日本のプロフェッショナル 日本の社会保険労務士|2018年7月号

Profile

多田 智子氏

多田国際社会保険労務士事務所
所長 特定社会保険労務士

多田 智子(ただ ともこ)
宮城県出身。法政大学大学院イノベーションマネジメント専攻修了、MBA取得。中外製薬株式会社勤務を経て、2001年、社会保険労務士試験合格。2002年、コンセルト社会保険労務士事務所を設立。2010年、特定社会保険労務士登録。2012年、多田国際社会保険労務士事務所に名称変更。
・著書:「給与計算の事務手続き・届け出ができる本」(ソーテック社)、「改正 労働基準法がすっきりわかる本」(ソーテック社)、「社会保険・労働保険の届け出と事務手続き」(ソーテック社)、他

国際業務とワークライフバランス導入サポート。
人事労務の困りごとへの対応が、基本であり根幹となる業務です。

中小企業が次々と海外に出ていく時代。日本を出るまでは国内法だが、海外に出るとすべて現地の法令に従わなければならない。「進出先での人事労務の問題は?」というと、それをサポートができる社会保険労務士事務所はほとんど見当たらず、人事担当者は困っていた。そんな困っている人事担当者を助けたいと、「海外進出に関する人事労務をトータルサポートしよう」と取り組んできたのが、多田国際社会保険労務士事務所だ。国際業務を含む相談顧問を特徴とする事務所の業務内容と今後の展開について、所長で社会保険労務士の多田智子さんに伺った。

「これからは人の時代!」

 多田国際社会保険労務士事務所(以下、多田事務所)は、現在、210社の相談顧問(うち70社は社会保険手続を含む)を担っている。支えるのは所長であり特定社会保険労務士の多田智子さんを始めとする社会保険労務士(以下、社労士)4名(有資格者含)を含む15名のメンバー。
「社労士は比較的規模が小さな事務所が多いけれど、クライアントは大規模事務所を求めています。昨今話題の『働き方改革』に始まり、障害者雇用促進法、労働者派遣法、マイナンバー法、育児・介護休業法、男女雇用機会均等法、女性活躍推進法……。労務分野だけでも毎年多くの法改正や新法などありますから、人事担当者はキャッチアップするだけで大変なんです。対応する私たちとしても、規模の拡大は必然でした」と、多田さんは話す。
 ある社長と話している時のこと。「国は勝手に法律を変えて、それを知らせてくれないんだよ。昔の話だが、有給休暇の法改正に気がつかなかったら、労働基準監督署にすごく怒られた。別に有給をあげたくないわけじゃなくて、教えてくれないから知らないだけなのに」と言う不満の声を聞いた。
「経営者はリアルタイムで労働法を把握しているわけではありません。次々と変更改正されていく法令の内容は新聞に数行載るだけなので、細かいところなんてわかりません。守らないつもりなんてないのに、知らなかっただけで法律違反だと言われちゃうんです」
 多田さんが、社労士による情報提供が絶対に必要だと感じたのはこの時。それは、今も多田さんを支える原動力だ。
 多田さんが社労士をめざしたのは、結婚して専業主婦となり、子どもが幼稚園に入園したタイミングだった。「少し時間ができたから仕事をしてみよう」と考えて、「何をやろうか」と求人雑誌を見たら、応募条件にはことごとく職務経験や資格があった。そのどれにも自分が当てはまらないことにショックを受けた。
「そこで初めて、ことの重大さに気がついたんです。『大変!自分にできることって何だろう』。慌てて書店に飛び込んだら、資格本のコーナーがあることに気がつきました。そこで初めて『資格を取得して働くという生き方』を知って、『これだ!』とひらめいたんです。
 私がやりたいのは、社会に貢献すること。資格があれば、自ら社会に働きかけることができる。なんて素敵な仕事なんだろうと興奮しましたね」
 資格といっても、弁護士、公認会計士、税理士、社労士……といろいろある。弁護士と会計士にいまさらチャレンジするのは現実的でない。「それなら税理士か社労士かな」と考えた時、「これからは『人』。企業は人で成り立っている。重要な経営資源である人の雇用問題に係わる仕事が重要視される時代になるに違いない」と直感的にピンと来た。
 比較検討してみると、税理士は企業の9割近くに入り込んでいるが、社労士の企業関与率は当時4割に満たなかった。税理士は新しいマーケットを探すのが難しそうだが、社労士ならまだ手付かずのフィールドが残っていそうだ。「企業に労務面でアドバイスする社労士。もうこれしかない!」と強く思った。
 そこから猛烈な勢いで受験勉強をスタート。朝は3時に起床し、子どもが起きる7時までの4時間と幼稚園に行っている3時間で勉強時間を確保した。本来であれば受験仲間と一緒に切磋琢磨したかったが、子育ての合間をぬって勉強する自分にはとても無理だと通信教育を選択。ひとりでの勉強だったが、初めて触れる内容、しかも「これは大切な資格なんだ」と思うだけで、学ぶのが楽しくてしかたなかった。
 受験1年目は択一式試験の足切りにひっかかり不合格となったが、感じた手応えを糧に2年目は「絶対合格」を信じて、同じサイクルで勉強を続けた。
「不合格でも挫折なんて考えもしませんでした。そんなヒマがあるなら一問でも問題を解きたいという思いでしたね」と、多田さんは受験時代を振り返る。
 こうして2001年、2回目のチャレンジで社会保険労務士試験に合格。多田さんは、実務の世界に第一歩を踏み出した。

