日本のプロフェッショナル 日本の司法書士|2022年12月号
三浦 美樹氏
司法書士法人東京さくら 代表
一般社団法人日本承継寄付協会 代表理事
司法書士
三浦 美樹(みうら みき)
1980年8月生まれ、静岡県出身。2007年、司法書士試験合格。不動産登記、不動産決済等メインの個人事務所勤務を経て、2011年、相続専門のチェスターグループの一角を担い、チェスター司法書士事務所として独立開業。2017年、チェスターグループを離れさくら本郷司法書士事務所を開設。2019年、一般社団法人日本承継寄付協会設立、代表理事に就任。2020年、さくら本郷司法書士事務所を法人化、司法書士法人東京さくらに名称変更。
「遺贈寄付」を社会に根付かせ、選択肢のひとつとして普及させる。
それが私たちのミッションです。
人生の最期に残ったお金を遺言などによって第三者に寄付する「遺贈寄付」。司法書士法人東京さくらの代表司法書士・三浦美樹氏は、遺贈寄付に出会わなければ今の自分はなかったと語る。「世の中の役に立ちたい一心」で一般社団法人日本承継寄付協会を立ち上げ、代表理事として遺贈寄付の啓蒙活動に取り組んできた三浦氏に、司法書士になった経緯から遺贈寄付との出会い、遺贈寄付とはどのようなものか、日本承継寄付協会の活動、そして子育て中のエピソードについてもお話をうかがった。
受験勉強は“ご褒美”だった
「将来の夢はお嫁さん。専業主婦になりたい」
司法書士法人東京さくらの代表で、一般社団法人日本承継寄付協会の代表理事を務める司法書士の三浦美樹氏は、高校時代まではそんな将来を思い描いていた。考えが変わったのは、大学に通うために静岡から上京してきたあとのことだった。
「大学2年生のときに怪我で入院してから、学生時代はほぼ入院生活でしたので、就職活動もできませんでした。この時期は『自分は誰の役にも立てていない』と感じてしまって精神的にとても苦しかったですね。だからその頃は『誰かの役に立ちたい』という思いがとにかく強くて。そんなときに思い浮かんだのが、司法書士という職業でした。私も司法書士になれば、誰かに寄り添って役に立てる人になれるかもしれない。そう思ったのが司法書士をめざしたきっかけです」
地元・静岡にいたときから「頼れる身近な法律家」と言われる司法書士の存在は何となく知っていた。しかし法律はまったくの門外漢だった三浦氏。一体どのように勉強をしていたのだろうか。
「24歳のとき、初めて小六法を開きました。まず文字の多さにびっくりしましたね。本当にこれを覚えられるのかと怖気づいてしまいました(笑)。でも、学生時代がほぼ入院生活だった私にとって、勉強に没頭できることは人生の“ご褒美”に思えたのです。資格試験の勉強は、健康な体や、時間的余裕、没頭できる環境などがそろって初めてできることだと思うので、勉強できることがとてもうれしくて。だから『この1年はご褒美の期間にしよう』と、受験勉強に専念することにしました」
久しぶりにする勉強の腕慣らしとして、比較的挑戦しやすそうな資格試験の勉強をしてみようと考えた三浦氏。お金の知識も身につきそうという思惑もあり、ファイナンシャル・プランナー2級を受験。合格してはずみをつけると、早稲田セミナー高田馬場校(当時)で本丸である司法書士の受験勉強をスタートした。
「難しい目標にチャレンジできることが幸せでした。“ご褒美”なので、その気持ちを楽しもうと思って、楽しく勉強していましたね」
ところが司法書士試験はそう簡単ではなく、1年目は不合格に。2年目からの勉強は、楽しさだけではなくなり、本当に合格できるのかという不安に苦しめられるようになった。受験勉強のつらさを知った2年目、本試験当日を迎えるも体調面のコンディションが悪かったことも影響し不合格に。「次はもうご褒美じゃない。今回がダメならあきらめる」と心に決めて迎えた3年目。綿密な対策を練って、受験会場の下見も入念に行い、3週間前から生活や食事のリズムを本番に向けて整えていった。そうして気合いを入れて背水の陣で挑んだ最後の挑戦で、三浦氏は無事に司法書士試験に合格することができた。
相続専門税理士法人グループの一角を担って独立開業
