特集 中小企業診断士資格で叶える自由なキャリア
杉山 義明(すぎやま よしあき)氏
アアル株式会社代表
中小企業診断士 薬剤師 ITコーディネータ MBA
東京薬科大学卒業後、管理薬剤師として調剤薬局でキャリアを積む。この間に新店舗オープンを手掛け、調剤業務のほか運営業務をこなし店舗売上高2億円を達成。2013年アアル株式会社設立。中小ドラッグストア、調剤薬局、製造業などの主にITを活用した経営コンサルティングに関わる中で資格取得をめざし、中小企業診断士、MBA、ITコーディネータを取得。グローバル商社の経営コンサルティング、次世代企業間データ連携調査事業、中小企業庁プロジェクトのマネジメント等を経験。業務管理のIT化や企業の生産性を高めるコンサルティングを得意とする。
▶保有資格:中小企業診断士、薬剤師、MBA、ITコーディネータ
▶アアル株式会社
「中小企業診断士は独占業務がないから、他の国家資格に比べて資格取得のメリットが少ない」、そんな声をインターネットなどで目にしたことがある方もいるのではないだろうか。公認会計士、税理士、弁護士など、国家資格の多くが独占業務を保証されている中、それがない中小企業診断士について「独占業務がないほうが、自由で柔軟な発想ができるというメリットがある」と言い切るのは、中小企業診断士、薬剤師、ITコーディネータ、MBAのマルチライセンスを持つ杉山義明さん。薬剤師という確固たる独占業務のある資格を持ちながら、IT支援、グローバルな経営支援と活躍の幅を広げ続ける杉山さんに、中小企業診断士資格の魅力とやりがい、可能性についてうかがった。
目標だった研究職からの方向転換
──薬剤師を経て中小企業診断士(以下、診断士)となられた杉山さんですが、学生時代はどのようなキャリアプランをお持ちでしたか。
杉山 もともと化学に興味があったので、将来は研究職に就きたいと考えていました。ただ研究職は難関ですから、リスク分散のために、化学の勉強ができるだけでなく薬剤師の資格が取れる薬科大学に入りました。在学中は薬学部で学ぶのと並行して、春と夏の長期休暇を利用し外部研究生として東海大学医学部の機能形態学教室で小脳グリア細胞の研究も行っていました。卒業後は大学院へ進んだのですが、幼い頃アトピーに悩まされていたこともあって、将来的に皮膚科学分野の研究をしたいという希望を持ち、東京薬科大学大学院の生化学研究室で皮脂細胞と紫外線の研究をしました。大学院に入るとすぐに就職活動が始まりますが、活動を進める中で、研究職の競争率の高さと、職業としての給与評価の低さに衝撃を受けました。薬科大学は一般の大学よりも学費が高いです。さらにその後大学院にも行って成果を出し、認めてもらって初めて研究職に就けるというプロセスが必要にもかかわらず、こんなにも給与水準が低いのかと愕然としましたね。修士課程はあと1年残っていましたがモチベーションが続かないというか、この先1年間という時間、そして学費というコストを払うことを考えると、到底ペイできないと思いました。そもそも自分がなぜ研究者になりたいのか、突き詰めて考えずに憧れていた部分もあったと思いますね。今さら違う分野の研究にシフトすることもできないので、大学院を中途退学して薬剤師として勤務することにしたのです。ひとまずは一度薬剤師として社会経験を積んでから、他のキャリアを模索してみようと考えました。
──社会人としての第一歩は、どちらへ就職されたのですか。
杉山 都内で保険薬局や栄養関連事業を展開している会社です。研究職とは別のキャリアを歩むことを決め、では将来的にどの方向に向かって進んでいこうかと考えたとき、「経営をやりたい」と思いました。そのキャリアの第一歩として、自分の知見を最も活かせる薬剤師という分野を選び、薬局の経営を学ぼうと考えました。そして薬局経営を学ぶのであれば、なるべく小さい店舗で、様々な業務を経験する必要があると思いました。薬局を多店舗展開するような大きい会社では薬剤師として現場の業務しか経験できないだろうし、採用やプロモーションといった本社業務にはまったく関わることなく、配置された店舗内のことしか知ることができないだろうと思いました。ですから、将来的に拠点にしようと考えていた湘南エリアで、しっかり経営を学べるかどうかという視点で就職先を探しました。その条件を満たすように、担当者が立ち上げから運営までやるような、小規模な会社がないかと探していたら、新たに店舗を出す計画で人員募集をしている会社を見つけたのです。そこへ入って1年位で新店舗のオープンに関わることができました。準備段階からすべて手がけて新店舗をオープンし、管理薬剤師として調剤業務を行うとともに、在庫管理、発注業務の効率化、仕入れ交渉、Webサイト制作など、様々なプロモーションを行って売上高2億円以上の店舗へ成長させました。開業に関わる業務を最初から、各種申請業務なども全部やりましたから、すごく勉強になりましたし、狙い通り、経営ノウハウの蓄積になったと感じています。