「私が仕事、取ってきます!」

 資格の本の中から社労士というものを見つけた時から、多田さんは「社会貢献するために自分はこの仕事をしたい」と思っていた。その後の資格を取得する過程で、女性のライフステージに合わせて「自分で考え、自分で仕組みを作り、自分で時間の調整ができる仕事」をしようと心に決めた。つまり、社労士としての独立開業をめざしたのである。
「社労士は労務相談ができるパートナー」。多田さんは、社労士業務をそう定義して自らの未来像を描いた。
「合格してから、社労士がどんな仕事をしているのかを調べてみたら、手続の仕事をしている方がとても多かったんです。逆に言えば、企業関与率4割は社会保険手続の部分ということ。であれば、私がやりたい『人』に関して悩んでいる企業の課題解決は100%ガラ空きなんじゃないか。私は『人の問題で困っているからこそ、社労士という新しいマーケットがあるんだ』とひらめきました。自分で新しい社労士サービスを作ろうと思ったんです」
 ただ、開業するなら社労士の独占業務である手続業務は、最低限学ばなければならない。そこで、育児という時間制限がある中で「最大限に貢献します」という意思を唯一尊重してくれた事務所に入り、「社労士がどんなことをするのか、社労士と企業が付き合うところから携わらせてください。手続だけでなく、営業にも行かせてください。営業、契約からやりたいんです。先生のお仕事は私が取ってきますから任せてください」と頼み込んだ。通常は所長が営業を行い、受注した仕事を所員が担当する。所員が所長の仕事を取ってくる。しかも実務経験ゼロの新人がそんなことを言うなんて、なんと大胆な……。「そういう社労士はあまりいないんです(笑)」と多田さん自身も笑う。さらに、「『私は開業が夢なので1年後には開業します』ともお伝えしていました。きっと所長は、どうせ開業はあきらめるだろうと思っていたのだと思います」
 営業に出た多田さんは、いきなり3件を受注。その後セミナーを開催するなど、破竹の勢いで仕事を取っていった。
 そして1年後、当初の宣言の通り、先生にお礼を伝え、独立開業に踏み切ったのである。

