特集 「大人の学び」を考える~日本女子大学生涯学習センター「リカレント教育課程」の取り組み~

米澤 智子氏
Profile

髙梨 博子(たかなし ひろこ)氏

日本女子大学
文学部英文学科 教授/生涯学習センター 所長/リカレント教育課程

1996年、日本女子大学大学院 文学研究科 英文学専攻(博士課程前期) 修了。2004年、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校 言語学科(博士課程)、博士号取得(Ph.D. in Linguistics)。2004~2005年、米国カリフォルニア大学デービス校 人類学科 客員研究員(ポスドク)、2005~2007年、米国ノースカロライナ州イーロン大学 外国語学科 アシスタント・プロフェッサー。2009年、日本女子大学 文学部 英文学科 准教授。2016~2017年、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校 言語学科 客員研究員。2020年、日本女子大学 文学部 英文学科 教授。2021年、日本女子大学 生涯学習センター リカレント教育課程 主任、2022年、生涯学習センター所長に就任。

 学び直し、リスキリング、リカレント教育――。近年耳にする場面も増え、マスコミ報道で取り上げられることも多くなった言葉だ。日本女子大学のリカレント教育課程は、2007年に日本の大学で初めて設置されたリカレント専門の教育プログラムである。リカレント教育とはどのようなものなのか、その目的とは何か。日本女子大学生涯学習センター所長を務め、リカレント教育課程に注力されている髙梨博子教授にお話をうかがった。

大学教授と生涯学習センター所長の2役を担う

──日本の大学として初のリカレント専門教育プログラムである日本女子大学のリカレント教育課程に、生涯学習センター所長として携わっておられる髙梨教授。ここに至るまで、どのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか。

髙梨 私は小学校から中学、高校、大学、そして大学院博士課程前期まで日本女子大学に在籍し、学部在学中はニューヨークの協定大学に留学して学びました。その後カリフォルニア大学サンタバーバラ校の大学院言語学科の博士課程に留学して、博士号を取得しています。修了後はポスドク(ドクターコース修了後に就く任期付きの研究職)として1年間、カリフォルニア大学デービス校で研究と教育に携わりました。デービス校の人類学科では、秋学期、冬学期、春学期の各学期に1科目ずつ、言語人類学の講義や演習科目を担当しました。大教室を埋め尽くす学部生を前に英語で講義をするときは毎回緊張しましたが、アメリカの大学生は講義中も活発に質問や発言をしてくれるので、学生との対話を大事にしながら授業を進めるように心がけました。デービス校での研究や授業と並行しながら就職活動をして、ノースカロライナ州にあるイーロン大学外国語学部に採用され、フルタイムの正規雇用でアシスタント・プロフェッサーとして教鞭をとる機会を得ました。

──アメリカで過ごされた中で、人生が変わるような経験などもありましたか。

髙梨 アメリカでの留学や就職を通して、多様な個人が年齢やジェンダー、国や民族を越えて共存する不思議な一体感を味わいました。社会の様々な場面において、ダイバーシティがごく自然なこととして受け入れられている点において、アメリカという国の懐の大きさを感じましたね。同時に、そのような社会を構成するのは、「社会的責任を負う自己」として自立した「個人」であることも痛感しました。そして、個人が異なる他者を認め合う中で、自己肯定感が醸成されているように思いました。長期にわたるアメリカでの生活で、個人が自立し、相手を尊重することで多様性豊かな社会が成り立っていることを経験して、目の前の世界が大きく開けた感覚がありました。これは、海外に出て肌で感じてみてわかったことです。学問や語学だけでなく、意識や行動の面で大いに勉強になりました。

──そうしたご経験が現在のお仕事にも通じているのでしょうか。

髙梨 カリフォルニア大学大学院に留学中も、ティーチング・アシスタントとして働きながら教育のトレーニングを受けましたが、ポスドクやイーロン大学で教員をした期間には、教育の経験を積むことができました。アメリカで得た知見を日本の教育にも活かしたいと考え、帰国後、2009年4月からは日本女子大学の文学部英文学科で教鞭をとり、2021年にリカレント教育課程主任、そして2022年に生涯学習センター所長に就任しました。