三浦氏は、受験2年目から法テラス(日本司法支援センター)のコールセンターでアルバイトをしていた。合格後は、不動産登記と債務整理をメインとする事務所に半年、板橋区にある不動産決済、相続など不動産関連業務をメインとする個人事務所に3年間勤務。そのあと、相続専門のチェスターグループの一角を担って、チェスター司法書士事務所として独立開業した。独立の経緯について、三浦氏は次のように話している。
「育休明けのタイミングで税理士法人チェスターの代表税理士2人に声を掛けていただいたのが、独立のきっかけです。相続専門のグループなので今までやってきたことを活かすこともできますし、一緒に働く仲間もいて、ひたすら相続案件に特化して経験を積めるという恵まれた独立開業でした。この当時身につけたスキルや経験は今にもつながっていると思います」
育休開けの三浦氏は、9時から18時の間に仕事を終わらせ、子どもを保育園に迎えに行くという生活を送っていた。業務的にも自分でスケジュールを設定できる相続登記が多かったことは、育児との両立をする上で都合がよかった。しかし子どもが小学校に上がり学童保育が始まると、オフィスのある日本橋までの通勤時間が大きなネックになってきた。
「できれば職住接近で自宅と事務所を徒歩5分圏内にしたい」と考えた三浦氏は、チェスターグループを離れ、さくら本郷司法書士事務所を開設した。
「開設のきっかけはもうひとつあります。それまで取り扱っていたのが相続登記という亡くなったあとに生じる業務だけだったことです。私としては、亡くなる前の生前コンサルティングをやってみたい気持ちがありました。
登記業務は誰がやっても結果は変わらないものですが、生前対策は誰が関わるかによって結果が違ってきます。6年間、ひたすら相続登記をやり続け、相続トラブルをたくさん見てきましたが、相続をうまく進めるためには生前に何をするかが大事だとわかりました。そこで生前対策をメインに据えた事務所を開こうとシフトチェンジしたのです」
オフィスは東京ドームが見える文京区に構えることにした。住宅街にあり、駅からのアクセスも良かったため、地元住民からの相談が多く寄せられる地域密着型相続コンサルティング事務所に成長していった。
遺贈寄付の普及をめざし日本承継寄付協会を設立
学生時代から激動の人生を送ってきた三浦氏だが、この頃には「仕事も順調だし、子どもも大きくなって生活が安定してきた」とゆとりを感じるようになってきた。心に余裕ができたことで、これまでの人生を振り返り、「自分たちは未来に何を残していけるのか」を考えるようになった。
「これまでの人生を振り返ったとき、たくさんの人や組織に助けていただいたおかげでここまで来られたのだと、感謝の思いでいっぱいになりました。でも、直接そういった恩を返せるチャンスはあまりないですよね。相続は人生の最期に思いを伝えられる機会ですが、私が関わってきた相続の案件では、被相続人を誰にするか迷っている方や、きょうだい間で揉めてしまうケースを度々見てきてきました。そこで、誰にどうやって恩を返すか、もっといい方法はないのかと考えるようになったのです」
改めて世の中を見渡すと、社会や受益者のために尽力するNPO法人などのソーシャルセクターが数多く存在することを知った。
「『人の役に立ちたい』『社会に貢献したい』という思いを持っている方は多いと思います。その方たちの思いを『遺贈寄付』という形でつなげられたら、子どもたちや困っている人たちを救うことができるのではないか――。そう考えるようになりました」
三浦氏が遺贈寄付に出会った瞬間だった。
「遺贈寄付について調べていく中で、相続専門の司法書士や相続で有名な事務所でも、誰も遺贈寄付について積極的にクライアントへ提案していないという現状に気がつきました。私たちの知識不足が、遺贈寄付という選択肢を隠してしまっていたのです。この課題解決は、誰かがやらなければいけないことだと思いましたね」
それからの三浦氏は寄付について勉強を始め、2020年には、実際に扱った遺贈寄付について125人の相続実務家を対象にアンケート調査を実施。さらに、50代以上の1,000人を対象に遺贈寄付に関する全国実態調査を実施した。
