特集 ライフステージを楽しみながらしなやかに働く!
〜司法書士の魅力〜

  
Profile

梅野 祐子さん

みなと司法書士事務所 司法書士・行政書士

梅野 祐子(うめの ゆうこ)
1976年12月、愛知県名古屋市に生まれる。名古屋大学法学部に進学し、在学中より司法書士の受験を始める。大学卒業後、名古屋市内の司法書士事務所に勤務しながら勉強を継続、24歳で行政書士試験に合格。その後上京し、弁護士事務所に勤めながら勉強を続け、28歳で司法書士試験に合格し、結婚。30歳の時にみなと司法書士事務所を開業。35歳の時に第一子を出産。現在は、登記、行政書士・成年後見業務を中心に活躍中。家族が亡くなった後の相続問題のサポートの手厚さにも定評がある。

「結婚しても働き続けたい」と思う女性がその目標を達成できる環境はひと昔前よりもずいぶん整ってきています。しかし、出産や夫の転勤といったライフイベントの中で、キャリアを中断せざるをえないケースもまだ少なくありません。今回は、子育てをしながら司法書士としてのキャリアも順調に形成されている梅野祐子さんに、司法書士をめざしたきっかけや仕事のやりがい、家事・育児と仕事の両立についてお話を伺いました。子育てや介護など、制約のある中で働く方に役立つヒントやメッセージも満載です。

長い目で見て相手のためになる仕事がしたい。
独立を見据えて司法書士試験に挑戦

── 梅野さんが司法書士をめざすようになったきっかけを教えてください。

梅野 テレビドラマの影響で、最初は弁護士に憧れていました。具体的にどんなことをするかはわかっていませんでしたが、「社会正義を実現したり、無実の人を守ったりする仕事なんだ」と漠然と思っていました。そして大学は法学部法律学科へ進学。入学後はしばらくプライベートも楽しみ、大学1年生の冬に司法試験の準備を始めようと、受験指導校が主催する法律系資格の説明会に足を運びました。その時、弁護士の仕事は刑事事件のイメージが強いけれども実際は民事事件のほうが多いこと、争い事に関する案件を取り扱うケースが多いことなどを知りました。一方で、司法書士という資格は、事件の当事者双方の代理人になれる仕事であり、女性におすすめであるという説明を聞いて「そうなんだ」と納得。司法書士への方向転換を決め、大学2年生から勉強をスタートしました。

──早くから資格取得の志向がハッキリされていたようですね。一般企業への就職は考えなかったのでしょうか。

梅野 もちろん考えました。実際に就職活動をして、希望の企業から内定もいただきました。でも、大学時代のアルバイト経験から、大きな組織で働くのは性に合わないかも、とも感じていたのです。正直なところ「このお客様には必要ないな」と感じるサービスでも、企業としての売上を達成するためには売る必要がある。そのジレンマに耐えるのは難しかったのです。私は自分が納得したものを相手に届けたい。短期的な数字のためだけではなくて、長期的に相手のためになることをしたい。それを実現するためには、独立して仕事をするのが一番だと思い、悩んだ末に内定は辞退しました。ところが、司法書士の勉強はなかなか大変でした。大学を1年休学して勉強したものの合格には届かず、卒業後は1年間、勉強しながら名古屋の司法書士事務所に勤務していましたが、勉強に行き詰まってしまい、行政書士の勉強を並行してそちらを先に取得したりもしました。そして、当時お付き合いしていた現在の夫と一緒に暮らすために24歳の時に上京し、東京の弁護士事務所でパラリーガルとして働きながら勉強を続けました。最終的には28歳の時、勤めていた弁護士事務所を辞めた後に受けた試験で合格することができました。

キャリア&ライフプランを立てたのは20代前半。
31歳で開業、34歳で第一子出産が目標

──なかなか合格に届かず、苦しい時期もあったと思います。途中で諦めたくなることはありませんでしたか。

梅野 合格するまでは親に結婚を許してもらえなかったので、受かるしかないと思っていました。また、法律事務所の仕事はとても楽しかったので、あまり悩まずに勉強に没頭できました。とは言っても、働いているとどうしても仕事に一生懸命になってしまい勉強の比率が下がってしまった年もありました。もともと、31歳で独立してその後第一子出産、という予定で年表を書いていましたので、受験は続けていましたが。

──年表を書いてご自身のキャリアや女性としてのライフプランをあらかじめ立てていたのですね!それはいつ頃ですか?

