日本のプロフェッショナル 日本の会計人|2019年5月号

Profile

梅山 聡氏

アスモア税理士法人
代表税理士

梅山 聡(うめやま さとし) 1967年生まれ、大分県出身。西南学院大学法学部卒業。西南学院大学大学院法学研究科修了。大学院卒業後、会計事務所に勤務しながら税理士試験に挑戦。2006年、税理士登録。2009年1月、独立開業し梅山聡税理士事務所を開設。2014年4月、アスモア税理士法人に改組。

ビジョンを共有できるメンバーが集う税理士法人で、
創業支援、事業承継・M&A、相続・資産税に取り組む。

 福岡県福岡市にあるアスモア税理士法人は、2014年4月の設立。4つの会計事務所が統合して誕生した税理士法人として、福岡の経済界では話題になった。そのアスモア税理士法人を率いるのは税理士の梅山聡氏。梅山氏が税理士法人化を進めた意図とはなんだったのか。そして、創業支援を柱とした業務内容について、梅山氏の歩みとともにうかがった。

20代半ばから会計事務所の実務と税理士受験に挑戦

 2014年4月1日、福岡市で新しい税理士法人が誕生した。4つの税理士事務所が経営統合した、税理士の梅山聡氏が代表を務めるアスモア税理士法人である。アスモア税理士法人は、その後も理念に共感する3つの税理士事務所と経営統合を果たし、2019年には6拠点を有し、85名の組織(うち税理士9名、公認会計士1名、中小企業診断士4名、行政書士2名)へと成長を遂げている。
 アスモア税理士法人という名称には「明日はもっと(more)」という想いが込められており、明日はもっとお客様の事業が発展するように、その成長に貢献していきたいという梅山氏ら代表税理士の志おもいを表している。税理士法人の話の前に、まずは梅山氏の歩みを振り返ってみたい。
 大分県日田市で生まれ育った梅山氏は、大学進学を機に福岡市で暮らすようになった。
「大学は法学部でしたので、税理士のことはまったく知りませんでした。将来何になろうとは決めてはおらず漠然としていました」
 そんな梅山氏が税理士を知るきっかけとなったのは、大学3年生のときのアルバイトだったという。
「妻とは大学時代に知り合い、付き合うようになりました。妻の父は税理士をしており、その事務所でアルバイトをさせてもらいました。法学部でしたから、簿記の『ぼ』の字も知らない状態で、初めて学ぶことばかりでしたね。そのときに税理士の仕事がどんなものかを知りました」
 ただ、税理士の仕事を知ったからといって、すぐに税理士試験に臨んだわけではなかったし、大学時代はめざそうとは考えていなかったようだ。
「大学卒業後は大学院に進学しました。この進学は将来が決まっていなかったから、というのが理由でした。ところが、大学院に通っていた2年間で社会情勢がガラッと変わってしまったんです。大学を卒業する頃はバブル景気で、履歴書を出せば就職ができた時代でしたが、バブルがはじけた大学院修了時には景気が悪化して、文系の大学院卒を採用しようなんて企業はなくなっていました」
大学卒業時なら引く手あまただった就職先は、大学院修了時には厳しい状況に変わっていたのだ。
「就職先がないという現実を前に、それなら何か資格を取ろうと考えました。その時に浮んだのが、アルバイトを通じて仕事内容を知った税理士でした。ですから、税理士試験の勉強を始めたのは、大学院修了後に会計事務所に勤め始めてからです。勤務先は妻の父の会計事務所でした。その頃には将来結婚するだろうという段階になっていましたので、働かせてほしいとお願いをして入れていただきました」
20代半ばから会計事務所の実務と税理士受験に取り組み始めた梅山氏は、最初は実務を覚えることを優先して、税理士受験は後回しにしてしまったという。
「結局、税理士受験は10年に及びました。税理士試験は科目合格制なので、続けて合格をしなくてもいいと思ったり、つい来年もあると考えてしまいます。それがよくないんです。まだ先でも大丈夫と思うと余計にてこずりましたね。
 受験時代の最後の頃、ふと気づくと、通っていた受験指導校の教室が自分よりも10歳以上若い人だらけになりました。この環境に身を置き続けるのは辛いな、早く終わらせなくてはいけないと真剣に思うに至り、それでなんとか合格できました。ですから今、事務所のスタッフには『有資格者だとお客様の見方も変わる、資格は早く取ったほうがいい』と話しています」
 梅山氏が税理士登録をしたのは2006年、36歳のときであった。