「遺贈寄付の実態を調査した結果、需要があるにもかかわらず、やはり私たち専門家が遺贈寄付を提案できていなかったことがわかりました。遺贈寄付の相談先を求めている人がどれだけいるのか、そして私たち士業が遺贈寄付を提案することで、どれだけ大きな資金が動くかが、1年間の調査で見えてきました」
ただ、三浦氏ひとりが「私が遺贈寄付の専門家です」と遺贈寄付を始めたところで、社会は何も変わらない。
「だったら、士業を巻き込んでみんなでやっていこう。全国どこでも気軽に遺贈寄付の相談を受けられるように、遺贈寄付をしたい人と寄付先をつなげるための一般社団法人を作ろう。そう思って立ち上げたのが日本承継寄付協会(以下、協会)です」
設立は2019年8月、ちょうど三浦氏39歳の誕生日だった。
「小額から誰もができるもの」として遺贈寄付を広めたい
遺贈寄付とは、亡くなったあとに遺った財産を第三者へ寄付する方法で、寄付先はNPO団体や公益法人などのソーシャルセクター、教育機関、地方自治体など幅広い。
遺贈寄付を行う場合、まずは活動地域や活動規模、希望条件を見て寄付先を決めることになる。協会は寄付先選びの参考として、遺贈寄付の情報を発信する専門誌『えんギフト』を無料で配布したり、ヒアリングした希望をもとに寄付先を紹介したりと遺贈寄付利用のサポートを行っている。協会はこうした活動を通じて、遺贈寄付のイメージを「お金持ちがするもの」から「小額で誰もが無理なくできるもの」に変えようと力を入れているのだ。
「現状、遺贈寄付の平均金額は数千万円と高額です。そのためどうしても『お金持ちがするもの』というイメージを持たれがちですが、5万円や10万円の寄付でもまったく問題ないのです。『自分は年金生活だし、お金持ちでもないから遺贈寄付する立場ではない』と思っている一般の方たちに情報をお届けして、皆さんに『私も寄付を通じて社会の役に立てるんだ』というワクワク感を持っていただきたいと思っています。2022年8月からは、遺贈寄付の文化を日本に根付かせるきっかけにしたいと、日本で初めて『フリーウィルズキャンペーン』を企画し、その第一弾として寄付遺言書を無料で作成できる『フリーウィルズウィーク(無料寄付遺言書作成週間)』を実施しました」
自分の好きなところに思いを託すことができるのが遺贈寄付のメリットだ。自分のふるさとや母校などへの“恩返し”や、次世代を担う若者への支援活動や社会貢献活動を行うNPO法人への“恩送り”として、人生の最期に使わなかったお金を自分らしく未来に届けることができる。近年では遺贈寄付できる先も次々開拓されているという。
「例えば静岡市の『ふるさと遺贈』では、静岡の特産品のひとつであるプラモデル産業や、三保の松原という景勝地が対象になっています。生まれ育ったふるさとへの“恩返し”として財産の一部を遺すことも可能です。また、未来の社会のために最先端の研究に思いを託したいという方は、大学へ寄付をするのもおすすめです。東京大学には、10万円以上の寄付で名前が入ったプレートを貼ってもらえる宇宙関係の研究プロジェクトもあります。こうした大学の資金調達の手段という側面からも、遺贈寄付は注目を浴びていますね。あるいは音楽が好きな方なら、自分のお名前で基金を作り、毎年コンサートを企画することもできますよ」
各人が最期に、自分のお金の一部を託す先を選択し、後世に思いをつなぎ、生きた証を遺す。「こうした流れを文化にしたい」と三浦氏は強調する。
専門家や専門機関を遺贈寄付普及の担い手に
SDGsの考えが浸透しつつある今の時代、お金を循環させ、持続可能な経済社会の実現をめざす協会の活動は世間からも注目を浴びている。2020年に実施した遺贈寄付に関する調査は、NHK、日本経済新聞、読売新聞など多くのメディアに取り上げられ、自治体だけでなく良品計画や三越伊勢丹グループといった民間企業もフリーウィルズキャンペーンのサポーティングパートナーとして協力に名乗りを挙げている。
遺贈寄付に関する調査結果や、メディアや企業からの反応からもわかるように、遺贈寄付には十分な需要がある。この需要に応えるには、司法書士、税理士、弁護士などの士業の理解と協力が不可欠だと三浦氏は言う。
