人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第14回 マネックスグループ株式会社
山下 みどり氏
マネックスグループ株式会社
人事部
メーカーで人事のキャリアを積んだあと、2018年6月にマネックスグループ株式会社に転職。現在は人事部に所属して、採用(新卒・中途)の担当をしている。
マネックスグループ株式会社は、従来の対面型ではなく、オンラインによる証券投資や資産運用が簡単にできるしくみを作り上げ、日本の金融業界に大きな変革をもたらした。ここ数年は、基幹システムの内製化や、仮想通貨交換業者のコインチェック株式会社をグループに迎え入れるなど、新たな取り組みをし続けている。時代と業界に先駆けてチャレンジし続けるマネックスグループの人材採用と育成制度、資格に対する考え方などをうかがった。
「未来の金融を創る」ネット証券会社
──マネックスグループ株式会社の事業内容をご紹介いただけますか。
山下 当社は「未来の金融を創ろう」という強い思いから、1999年4月にベンチャー企業として誕生したマネックス証券株式会社が始まりです。2004年8月に持株会社体制に移行し、マネックスグループ株式会社(当社)が設立されました。
社名のマネックス(MONEX)は「MONEYのYの一歩先を行く」から来ており、創業時から業界に先駆けて新しいことに取り組み、お客様のサービス向上に努めていくという強い思いがあります。創業20周年を迎えて、フィンテックと呼ばれる新しい事業領域が拡大する中、当社はより
今の時代に合った金融サービスを提供することをめざしています。この発想から、仮想通貨取引所の運営をしているコインチェック株式会社を新たにグループ入りさせたり、短期売買ではなく長い目で見た資産運用を提案したりと、未来に向けてお客様のニーズに沿ったサービスを提供しています。今までにないものを生み出すという意味で、LGBT向けのパートナー口座サービスも始めました。これは社内のアイデアコンペティションから生まれたサービスで、金融業界の堅いイメージを払拭するクリエイティブなマネックスらしいものと言えます。
通年採用で多様な人材を採用
──マネックスグループの採用方針をお聞かせください。
山下 当社では、新卒採用と中途採用の両方に力を入れています。毎年、新卒は10名前後(2019年4月、8名入社)、中途は30名以上を採用しています。
2018年には新卒・中途合わせて約70名を採用しました。ここ数年で基幹システムの内製化を進めており、特に中途採用ではエンジニアを含め専門的職種の採用を加速させています。ビジネスサイドでは、他の証券会社や金融機関で培ってきたスキルをお持ちの人材を広く採用しています。
新卒に関しては、今後の可能性に期待しての採用になります。従来は総合職というくくりで一括採用していたのですが、2020年度採用からはビジネスコースとエンジニアコースの2コースを設け、本人の志向に合わせていずれかを選べる採用を始めました。若い方には自分のやりたいことを早い段階から突き詰めていただきたいですし、基幹システムの内製化を進める中で、システムに強いエンジニアを新卒でも採用したいという意図から、この2つのコースを設けて通年採用活動を行っています。
どちらのコースも学部や学科は不問ですが、エンジニアコースに関しては、当社で使用するプログラミング言語の使用経験があったほうがよりよいという部分はあります。
──通年ということは、一時期に集中して説明会や選考を行うという流れではなくなったのでしょうか。
山下 そうですね、これまでのように一時期にまとめて採用選考を行うのではなく、応募のタイミングに合わせてその都度選考していきます。時期を決めての新卒採用では、ある程度同じような志向を持って大学4年間を過ごした学生が、「みんなが動く時期だから」ということで応募してきます。それを通年採用とすることで、例えば留学から帰ってきたばかりという方や、起業をめざしていたけれど方向転換して就職活動にシフトしたという方など、多様なことに取り組み、多様な経験を持っている方を多く採用できる可能性が高くな ると考えています。
──求める人物像についてお聞かせください。
山下 Webサイトに「新卒採用にあたって、若い世代のみなさんがいままでのマネックスにはなかった視点や発想で、社内に刺激を与えてくれることをとても楽しみにしています」と書いてあるように、「未来の金融を創ろう」という思いで設立した会社なので、積極的に挑戦ができる人材を求めています。「若手の人材に積極的にチャンスを与えて どんどん挑んでもらいたい」という思いが強いので、機会を捉えて存分に力を発揮できる方を求めています。
新卒の最終面接は社長が担当
──新卒採用のプロセスを教えてください。
山下 マネックスグループの人事部では、当社とマネックス証券の採用を行い、グループ子会社は各社で採用活動を行っています。当社の新卒採用活動はホールディングスでの一括採用ですので、採用後の配属がマネックス証券になる可能性もあります。