──リカレント教育に携わるようになった経緯を教えていただけますか。

髙梨 生涯学習センターはリカレント教育課程を所管する部署で、現在私は文学部英文学科での教育・研究のほかに、生涯学習センターで公開講座とリカレント教育に携わっています。生涯学習センター事業は全学的な組織の上に成り立っていて、大学の専任教員が各委員会の構成員となっています。私もはじめ、リカレント教育委員のひとりとして委員会に参加していました。

──大学の授業をはじめとする学部学科のお仕事だけでなく、リカレント教育課程を所管する生涯学習センターの所長もお務めになり、2足のわらじを履いていらっしゃるのですね。

髙梨 はい。文学部英文学科では学部と大学院の授業を受け持っています。ですから学部生や大学院生と接する一方で、リカレント教育課程では社会人受講生の方々にも接しています。リカレント教育課程で初めて社会人受講生の学びの姿勢に触れたときは、多様な年齢層の方がそれぞれのライフステージで熱心に学び直し、スキルを習得し自信を持って社会に出て行かれる姿を見て本当に感動しました。

──学部生と社会人学生では、学びの姿勢に違いがありますか。

髙梨 社会人学生は、時間やコストの制約がある環境下で貴重な時間とお金を割いて学びに来られるので、「学ぶ」ということに対して強い思い入れを感じます。学部生の学びに対する姿勢が負けているということは決してありませんが、学部生は生活の中にサークル活動やアルバイトなどの要素もありますので、全体的に見れば社会人学生のほうが目的意識が明確で、本腰を入れて学んでいる方が多い印象があります。

「生涯教育」にかけた創立者の思いを形に

──リカレント教育とはどのような学びなのか、わかりやすくご紹介いただけますか。

髙梨 「リカレント」は英語の “recurrent” に由来し、「繰り返し起こる、循環する」という意味です。一般的には、学校教育からいったん離れたあと、社会人になってから学び直して、仕事で求められる能力を磨き続けていくことを「リカレント教育」と言います。

──そのリカレント教育に日本女子大学が取り組み始めた経緯をお聞かせください。

髙梨 日本女子大学では2007年に、日本の高等教育機関として初めてリカレント教育課程を設置しました。背景には、本学創立者成瀬仁蔵が、1901年の創立当初から、生涯を通じて学び続け、成長し続ける必要性への思いを込めた「生涯教育」を唱えていたことがあります。日本女子大学は2021年に120周年を迎えましたが、「女子に教育はいらない」と言われていた時代に、成瀬は「女性にも男性と等しく教育が必要である」との強い信念のもと、女子高等教育のための総合大学設立に向けて努めていました。こうした活動によって広岡浅子、渋沢栄一、大隈重信らの協力を得て、日本女子大学校が創立されたことが原点にあります。
 そして成瀬は「大学を終えて、それで学びはおしまいではない。生きている限り、私たちは学び続け、成長し続け、前進あるのみ」と考えていたのです。

──日本女子大学のリカレント教育課程の源流には、創立者の思いがあったのですね。現在の形になるまでに、どのようなステップを踏んできたのでしょうか。

髙梨 1901年に日本女子大学校を開校し、まもなく通信教育を開講しました。そして2007年、文部科学省の「社会人の学び直しニーズ対応教育事業委託」として採択され、「リカレント教育・再就職システム」として開講しました。当時、本学と同様に採択されたプログラムを提供する大学は他にもありましたが、期間終了後は自走の判断が難しくプログラムを終了してしまう大学がほとんどでした。しかし本学では、2008年に履修証明プログラムとして本学の課程に設置し、2010年の受託期間終了後もリカレント教育を継続してきました。
 2021年には、大学卒業後に就職したのち結婚や進路変更などで離職した、就労経験のある女性がキャリアアップをめざす既存のコースを「再就職のためのキャリアアップコース(1年間。以下、再就職コース)」に名称変更しました。加えて、働きながら学べる「働く女性のためのライフロングキャリアコース(8ヵ月間。以下、働く女性コース)」を開設して、女性の学び直しのための支援を拡充しています。
 このような活動が注目されて、これまでに多くの視察やヒアリングも受けてきましたが、評価していただいた結果としては、2017年に内閣府男女共同参画局から「女性のチャレンジ支援賞」を、2021年に「東京都女性活躍推進大賞」を受賞しています。

