特集 グローバル人材が活躍する士業グループ
鎌田 尚樹(かまだ なおき)氏(左)
税理士法人決断サポート
税理士
1974年生まれ、三重県出身。1997年、三重大学卒業。2005年、税理士試験合格。2006年、税理士登録。
鄭 暁琳(てい ぎょうりん)さん(右)
1995年6月生まれ、中国広東省出身。2018年5月、全経簿記能力検定1級合格。2019年9月、三重県四日市市の決断サポートに入社。2021年10月、社会保険労務士試験合格。2022年4月、社会保険労務士登録。
「資格の学校TAC」ブランドで教育事業を行うTAC株式会社。そのグループ会社、TAC大連(泰克現代教育(大連)有限公司)が実施している「TAC中国新卒人材採用プログラム」を利用して中国から来日し、三重県四日市市の士業グループに就労、社会保険労務士として活躍している方がいる。中国で全経簿記1級に合格し、もともとは税理士をめざしていたという鄭暁琳(てい ぎょうりん)さんだ。鄭さんは2020年3月の来日後、社会保険労務士の勉強を始め、2021年に一発合格している。鄭さんが勤務する決断サポートグループの鎌田尚樹税理士と鄭さんに、プログラムを通じたグローバル人材の受け入れや人材活用についてうかがった。
「作業着を着た士業グループ」
──この度、TAC中国新卒人材採用プログラムをご利用くださった税理士法人決断サポート様ですが、法人並びに決断サポートグループについて教えてください。
鎌田 代表である税理士・上田泰弘が2005年4月、三重県四日市市で税理士事務所を開設したのが決断サポートのスタートです。2008年1月には法人化して税理士法人決断サポートを設立しました。その後、行政書士、弁護士、司法書士、社会保険労務士(以下、社労士)、公認会計士の各事務所および法人が参画し、決断サポートグループとして活動するほか、コンサルティング会社も立ち上げるなど業務のすそ野を広げています。
東京や大阪をはじめ、私たちと同じ東海地区でも名古屋などでは様々な士業が集まり、協働してサービス提供をしている事務所や法人があります。しかし三重県にはそのようなサービス提供をしているところがなかったため、私たちが幅広い士業と協働することでこの地域のお客様のお役に立てるのでは、と考えたのがグループの始まりです。ただ、複数士業のサポートが必要になる案件はそう多くは発生しない地域ですので、個人の税理士事務所と同じような価格で、何か困りごとが発生したときに弁護士や司法書士、社労士、行政書士と連携して解決のお手伝いをするという形をとっています。
──ワンストップサービスを展開しているのですね。
鎌田 そうですね。お客様である中小企業の経営者は、何か困ったことが起きた場合、法律問題は弁護士か司法書士に、税金のことは税理士に、労務の案件は社労士に、などとご自身の抱えられている問題を切り分けて相談するのは大変です。ですからワンストップでサービス提供できることに意味があるのです。当グループの税理士法人の職員が月次税務で経営者の方とお会いしお話をうかがう中で、これは他分野の専門家の協力を仰いだほうがいい問題だと判断したら、各士業につないでいきます。こうしたハブ機能、窓口機能として、税理士法人の職員の役割を位置づけています。お客様企業からは、税理士法人としての月次税務に加えてそうしたオプションメニューともいえるバックボーンがあることをご評価いただいています。
──三重県内のお客様がメインなのですか。
鎌田 お客様の9割近くが三重県内の中小企業ですね。事務所がある四日市市は北勢地域と呼ばれる地域ですが、三重県全域にお客様がいます。残る約1割強は名古屋市など愛知県のお客様ですね。
──どのような業種のお客様が多いのでしょうか。
鎌田 地域ならではの特徴ですが、建設土木製造業のお客様が多いですね。四日市市はコンビナートがありますから、関連する配管業やメンテナンス業のお客様も多く、そういった業界のお客様と仕事をするのにスーツはなじまない。ですので今日もこの通りですが、作業着を着て仕事をすることが多いです。そのほうがお客様とコミュニケーションも取りやすいですし仲良くしてもらえます。「作業着を着た士業」として、お客様と同じ目線に立ち、問題意識を共有しながら仕事をしていくのが私たち決断サポートです。