「司法書士を始めとする士業や金融機関が遺贈寄付に取り組むメリットは大きいと思っています。昨今のビジネスでは、SDGsの流れにもあるように、単にお金を稼ぐことだけではなく『ビジネスを通じてどのように社会課題を解決していくのかを考え、実行していく』という観点も大切にされています。実際、富裕層や経営者層には、お金を増やすことや貯めることよりも、いかにインパクトを持って社会に還元できるかを重視する方も多いのです。そういった方々に遺贈寄付の提案をすると関心を持っていただけますね。いち士業としても、相続の専門家として一目置いていただけるので、他の専門家・専門機関との差別化になりますし、世の中的に増えている、一生独身で過ごされる『おひとり様』世帯に遺贈寄付を提案できれば、新たな顧客層を獲得することにもつながります。
実はイギリスではチャリティーの4割が遺贈寄付なのですが、それは弁護士や司法書士といった遺言書を作る専門家が、お客様に遺贈寄付を提案しているから実現できていることなのです。逆に言うと、日本で遺贈寄付が発展してこなかったのは、誰も提案してこなかったから。寄付先が自ら『寄付して』とは言いづらいので、提案の旗振り役ができるのは、私たち専門家や専門機関です。遺贈寄付を提案できる士業が増えれば、ソーシャルセクターを通じてお金を循環させることができ、持続可能な経済社会の実現にもつながります。士業は社会を変えられる最前線にいるのです」
「承継寄付診断士」という資格も創設し、士業の専門家が遺贈寄付について学べる「承継寄付診断士講座」を全国で開催。士業に遺贈寄付を広める担い手となってもらえるよう協会として後押ししているという。承継寄付診断士資格への応募は0期生110人、2022年の1期生は現段階(2022年8月時点)ですでに60人と順調に集まっている。受験者の内訳を見ると、司法書士が最も多く、税理士、弁護士、金融機関勤務者と続く。
さらに、協会では2022年9月より、フリーウィルズウィークに続き、遺贈寄付の専門家報酬助成キャンペーンも実施している。一定の条件を満たした遺贈寄付の相談者に対して、遺言書作成や寄付が含まれる税務相談にかかる専門家報酬の一部(5万円)を協会から助成するものだ。相続税申告の際にも提案できるので、税理士にもキャンペーンは適用される。
助成を受けられる相談者側だけでなく、士業などの専門家側にも顧客層を広げられるというメリットがある。こうして「遺贈寄付」を利用するメリットを両者に作ることで、遺贈寄付の魅力を周知し、利用者を増やそうという狙いだ。
これらの他にも、協会監事である脇坂誠也氏や専門家の協力で作成した専門家向けの遺贈寄付実務書の発行、各地の士業や寄付団体と連携した大学や行政などで開催する遺贈寄付セミナーの運営、遺贈寄付や税務、法務、寄付先について情報を発信するWebサイトの運営など、三浦氏は協会の代表理事として、遺贈寄付の普及に向けて日々邁進している。そんな三浦氏は、遺贈寄付普及への熱い思いをこのように語ってくれた。
「遺贈寄付は誰もができるはずのハードルが低い寄付にもかかわらず、誤解や知識不足によって多くの方に知られていないのが現状です。誰もが気軽に利用できるようにするためには相談先を増やす必要があります。
その担い手になれるのは、日々相続や財産管理のご相談を受けている私たち相続の専門家です。高い志を持ったプロフェッショナルたちの手で、お客様の大切な財産、そして人生をさらに輝かせるお手伝いをしたい。そんな想いから遺贈寄付の普及活動を始めました。『どんなものを渡したいか』を一緒に考え、形にする。寄付でも、それ以外の方法の方法でも構いません。『人生で遺したいもの』を一緒に考え、それぞれのプライスレスなお金の使い方、遺し方を実現するために遺贈寄付の情報を届け、実行を支援することが私たちの仕事です。結果的に寄付をしないという選択になることも当然あります。でも、遺贈寄付を含め最期のお金の使い方を考えること自体が、社会との新たなつながりや、そこから先の人生をいきいきと歩むきっかけになります。
