悪の組織
悪の組織の統領 会計に目覚める
~悪の統領 Episode0~
「悪の組織の統領 会計に目覚める ~悪の統領 Episode0(ゼロ)~」は、悪の秘密結社「ZAIM」の統領が、まだサラリーマン「戦闘員Z」だった頃、会計の重要性に目覚めていく物語です。
第3話 戦闘員Z 戦いに勝利す
<あらすじ>
のちに悪の組織の統領となる「戦闘員Z」は、勤務先組織の倒産に直面し、新たな組織への転職を試みるのであった!
戦闘員a 転職情報誌を買ってきました!
戦闘員b 転職サイトに登録しました!
戦闘員c 怪しげなスカウトマンの話を聞いてきました!
行くアテのない部下(戦闘員a・b・c)は、戦闘員Zの転職活動に随行するのであった。
戦闘員Z …それもいいが、もう倒産はコリゴリだからな。こんどこそ会社選びの時に財務分析を使って、安全性の高い転職先を選ぼうじゃないか。
戦闘員a それは理にかなっていますね。しかし、外部の人間が決算書の情報なんて、見られるんですか?
戦闘員Z 会計士に転職した戦闘員Yの情報によると、それなりに大きな組織であれば、株主や投資家などを保護するために、法律に基づいて決算書が公開されているらしい。
説明しよう!企業の状況を知ろうとするステークホルダー(利害関係者)に財務情報等の公開・開示をすることを「ディスクロージャー」といい、会計の重要な機能となっている。会社法や金融商品取引法といった法律によって義務付けられている。
戦闘員c 悪の組織が「法律に基づいた情報公開」ってなんか矛盾してないか?笑
なにはともあれ、戦闘員Zらの転職活動は順調に進み、数か月後、晴れて新たな組織の戦闘員となるのであった。
戦闘員b いや~、これで一安心っすね。実はフィアンセに婚約解消される寸前でした。
戦闘員c お前、結婚しても尻に敷かれそうな予感がするな。
戦闘員Z いや、安心はできん。中途採用組はそれなりに「即戦力」になれんとすぐに干される。引き続き組織内部でも財務分析をしたいと思う。
戦闘員a はい。ここ数年の戦績データをもらってきました。
戦闘員Z お前は気が利くな。どれどれ…うむ。やはり都市を攻めるときに費用(コスト)をかけすぎているようだ。
戦闘員b 前の組織はそれなりに武闘派が揃っていましたからね。都市制圧のコストはもっと安かったかもしれないっす。
戦闘員Z 収益性分析を試みよう。売上高利益率だ。
説明しよう!「収益性分析」とは企業の「もうける力」を見る分析方法である。資本利益率が出発点となるが、狭義には売上高を分母に置き、利益の割合を見る「売上高利益率」を算出する(計算式…利益/売上高×100(%))。
戦闘員Z 制圧都市1都市あたりの収益を分母において、そこから費用を引いた悪の営業利益を分子に乗せれば、「悪の営業利益率」の出来上がりだ。この率を10%まで上げていくため、戦闘のコストカットを図るぞ。
戦闘員c え、コストをバンバンかけた重火器で楽しようと思ってたんだけど…。
戦闘員Z 却下!お前の武器は手づくりの竹ヤリにしよう。まずは裏山で竹を伐採してこい!
戦闘員c ひでえ!
数か月後
戦闘員b コストを意識した俺たちの戦いぶりが、組織内でも評価されてるみたいっす。
戦闘員c 竹ヤリでヒーローらと戦わされるオレたちは、毎週体がボロボロだけどな…。
戦闘員Z いや、コストは下がったが、この組織は戦闘員の数に比べて制圧都市の数が少なすぎる。戦闘員の「生産性」にメスを入れた分析もしなければ。
戦闘員a これですか?「従業員一人当たり売上高」という指標があるようです。
説明しよう!「生産性」とは、ヒトやモノの投入量に対する生産量の割合を指し、その代表例である「従業員一人当たり売上高」とは「売上高/従業員数(円)」で計算され、この数値が高いほど労働効率がよいということを意味する。他にも分母を労働時間(マン・アワー)で計算することもある。
戦闘員Z うむ。以前いた組織と比べると、今の組織は「戦闘員1人あたり都市制圧高」が安すぎる。この数値が業界平均値まで高まるまで、戦闘員のボーナス停止を上に提案するとしよう。
戦闘員abc 鬼~!!!
上司の評価(と部下の恨み?)が高まり、次第に「悪の統領」への能力が開花していく戦闘員Z。会計の知識の必要性を日々実感するのであった。
次回「戦闘員Z 簿記に挑む」お楽しみに!
[TACNEWS 2018年11月号|連載|悪の組織の統領会計に目覚める]
鈴鹿大学 准教授 髙見 啓一氏
日商簿記1級、販売士検定1級、税理士、中小企業診断士など数多くの資格に合格。
日本商工会議所のネット小説「悪の組織の原価計算」の作者でもある。