特別インタビュー 2021年度 行政書士試験 最年少合格者は中学生!
水野 博之(みずの ひろゆき)さん
水野 博之(みずの ひろゆき)
兵庫県の私立中高一貫校に通う中学3年生。2021年度の行政書士試験において、最年少となる中学2年生・14歳での合格を果たす。学校での得意教科は数学。部活動は、数学研究部と剣道部に所属。趣味は鉄道で、「鉄印帳」に各地の「鉄印」を集めている。
2021年度の行政書士試験において、最年少となる中学2年生・14歳での合格を果たした水野博之さん。国家資格である行政書士試験に中学生が合格したという報は、多くの人に驚きと希望を与えたことだろう。なぜ行政書士を志したのか、受験のきっかけや学業との両立など、様々な角度からお話をうかがった。
―― 2021年11月の行政書士試験合格、本当におめでとうございます。まずは自己紹介と、行政書士試験に合格するまでの経緯を教えていただけますか。
水野 僕は兵庫県の私立中高一貫校に通う中学生です。中学1年生の冬に行政書士試験を受けることを決め、TACのWeb通信講座を申し込み、年明け3月から本格的に勉強をスタートしました。約8ヵ月の勉強の末、中学2年生で受けた試験に合格し、この春、中学3年生に進級しています。
―― 小学生の頃は、どんな将来の夢を描いていましたか。
水野 子どもの頃から法律の条文などを読むのが好きで、将来は法律を熟知した上で、国民に寄り添った政治家や、真実を追求するジャーナリストになりたいと思っていました。
―― そんな中、中学1年生で行政書士受験を決めたきっかけは何だったのですか。
水野 中高一貫校に通っていて高校受験が必要ないため、「せっかく時間があるのだから、資格の勉強でもしてみようか」と父と一緒に書店の資格試験のコーナーに行ったとき、父から行政書士の試験対策本を薦められたのがきっかけです。もともと法律の条文を読むのは好きでしたし、資格を取得することで、将来の職業選択の幅が広がるのではとも考えました。法律系の国家資格には他にも司法試験や司法書士試験などもあるようでしたが、勉強する内容に興味を持ったのが行政書士試験でした。また、当時の最年少合格者を比較してみても、行政書士試験は前年2020年度が15歳と他の法律系資格よりも年齢が低かったので、「自分も合格できるのでは?」という気持ちになれたことも、めざす決め手になりました。
―― 他の法律資格とも比較した上での決断だったのですね。博之さんにとって初めての資格試験挑戦だったと思いますが、資格取得のための学習の手段として、TACのWeb通信講座を選択したのはなぜですか。
水野 実は、その書店で実際手に取ってみてわかりやすいと感じて購入した資格試験の対策本が、TAC出版の『みんなが欲しかった!行政書士 合格へのはじめの一歩』でした。最初のうちはこのテキストを読んでいたのですが、学生には馴染みがない法律も多くあり、本を読むだけの勉強に限界を感じてきてしまって。やはりプロの講師の講座を受けたほうが効率よく学べるのではと思ったので、受験指導校に通い本腰を入れて勉強しようと決心しました。
どの受験指導校を利用しようかと調べる中で、その対策本の著者のひとりである神田講師がTACのWeb通信講座を担当していると知りました。慣れ親しんでいる神田講師の指導方法・考え方で勉強を続けたほうが学習効率も上がりますし、学校との両立のため「平日は学校の勉強」、「土日や長期休暇は資格の勉強」という風にメリハリをつけて、自分のペースで勉強したかったので、TACのWeb通信講座は自分にぴったりだろうと思ったのです。
―― 学校の勉強との両立について、不安に思うことはありませんでしたか。