ワークライフバランスと海外進出

 勤務時代に開拓した顧客先はすべて元の事務所に残して、開業はゼロからのスタートになった。多田さんは労務相談にこだわったが、「相談では儲からないよ」と同期の社労士に言われ、悔しかった。
 ところが実際にクライアントと接してみると「国は勝手に法律を変えるから困るんだよ。多田さん、いいビジネスしてるねぇ」という声を聞いた。「やっぱり私の仕事はここにある!シンプルにクライアントが求めるサービスだから、他の社労士がやらなくてもやろう」と確信した。
 開業1年目、多田さんはほとんど取り組んでいる社労士がいなかった「労務コンプライアンス」をあえて軸に据えて業務を展開した。
「今は残業代未払いがあればすぐ問題になりますが、15年前は残業代をきちんと払っていない会社もまだたくさんありました。でも『それは違うよね』というところから、労使トラブルに対応していきました。そこからスタートして、退職金制度構築や日本版401Kのご相談に乗ってきたのです」
 あれから15年。その時の思いは、今、事務所の柱となっているふたつの業務へとつながった。ワークライフバランスと海外進出サポート。中でも今圧倒的に多いのが、「ワークライフバランス制度の導入支援」だ。
「ワークライフバランス、働き方改革、これはもう聞かない日がないぐらいです。政府が音頭を取っていますが、実は困っている企業が多いんです。社長が『いよいよわが社も働き方改革だな』と言っても、人事担当者は一体何をやればいいのかがわかりません。労働時間短縮なのか、女性社会進出なのか、働き方の多様化なのか。課題はあるのにどうしていいかわからないんです。そこに関して、いち早くキャッチアップして情報提供などのサポートをすることにしました」
 5年前、組織内にワークライフバランス研究所を立ち上げた。事例研究、商品開発、情報発進、セミナーなど、ワークライフバランスに関するあらゆる活動と情報収集、スキーム構築を行うことで、クライアントの困りごとを解決していく専門部署だ。「働き方改革」が話題の昨今、「ワークライフバランス研究所は、まさに今が旬」と、多田さんは言う。
 そしてもうひとつ、時代の流れの中で海外進出企業が10年前の2倍となった今、人事担当者の大きな悩みとなっているのが「海外進出における人事労務サポート」だ。
「当社のクライアントも、アジアを中心に海外に出て行くケースがとても増えました。『社員を海外に出すんだけど、どういう条件で行かせたらいいんだろう』と、それまではあまり聞かなかった海外赴任者への対応に困っている人事担当者からの相談が非常に増えました。そして現地で人を採用するようになると、就業規則は必要なのか、労働契約書はいるのか、勤務時間はどうするのか、休日はどうするのか……といった問題が発生するんです。行くまで気がつかないで、現地に着いてから次々と『この問題はどうすればいいんだろう』となる。にもかかわらず、国内には相談に乗れる社労士事務所がほとんどありませんでした。私たちのポリシーは人事労務で困っている会社のサポートをすること。クライアントがすごく悩んでいたので、解決しなければと思ったんです」
 多田さんは、相談があると最初は「現地のコンサルタントに相談してください」とアドバイスしていたが、人事担当者が問い合わせても解決しないことが多かった。「現地コンサルタントのアドバイスと書籍の情報が違うよ。どっちが本当なの?」と企業は混乱してしまったのだ。
「現地のコンサルタントを頼ると二度手間になることばかりだったので、私は『最低でもアジアの労働法については、うちで解決できないだろうか』と考えて、まず大学院の友人がいる上海にひとりで行き、現地コンサルタントがどのようなアドバイスをしているのかを確認しました。すると『労働法はお金にならないし、アジアでは無料で相談を受ける会計事務所が多いから儲からないよ』と言って、労務にほとんど感心をもたないコンサルタントがほとんどでした。お金にならないから世間話程度のアドバイスだったのです。
『日本と現地の両方で相談ができる事務所をめざす』と決めたのですから、何としても労務相談のできるコンサルタントを探そうと、私はひとりで1件1件回って歩きました。こうして上海で提携事務所を見つけると、今度はタイ、シンガポール、ベトナムに行って、私たちと一緒に日系企業に労働法をアドバイスできる事務所を探しました。とても大変でしたが、提携事務所が決まってからはいろいろな商品開発をして、クライアントに安心してもらえる良い提案、対応ができるようになったんです」
 水面下の努力の末、今ではアジア地域中心に、提携事務所と共にクライアントの海外進出を日本と海外の両面からトータルサポートできるスキームができ上がった。
「進出するまでのお手伝いだけじゃない。進出後の労務系相談対応が大事なんです」
 ここに、多田事務所は国際系という新たな専門カラーを打ち出すことになった。
 事務所は、社会保険手続・労務相談という太い幹に、海外進出支援やワークライフバランス導入支援、国内の法改正対応といった様々な枝葉を広げて、大木となった。
「延びた枝葉は今全体で210社。手続だけをやっている事務所がとても多いので、他社とはバッティングしない。お互いやりやすいんです」と、多田さんは笑顔を見せた。

