事を続けるだけでは会えないような人脈を築き、様々な業務にチャレンジすることができました。これは資格を取得してみないとわからない世界ですし、資格がなければ独立も考えなかったでしょう。見えなかった世界、可能性あふれる世界に行けることが、資格取得の一番の醍醐味だと感じています。
──資格を取得することで、新たな世界が開けたのですね。
盛澤 そうですね。資格を取得するまでは有資格者が雲の上の人のように見え、自分にできるのか、その能力はあるのかと不安でした。勉強の過程は苦しいものでしたが、振り返ってみると資格以外の多くのものを得られたように感じています。
自分が成長できたこと、自分のことを深く知ることができたこと、がんばりきれる自信が得られたこと、励ましてくれる友人や一緒に仕事ができる仲間ができたこと……。資格取得は間違いなく人生のターニングポイントでした。
今、私は行政書士として新たな挑戦を始めています。資格取得に苦労したからこそ、診断士同様、資格の価値を十分に自覚し、使い倒そうと思っています。皆さんもぜひがんばってください。
[『TACNEWS』 2022年8月号|特集]