高付加価値の会計事務所を標榜

 自分を雇ってくれて、勉強させてくれて、育ててくれたのは、税理士である義理の父である。結婚もしたので、当然、福山氏を後継者と考えていただろう。しかし、税理士登録を果たした梅山氏は、徐々に自分なりの事務所づくりをしていきたいと考えるようになった。そこで、正直にその思いを義理の父に話し、お互いに納得がいく時期を決めて退職させてもらう承諾を得た。そして、2009年1月に独立開業を果たした。
「ありがたいことに、退職金代わりに10件弱、私が営業して開拓したお客様を前職から引き継がせていただきました。週3日の派遣社員と妻も手伝いには来てくれましたが、その2人は担当を持っていませんでしたので、実質は自分ひとりでスタートしました。
 この業界では顧問契約書がない場合も多いので、まずはお客様ときちんと契約を交わし、契約内容を守る義務を自分に課した上で信頼、満足していただき、そこからご紹介がいただければ、と考えていました」
 独立開業にあたり、梅山氏はどんな業態、サービスを構想していたのだろうか。
「最初は自分ひとりでしたが、3ヵ月後には信頼できる1名の税理士に入ってもらいました。翌年にはもう1名を招き入れ、税理士3、4名体制の事務所にすることを考えていました。税理士はそれぞれにアシスタントを持ち、付加価値の高いサービスを提供することで、比較的顧問料が高いお客様を100件有するというのが当初のイメージでした」
 この方向性で開業後2、3年は進んでいたという。初年度で消費税の課税事業者として3,000万円を超える売上があったというから、順調にお客様は増えていたようだ。
「営業は好きでしたね。コミュニケーションを取ることが好きだったので、それが役に立ったんだと思います。お客様が何を欲しているのかを把握することができれば、きっかけはつかめますからね」
 持ち前のコミュニケーション能力を発揮した梅山氏は、顧客開拓では大きな苦労はせずに、お客様を増やしていった。ただ、事務所はその後も当初のイメージ通りに進んでいったのかといえば、そこは簡単にはいかなかったという。
「入所予定だった税理士が、事情により3年経っても合流できませんでした。ですから、何人かの税理士がいてという前提が崩れてしまいました。そうこうしているうちに、自分が思い描いていたイメージのまま進んでいくのは難しいということに気づいたのです」
 その理由は、環境の変化による部分も大きかった。
「税理士も広告が打てるようになりましたので、インターネットを利用しての集客が始まりました。すると価格競争が激化し、顧問料の単価相場が下がっていきました。さらに東京から大手税理士法人が次々と福岡に進出してきました。当初描いていた、少数の有資格者による高付加価値で高単価の顧問料という路線から、業務を標準化して顧問先を開拓する方向へと転換することを考えるに至りました」