流れとしては、エントリーシート選考を経て、SPI(適性検査)、複数回の面接のあとに内定となります。面接に関しては3次面接まで設定していて、1次面接ではご本人の人間性を見て、2次面接では業界や仕事についてより詳しくお聞きし、3次面接で総合的にお聞きします。選考内容に合わせて現場のメンバー、マネージャーや部長クラスが面接官を担当します。その後、社長面接が必ずあります。2019年4月にマネックス証券の社長が代わりましたので、マネックスグループとマネックス証券の社長2名に会っていただき、最終的に内定を出します。
──社長がすべての学生の面接をされるのですね。
山下 そうですね。会社の文化や社風にマッチするか、その学生をよく知るために社長面接を行っています。それに加えて、マネックスグループ社長の松本が学生のみなさんとお話しするのが大好きで、学生の方の声をダイレクト に聞きたいし、会社のことを知ってほしいという意向で、新卒に関しては必ず社長面接を行っています。
──中途採用に関してはいかがですか。
山下 中途の場合は見るべきポイントがスキルや職歴になってきますので、面接は2~3回に抑え、最終的に人事部長の面接で内定を出します。中途採用の場合、求めるスキルや職歴が専門的になるため、その判断ができる求人部署が中心となって進めています。
内定者には残りの学生生活を充実させてほしい
──内定者フォローや内定者研修は行っていますか。
山下 内定後は、内定者にeラーニングと入社前に取るべき資格を案内しています。eラーニングでは、ビジネスの基礎的内容を勉強していただきます。資格では証券業界必須の証券外務員資格を入社前に取るように推奨していて、2019年からeラーニングでのサポートも始めました。
当社は内定者に大きな課題を与えることはせず、自助努力に任せています。ですから内定者に集まっていただく機会も、2018年は内定者懇親会と10月の内定式だけでした。遠方の方や内定後に留学する方もいますので、残りの学生生活を充実させてほしいと考えています。
──新入社員研修について教えてください。
山下 4~6ヵ月の期間を設けて研修を行っていて、内容は大きく分けて3つです。1つ目はビジネスマナーやコミュニケーションといったビジネスの基礎的研修、2つ目はITスキル研修です。当社ではITスキルや技術を大切にしているので、ビジネスコースとエンジニアコースのどちらであってもITスキルの素養は身につけてほしいと考えています。3つ目は、コンタクトセンター研修です。
各研修の期間については、マナー研修が1週間、ITスキル研修が約2週間、その後は約3ヵ月にわたってコンタクトセンター研修を実施しています。コンタクトセンターでは、最初の1ヵ月は座学を通して商品知識を習得し、その後ロールプレイングでの練習を経て、先輩のサポートのもと、実際にお客様の電話を受けてもらいます。お客様の声を生で聞ける貴重な機会ですから、この研修を通して会社のビジネスや全体像を掴んでほしいと思っています。その後、配属先で仕事がスタートします。
──新入社員研修のあと、定期的に受ける研修はありますか。
山下 細かい定期的な研修があるわけではありませんが、一定のキャリアを積んだあとに、スキルの棚卸しの意味を含め3年次研修を実施しています。その他、部署によって必要となるスキルが異なりますから、必要に応じて各部で研修を実施しています。
「自己投資補助制度」でスキルアップをサポート
──証券外務員は必須資格ということでしたが、それ以外の資格取得に関してはどのように対応していますか。
山下 当社はチャレンジを推奨する企業文化があるので、自己成長したい人を「自己投資補助制度」でサポートしています。具体的には半期に10万円、年間20万円の枠を一人ひとりの社員に設定し、それを使って資格を取得したり、必要となるIT関連スキルを身につけたり、英会話教室に通ったり、各々がブラッシュアップできる制度です。制度を利用するには人事部への申請が必要です。料理教室のような業務に関係ないものは認められませんが、内容が業務に関連するものであれば、この制度を利用して勉強することが可能です。
特にエンジニアは必要な資格が多いので、会社側から「こういう資格を取ってほしい」と推奨される資格数が多くなります。そこでエンジニアだけでなくビジネスサイドも同様に、推奨資格を受験して合格した場合、受験料の一部がキャッシュバックされるしくみを作りました。勉強する費用は「自己投資補助制度」を使い、無事合格したら受験料の一部が戻ってくるように、うまく組み合わせて使うことができます。
こうした資格取得や学習は、あくまで推奨、自己研鑽という位置づけです。当社には半期に一度目標を設定してもらい、その達成度合いを半期ごとに評価する制度があります。その際、自分でキャリアプランシートを書いて目標を設定してもらうのですが、その中に「資格取得」という項目があって、各部署の仕事に必要な資格を一覧にしています。この一覧を参照しながら、「自分はどういう資格を取りたいか」を考え、半年後にその成長度合いを振り返るという方法を取っています。