「再就職コース」と「働く女性コース」の2コースを設置

──リカレント教育では何を目標としているのでしょうか。

髙梨 リカレント教育とは、学校教育が終わったあとも、職業上必要な知識やスキルを習得するために生涯にわたって学び続ける目的で「フルタイムの就学」と「フルタイムの就業」を交互に繰り返すことを指すことが多いようです。日本では、仕事に活かすことを目的とするリカレント教育のほか、資格取得や趣味、教養といった人生をより豊かに過ごすための生涯学習を含めた広い意味での学びも、リカレント教育として捉えられることもあるようです。
 他大学などのリカレント教育プログラムは多様で、オリジナルプログラムの提供、エクステンションセンターや生涯学習センターなどの公開講座の提供、学部や大学院の科目の提供などがあります。日本女子大学のリカレント教育では、独自のプログラムを開発し提供しているほか、一部、学部や通信教育課程の科目も聴講できるシステムとなっています。

──「再就職コース」と「働く女性コース」にはどのような違いがありますか。

髙梨 「再就職コース」は、社会人女性の再就職支援を行います。修了要件となる授業時間数も280時間と多く、1年かけてしっかり学び直して再就職につなげるコースとなっています。
 一方、2016年に女性活躍推進法が施行されて以降、女性の学びへのニーズが変化していることを感じるようになりました。そこで、働く女性や雇用側である企業を対象にどのような学びが必要とされているか調査して、その結果をもとに、多様な職場で活躍している女性が離職せずにどこからでもオンラインで学べるコースを開設しました。それが「働く女性コース」です。「働く女性コース」は2021年の立ち上げから3年目の新しいプログラムです。働きながらでも、平日の夜間や土曜日に学んでスキルアップをし、それをすぐに職場で活かせるという利点があります。

──2つのコースの利用状況はいかがですか。

髙梨 「再就職コース」は、初年度の2007年は少人数でのスタートでしたが次第に増加し、2016年にNHKの朝の連続テレビ小説『あさが来た』で本学が取り上げられたときは、定員を超える受講希望者がありました。
 「働く女性コース」は、初年度の2021年は修了生12名でしたが、2022年は入学した23名全員が修了しています。働く女性が増えているので、今後はこちらのコースの需要がますます高まっていくのではないかと予測しています。

──それぞれのコースの特徴や学ぶ年齢層にはどのような違いがありますか。

髙梨 両コースとも年齢層は様々ですが、ボリュームゾーンは30〜40歳代です。「再就職コース」は平均年齢40歳で、4年制大学の卒業が受講条件のひとつになっています。「大学を卒業して就職したのち結婚や出産で離職したけれど、子どもが成長して手が離れたので社会復帰したい」という方が多い傾向があります。
 「働く女性コース」は平均年齢42.7歳で、正社員率が72.2%と高く、ビジネススキルだけでなくマネジメントスキルも磨きたいといった経営者や管理職の方が26.5%に上っています。経営者や管理職などのポジションにつく女性がまだ多くはなく身近にロールモデルがいない中で、統率力を磨きたい、もしくは将来そうしたポジションをめざしてキャリアアップしたいと考えて受講される方が多いのが特徴です。
 「働く女性コース」のもう1つの特徴として、実務的な内容の講座が多いことが挙げられます。学んだことが翌日から仕事に活かせる即効性も人気の理由ですね。すべてオンライン授業なので、全国から様々な地域の方が受講されています。カメラをオンにして受講生同士がディスカッションを行う授業も多いので、一緒に学ぶ仲間の生の意見を聞くことができます。それが大きな刺激となって、主体的な姿勢が自然と身についたり、ネットワーク作りにつながったりすることも、このコースの特徴です。また、「多様な年代、業種、職種を越えた交流ができる点が魅力」という声が多く寄せられています。

──リカレント教育は、キャリアアップだけでなくネットワーク作りにも高い効果があるのですね。学部生に対しても、リカレント教育を含めたキャリアプラン設計を推奨していますか。