梅野 20代の前半だったと思います。もし合格しても、事務所に所属していると出産のタイミングや育児もままならないかもと感じていたからです。

──年表に書いていた予定を教えていただけますか?

梅野 31歳で独立、34歳で第一子、36歳で第二子というところまで書いていました(笑)。

──独立は、年表のスケジュールに沿ってされたのですか?独立までどのようなプランで経験を積まれたのかもお聞きしたいです。

梅野 2005年10月に司法書士試験に合格し、12月から研修と並行しながら司法書士事務所に勤務しました。合格してから独立までは約1年ずつ、3つの事務所を経験しました。1つ目の事務所は、裁判や負債整理、相続放棄などの家事事件を幅広く手掛けるところでした。2つ目の事務所は商業登記が多く、合併や会社分割など、なかなかできない経験をしました。3つ目の事務所は、不動産の決済がメインでした。ここにいるときに、仲良くしていた同期の女性3人で一緒に独立したのです。「自信があって独立したか?」と聞かれれば決してそうではありません。予定していた年齢になっても「目標とする司法書士の先生に比べれば、今の自分は足元にも及ばない」と時期をずるずる伸ばしていました。しかし「実力がついてから」と思っていると一生動けないことに気がつき、仲間2人にはずみをつけてもらうような形で独立することができました。

女性同期3人で司法書士事務所をスタート。
文化祭のように楽しみながら営業活動も

──開業するにあたって、ご家族の反応はいかがでしたか?また、資金はどれくらい用意されましたか?

梅野 主人は私が一度「やりたい」と言い出したら、どんなに止めても聞かないのはわかっているので、「開業するね」、「わかった」というようなやりとりをしただけだったと思います。開業資金は仲間2人とすべて3分割したので、それほどかかりませんでした。事務所は現在も使っているところなのですが、かかったのはこの事務所を借りるにあたっての敷金・保証金と家賃、そしてファックスのリース代、あとは各自のパソコンや机と椅子を購入するお金くらいでしょうか。何百万円もかかるということはなく、一般的な一人暮らしを始める際に必要な程度の金額だったと思います。

──取引先はどのようにして開拓したのでしょうか。

梅野 最後に勤めていた司法書士事務所で取引のあった住宅ローンの会社が、独立後1年ほど継続して仕事をくださったんです。決済を毎月私ともう一人に10件ずついただけたので、ありがたいことに初年度はかなりの売上を出すことができました。ただ、リーマン・ショックの影響で、半年が過ぎると依頼件数も徐々に減っていき、1年後には新規営業が必要な状態に。そこから軌道に乗せるのが大変でしたね。営業はとても苦手なのですが、銀行に出向いたり、異業種交流会に出席して人脈を作ったり、知り合いの税理士事務所で会社法のセミナーを全20回やらせていただいたり、他業種の方と講座を開いたりもしました。これらの行為がすべて直接集客につながったかというとそうではなく、言ってしまえば「ムダ打ち」も多かったです。ただ、文化祭のように仲間とワイワイがんばっていると、その様子を見た税理士さんがお仕事を紹介してくださるといったこともありました。その他には、成年後見センター・リーガルサポートに登録して成年後見の仕事を受けたり、行政書士の業務を始めたことで、同業の司法書士の先生から行政書士の仕事につないでもらったりもしました。開業から4年目くらいまでは、「なんでもやります」の精神でがむしゃらに働いていましたね。