創業支援を独自サービスのメインに

 当初の計画から転換せざるを得ない環境を見据えて、梅山氏は新たな路線へと舵を切り直した。
「そこからは、他事務所との差別化メニューとして創業支援を新たに打ち出しました。もともと、創業時から支援していたお客様はいらっしゃいましたが、そこに注力して創業支援を充実させ、潜在顧客である創業前からのお客様を開拓していけるしくみを作ろうと考えました」
 この創業支援サービスは、このときから今日まで変わらず、アスモア税理士法人の顧客開拓の大きな柱となっている。
 梅山氏が着目したのは、チャネル開拓だった。
「まず創業する人がどう行動するかを考えました。福岡市は飲食店と美容室が多いという特徴があります。それらの業種で創業する方が最初にすることは、お店の物件探しです。不動産会社に行って物件を探し『ここがいい』となったら、次にしなければならないことはお金の用意です。
 そこで私は不動産会社を訪ねて、『開業しようとする人の開業資金調達を手伝いますから、物件を探している方がいたら紹介してください』とお願いしました。お客様が資金不足だと不動産会社も物件の契約はしてもらえず、仲介手数料も入ってきません。そこで当事務所を紹介してもらい、きちんと対応して融資を受けられれば、不動産会社も商売になるというしくみを作ったのです」
 そこで提供したサービスは、成果報酬で融資や助成金のサポートをするという内容だ。それまでにも融資や助成金の支援はかなりの実績があったので、梅山氏としてはすでにノウハウや人脈を持っていた。また、お客様の事業計画書や資金繰り表の作成支援をし、きちんとビジネスモデルを整備して金融機関に橋渡しをしていたことから、日本政策金融公庫からは窓口となる担当者をつけてもらった。事務所での面談ができるようになったので、お客様の負担が少ないだけでなく、隣に梅山氏がいる状態で安心して融資の交渉ができたのである。
「最初は融資や助成金のお手伝いだけをして、顧問契約のことはとりあえず脇に置いておきます。でも融資が通り、物件を契約する段階になると、今後どうすればいいのかという経営のアドバイスも行いますし、気軽に様々な質問もいただくようになる。そういう関係ができれば自然と顧問契約の話につながっていきます」
 新たに事業を始めるにあたり、融資や助成金の支援を通して、金銭面だけでなく精神的な面も含めて創業者の負担を軽減してあげることができる。
「やはり、資金繰りのお手伝いをしてさしあげると、お客様は感謝してくれます。この創業支援にシフトチェンジしたことによって、お客様は順調に増えていきました。また、事務所組織の人事体制も変わりました。以前は、税務における高付加価値サービスが提供できる経験豊富な人材をと考えていましたが、創業支援サービスに関しては、経験は浅くともフットワークの軽い人、明るくコミュニケーションがとれる人を採用するようになりました。そのような人材は、税務においてもやはりフットワークが軽く、お客様にきちんと対応してよい関係を作れるため、今や大切な『人財』となっています」

4つの事務所を統合しての税理士法人化

 創業支援を強みにして顧客開拓の勢いに乗った梅山氏が、次にとった戦略が税理士法人化である。順調にお客様を増やしてきた梅山氏が開業5年目に税理士法人化を考えた理由はどのあたりにあったのだろうか。
「外的要因としては、競争の激化が挙げられます。福岡市をはじめ九州にも東京や大阪からどんどん競合が進出してきます。そこに伍して闘い、勝っていくためにはある程度の規模が必要だと私は考えました。会計事務所は、組織規模に関わらずそれぞれ特徴があります。しかし、個人ひとりの持てる知識、スキルは限られる。様々な専門分野を持った人材、若くてフットワークの軽い元気な人材など多様な人材が集まり、そのノウハウを共有すれば、お客様に提供できるサービスの質はグンと向上し、その範囲も大幅に拡大できる。そのためには組織を拡大すべきだと考えたのです。
 そして内的要因としては、会計事務所だけではなく、あらゆる業界で共通する後継者不足という課題が挙げられます。所長がご高齢の場合、万が一の場合はどうするのか。もしご病気なら事務所を整理する時間があるかもしれませんが、事故の場合は今日かもしれないし明日かもしれない。もしそうなったら、お客様に大変なご迷惑をおかけしてしまう。もちろん事務所のスタッフにも。
 お客様にしてみたら、新しく会計事務所を探さなければなりません。長い付き合いの事務所や所長、スタッフだから話せたことがあるはずです。少なくともまた最初から会社のことを説明して、税務・会計に関することを一から頼まなければなりません。もちろん、信頼関係ができるまでに時間もかかるでしょうし、場合によっては決算が直前かもしれない。また、事務所のスタッフも新しい勤め先を探さなければならず、とても不安定な状況に投げ出されるのです。
 そのような状況が生まれる可能性がある状態にしておくことは、経営者として無責任だと考えました。それを解決できるのが、税理士法人ではないか。そして、私自身、自分の身に何かあったとしても事務所を支えられる体制を作っておくことが、経営者としての責任であると考えたのです」
 梅山氏は前職の所長で義理の父である税理士の花房靖幸氏を含め、3名の税理士に声をかけた。自分のビジョンを共有してもらえる税理士とともに税理士法人を設立しようと行動を始めたのは2013年の暮れであった。そして、2014年初めから本格的な打ち合わせを行い、その年の4月1日にアスモア税理士法人として新たなスタートを切った。
「4つの事務所が統合して税理士法人になりましたが、急いで一体化を進めたわけではありません。最初は緩やかな一体化を徐々に進めていき、同じ場所に統合できるオフィスは統合するというやり方でした。
 会計事務所は、よくお客様に『将来の事業承継は大丈夫ですか』と問うのですが、実際には会計事務所自身が何もしていないケースが多いのが現状です。税理士法人化にあたっては、4つの会計事務所が1つになりましたが、代表税理士の年代は80歳、70歳、60歳、50歳手前と非常にバランスがよかったと思います。『先生にもしものことがあったらと心配していたから、これで安心です』と言ってくださるお客様も大勢いらっしゃいました」
 緩やかな統合の進め方としては、レクリエーションや研修を通じてスタッフ同士の交流を図り、徐々に一体感を高めるとともに、会計ソフトや給与体系などはすぐに統一化せず、従来通り維持するなど決して無理をしない方法をとったという。