水野 そこまで不安はなかったです。先ほどもお話ししたように、僕の通う学校が中高一貫校で高校受験がないぶん、時間的な余裕を持てることが大きかったですね。もし高校受験が必要だったら、在学中の資格取得を考える余裕はなかったと思います。ただ、進学校で授業の進度が速く、もちろん定期テストなどもあるため、学校の勉強との両立ができるか悩んだことはありました。でも臨時に来ていただいていた社会科の先生が、「君なら合格できるよ。自信を持ってどんどんやりなさい!」と背中を押してくださったことで「がんばってみよう!」と決心することができました。
―― 実際に行政書士の勉強を始めてみての感想を教えてください。
水野 新しい知識を学ぶ楽しさを感じましたし、TACの講義のわかりやすさにも助けられました。特に、憲法は社会科の授業でも勉強していますし、民法は日常生活でイメージしやすい内容なので勉強も比較的スムーズにできました。ただ、国家賠償法や商法などは遠い世界の話に感じられて、苦戦しましたね。自分にとって身近ではない法律の内容だと、その法律の意味や背景がイメージしにくいのです。せっかく資格試験にチャレンジするなら、ただの暗記ではなく、内容を理解できなければ意味がないと思っていただけに、そういった馴染みのない法律はまず前提を理解して、法律の内容をかみ砕いていかないといけないので、覚えるまでに時間がかかりました。
―― そういった苦手な科目は、どのように克服しましたか。
水野 出題範囲すべてを完璧に覚えるのは難しいので、TACの講師から「ここは頻出項目です」などと指示された箇所を重点的に学ぶように意識しました。基本的な勉強の流れとしては、「講義を受けてミニテストで知識の定着度を確認し、できなかったところをノートにまとめて復習する」。この繰り返しです。復習の際に意識していたのは、講師から勧められた「インプットだけでなくアウトプットをしっかり行う」ことでした。問題集を解くことはもちろんですが、先ほどお話しした行政手続法のために作った表などを、電車で通学するときや歩いているときにも頭の中で再現するようにしていました。もしうまく再現できない箇所があればメモしておき、帰宅後にテキストを見て確認するなど、誤った知識のまま定着させないよう、アウトプットする内容が正しく合っているかも気をつけていました。テキストを持ち歩くのが好きではない僕には、このやり方が効果的でした。
―― 全体的な勉強方法や、工夫した点を教えてください。
水野 出題範囲すべてを完璧に覚えるのは難しいので、TACの講師から「ここは頻出項目です」などと指示された箇所を重点的に学ぶように意識しました。基本的な勉強の流れとしては、「講義を受けてミニテストで知識の定着度を確認し、できなかったところをノートにまとめて復習する」。この繰り返しです。復習の際に意識していたのは、講師から勧められた「インプットだけでなくアウトプットをしっかり行う」ことでした。問題集を解くことはもちろんですが、先ほどお話しした行政手続法のために作った表などを、電車で通学するときや歩いているときにも頭の中で再現するようにしていました。もしうまく再現できない箇所があればメモしておき、帰宅後にテキストを見て確認するなど、誤った知識のまま定着させないよう、アウトプットする内容が正しく合っているかも気をつけていました。テキストを持ち歩くのが好きではない僕には、このやり方が効果的でした。
―― 「頭の中でアウトプットをする」という方法はいいですね。疲れやモチベーションの低下を感じたことはありませんでしたか。
水野 講義動画は1コマ90分と、学校の授業よりも長いので、受講後は、やはり疲れを感じることもありましたね。そういうときに無理して知識を詰め込もうとしたところで頭に入らないので、少し休んで疲労を回復させていました。よく「1日10時間勉強した」といった受験生の話を聞きますが、僕はただ机に向かって時間をかけるのは好きではなかったので、時間”ではなく「テキストのこのページまでやる」というように量”で区切りをつけていました。どれだけの時間を使ったかよりも、集中して目標とした範囲を着実に勉強することのほうが大事だと思います。
―― メリハリをつけて短い時間で集中して勉強していたのですね。暗記量が多く大変だったとのことですが、逆に学んでいて楽しかった科目はありますか。