──税理士法人の業務内容について教えてください。
鎌田 税務顧問が中心ですが、そこから派生して補助金申請や再生計画、金融機関との交渉なども行います。まだ組織が小さかった頃は税理士法人の職員がすべてを担当することもありましたが、今では各士業法人・事務所、そしてコンサルティング会社もありますので、案件ごとに専門スタッフが担当しています。そういう意味では役割分担ができて各スタッフの守備範囲が明確に分かれてきており、グループ全体として効率的に動く体制ができつつあります。月次税務を担当する顧問企業は400社弱まで増やすことができました。
──現在、スタッフの方は何名いらっしゃるのですか。
鎌田 グループ全体では35名ほどで、税理士法人単体では20名です。税理士は4名在籍しています。1人で複数の資格を持っているメンバーもいますが、グループには弁護士4名、司法書士1名、公認会計士1名、弁理士1名、社労士は鄭さん含め2名、行政書士1名、CFP1名が在籍しています。
日本の簿記会計に興味
──決断サポートグループは中国にも現地法人がありますが、どのような事業をされているのですか。
鎌田 代表の上田が、独立する前から中国に進出する日本企業の支援をしていたことから、2010年10月に中国関連業務強化のために「大連明決信息咨詢有限公司」を設立しています。当初は上田自身が董事長(とうじちょう:法人の業務を執行し、法人を代表する責任者)を務めていましたが、現在ではご縁があって一緒に仕事をしてきた中国の方が董事長になっています。
中国では先にお話しした中国に進出する日本企業の支援を行うことを主目的としていますが、日系企業が必要としている日本語と日本の会計業務を理解する現地スタッフの育成も行っています。2012年からは公益社団法人全国経理教育協会(全経)の協力のもと、上海を皮切りに大連でも全経簿記検定、全経日式会計能力検定試験(全経簿記)の実施と日式簿記教育の普及活動を行っています。実はTAC株式会社とも業務提携を結んでいます。
──TACとはどのような業務に取り組んでいるのですか。
鎌田 「泰克現代教育(大連)有限公司」(TAC大連)と現地人材会社と手を組み、中国人が日系企業や対日企業の会計担当として活躍する場へ導く事業を行っています。その一環が、全国経理教育協会主催で、TACの協力のもと中国で実施している全経簿記能力検定です。
日式簿記教育に取り組むきっかけは、上田が日本企業の中国進出をお手伝いしている中で、日中間の会計慣行のギャップを感じたことでした。日本的な管理会計での報告が行える、日系企業にとって最強の現地人材を育成したいとの思いで、TAC大連とも業務提携を結んでいます。
鄭さんもこの全経簿記能力検定を中国で受験して、2018年5月には1級に合格しています。また、2018年6月の中国第1回日本簿記競技大会で個人優勝と団体準優勝を果たしています。
──すばらしい成績ですね。鄭さんはなぜ日式簿記の勉強をしようと考えたのですか。
鄭 もともとは大学に進学する際、専攻について悩んでいたときに、親戚から日本語の専攻を勧められたのがきっかけです。大学では外国語学部日本語学科で学んだのですが、大学2年のときに日本の簿記会計の授業を受けたところ、勉強していてとても楽しかったですし興味を持てたので、授業外でも日本の簿記を学んでいたのです。そして日本の全経簿記能力検定が中国で実施されていることを知り、受験して合格することができました。
──日本語を学び、日式簿記を学んだことで、日本での就職を考えるようになったのですか。
鄭 そうですね。学んだことを活かして働いてみたいと考えました。そして次のステップとして日本の税理士資格を知り、できることなら取得したいと考えるようになりました。
また全経簿記能力検定を受験した際に、現在勤務している決断サポート代表の上田と知り合う機会があり、いろいろな話を聞きました。上田は税理士資格を活かして、日本だけでなく中国でも幅広い分野の事業にかかわっています。グループ会社もたくさんあって、大連に子会社もある。上田の会社に入るといろいろな経験ができるのではないか、税理士資格の取得にも近づくのではないかと思ったのが日本で働いてみたいと思ったきっかけです。
TAC大連の面接会に参加
