悪の組織
悪の組織の統領 会計に目覚める
~悪の統領 Episode0~
「悪の組織の統領 会計に目覚める ~悪の統領 Episode0(ゼロ)~」は、悪の秘密結社「ZAIM」の統領が、まだサラリーマン「戦闘員Z」だった頃、会計の重要性に目覚めていく物語です。
第4話 戦闘員Z 簿記に挑む
<あらすじ>
新たな組織にて戦績を上げる戦闘員Z(のちの悪の統領)は、簿記・会計の重要性を日々実感するのであった。
戦闘員Z 私も簿記検定を受験することにした!
戦闘員b 唐突っすね(笑)簿記って難しそう…。
戦闘員c 転職がうまくいったんだし、別に資格まで取らなくてもいいんじゃね?
戦闘員a 私も昔チャレンジしたことありますが、挫折しました…。
戦闘員Z 長い人生、また転職せざるを得ない場面もあるだろうし、自らの能力はなんらかの「形」で示さねばならぬ。その意味でも簿記には密かに憧れていたのだ。
いまさらながら説明しよう。簿記とは、日々の経営活動を記録・計算・整理して、決算書を作成し、経営成績と財政状態を明らかにする技能である。日商簿記は年間で約60万人が受験する社会的に高い信頼と評価を得ている公的資格である。
大手資格受験校の基本テキストを購入し、独学で勉強に励む戦闘員Zであったが…
戦闘員Z …分からん…特にこの仕訳というのが…
戦闘員a 苦戦しておられますね。
戦闘員b 「現金」は借方、「売上」は貸方…???
戦闘員c どちらも同じ意味じゃねえのか?
戦闘員Z 決算整理…ますます分からん…ヤツに相談するしかないな…
困ったときの「焼きとん屋人脈」である。公認会計士「元・戦闘員Y」に、ホッピーをおごりつつ教えを乞う戦闘員Zであった。
戦闘員Y あーね。「独学あるある」だな。俺の場合は最初から会計士を目指していたから、資格の学校に通ってたけど。独学でやってるとつまずくんだよね。
戦闘員Z 決算書は読みこなしたいのだが、仕訳の作法が難しくてな。
戦闘員Y じゃあ、「読む方」の資格から挑戦してみたらどうだい?
戦闘員Z そんな資格があるのか?
(作者より)ここから若干CMっぽくなるが、読者の諸君ついてきてくれたまえ。
戦闘員Y そんな君にピッタリの公的資格。その名も「ビジネス会計検定」。
戦闘員Z なんだそれは?
戦闘員Y 「あらゆるビジネスパーソンの仕事に活きる」が売りの、大阪商工会議所の資格だ。簿記が財務諸表を「作る」資格だとすると、ビジネス会計は会社の経営成績や財政状態を分析するための、財務諸表を「読む」資格といえる。
ここでスッと3級テキストを出す戦闘員Y。「準備がよすぎるだろ!」とつっこみたい気持ちを押さえ、パラパラと読む戦闘員Zであった。
戦闘員Z なるほど…使えるな!前に教えてもらった「収益性」や「安全性」の指標が体系的に学習できるのか。都市制圧のシミュレーションに役立ちそうだ。
戦闘員Y 簿記の仕訳に出てくる勘定科目も、何が収益で、何が資産で…とか、自然と理解できるはずだ。
戦闘員Z それは助かる!ところで、俺は決算整理のところが苦手なのだが…。
戦闘員Y ビジネス会計では3級から会計理論を学べるから、決算仕訳を覚える前に読んでおくといい。理論・法則を知れば、簿記の面白さが実感できるはずさ。すみませ~んホッピー「なか」おかわり~!
アジトに戻り、簿記と並行してビジネス会計を学ぶ戦闘員Z。みるみるうちに成果が出てきたようだ。
戦闘員b 調子良さそうっすね。
戦闘員Z うむ!財務諸表の構造が分かると、簿記のルールがよく分かるな。最終的に出来上がるB/SやP/Lがどうなるかを意識して仕訳を書ける。
戦闘員b 苦手だった決算整理のほうはいかがすか?
戦闘員Z それも大丈夫!「費用収益対応の原則」がポイントのようだ。たとえば3月分の未払給与。たとえ振り込むのが4月だったとしても、ちゃんと年度内の費用に入れておかないと、3月分の収益は人件費0で得たことになってしまう。
戦闘員a なるほど・・・ややこしい月割をする減価償却費もその理屈ってことですね。
戦闘員Z 正しい収益性分析をするためには、年度ごとのP/Lを正しく作らねばならん。我々のように1年でリーダーや責任者が交代させられる世界では死活問題だ!
戦闘員a そう考えるとよく分かりますね。僕もビジネス会計にチャレンジしようかな!
戦闘員c 受験申込みはお早目に!(以上!CMでしたっ!)
果たして戦闘員Zはビジネス会計と日商簿記に合格できるのか?最終話まで残り2回っ!!「受験申込期日」と「悪の統領」を見逃すなっ!
次回「戦闘員Z 躍進を遂げる」お楽しみに!
[TACNEWS 2018年12月号|連載|悪の組織の統領会計に目覚める]
鈴鹿大学 准教授 髙見 啓一氏
日商簿記1級、販売士検定1級、税理士、中小企業診断士など数多くの資格に合格。
日本商工会議所のネット小説「悪の組織の原価計算」の作者でもある。