──推奨している資格にはどのようなものがありますか。
山下 公認会計士、税理士、社会保険労務士、統計調査士、統計検定、不動産鑑定士、宅地建物取引士、内部監査士、秘書検定、ビジネス・キャリア検定試験、中国語検定試験、TOEIC® L&R TEST、TOEFL®、実用英語技能検定、ビジネス実務法務検定試験®といった法務・労務関連の資格や、ほとんどのIT系の資格、簿記検定、人材開発、メンタルヘルス系、コンプライアンス系、個人情報保護に関する資格といったように、かなり多岐にわたっています。
──資格取得と人事考課の関連はいかがでしょうか。
山下 資格取得がダイレクトに昇級・昇進の要件にはなっていませんが、自分で設定した目標に到達したというプラスの評価になりますし、その資格があることで専門性や知識が身についていると認められ、新たなミッションを与えられるということもあります。例えば証券アナリストなどは、この資格がないと就けないポジションもあります。
資格試験に通ずるマネックスの「チャレンジ精神」
──人事制度として特徴ある制度があればご紹介ください。
山下 やはり大きな柱は自己投資補助制度で、それがあることで各社員の志向に応じた資格取得やスキルアップといった成長へのサポートにつながっているのが大きな特徴です。人事制度としては、先ほどもお話ししたように、各自が持つスキルや働き方に応じて、マネージャーや管理職をめざすジェネラリストと、専門的スキルを磨いていくプロフェッショナルのいずれか進みたいコースを選択してもらう点が特徴です。
──社内の男女比と、働き方・育児・介護に関する制度についてはいかがですか。
山下 現状の男女比は6対4ですが、当社はLGBT支援企業のため、性別での括りはなくしていきたいと考えています。産休・育休の取得率は100%で、みなさん職場復帰していますし、育休明けには時短勤務制度を使いながら働いていらっしゃる方もいます。小学校就学までの間は子ども1人につき年間5日間までの子どもの看護休暇も取得できます。また男性の育休も少ないながら実績があります。1年間といった長期休暇よりも、いちばん大変な時期であろう奥様の出産直後に何週間か育休を取るのが当社での男性の育休の特徴ですね。当社には男性が育休を取るのはおかしいと考えている役員はいないので、自然に男女の差なく育休を取れていますし、全員がきちんと使っている制度になっています。
ワークスタイルは、コアタイムを11:00~14:00として自分の好きな時間に出社・退社ができるフレックスタイム勤務制度です。
またユニークな制度に、新しいテクノロジーを知ったり、使ったりするきっかけ作りのために年に1回開催する「アイデアソン」というイベントがあります。このイベントでは、各部署のエンジニアが知恵とアイデアを絞って研究した成果をプレゼンテーションして、社内で共有しています。
それから、創業20周年記念の一環で企画した「プチサンキュー」があります。これは従業員同士で感謝の気持ちを贈り合う制度で、アンケートフォームを活用して気軽にメッセージを送付して、社内のコミュニケーションを活発化させるものです。メッセージの内容や数に応じて毎月社長が全体会で表彰するのですが、プチサンキューを贈られた人だけでなく贈った人にもセンダー賞という表彰があるので、贈られる方も贈る方も「みんな、いいね!」という制度です。
──最後に、資格取得をめざしている方々に向けてメッセージをお願いします。
山下 マネックスグループは、資格を含めて「チャレンジできる分、成長できる人材」を求めています。強い目標に向かって資格取得をめざしてがんばっている皆さんは、まさに私たちが求め、広く迎え入れたいと考える人材です。皆さんのように目標に向かって努力できる方に、ぜひ来ていただきたいと思います。マネックスグループは、資格を含めて「チャレンジできる分、成長できる人材」を求めています。強い目標に向かって資格取得をめざしてがんばっている皆さんは、まさに私たちが求め、広く迎え入れたいと考える人材です。皆さんのように目標に向かって努力できる方に、ぜひ来ていただきたいと思います。
[『TACNEWS』 2019年10月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]
会社概要
社名 マネックスグループ株式会社
設立 2004年8月2日(マネックスグループ)、
1999年4月5日(マネックス証券)
代表者 取締役会長兼代表執行役社長CEO 松本 大
本店 東京都港区赤坂1-12-32 アーク森ビル25階
事業内容
金融商品取引業等を営む会社の株式の保有
主なグループ会社
マネックス証券株式会社、マネックス・セゾン・バンガード投資顧問株式会社、コインチェック株式会社、
その他
従業員数
1,103名(2019年5月末現在/グループ連結)