髙梨 学部生に対しては、資格取得に向けたTACの講座を含め、キャリア支援講座を用意しています。また、授業として本学の全学部の学生が履修できるJWUキャリア科目を置いています。JWUキャリア科目では、ライフプランやキャリアデザイン、仕事と家庭の両立、多様な働き方、ダイバーシティ、女性就業、子育て支援のための経済学など、卒業後にどのような人生設計をしていったらいいのかを多面的に学べる内容になっています。講座の最終回ではリカレント教育課程修了生にもお話しいただくので、10年後、20年後の自分を思い描くことができます。

──ロールモデルとなる方のお話を聞きながら自分の将来的なキャリアプランを立てられるのはすばらしいですね。

髙梨 そうですね。学部生は卒業後の就職を真剣に考えています。長く働き続けられる場所なのか、その職場でステップアップや自己実現をしていけるのか、自分の能力を発揮できるのか。また、その仕事に対して誇りややりがいが持てるのか、社会を支える一員として自分が機能していけるのか。いろいろな要因を総合的に考えています。さらに、グローバルな時代ですから、地域や国内に留まらず、世界を視野に入れたグローバル市民としての横のつながりまで求めているように感じますね。
 そのように真剣に将来を見据える学生に対して、修了生は成功談だけでなく、失敗談や悩んだ経験も等身大で話してくれます。「こんな失敗もあったけど、その後こんなふうにがんばったから、今の自分があります」といった話をされると、学生はとても共感します。人生バラ色ばかりではない。いろいろ大変かもしれないけれど、希望やヒントがもらえる。そんな授業でありたいと考えています。

同志のような仲間とのネットワーク作り

──お話をうかがっていると、皆さんかなり主体的に取り組まれている印象ですが、先生はどのような思いでリカレント教育を提供されているのでしょう。

髙梨 例えば出産・育児のために家庭にいた方が、いざ子どもの手が離れたあとにどう生きていったらいいかと考えたとき、家族とのつながりをもとにするのとはまた違った社会とのネットワークを求める方が多いのではないかと思います。そうした気持ちにも応えていきたいですね。人生100年時代を生きていくために、自分の居場所や存在意義を模索しながら自己実現をめざす女性が増えていると思います。リカレント教育で学び直して、再び社会とのつながりを持って働きたい女性が増えていることは、精神的にも経済的にも自立して生きていきたいという意識を持つ女性が多くなっていることを表しているように感じます。
 今の若い世代には共働きが広がってきていますし、やりがいや成長を求めて働く女性は今後ますます増えていくと思います。そうしたニーズに応えられるように、働きながら学ぶことができ、仕事に役立つ講座を提供していくことが、私たちの使命だと考えています。

──資格の学校TACでも、女性のほうが割合は低いながらも30〜40歳代を中心とした幅広い年代の方々がプラスアルファのビジネススキルやキャリアアップを求めて学んでいます。年齢に関係なく社会に出てからも勉強し続けたいという思いは、リカレント教育に通じるものだと思います。

髙梨 その通りですね。TACにも多種多様なバックグラウンドの受講生がいらっしゃるでしょうし、学び方や学んだことの仕事への活かし方なども多様化しているでしょう。リカレント教育でも、そうした様々なニーズに応えられるようにカリキュラムを考えていく必要性を感じます。

──リカレント教育が始まって、学び直しやリスキリングの意識づけが以前よりも定着してきたように思います。他の教育機関でも、そうした学び直しの機会は増えているのでしょうか。

髙梨 リカレント教育プログラムを開講している教育機関が増えてきているのは事実です。これからは、各教育機関が独自の特徴をどのように打ち出していくかが問われるのだと思います。日本女子大学では、ジェンダーギャップ指数の総合順位がほかの先進国と比べて低い日本において、これからも「女性の活躍」に焦点を当ててリカレント教育を展開していきたいと考えています。

──日本女子大学のリカレント教育が他大学と違う点や工夫されている点を教えていただけますか。

髙梨 「再就職コース」については、これまでの実績のほか、受講期間と授業形態によって本学を選ばれる方が多いようです。本学の「再就職コース」では1年間(正味9ヵ月)、280時間以上の受講を通して体系的にしっかりと学ぶことができます。授業形態については、対面・オンラインともほとんど参加型の授業です。「働く女性コース」については、8ヵ月の期間で63時間の受講が修了要件で、すべてオンライン授業ですが、こちらも基本的に参加型の授業を展開しています。
 どちらのコースも、年齢や職種・業種を越えて、同じような目的意識を持ち、同じような悩みを抱える女性の受講生同士でディスカッションできるプログラムなので、精神的な支えにもなり、ネットワーク作りもできる点で、多くの女性に満足していただけるのではないかと思います。

