タックスファンタスティック Tax Fantastic!!第48回テーマ 路線価否認の最高裁判決Part2(オシム監督に敬意を込めて)

監 子 ねえ、税太君。人生って切ないわね…。


税 太 監子先輩、いきなりどうしたんですか?「マッチングアプリで出会った人との失恋話」再びですか?


監 子 2021年8月号の話題を今更蒸し返さないでくれる?Jリーガーとのオンラインデートで「いいお金の増やし方はないか」って相談されて悲しい気持ちになったのを思い出しちゃったじゃない…。って、そうじゃなくて、今私の頭の中を占めているのは、サッカー選手ではなく監督なの。ちなみに年上好きになったって意味じゃないわよ。


税 太 ということはやはりあれですか?オシム監督が亡くなられたのがショックだったとか。


監 子 正解!さすがはサッカー好きの税太君。私は熱烈なサッカーファンというわけではないけど、オシム監督がジェフ千葉や日本代表の監督をされていたときはよく試合を観に行っていたわ。阿部勇樹とか水野晃樹とか佐藤勇人とかが選手にいたあの時代…。


税 太 監子先輩、やはりまだJリーガーに未練があるのでは…?


襟 糸 フフフ、監子君のプロフィールにも「恋愛をこよなく愛する」と書いてあるしな。作者が設定上そうしているのだから致し方あるまい。そういえば私は過去にオシム監督の名言を引用したことはあるが、正直なところオシム監督の何が皆を惹きつけているのかよくわかっていない。あの頃は税法の勉強しか興味がなかったしな。


税 太 襟糸先輩は、根っからの勤勉家ですからね…。僕はオシム監督がきっかけでサッカーに興味を持ち始めたんです。選手のモチベーションを刺激してアグレッシブなサッカーでワクワクさせるんですよ!オシム語録も大好きでした。『ライオンに追われた野ウサギが逃げ出すときに肉離れしますか?』『リスクを冒して攻めろ』とか。


襟 糸 そうなのか。でもサッカーにおいてリスクを冒して攻めるのはどうなんだ?守備が崩壊したら点を入れられて負けてしまうのではないか?


税 太 点を入れられてしまうのは自分たちが攻め切れていないからなんです。思い切って攻めれば相手は守りに徹してくれる。確かにピンチになるリスクはありますが、そのときは走って守りに行けばいい。だから練習では選手にしっかり走らせる。確かそんな考え方だったかと思います。あ、先月号で話題にした「路線価否認の最高裁判決」と一緒ですね。


監 子 わかった!鑑定評価ベースではなく安価な路線価ベースで算出したら国税局長官から否認されるかも…と今回の判決を変に意識しすぎると、マイナス思考に陥ってお客様のためにならないってことね?


税 太 その通りです。ただ、もし否認されればお客様を悲しませてしまいます。だからこそ日頃から認定のボーダーラインを必死に考えたり、たとえ不利な状況でも否認されないように策を考えたり、準備を怠らないことが大事なんだと思います。それこそ野ウサギがライオンに追われたときに備えるように。


襟 糸 税太君はオシムイズムを継承しているんだね。そういえば先日、相続専門で有名な税理士法人レガシィ主催のオンラインセミナーに参加したが、セーフとアウトの判定ツールを無料で提供してくれた。このツールは、まさに武士が襲われても戦える刀に感じたな。


監 子 税太君、私の切ない話が最高の話になったわ。襟糸先輩の言う『刀』で裁判も恋愛も『勝たな』いと!

【今回のポイント】

今回の判決の根拠となった財産評価基本通達6項「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」というルール。これがあるために、どうしても否認されるリスクを恐れすぎて控えめな態度を取ってしまう専門家が少なくない。確かにリスクを甘く見てはいけないし、きちんと検討すべきだ。しかし、だからといって守りに入っていては顧客のためにならない。ライオンを怖がるのはいいが、いざというときに攻めるために日頃から準備を怠らないことが一番大事なのだ。オシム監督の思想はわれわれ士業にも通ずる部分がある。ぜひプロフェッショナルをめざす読者諸君には、オシム監督が遺した「オシムイズム」を継承していってほしい


[『TACNEWS』 2022年8月号|連載|タックスファンタスティック]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員。慶應義塾大学卒業、同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でSEとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人兼コンサルティング会社に入り、会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後日本で最大級の相続税申告数実績のある税理士法人レガシィへ。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年に士業事務所間で仕事を授受するWebサービス「Mochi-ya」、2020年にシニア世代向けの専門家とやりとりするWebサービス「相続のせんせい」をリリース。主な著書『改訂版 はじめての相続・遺言100問100答』(2017年、明日香出版)、『「生前贈与」のやってはいけない』(2022年、青春出版)。
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