事務所名に「国際」を入れたわけ

 2002年8月に開業した時、事務名はコンセルト社会保険労務士事務所だった。その名前を、2012年8月にあえて多田国際社会保険労務士事務所に名称変更している。
「私たちはクライアントの発展に寄り添う真のパートナーになることを使命と考えています。そこで『奏でる』を合言葉に、クライアントと共に互いに信頼と思いやる気持ちを醸成しながら最高レベルのサービスを創造し、提供していこうとしています。この思いを込めて、オーケストラのように仲間とひとつの目標に向かい、それぞれが自分の得意分野で活躍することで、最高レベルのハーモニーを作り上げる。それが私たちのミッションなので、事務所名を『コンセルト』と名付けました」
「奏でる」。思いのこもった、とても綺麗な響きのネーミングだ。それなのに多田さんは、なぜ事務所名をわざわざ自分の名前に戻したりしたのだろう。加えて、事務所名に「国際」をプラスしたのは、どのような真意があったのだろうか。
「コンセルトという名前はとっても好きだったんですけど、この名前だとまず何をやっている事務所なのかというところから説明しなければなりません。社労士自体が何をするのかわからなければ、遡ってそこから説明し、さらに国際業務が得意なくだりまで説明するとなると手間がかかります。そこで初めから『国際業務を専門としている事務所』と謳ったほうがわかりやすいと思ったんです。
 現在、当社の国内法と海外絡みの案件の比率は法改正などもあって6:4の割合で国内法が多いのですが、国際業務は過去10年で2倍ですから、今後も増えてくるはず。今すぐではないけれど、いつかは海外に行きたいという企業も多いので、『どうせおつき合いするなら、海外に詳しい社労士がいいね』ということになると踏んでいます。ですから、決して国際業務一本で勝負とか、これだけで行くというニュアンスではありません」
 今、ワークライフバランスのセミナーを手がけていると、海外進出サポートも頼まれることがある。名称変更は大当たりだったのである。