水野 行政法です。民法は人の考えが絡むので主観的な要素がありますが、行政法は〇か×かではっきり分けられる点が、数学が得意な僕には合っていました。実際の試験でも、行政法は高得点を獲得できました。逆に、会社法は会社勤めの経験がないのでイメージしにくく、楽しく感じるところまではいきませんでした(笑)。試験での配点もそれほど高くないので、無理してそこに注力しようとは考えませんでした。
―― 実際に試験を受けた感想を教えてください。
水野 父が試験会場までの行き方や会場付近の様子を撮影し、例えば「会場の照明は少し暗め」など現地の下調べをしてくれていたおかげで、当日は変な緊張もなく、落ち着いて試験に集中することができました。試験中は、全60題を3時間で解くにあたって科目ごとに時間配分を決めて臨みましたが、最初のほうに手を着けた民法の問題が予想以上に難しく、少し焦りました。記述式の問題はTACの直前対策で仕上げた成果が発揮でき、手ごたえがあった一方で、択一式の問題はあまり自信がありませんでした。自己採点では記述式の問題は目安となる点数しかわからないので、「受かっているかな…」と不安になるぐらいならと、自己採点はせず、翌年1月の結果発表を待ちました。
―― 合格を知ったときはいかがでしたか。
水野 合格発表の日は平日だったので、放課後にインターネットで結果をチェックしたのですが、自分の番号を見て興奮してしまい、何度も番号を見間違えていないか確認しました(笑)。その夜は母がご馳走を作ってくれて、家族でお祝いをしました。
―― 資格を手にした今の将来の夢を教えてください。
水野 まだ具体的には決め切れていませんが、自分が学んだ知識を使って社会を良くし、人のためになる仕事がしたいという思いに変わりはありません。行政書士試験を通して、努力して何かを成し遂げたときの楽しさを実感したので、この先も興味を惹かれるものが出てきたら挑戦していきたいです。
―― 資格を手にしたことでますます人生の選択肢が広がりましたね。博之さんがこれからどんな人生を歩んでいくのかとても楽しみです!
★お父様にインタビュー★ 「学生ならではの弱点を家庭でサポート」
息子は、幼い頃に買い与えた憲法の本を熱中して読むなど、法律の条文が好きな子だったので、「法律系の資格を取得するのも良いのでは」と思い行政書士試験を勧めました。
学習中は息子のサポーターとして、進捗具合のマネジメントや、講師に聞きにくい質問に代わりに答えるなどして支えました。特に意識したのは、学生がイメージしにくい部分の補足です。例えば「抵当権」なら、散歩中に物件を見たり登記簿を取り寄せたりと、実物を見せながら話すことで、テキストでは理解しにくい内容を身近に感じてもらえるよう工夫しました。また、試験当日の緊張を少しでも取り除けるように、あらかじめ自宅から会場までのルートや移動時間、会場付近の雰囲気などを調べておきました。会場の様子を撮影した動画を見せたことで、事前にリアルに体感でき、緊張をほぐせたと思います。
息子には将来、「人の役に立ち、皆に頼られるような人」になってほしい。そのためには、仕事であれ資格であれ、自分自身の軸となる“何か”を持ち、地に足をつけていなければなりません。私は「この職業に就きなさい」「家業を継ぎなさい」と言ったことはありません。今回も、行政書士試験に合格したからといって行政書士になってほしいわけではなく、学んで得た法律の知識をひとつの軸として、この先の人生で活かしてほしいと願っています。
以前ある方から「法律は強い人の味方でも弱い人の味方でもなく、“知っている”人の味方です」と言われたことがあります。つまり、「法律を知っていること」が法律を味方にするために大事なことなのです。その意味で、身につけた法律の知識を活かして、人の役に立てるような、豊かな人生を送ってほしいですね。
[『TACNEWS』 2022年7月号|特集]