富裕層だけではなく、一般の方々の身近な寄付を私たち士業がお手伝いする。そうして『誰もが無理なく選択できるもの』として遺贈寄付が広がってほしいです。『誰もができる遺贈寄付を、本当に誰もができるようにする』ことが私たちのミッションだと思っていますから」
遺贈寄付に興味を抱いたという士業に対しては、ぜひ協会のコンテンツを活用してほしいという。
「興味をお持ちいただけたら、まず協会ホームページから『えんギフト』を請求してみてください。クライアントに配布すれば、遺贈寄付がどのようなものかを理解してもらえます。また、協会主催の『承継寄付診断士講座』に参加すれば、ソーシャルビジネス・遺贈寄付とは何か、クライアントへの説明の仕方、ニーズの引き出し方などがわかるようになっています。その他にも知識をキャッチアップできる手段はいろいろと用意していますので、ぜひ協会が提供しているコンテンツを活用してみてください」
懸命な普及活動の結果、遺贈寄付先を希望する団体や、賛同して毎年参加してくれる士業が増え、好循環が生まれている。
子どもたちに寄付教育を
プライベートでは小学6年生の女の子の母親としての顔も持つ三浦氏。子どものうちから寄付に触れる機会を作ることで、社会について考えるきっかけにしていると三浦氏は言う。
「娘は小学3年生からお小遣いをコツコツ貯めていたのですが、6年生の夏休みの自由研究として、貯金したお金を自分で選んだ寄付先に寄付する過程をレポートにしていました。寄付先を考えることは社会の課題について考えることにつながります。寄付をひとつのきっかけとして、社会の一員としての意識を育むことで、世の中のために役立てるような大人になってほしいと願っています」
寄付自体は小学校でも行われることはある。だが子どもたちは用途や目的を理解しないまま、ただの“集金”に終わってしまうケースが多い。お金の寄付先を自分で選び寄付する経験は、寄付教育の大きな一歩になるだろう。
寄付というキーワードで広がる世界
遺贈寄付を始めるまでの8年間、親族間で揉めごとが起きがちな相続の仕事に対して、「必要な仕事ではあるが、社会にどう貢献できているのだろうか」と、悶々とすることもあったという三浦氏。遺贈寄付に出会って、初めて「相続は人を幸せにできる仕事だ」と思うことができたという。
名刺には、遺贈寄付を始めてからは「日本承継寄付協会」と「承継寄付診断士」という肩書きも一緒に載せるようになった。
「今、『寄付』や『社会課題解決』という公益性に関連する言葉はあらゆるセクターが関心を寄せるキーワードになっています。特に大企業の経営者は、SDGsやパーパス経営という視点からも、寄付や社会課題解決に興味をお持ちの方が多いので、私の名刺の肩書きを見て、もっと話を聞かせてほしいと言われることも多々ありますね。遺贈寄付を広める活動に共感してくださって、『実は自分も社会のこういう課題を解決したくて起業したんだ』といったストーリーを打ち明けてくださることもあります。ビジネスにおけるグリップ力は『登記できます』だけより『寄付・社会貢献活動のお手伝いをやっています』のほうが圧倒的に強いと思いますね」
だからこそ、士業に遺贈寄付に興味を持ってほしいのだと語る三浦氏。最後に、司法書士資格の魅力についてはこのように話してくれた。
「最近、5年前に使っていた手帳を見つけたのですが、そこには『将来の目標は、社会貢献しながらビジネスをすること』と書かれていました。『まさに今やっていることだ!』とうれしかったですね。司法書士になって相続の仕事をしていなければ、遺贈寄付には巡り合えなかったですし、資格の信用力があるからこそ、初めてお会いした方にも話を聞いてもらえ、様々な方とビジネスができる。資格がなかったら、今の自分はないと思います」
始めの一歩は資格を取ること。そのあとにでも自分の守備範囲は決めていけば、希望する未来は実現できる。三浦氏の場合は、入院時代に抱えていた「誰かの役に立ちたい」という思いを、資格を取得し相続の専門家として遺贈寄付の道に進んだことで叶えている。今後も協会の活動を通して、遺贈寄付を相続のひとつの選択肢として広め、日本の文化にすることで、思いやりが循環する社会を実現をしていくことだろう。
[『TACNEWS』日本の司法書士|2022年12月号]