グループ内の中小企業診断士が事業承継・M&Aに取り組む

 税理士法人化を進め、組織も拡大してきた梅山氏に、そのほかの業務についてうかがった。
「実は当時、子育て中だった妻がTAC福岡校に通い、中小企業診断士の受験勉強をしていました。そして資格取得後の5年間は、中小企業診断士講座の専任講師としてお世話になっていました。
 現在、当法人のグループ内にはその妻を含め中小企業診断士が4名おり、お客様の事業承継やM&A、経営改善のお手伝いをしています。また公認会計士、行政書士などいろいろな資格を持つメンバーがいるという強みを活かして、税理士法人だけでは受け切れない業務についても関連会社を窓口に、お客様の多様なご要望にお応えするようにしています」
 顧客の中には、後継者がいないために会社を売却したいと希望する社長もいるという。そうした社長のアドバイザーとして、金融機関やM&A専門会社などと連携や交渉を行い、事業承継やM&Aを進めていくのである。
「事業承継の支援をきっかけに当法人が顧問になる場合も多いですね。理由を聞くと『前の先生はそういう相談にのってくれなかったから』といいます。相談にのらないのには2つ理由があるでしょう。1つは、M&Aの局面ではデューデリジェンスが必要になるからです。デューデリジェンスへの対応は通常の月次顧問業務とは大きく異なるノウハウが必要で、しかも短期集中型業務のため負荷がかかるのです。もう1つはちょっと後ろ向きですが、お客様が会社を売却する側の場合、顧問先が減ることになるからです。そうなると積極的にはすすめたくないのでしょう。
 でも私たちは、お客様のご要望を叶えてさしあげることが仕事だと考えていますので、こうした事業承継やM&Aにもグループとして対応しています」
 事業承継といえば、相続や資産税も関連してくるが、そうした業務についてはどのように対応しているのだろうか。
「代表税理士の赤木保之が資産税の専門家ですので、赤木を中心にした相続チームがあります。専任のチームではなく、お客様に相続が発生した際に担当者とともにチームとしてカンファレンスを行い、相続税や資産税業務を行う体制になっています」
 2019年は、これらの業務をさらに発展させていくべく顧客紹介チャネルを新しく作っていくことに注力しているという梅山氏だが、相続税や資産税に関する紹介チャネルづくりには特に力を入れているという。