SNSを使った集客のおもしろさ
──店舗運営をする一方で、Webサイトを使った活動もしていたそうですね。
杉山 もともとパソコンやデジタル端末などガジェットが大好きなのです。まだWebの活用が今ほど重視されていなかった2005年~2007年頃からWebサイトの制作やSNSによる集客に興味を持って、独自に学習していました。現在はWebサイト制作といえばWordPress(CMS:コンテンツ管理システムのひとつ)などを使うのがメジャーになっていますが、当時はそうしたCMSなどのツールはあまりメジャーではなかったので、私はテキストでプログラムしてサイトを作っていました。システムに頼らないぶん、自分の思うとおりにできるのが楽しかったですね。サーバを借りてドメインを取るだけで新しいページがたくさん作れるので、地域や職域などで複数のグループや同好会のようなものを立ち上げて活動していました。その中で今でも残っているのが、2006年5月にスタートした『SASUKE湘南キックボクシング』です。累計2,000人以上の登録者を迎え、毎週2回、キックボクシングを通してエクササイズや地域交流を行っています。
──すばらしい集客力ですね。そうした中で資格取得をめざした理由は何だったのでしょうか。
杉山 当時、薬局の新店舗をオープン段階から軌道に乗せていくこと、そしてWebを通じてお客様を呼び込むことという2つの経験をしたことによって自信がついたので、目標としていた経営にも挑戦してみようと考えたのです。ただ、開業・運営をひと通りやってはきましたが、それが一般的に正しいやり方だったのかどうかという判断ができない。経営に関する知識を持っていなかったため、自分の経営のモニタリングができないのです。それなら一度、経営や経済について体系的に学んでみようと考えました。どうすれば体系的な知識を得られてモチベーションも続くだろうかと考えて調べた結果、最終的に診断士の試験勉強と、慶應義塾大学経済学部通信教育課程経済学部の受験・履修をすることにしました。
診断士受験生向けのWebサイトを設立
──どのように受験勉強を進めましたか。
杉山 仕事をしていたので、平日は3~6時間、土日や祝日は8時間程度の勉強をしていました。通勤時間や移動時間なども勉強していたので、そうしたスキマ時間も含めるともう少し勉強時間は多かったかもしれませんね。当初しばらくは独学していたのですが、それではなかなか勉強が進まない部分があったので、TAC横浜校にお世話になりました。特に高久講師の講義がとてもわかりやすくて、独学で勉強するよりはるかに効率的に理解が進みました。私は「教わる」ということがすごく苦手で、自分にフィットする講義でないとなかなか続かないのですが、高久講師には苦手意識のあった科目が得意科目に変わるほど素晴らしい指導をしていただき、感謝しています。
──学習のモチベーションはどのように維持しましたか。
杉山 受験期間中に『SMECs 湘南勉強会』という受験生のコミュニティを立ち上げて、診断士資格の取得をめざす受験仲間と答練(答案練習)を繰り返していました。この勉強会がモチベーション維持につながりましたね。当時、この会でひたすら繰り返し文章作成の練習をした経験は、今でも事業計画の立案や執筆活動に役立っていると思います。
2010年9月に会をキックオフして10月には鎌倉で交流会を行っています。湘南地域で十分人数が集まる手ごたえがあったので、Twitterで一緒に交流会を運営するメンバーを募ったところ当時横浜と秋葉原で勉強会をやっている方が手を挙げてくれ、各地の勉強会と合同で集まることになりました。毎日のように勉強会を実施するほか、年明けには毎年参加者60人程度の交流会を開催して情報交換をしました。この交流会は10年間続いたのちに解散しましたが、Facebook上のグループは『中小企業診断士・受験生交流会』として現在も残っています。交流会で知り合ったメンバーが全国各地、北海道から九州までいて、各所で支部会ができるほど大きな組織になっています。受験生時代から勉強会や交流会を開催したことで、資格取得前から比較的広いネットワークを築けていたと思います。現在でも、このネットワークから広がった診断士のつながりが仕事の基盤になっています。