──日本女子大学リカレント教育課程が今後解決していきたい課題として、どのようなことがありますか。

髙梨 現在本課程で提供しているのは2コースですが、テーマを特化するなど、プログラムをさらに拡充していきたいですね。今後、受講者の目的も多様化していくと思いますので、例えばDXを採り入れるなど、幅広いニーズに特化して応えられるようなテーマ設定のプログラムを構築していく必要があります。

──修了生の声で印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

髙梨 「職場は男性中心で、ロールモデルとなる女性がいない」という方がいらっしゃいました。しかし「ここに来ればみんな女性。学びを通じて、女性ならではの悩みや考え方を共有できて、とても救われます」と話していたのが印象に残っています。
 また2コースとも、受講を通じて受講生同士がいろいろな形で交流を深めていらっしゃいます。「再就職コース」はオンラインと対面の混合型ですので、距離感も近く、仲良くなられる方も多いようです。すべてオンラインの「働く女性コース」も、修了式はオンラインと対面のハイブリッドで開催しますので、初めて対面で会う方もいらっしゃいます。それまでは画面越しにしか会えなかった人とリアルで会える感動的な瞬間です。どちらのコースも、学生時代の友人やママ友などとは違った「同志」のような仲間として交友を続ける方が多いですね。

生涯学習センターとして未来に羽ばたく若者を支援

──資格の学校TACでも、リカレント教育に取り組むべく、実用講座をスタートさせました。髙梨先生がTACの講座に期待されることはどのようなことでしょうか。
実用講座:人生100年時代におけるライフサポート講座

髙梨 TACはすでに、仕事に必要あるいは役立つ実務的で多様な講座をたくさん持っておられます。本学の生涯学習センターでは、2023年度に、TACの3つの実用講座「税金超入門(所得税・相続税編)」「未経験者のための株式投資入門」「幸せになる子育て講座」を開講します。今後はさらに、キャリアの構築方法や時短の家事メソッド、長く健康でいるための方法といった、働くことと暮らすことを含めた生活に密着している講座をより充実させると、シニアだけでなく若い方も興味を持たれるのではないでしょうか。若い方が今から知っておくべきことを教えてあげられるような講座に期待しています。

──今、将来に不安を感じている若い方は多いと思われますか。

髙梨 今の若い方は、期待と不安の両面を持っていると感じます。私の所属する英文学科では、語学力を活かした仕事に就きたい学生が多い傾向にありますが、現実的には就職しても希望通りにいかない場合も少なくないようです。不安は様々あると思いますが、それぞれやりたい仕事を見つけて、希望を胸に羽ばたいていきますね。ただし将来について知っておくべきことはきちんと知り、しっかり備えておきたいという気持ちはあるようです。本学の生涯学習センターは、こうした未来に羽ばたく学生のために、役に立つ講座を提供していきたいと思っています。
 急速に変化する世の中で、新たな技術を導入できるかどうかが会社経営においても大きく影響するようになり、「このままでは時代の流れに取り残されてしまうのでは」と不安を抱えている方は多いと思います。ですから企業でも社員が適切なタイミングで自主的に選択できるような学び直しの機会を積極的に取り入れていただければいいと思いますね。ただ、最終的には働く一人ひとりが、自身のライフステージや環境の変化、社会情勢において学び直しの必要性を感じ取ることが大切です。そうした「学びたい人が学びたいことを学べる機会を提供すること」が、私たち生涯学習センターのミッションだと捉えています。

──最後に、キャリアアップや資格取得をめざしている読者にメッセージをお願いします。

髙梨 学びに年齢は関係ありません。いったん社会に出たあとで再び学びたいと思うことは、自然であり、すばらしいことです。迷わず学んでください。日本女子大学生涯学習センターでは、単位とは関係なく様々な公開講座をご用意していますし、もっと体系的に学んで仕事に結びつけたければ女性のためのリカレント教育課程もございます。理想の自分に近づくために、ぜひ活用いただければと思います。

[『TACNEWS』 2023年6月号|特集] 

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