──日本の会社に就職するにあたって、就職活動はどのように進めたのですか。
鄭 2018年11月に大連で、TAC大連主催の「TAC中国新卒人材採用プログラム」の面接会に参加しました。そこで改めて決断サポートの会社説明を聞いて、上田による面接を受けて内定をいただきました。
鎌田 そのときは上田が大連に行って面接させてもらいました。私はそのあとWebで面接をしたのですが、鄭さんは普通に日本人同士で話す感覚と変わらないくらいに日本語も上手でしたし、ぜひ来てほしいとお話ししました。また、税理士資格をめざしたいという明確な意志をお持ちでしたので、サポートしてあげたいと思いましたね。日本では税理士をめざす若者が少ないので、日本に来て働きながら税理士に挑戦したいという彼女の気持ちを大事にしなくてはと感じたのを覚えています。優秀な人材の確保が難しくなっている売り手市場の日本において、日本で働きたいという希望をお持ちの中国人の方と巡り合うことができるTAC大連のプログラムには大変価値があると感じています。
──鄭さんは内定後から来日までどのように過ごされましたか。
鄭 大学を卒業したのは2019年6月ですが、来日までの間にTAC大連の内定者研修プログラムを受講しました。この内定者研修は日本での就職を想定した約80時間のカリキュラムで、日本語で税務経理実務を学ぶものです。
具体的には、法人税や消費税などの税法入門、税務申告作成、給与計算や年末調整や法定調書などの経理実務、社会保険書類作成、労働保険書類作成、そしてビジネスマナー研修といった内容です。TAC大連だと教室講座もあるようですが、私が住んでいる街は大連市から離れているので、自宅でDVDを見ながら勉強しました。日本に来たあと、想像していたよりもスムーズに仕事を始めることができたので、内定者研修を受けておいてとてもよかったと思いました。
鎌田 来日して働き始める時点ですでに実務の基礎ができている状態でしたから、とてもいいプログラムだと思います。当法人では毎年1~2名の高卒新卒者を採用していて、以前は入社後にゼロから実務を教えていたのですが、入社前にこの大連で実施されている内定者研修プログラムを受けることでどれだけの効果が生まれるのかが鄭さんのケースで実証されたので、同じプログラムをTACから導入して、日本の高卒内定者にも受講してもらうようにしました。
税務会計から社労士業務へ
──鄭さんはいつから日本で働き始めたのですか。
鄭 大学卒業後、2019年9月から3ヵ月間の短期ビザで2回来日しました。この3ヵ月間は、インターンというか研修期間のような感じでしたね。正式に就業ビザを取得して働き始めたのは2020年3月です。
──決断サポートに就職してからは、どのような業務を担当していますか。
鄭 2019年9月から2020年3月までは税理士法人で税務会計に関する業務に就いていました。その後少しずつ社労士業務を補助するようになって、2020年6月頃からは社労士の業務がメインになっています。これまでに労働保険の手続きや年金絡みの手続き、それから障害年金に関する手続きも少し担当しました。
──もともとは税理士資格取得という目的を持って日本で働き始めたのだと思いますが、どのような経緯で社労士業務を行うようになったのですか。
鄭 代表の上田に勧められて社労士試験を受けることになったことから、実際の仕事も社労士の実務がメインになりました。試験勉強と実務のシナジーが出るようにということと、試験に合格したあと社労士登録するためには、実務経験が必要になることからです。
もともと日本の簿記会計に興味があって勉強していて、税理士をめざして日本で税務会計の実務をしながら受験勉強をしていくつもりでいたので、正直なところ最初は「社労士の仕事をするために日本に来たんじゃないのに」と思いましたね(笑)。でも、税理士試験は難しい試験で、日本人にとっても合格するのは簡単ではないということでしたので、日本語が母国語ではない中国人の私には、もっと難しいかなと感じていました。
そんなとき、社労士資格を取得すれば日本で働いている中国人に貢献できるんじゃないかと上田に勧められて、「いろいろな道があるし、いろいろな資格もある。早く取得できる資格が社労士なら、チャレンジしてみるのもいいかもしれない」と思い、めざすことにしたのです。
