「経営デザインシート」を活用する
2022.3.24中小企業支援に役立つテーマでコラムを掲載します。今回は、企業経営アドバイザー資格においても重視している「経営デザインシート」がテーマです。
こんにちは、コンサルタントの仲田です。
今回は、企業経営に役立つ、「経営デザインシート」というツールの概要とその活用方法について紹介していきます。活用の対象者は企業の経営者と経営をアドバイスする立場の方の両方になります。
「経営デザインシート」の概要
「経営デザインシート」は、内閣府の知的財産戦略推進事務局が2018年5月に公表したフレームワークであり、将来を構想するための思考補助ツールのことです。自他の資源を組み合わせて価値を生み出す仕組みを把握し、将来に向けて構想するという、「経営をデザインする」ためのツールとなっています。
環境変化に耐え抜き持続的成長をするためには、企業や事業の
(A)存在意義を意識した上で、
(B)「これまで」を把握し、
(C)長期的な視点で「これから」の在りたい姿を構想して、
(D)それに向けて「今から何をすべきか」戦略を策定します。
このフレームワークは、環境変化に耐え抜くためには長期ビジョンが重要であると捉えて、環境変化を見据え、企業や事業の「これまで」の理解に基づき 「これから」を構想することを目的としています。
「経営デザインシート」の特徴は、
1)1枚で企業(事業)の全体を俯瞰できる
2)「これまで」と「これから」の時間軸を意識できる
3)「自社の目的や特徴」・「事業概要」・「価値」等など想いを記載できる
4)欄が限られていて、あえて大切なことしか書けなくなっているため、「大切な部分」が明確化できる
5)「資源」と「ビジネスモデル」と「価値」の関係性を意識しやすい
となっています。
特に1枚に企業の全体の経営概要を記載するため、ビジネスモデルが俯瞰できることから利用が広がってきています。最近では、事業再構築補助金第4回や、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金第9次締切分から、申請する事業計画書を作成する際には「経営デザインシート」を利用することを推奨しています。
「経営デザインシート」の活用場面
「経営デザインシート」の具体的な活用場面は、
1)経営課題の気づき・整理や新事業の構想を行う際に活用
例)経営者と社員が共同で作成する
2)企業や大学等他者との連携を図りたい際に活用
例)経営層が将来構想を描き、組みたい相手と共有する
3)金融機関や専門家に相談する際に活用
例)事前に作成したシートを用いて自社の状況を説明する
4)事業承継を進める際に活用
例)現経営者が「これまで」を記載、後継者が「これから」を記載し、思いを共有する
5)金融機関や専門家が経営者からの相談対応時に活用
例)企業の将来構想を可視化し、「これから」への移行戦略を具体的な経営計画・事業計画の策定に活かす
等があります。この中の⑤のケースでは、他にも「補助金申請支援時に利用する」、「事業承継の必要性に気づいてもらう」等があげられます。
「経営デザインシート」を活用するメリット
本フレームワークを活用するメリットは、実際に活用し、体験した方々の意見をまとめると、
■企業の事業を深く理解することに役立った
■企業と一緒に課題や将来について考えることができた
■対話の共通基盤となり議論が深まった
等のメリットがありました。これは経営をアドバイスする立場の方には、とっても便利で役立つフレームワークではないでしょうか。
最後に
今回は、「経営デザインシート」の概要をお伝えしました。より詳しく知りたい方は、首相官邸HP「経営をデザインする(知財のビジネス価値評価)」をご確認ください。このフレームワークは、先にお伝えした通りさまざまな場面で活用できます。そして身近なところではご自身の将来プランを検討する際にも活用できるのです。ご興味を持たれた方は、是非一度トライしてみてください。何か新たな発見があるかもしれません。
城南支部
中小企業診断士
仲田 香織
※当コラムの内容は、執筆者個人の見解であり、TAC株式会社としての意見・方針等を示すものではありません。