調剤事業を軸に起業し、方向性を模索
──杉山さんは診断士の登録より前に、アアル株式会社を設立していますね。
杉山 はい。2013年に調剤薬局事業を主な事業とする会社を設立して、2014年に調剤薬局をオープンさせています。主に在宅療養をされている方のお宅に薬剤師が訪問して薬の交付を行うという、当時としては珍しい業態だったのですが、少し時期尚早だったのと、私自身の適性の面で問題がありました。というのも訪問ニーズの高い患者様は終末期の方がメインになりますから、次々に亡くなってしまうのです。自分にはそれが耐えられなくて、精神的に落ち込みました。このつらさは、たくさんお話をさせていただいた患者様がいなくなってしまったという喪失感なのか、顧客を失ったという経営的視点によるものなのか、自分の中で判断がつかない状態です。このまま続けていくと、自分が壊れてしまうと思いましたね。アアルでは調剤薬局事業の他にWebサイトの制作やアプリ開発の依頼も受けていましたので、そちらの仕事へシフトするほうが自分には向いているのではないかと考えました。そうして調剤薬局事業は2014年いっぱいで撤退して、経営支援やWebサイト制作支援など、今の状態に近い事業形態へ経営をシフトしました。
──会社を軌道に乗せるまでに、どのような工夫をしましたか。
杉山 調剤薬局事業撤退後は、ドラッグストアの経営コンサルティングやWebサイトの制作支援、執筆、iPhoneアプリケーションの開発などをしながらMBAコースに通いました。そんなときに、グローバル水産会社とアプリケーション企業とで、経済産業省の次世代企業間データ連携調査事業(貿易円滑化と電子ビジネスのための国連センター「国連CEFACT」の実証検証を行う国家プロジェクト)に申請する機会があったのです。水産会社は私がMBAコースの学習課程で経営支援をしていた企業で、インドネシアから生のマグロを仕入れて日本国内を市場にしていくというビジネスモデルです。アプリケーション企業はクラウドサービスを提供している会社で、私は偶然何かの件でその会社に問合せをしていました。当時は少しでも早く診断士としてのキャリアをスタートさせたいという時期でしたから、調査事業に固定されるのは時間面を考えると難しいのではないかと悩みましたが、国家プロジェクトに関わる経験は自分のキャリアにプラスになると考え、コンソーシアム(共同事業体)を組んで申請書を提出しました。国内10社限定の狭き門でしたが採択されて、私はプロジェクトのアドバイザー、コーディネータとして就任しました。具体的な活動としては、インドネシアの11拠点(集約拠点1、水揚げ拠点10)と国内2つの卸先、そして水産商社を国連規格のEDI(電子データ交換)で繋ぎ、商取引を行う実証検証です。
──コーディネータとして具体的にどのようなことをしたのですか。
杉山 日本と海外でEDIによる受発注をしてみる検証ですが、インドネシアではその場その場の状況に対応して調査を行いました。実際に現地の拠点に行ってみたらインターネットが繋がらないということが判明して、現地でWi-Fiを手配したこともあります。また、ちょうどバリ島のアグン山が噴火した影響で、経由する空港が閉鎖になったり、風向きにより飛行機が飛ぶか飛ばないかが変わったり、空港外の床に座りながら飛びそうな飛行機のチケットを取ったり、キャンセルしたり、その日の宿を手配したりと、目的地に着くまでとにかく落ち着くことがなかったですね。そして目的地に到着すると今度は現地スタッフがなかなか来ないなど、本来の仕事以外のところで苦労しました。ふたを開けてみなければどんな状況なのか、そしてどんな対応が必要なのかがまったく予想もできない大変ハードな事業でしたが、ネットワークは海外まで大きく広がりました。この経験は自分の知見にも活きていると思います。
──調査中の活動資金は持ち出しだったそうですが、起業してまだ日が浅い時期、資金はどのように手配したのですか。