鎌田 鄭さんはきちんと簿記会計などを勉強していたので、税理士法人のスタッフとして働いてもらったときも業務のクオリティがとても高かったですから、社労士業務に移ってしまうのは個人的には惜しい気持ちもありました。
ただ、彼女がこれから日本でキャリアを積んでいくことを考えれば、税理士試験をめざすことだけが正解とは限らないのではないかと思ったのです。税理士試験には論文式試験があって、限られた時間内に手書きで大量の文章を書くことが求められます。日本語を母語としている私でも合格には何年もかかりましたので、大学から日本語を学び始めた鄭さんにとっては、税務会計の知識に加えてスピーディに大量の文章を書くという別のスキルも身につける必要がありました。
一方、社労士試験は「択一式」と「選択式」の試験形式ですから、答案を書くことのハードルは下がります。代表の上田が社労士試験にトライしてみてはどうかと勧めたのにも、そうした背景がありました。また、鄭さんが日本で働いている理由のひとつは「資格を取得すること」でしたから、彼女のこれからのキャリアを考えたときに、まずは何か資格を取得させることが大切だとも考えたのです。会社も全面的にバックアップする体制で、鄭さんの社労士受験がスタートしました。
社労士試験に一発合格
──社労士試験の勉強はいつ始められたのですか。
鄭 TACの社労士講座に申し込んだのは2020年3月です。そのときの教材は2020年受験向けのものでしたが、私は2021年の試験を目標にしていたので、そんなに急いで勉強しなくてもいいと思い、マイペースに勉強していました。
2020年9月からは目標とする2021年向けの内容になりましたので、本格的に勉強に取り組みました。平日の仕事が忙しくないときは勉強できましたが、忙しいときは帰宅すると眠くなったり、スマートフォンをいじってしまったりすることもあって、なかなか勉強できませんでした。ですから週末にまとめて勉強していましたね。
──受験勉強で工夫されたことはありますか。
鄭 わかりにくいところは講義動画を何回も繰り返し見ましたね。勉強内容がつまらないと感じる科目でも、講師の方の話がおもしろいので、つい引き込まれて笑って見ていました。楽しく勉強できましたので、とても感謝しています。
──社労士試験は10科目ありますが、苦手な科目はありましたか。
鄭 労働基準法から勉強が始まりましたが、日本の法律になじみがないため理解するのに苦労しました。「次の科目は少し簡単だといいな」と思って勉強を進めるとやっぱり難しくて、振り返ると「労働基準法はそんなに難しくなかったのかな」と思いました。厚生年金や国民年金の勉強に進んでも同じような感じで、受験勉強中はその繰り返しでしたね。内容が似ていて混乱しやすいものが多いので、比較しながら頭を整理しつつ勉強するようにしていました。
──本試験に向けてはどのように過ごされましたか。
鄭 本試験直前の2週間はお休みをいただき、試験に集中しました。でもその前は仕事が忙しくて週末にしか勉強ができていませんでした。実は、模擬試験を受けたとき、まったく合格ラインに届かなかったんです。それでもこれまでの努力をムダにしたくないし、また来年も受験勉強を続けなくてはいけないのはイヤだから、絶対に1回で合格しようと思いました。絶対に社労士資格を取るぞ、と思って試験に臨み、無事合格することができました。おかげで合格してからは、週末の時間を自由に過ごせています(笑)。
鎌田 鄭さんの社労士試験合格は、地元の新聞社からも取材されました。社労士試験に外国の方が合格することはめずらしく、三重県では初だということです。
日本と中国のかけ橋に
──鄭さんはこれからどのような仕事をしてみたいと思っていますか。
鄭 社労士登録の準備を進めていて、4月には登録できる予定です。社労士になったら、日本で働いている中国人の方の労働相談などに取り組んでいきたいと考えています。日本に来て働く前には会社などからレクチャーがあると思いますが、その後の来日したての時期の悩みや生活上の不安など、困ったときに相談に乗って解決してあげられたらいいなと思います。保険などの制度も中国とは違いますので、そのあたりについてもサポートしたいですね。