ビジョンへの共感が大切

 アスモア税理士法人は現在6拠点(福岡県に2つ、佐賀県に4つ)となり、85名の組織となっている。各拠点で従来からの顧問先とスタッフを抱えているため基本的に統合後の異動はないが、機会を設けて拠点同士のコミュニケーションを図り、業務面でも協力、協業を進めてきた。
「徐々に一体化を進めて、地理的な問題がなければ同じスペースで業務を行い、お客様も名実ともに税理士法人全体のお客様という位置づけに移行してきました。義理の父である花房靖幸の事務所も、元の顧問先やスタッフはすでに本部に統合しています。しかし、税理士が突然リタイアされた事務所があり、そこを博多オフィスとし、グループ拠点の1つとして花房代表が統括しています」
 あらゆる業種で起きている後継者不足という問題は会計事務所も無縁ではなく、梅山氏のもとにはこの他にも、後継者の問題を抱える税理士や会計事務所からの相談が持ち込まれることも多いという。
「あくまでも私たちのビジョンに共感いただけるかを大切にしています。考え方が合わないのに、一緒にやっていくことはできません。また、アスモア税理士法人というひとつの法人として一緒になるということは、相互補完できるというメリットに対し、リスクも伴います。税理士法人が負う責任は無限連帯責任であり、それは税理士法人に参画した時点からではなく、それ以前に抱えたリスクも引き受けることになるのです。ですから、お互いに心から信頼しあえるか、同じ目的に向かって共に進んでいけるかということはとても重要なのです」
 だからこそ、グループへの参画の希望があっても慎重に判断しお断りするケースも多いという。決して、組織拡大のスピードを優先することはしない。
「税理士法人を設立する理由として、税理士同士の仲がいいから、とお聞きすることがあります。でも私は仲がいいかなんて関係ないと思っています。大切なのは先にもお話ししたビジョンが合うかどうかなんです。頻繁に会って飲みに行っているなんて必要はありません。すぐ隣の席で一緒に仕事をしている赤木とは、必要な打ち合わせは常にしていますが、飲みに行くことは滅多にありませんからね(笑)」
 そもそも税理士法人は「複雑化・多様化、高度化する納税者等の要請に対して、的確に応えるとともに、業務提供の安定性や継続性、より高度な業務への信頼性を確保することが可能となり、納税者利便の向上に資するものであること」を目的に制度が創設されている。その際、明記はされていないが、業務提供の継続性という観点から会計事務所の事業承継対策の意味合いもあるといわれていた。
「福岡だけでなく九州全体においても会計事務所の後継者問題は山積しています。ただ、後継者問題があっても地元で事務所を拾い上げることができないから、東京などの大手税理士法人が吸収してしまうこともあると思います。地元で受け入れる体制ができれば、雇用される側も地元を選択する方も多いのではないか…。もちろん当法人がその一助になれればいいと思いますが、私どものビジョンに賛同してくれる税理士であればむしろ全国各地、エリアは問わないとも考えています」

意欲がある方、この仕事を好きになる方と一緒に働きたい

 創業支援を柱に事業承継やM&A、経営改善、相続・資産税へとその業務領域を拡大していきつつあるアスモア税理士法人では、どのような人材を必要としているのだろうか。
「意欲がある方と一緒に働きたいですね。人物像としてはコミュニケーション能力があって、この仕事が好きになれる方。コミュニケーションといっても、社交的で話が上手という意味ではありません。素直な心、相手を受け入れようとする気持ち、積極的に人と関わろうとする姿勢を持っているかだと考えています。中には興味レベルで応募してみたものの、仕事が好きになれないという方が時折いらっしゃいます。想像と実際とが違う場合もあるでしょうが、それでもじっくりと学ぼうとする方は必ず成長します。
 税理士試験の勉強をしているかどうかは問いません。スタッフにはビジョンや目標を持ちなさいと話していますが、その最終目標は税理士でなくてもいいんです。でも、税理士法人で働くのなら、税理士はその目標の1つではある。だから取得したほうがいいのでは、ということは話しますね。もちろん早く取ったほうがいいことも含めて」と自身の受験時代を振り返ったアドバイスも忘れていない。
 そんな梅山氏は税理士になったことをどう捉えているのだろうか。
「この仕事は経営者に寄り添って、その悩みを聞いたり、ビジョンを共有したりすることが仕事です。仕事を通じて一緒に悩みを解決したり、ビジョンの実現をサポートしたりすることで、感謝していただけることがあります。そう、この仕事は感謝される仕事なんです。それがやりがいに通じていきます。スタッフも、それを喜びと感じてくれたらいいなと思っています」
 最後に、現在税理士をめざして勉強中の方にアドバイスをいただいた。
「資格試験の勉強はもちろん大切ですが、これから必要になるのはコミュニケーション能力です。その気になれば、いつでもどこでも身につける機会はあります。知識だけではAIには勝てないかもしれませんが、人と向き合う力があり、お客様からの支持があれば顧客開拓で契約をいただき、よい人間関係を続けることができます。受験に集中することはもちろん大切ですが、積極的に人と関わること、相手の意図を汲むこと、謙虚に感謝する気持ちを大切にしてほしいと願います」
 福岡市は国家戦略特区にも指定されていることもあり創業者が多い地域である。それもあってか若い世代の税理士の開業も多い。
「ビジョンや目標があってやってみようという思いがあれば、あっという間に私なんかを抜いていく人が出てくるかもしれませんね」
 地域の会計事務所業界の事業承継を考える一方で、梅山氏は若い力の台頭にも期待している。


[TACNEWS|日本の会計人|2019年5月号]

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URL: http://asmore-tax.jp/

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