──開業5年目の35歳の時に妊娠・出産をされましたが、お子さんを持つことを意識されたのはいつ頃でしょうか。

梅野 子どものことは独立して2、3年で考えなければいけないなとは思っていましたが、仕事が忙しすぎてそれどころではありませんでした。欲しいとは思っていたのですが、子どもがいるとこれまでのペースでは仕事ができなくなるので不安も大きいですよね。また、自分たちの意志だけでコントロールできることではありませんので、授からなければ子どものいない人生を受け入れるつもりでした。このように、積極的に計画していたわけではなかったので、妊娠初期のつわりも風邪からくる胃腸炎だと思い込んでいたんです。何食わぬ顔でセミナーをこなした後、トイレに駆け込んで人知れずグッタリ…なんてこともありました。

──そうだったのですね。妊娠中や産休・育休中のお仕事はどのようにされていましたか。

梅野 ありがたいことにつわりは1ヵ月程度で終わり、妊娠中は体調も安定してトラブルもなかったので、大きなお腹を抱えて毎日終電まで働いていました。出産予定日は9月10日だったので、7月いっぱいはそれまでどおりフルで仕事をし、8~10月分の決済の仕事はお友達の司法書士さんにお願いして産休に入りました。
 一緒に開業した仲間たちは、私が妊娠した頃にはそれぞれ自宅に事務所を移していたので、当時は一人で事務所を使っていました。産後しばらくは自宅で仕事をするという選択肢もありましたが、私は事務所という「拠点」をどうしても維持したかったので、産前産後の1、2ヵ月は自宅で休んでから復帰することにしました。それでも、産休に入ってから自宅でできる商業登記の仕事などは予定日直前までやっていましたね。

──本当にギリギリまでお仕事をされていたのですね。司法書士同士で産休中に仕事を協力し合うというのはよくあることなのでしょうか。

梅野 そうですね。特に女性の司法書士の場合、産休に入る人の仕事をスポットで引き受けたり、逆にやってもらったりというのは仲間内でよくあります。妊娠・出産以外でも、決済が重なって一人では対応しきれなかったときは信頼できる横のつながりに頼っています。ただ、値段や引き受ける内容は先生によって異なりますので、迷う場合は逐一相談してトラブルなくスムーズに終了できるよう気を配ることが重要です。

「休み方」がわからず無理をしてしまった産後。
ここ1、2年でやっと周囲にうまく頼れるように

──産後はどのようにお仕事に復帰されたのでしょうか。

梅野 まず、出産直前までやっていた商業登記は産後すぐ9月から再開。子どもも新生児のうちは寝ている時間が多いので、その時間を使って自宅で仕事をしていました。ところが、子どもが大きくなるにつれて限界がやってきました。10月に入り焦って預け先を探したのですが、生後すぐの子どもを受け入れてくれる保育園はありません。さらに年度途中に生まれた子どもは認可保育園の申し込みに間に合わないので、入れる保育園そのものも少ないんです。生後2ヵ月経って、やっと24時間営業の認可外保育所に、決済の時のみ月10日間だけ預けることができるようになりました。それが11月くらいだったと思います。産後って本当は、出産と家事・育児でボロボロの体を休めなくてはいけない時期。どんな育児本にも「しっかり休みましょう」と書いてあるし、いろいろな人にそう言われました。でも、事務所の家賃や会費などをまかないたい一心で休むことができませんでした。今思うと相当に辛かったですし、結果的に体と心に負担をかけてしまいましたので、無理したことを後悔しています。

──ずっとフルスロットルで働いてきて、いきなり休めと言われても、その方法がわからないですよね。

梅野 そうなんです。それまでは24時間対応できるような心構えで仕事をして、夜の電話や呼び出しにも対応し、夜の会議や研修にも参加していたのに、それができなくなった罪悪感が強くて…。フルで仕事ができない分、育児で結果を出さなきゃ、と思うようになってしまい、仕事をしていない日は子どもを公園に連れて行って、家で読み聞かせもして、と達成感が欲しくて頑張りすぎてしまいました。そうこうしているうちに、その年の3月には保育ママさんに、4月からは保育園に毎日一定時間預けることができるようになったので、だいぶ楽になりました。でも、保育園に入ったら入ったで「先生にいいお母さんだと思われたい」という気持ちが強くなってしまって、つい連絡帳に細かい文字で家での子どもの様子を書き込んだり、毎食栄養バランスのとれた食事を用意したり、運動会用のグッズを徹夜で作ったりと、また頑張りすぎてしまいました。娘が今年の9月で4歳になるのですが、上手く力を抜いて仕事とのバランスをとれるようになったのはここ1年くらいですね。ママ友や先輩ママたちが、「子どもが寝てしまったらお風呂は無理に入れなくていい」、「保育園から『必ずやってほしい』と言われたことだけ対応すれば大丈夫」など、豪快なアドバイスをくれるので(笑)、できるところから少しずつ取り入れています。