また、中国だけでなく日本で働く外国人労働者の相談にはどんどん乗っていきたいと思います。日本の法律や制度などについてきちんとわからないままに働いている外国人労働者の方は大勢いると思いますので、そうした方々をサポートして、頼りになる存在になりたいです。
鎌田 鄭さんは、日本と外国のかけ橋となるような活躍ができると期待しています。これは実際に中国から来日した鄭さんにしかできない活躍の仕方ですので、グループを挙げてサポートしていきたいと思います。日本と中国を行き来しての働き方もできるでしょうから、社労士としての活躍にとても期待しています。
鄭 そのためにも、もっとコミュニケーションがうまくとれるように、日本語が上手になりたいですね。そして日本のお客様にも広く対応して貢献していきたいと考えています。
実は私は来日する前、日本語の読み書きは大丈夫でも、日本語で会話をすることは苦手で不安に思っていたのです。周りの皆さんが優しく配慮してくれたおかげで、コミュニケーションがうまくできないときも、何とか意味は伝わっていると思いますが、言葉は一番大切ですので、これからも努力していきたいです。
── 鄭さんの後輩も、来日する予定があるそうですね。
鎌田 2020年にもTAC大連のプログラムに参加して、Web面接で2名が内定しています。鄭さんのときは内定者が1名しかいなかったので、心細いことも多かったと思います。それを踏まえて、同期がいたほうが働きやすいだろうと、2名採用することにしました。ただ、コロナ禍で来日が叶わないままになっていますから、できるだけ早く来日してもらい、一緒に働きたいと願っています。2021年はコロナ禍で中止でしたが、今後も「TAC中国新卒人材採用プログラム」には引き続き参加していきます。
三重県の事業承継は「決断サポート」に
──決断サポート、そしてグループとして、今後どのような分野に取り組まれる予定でしょうか。
鎌田 今後、グループ全体で注力していくのは事業承継です。今、四日市市でも、創業100年を迎えるような伝統ある企業や、技術的なノウハウを多く蓄積しているような会社が、後継者不足のために事業の存続を危ぶまれています。この問題を何とかしたいと考えています。
これまでも「三重県の事業承継は決断サポートグループに任せる」と言ってもらえるような存在になるべく、独自の事業承継対策を行ってきました。事業承継にはやはり若い世代の人材力が必要だと考え、地元の金融機関とともに事業承継ファンドを立ち上げて、その中で人材バンクも設立しました。また今後も、起業したい若者やインターンシップを希望する学生などを積極的にサポートしていきたいと考えています。地元企業の存続をグループとして、税理士としてサポートしていきます。
──最後に、資格取得をめざす方々へメッセージをお願いします。
鄭 私は周りの皆さんのサポートがあって1回で社労士試験に合格することができました。自分のがんばりも大切ですが、周りのサポートがあることを忘れないでほしいと思います。そして将来、税理士試験に挑戦したい気持ちもまだありますので、機会があればチャレンジしたいと思っています。また、来日前に受講したTAC大連の内定者研修プログラムはとても役立ちました。もし、これから日本で働こうという中国の方にはぜひ受けていただきたいと思います。
鎌田 私も25年ほど前、まだ受験生だった頃には勉強の合間に『TACNEWS』を読んでいました。受験生にお伝えしたいのは、税理士として中小企業の経営者と仕事ができるというのは本当に幸せなことだということです。受験勉強は決して楽しいものではないと思います。でも合格して士業になれば、中小企業の経営者は基本的に暖かく迎えてくれます。どんなに自分が若くとも、税理士であるというだけでいろいろな話をきちんと聞いてくれます。中小企業の経営者はすごく魅力的な方が多く、世の中に対して自分のやりたいことがあって、それを自ら責任を持ってやっています。前向きで、やる気エンジン全開の人たちと一緒に本音で仕事ができることは、税理士や社労士の特権だと思いますね。
受験勉強はつらいことも多いと思いますが、試験突破はあくまで通過点です。将来、中小企業の経営者と一緒に走るためには必要なことだと割り切って、ぜひがんばってください。
──ありがとうございました。
[『TACNEWS』 2022年6月号|特集]