日本で一番の社労士事務所をめざして

 1年前は「働き方改革」という言葉はほとんど聞かなかった。景気が悪かった時にはリストラと希望退職がよく聞かれたが、今はまったく聞かない。合併分割を含めM&Aも一時は多く、合併後の就業規則の相談が非常に多い時期もあった。社会情勢を受けて、労務相談は日々変わり、時代によってまったく違ってくる。
 こうした時代の趨勢を受けながら、多田事務所は徐々に拡大の道を辿ってきた。
「現在15名ですが、今後は3~4年で倍の規模にはしたい。会社は人が増えるとピラミッド型になって、管理職ができて、上司と部下ができます。そうした意味で、今後は管理職を入れていかないといけません。管理職には仕事をして納品するだけでなく、きちんとマネジメントをしてもらいます。こうした組織的な動きをするには、管理職もスタッフも必要になります。もちろん、理念の共有も必要になります」
 資格を取っても社労士事務所ではなく、企業内社労士になる人が大勢いるのが今の時代。多田さんは、彼らをなんとか社労士事務所の魅力や理念でこの業界に入ってきて欲しいと考えている。
「事業会社のほうが安心だからなんだと思います。何かやりたい、資格を取ってもっと活躍したいと思っていても、安定性を考えて企業に残ってしまう。そこにチャンスを与えてあげたいんです。他社がどうであれ、うちは少なくとも事業会社に遜色のない福利厚生や人事制度を構築したい。安心できる会社でありながら、直接、クライアントの悩みに対して解決を促し、アグレッシブにコンサルティング業務に携われる。資格を取ってがんばるぞという人に、安心して働ける土壌を作って良い仕事をしてもらいたい。そんな理想的な社労士事務所作りに力を入れています。将来的には、ステイタスを持って、多田事務所は日本で一番素晴らしいと認知されるようになりたい。私たちは、日本で一番の社労士事務所を作ろうと考えているんです」
 日本で一番。何を持って一番をめざすのか。それにはふたつある。ひとつは、クライアント目線で「この事務所に頼めば安心と誰もが思う事務所」であること。もうひとつは、勤務する社労士、スタッフの目線で、事業会社と同等の福利厚生と報酬、人事制度、教育制度、表彰制度、退職金制度などがそろっていて、安心して定年退職まで働ける組織を作ることだ。上司と部下がいて、チームで切磋琢磨する組織構築。仕事は新しい時代ごとに変化するやりがいのある仕事ができる会社だ。
「安定とチャレンジング。両立しないと思われるふたつの要素を兼ね備えた事務所。それを創っています。もちろん、事業会社以上に良い制度も導入していきたい。それって誰もが働きたいと思う事務所でしょう」
 理想の組織構築のための人事制度は、3つのコースに分かれている。
「専門職として労働法・社会保険法を極めつつクライアントにアドバイスするスペシャリストコース。管理職として事務所運営に参画するマネジメントコース。幅広い分野にバランスよく挑戦していくスタッフコース。複数の多様なコースを3つ用意して、自分のめざす道を進んでもらいます。もちろん、コース変更も可能です。」
 役割等級を導入し、皆が自分の役割を認識し、事務所での役割を果たす。各人の役割が明確なので、良い点、不足している点を面談でしっかりと話しあうこともできるという。
 毎年いろいろなことにチャンレジしている多田事務所は、今年新たに教育制度3ヵ年計画をスタートさせた。
「よくロジカルシンキングのセミナーがありますが、うちは外部セミナーに参加するのではなくて、社内で独自の教育制度を開発しています。レベルはすべて役割等級制度に合わせています。このスキルだったらこの等級に必要であるということは、自社がもっともよくわかっています。『○等級のスタッフには、こういう研修内容』と将来を見据えて制度構築しています。内容的には、社労士として絶対必要な心構えから対クライアント対応、お客様へのサービス、社労士としてのCS(顧客満足度)を追求したプログラムなど。それを今年から階層ごとにしっかり教育していきます。これはとても楽しみです」
 さらに今年チャンレジしていくのがワークライフバランス、「働き方改革」サポートだ。Webサイトに「働き改革特設ページ」をアップし、人事担当者が悩む労務に関する働き方改革を支援するために、「働き方改革」をカテゴリー別にした。
「それぞれの企業で改革の仕方は違います。私たちはそれぞれ3つのカテゴリーに分けて、『こういうことがやりたい』と人事担当者が指を差してくれれば、それに関してすぐにカテゴリーを絞って見積もりを出します。ひとつ目は法律への対応。ふたつ目は多様な働き方。最近1日の労働時間を10時間にして週3回休むという多様な勤務体系がありますが、そういった働き方です。3つ目はインターバル制度のような労働時間を短縮させましょうという柔軟性のある働き方。これらをカテゴリー別に分けています。
 その中で、例えば労働時間が長いという課題であれば、まずはインターバル制度を入れましょうとお勧めします。テレワーク、サテライト勤務など在宅勤務もトレンドです。従業員もそういう制度があると安心しますよね。企業が労務分野で困っていることに関してサポートするのがミッションなので、私たちはワークライフバランスに注力していきます」
 多田さんは、社労士は同じ資格でもまったく違うサービスを展開できる、多様性のある資格だと考えている。
「自分で考えていけば無限に商品が創れるという意味で言えば、おそらく他の士業とはまったく違う。自分の発想、自分の問題意識でいくらでも可能性が広がる資格なんです」
「企業が人に関して困っていること」というキーワードで、いろいろな困りごとを解決する。その解決の仕方はいかようにもできる。だからいろいろな業務がある。「それこそ、これから開業しようという社労士受験生は、いろいろな見聞を広めておくといいでしょう」と、多田さんはアドバイスしている。
 今回多田さんが『TACNEWS』の取材に応じてくれたのは、受験生に、これを読んで「がんばるぞ!」と思ってほしかったからだという。
「受験中、もういやだなってサジを投げたくなる時がきっとあるでしょう。だから仕事をしながら受験勉強している人は偉いなと思うんです。1日8時間も仕事でミッションを与えられて、さらに受験勉強。このモチベーションは本当にすごいなって思います。仕事をしていない状態で受験した私より、はるかに強い。だからこそ、そんな今の思いを忘れないで、それをきちんと活かしてほしいんです。問題意識があるからこそ、めざそうと思ったはず。その問題意識を、きちんと社会の困っていることの解決というところまでつなげてほしいですね」
 多田さんと同じような成長ストーリーを今度作るのは、読者であるあなた自身になるといい。多田さんは、心からそれを願っている。


[TACNEWS|日本の社会保険労務士|2018年7月号]

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