──主婦業・母業と司法書士のお仕事のバランスがとれるようになったきっかけは何ですか。

梅野 産後1年から1年半くらいの間は、仕事もプライベートも完璧にやらなくてはとがんばったのに、両方とも自分の思う通りにはうまくいかなくて、心身ともに調子が悪くなってしまいました。そんな時、ある人に言われた「なぜそんなに仕事をするの?」という言葉。「周りのみんなも平日は夜中まで、土日もほとんど仕事をしているから」と答えた私に「あなたと周りの人は違うよね」と言われて。それで気付いたんです。私は仕事を優先するあまり、自分を大事にしていなかったんだと。夜も寝ないで仕事をして、自分が思う「完璧なお母さん」をめざして子どものお世話をして、一日に何度も掃除機をかけて…。疲れていないはずがないですよね。それでイライラして夫に八つ当たりをしてしまっていた。自覚してからは、寝るなら寝る、休むなら休む、を徹底するようになりました。夏休みの宿題は毎年終業式前にきっちり終わらせるタイプで、「できることをやらないでいる状態」は苦痛でしかないのですが、やらないでいれば掃除機かけも連絡帳の記入も夫がやってくれるんですよね。仕事も同様で、一人きりでやっていたのを補助者の方に来ていただくようになって、グッと楽になりました。本当に必要な業務に集中できるようになったので、実働時間は短いものの、効率がとてもよくなりました。

短時間でも質の高い仕事で売上が回復。
できる範囲を明確にし、周囲と連携をとっていく

──最近のお仕事内容と、仕事とプライベートのバランスの取り方について詳しく教えてください。

梅野 仕事の内容は、登記業務8:成年後見業務1:行政書士業務1という割合ですね。登記は不動産登記がメインで、商業登記が少しあります。開業する前は「合併・分割など、大きな仕事をやりたい」と意気込んでいましたが、蓋を開けてみれば不動産の仕事がほとんど。「頼んでもらえる仕事がお客さんの求めていること」だととらえて前向きに取り組んでいるうちに、今年で開業8年目を迎えました。
 仕事とプライベートのバランスを取るために意識して変えたのは「時間の使い方」です。産前までは24時間365日休まず仕事、という勢いでしたが、現在は18時に事務所を出てそれ以降の電話は転送されるように設定しています。子どもを保育園に迎えに行ってからが最も体力を消耗する時間帯なので、日中はいかに短時間で質のよい仕事をするかを意識するようになりました。営業時間に関しても、「この時間しか対応できません」と心苦しいながらも伝え続けていたところ、思ったよりすんなり受け入れてもらえるように。また、以前は一つの案件に対して、条文・判例・先例すべてに当たって自分の中での「完璧」にこだわっていましたが、実はお客様はそこまで求めていないんですよね。仕事は完璧だけど心に余裕のなさそうな司法書士よりも、間違いのない内容で幸せそうな司法書士に担当してもらったほうがお客様も嬉しいはず。そう割りきって仕事をしていたら、売上も戻ってきて、2015年は開業以来2番目によかったです。

