タックスファンタスティック Tax Fantastic!!第44回テーマ 士業でもイノベーションって必要?Part2
襟 糸 やあ、税太君。んくたいぜあや!
税 太 えっ!?襟糸先輩、呂律が回っていないみたいですが、もしかして確定申告の繁忙期でお疲れですか?
襟 糸 いや疲れてなんかいない。いないかんなてれかつやい。
税 太 か、監子さん!襟糸先輩が壊れちゃいました!どうしましょう!
監 子 税太君、落ち着きなさい。わけのわからないことを言っている上のセリフをよく見て!おしりから文字を読んでみると、ほら!
税 太 あ、なぁんだ!って、突然変な遊びを始めないでくださいよ!
襟 糸 フフフ、なぜ逆から言ったのかわかるかい?
監 子 うーん、作者がネタ切れなのか、ビートルズのネタでここ何ヵ月か押してきているのよね…。あ、わかった、隠れた名曲『Rain』の制作エピソードをオマージュしているんじゃない?ジョンがレコーディングしたテープの音を偶然逆再生で聴いてしまって、それがあまりに衝撃的だったからそのまま曲に採用したという…。
襟 糸 詳しいじゃないか、監子君。ではなぜ私がこの曲をオマージュしたか、わかるかい?
監 子 前月号と同様、わかりませんし興味もありません。さーて、仕事仕事っと。
襟 糸 ちょ、ちょっと待った!前月号同様、これだって仕事の話なんだ。税太君、「イノベーション」についてずっと調べているよね?
税 太 はい。前月号で話題にしていたお客さん、代替わりして早速新しい事業にチャレンジ中なのですが、なかなかうまくいかなくて。「これはイノベーションが必要だ」とおっしゃっているんです。
襟 糸 なるほど、確かに事業承継局面では大事な姿勢だね。では税太君、イノベーションの機会となりうるのは何だと思う?
税 太 確か「予期せぬ成功と失敗」だったかと。P.F.ドラッカーが著書『イノベーションと企業家精神』で書いていましたね。1950年頃、それまで婦人服を中心に販売していた大手百貨店で、まったく注力していなかった家電の売り上げが伸び始めると、それを絶好の機会として捉えて、新しい顧客層向けの戦略に転換したことでさらに躍進したという事例が印象的でした。
襟 糸 さ、さすが税太君。前月号と同じセリフになるが、君のほうがエリートだな…。
監 子 つまり襟糸先輩は、さっきのビートルズの曲も同じだって言いたいのね?再生ボタンの押し間違えという予期せぬ失敗によって、音楽史に残る革新的な曲ができた。
襟 糸 そ、その通りだ。今月号も私の出番がないな…。
田久巣 ただいま帰ったぞ。いやぁ、今回も有意義な打ち合わせだった。しかもこんなお土産までいただいてしまったんだ。
監 子 え、これってSEIKOの高級時計じゃないですか!なぜこんな高いものを?
田久巣 ひどい雨で待合せの時刻である2時に遅刻してしまったんだが、言い訳せずに丁寧に謝罪したら、お客様がとても優しい人でね。今度からは時間に遅れないようにと粋なプレゼントを渡してくれたんだ。
監 子 雨(Rain)が降ったあとは虹(2時)がかかるってホントですね!
税 太 まさに「予期せぬ成功(SEIKO)」ですね!
襟 糸 ……。(自分からこの話を振ったのに最後に気の利いたセリフも言えない。これは予期せぬ失敗だ!)
【今回のポイント】
顧客に寄り添うことが求められる士業は、顧客がイノベーションを起こそうともがいているとき、それをすぐに敏感に察知できる立場にあるといえる。ただ税務処理を行うのではなく、「この商品は主力商品ではないし人件費もかけていないのに、なぜか毎年売上が伸びていますね」といった一言を言えるようになれば、顧客の気づきにつながり、未来の大ヒット商品が生まれるきっかけになるかもしれない。そう考えると、士業の仕事がおもしろく思えてくるのではないだろうか?士業がイノベーションを起こすことが「予期せぬ成功」ではなく、「予期した通りの成功」と言われるまでになるように、“攻め”の姿勢を忘れず、業界全体でがんばっていこう!
[『TACNEWS』 2022年4月号|連載|タックスファンタスティック]
筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)
1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員パートナー。慶應義塾大学卒業、同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でシステムエンジニアとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人兼コンサルティング会社に入り、会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後日本で最大級の相続税申告数実績のある税理士法人レガシィへ。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年7月には会計事務所向けWebサービス「Mochi-ya」をリリース。2020年8月にはシニア世代向けWebサービス「相続のせんせい」をリリース。
主な著書:『改訂版 はじめての相続・遺言100問100答』(2017年、明日香出版、共著)
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