──成年後見のお仕事は時間外でも対応が必要、というイメージがありますが、どのように対応されているのですか。

梅野 私も実際にやってみるまでは24時間対応が必要だと思っていました。しかし成年後見人というのは、財産の管理人ではあるけれど、親族の代わりではないんです。すべてを抱え込まずに、親族の方、介護施設や病院のソーシャルワーカーさんなどと連携していくことが重要ですね。以前、担当していた方がお正月に亡くなられたのですが、私は実家に帰っていて帰京のチケットもすでに取れない状態でした。幸い、奥様がいらしたので電話で連絡し、ご遺体の引き取りやお葬式の手配についてやり取りして無事お送りすることができました。親族が一人もいない方のお葬式でお骨を拾ったこともありますが、それは成年後見人としての必須業務ではなく、自分の気持ちの折り合いのため。ケースバイケースで対応しています。
 ですから子育て中でも十分対応できると思います。成年後見のお仕事は、高齢者の方と何年もじっくりお付き合いをして、自分の本当のおじいちゃん、おばあちゃんのような気持ちでお仕事ができるのが嬉しいですし、引き受けてよかったなと思います。お亡くなりになった後の遺産整理業務で、預貯金や不動産登記などの相続の手続きをしたり、最後まで丁寧にお付き合いできることにもやりがいを感じていますし、今後も継続して手がけていきたい分野です。

──これからめざされるお仕事やプライベートの方向性について教えてください。

梅野 娘もいつの間にかハサミを使ってお菓子の袋が開けられるくらいに成長していて、時間が流れるのは本当に早いなあと思います。これからどんどん手が離れていって自分の時間は増えていきますが、以前のように24時間365日仕事に費やしたいとはまったく思いません。サービスの質と単価を上げ、短い稼働時間でお客様に満足を届けられるようなやり方で仕事をしていきたいと思っています。売上もあるに越したことはないのですが、人員を増やしてでも規模を拡大しようとは考えていません。いつか必要になれば人を雇いたいなとは思いますが、今は補助者の方と2人がとても楽しくって。うちの事務所はよく、お客さんが何もないのにふらっと遊びに来てくださるんですよ。お茶を飲みながらした雑談から仕事につながったり、探していた専門職の方を紹介できたり、なんてことも。「あの事務所は単価はちょっと高いけれど、いいことがあるんだよね」と思ってもらえるパワースポットのような場所でありたいですね。
 プライベートの目標は、趣味を作ることですね。私、これといった趣味を持っていないんです。合格するまでは勉強、司法書士になってからは仕事、何も用事がなければ研修(笑)。新しいことを学ぶのはワクワクして大好きですし、司法書士は一生勉強が必要な仕事ですが、それはそれとして、もう少しのんびりとした気持ちで楽しめるものがいいなあと最近思うように。といっても、今一番楽しんでいるのは娘の成長を見守ること。かわいくてしょうがないので、あと10年は夢中で見ていられるなと感じますね。

「こうあるべき」という思い込みを外すとラクに。
制約のある自分を隠さず、状況を味方につけて

──最後に、スキルアップをめざす『TACNEWS』の読者にメッセージをお願いします。

梅野 「独立」と聞くとハードルが高いように感じますが、意外と低いもの。私のように何人かで集まって独立すればコストは下がりますし、他業種の事務所に間借りさせてもらって周辺機器も使わせてもらうケースもあります。会計事務所に机を借りている社会保険労務士さんを知っているのですが、営業もできて一石二鳥だと思います。独立・開業は難しいことだと思わずに挑戦してほしいですね。
 先細りなのではないかとも言われる司法書士の仕事ですが、信託などお客様のニーズに応じて仕事のジャンルも広がっており、私は逆に今後も仕事は増えると思っています。ただし、司法書士の仕事は単発の仕事ばかりなので、自分なりの営業ルートを確立しておくことは大切ですね。例えば、案件数の多い建設会社とお付き合いをして信頼関係を構築し、安定的に仕事を回していただくというのも一つの方法です。
 子育てや介護をしながら働くというのは、時間的にも体力的にも厳しくて、不完全燃焼感や引け目を感じやすいもの。でも、仕事以外に所属するコミュニティがあるのは、実は大きな強みです。私はもう夜の飲み会で営業をすることはできませんが、ママ友からお仕事をいただくこともあります。成年後見のお仕事で状況が許す場合は、娘を連れていくことも。歓声が上がるほど喜んでもらえて、私としても本当に嬉しいです。
 「こうあるべき」と思い込むと苦しいですよね。自己開示して、状況を味方につけていくのが自分らしく働くコツかもしれないですね。

[TACNEWS 2016年9月号|特集]

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