杉山 個人的な貯金から賄いました。もともと将来的に経営をしたいと考えていたので、管理薬剤師として働いていた20代の頃に計画的に貯めていたのです。でも常にキャッシュフローは見ていましたね。残高を見ながら、「このペースなら、もう数年は問題なくやれるな」とか、自分の私生活を含めた経営のような感じで活動していましたね。
資格取得で変わった周囲の評価
──資格取得以前からコンサルティング業務をスタートしていた杉山さんですが、試験合格後、何か変化はありましたか。
杉山 資格取得はとても効果がありました。それ以前の私のバックグラウンドは薬剤師なので、この肩書が邪魔をして、お客様から「経営のプロじゃないでしょ?」と思われてしまう。経営に対しての信頼感が低いところからスタートしていたのが、有資格者になると「中小企業診断士ですか、すごいですね」から始まるので話をスムーズに進めやすい。資格そのものに対する評価があまりにも高いので、取得以前からしっかりと目的意識・課題観を持ってお客様のコンサルティング業務に臨んでいた私としては、もっとしっかり実力を見て判断してほしいと思ってしまったほどです。また、周囲からの扱いも変わりました。以前からおつき合いのある企業の会議に出るときも、専門家として特別席が確保されている感じです。ただの「コーディネータ」「現場のやりくりをする人」ではなく、専門家として一段上のポジションにいる人という前提で話を進められるようになりました。仕事の依頼も増えましたし、案件単価も上がりましたね。
「営業しない」ビジネススタイル
──現在のアアルのお仕事について教えてください。
杉山 現在は、上場商社や設備商社、メーカーなどと連携して、円滑な設備導入のためのコンサルティング業務をメインに行っています。適切な補助金や資金調達支援、IT導入支援なども評価されて、コンサルティング事業が順調に成長しています。また、Webサイト制作事業も度々受注できています。会社としては代表の私と取締役の石井の役員2名体制で、それに加えて得意分野別にパートナーコンサルタントの方々と連携しています。コンサルタントの世界には、雇われることに抵抗のある有能な方がたくさんいらっしゃいます。会社側も、コンサルタントは高給ですから雇用するとなると負担が大きい。でも案件ごとの成果報酬であれば、双方が納得する形で仕事ができます。また会社組織の場合は雇い主が上になってしまい本音がわかりにくいですが、パートナーはお互いイーブンでフェアな関係なので、この形態はすごくやりやすいですね。
──営業活動はどのように行っていますか。
杉山 私は昔ながらのグイグイ行く営業手法をとるのがとても苦手です。試してみたことはありますが上手くいかないので、もうそのスタイルでは営業しないことにしました。営業職の方々はみなさん話すのも上手だし、交渉力がありますよね。私も本などを読んで勉強したのですが、マーケティングの中で「人的営業」と「プロモーション」があるとしたら、自分の強みはプロモーションのほうなので、Webプロモーションや企画をしているほうが効率的です。では営業活動をどうするかという問題ですが、中小企業へ直接営業をするのではなく、中小企業を顧客としているメーカーや商社へ話を持って行きました。こうした企業が顧客企業に商材を売りたいと思ったとき、もしその顧客企業が経営的に困っていたら商材を買ってもらうことは難しいですよね。でもこのときに「うちのシステムを導入すると経営が効率化されて改善できますよ」「もっと付加価値を生み出せるようにこんな機材を導入しませんか?導入に際しては補助金が利用できますよ」という話ができれば、商材を購入してもらえる可能性は一気に高まります。ですから、メーカーや商社に対して「経営に困っている顧客企業がいたら、補助金支援についての情報を伝えてください。申請手続きは私がサポートします」という風に持ち掛けたのです。するとある商社が専門の部署を作ってくださって、ここからかなりの案件が入ってくるようになりました。今はそういった連携をしている商社や企業が数社あります。それ以外はほぼWebサイトオンリーの受注ですが、従業員を増やさず外部連携を充実させたまま、最近では月商一千万円を超える月もあるくらいに成長しました。
──営業が苦手でも、目のつけどころ次第でうまくいくという実例ですね。同じく診断士のビジネスパートナーである石井さんは、どのようなことをされているのでしょうか。
杉山 石井は顧客とのやり取りが非常にうまく、無理に売りつける手法ではなく誠実で正直な提案をするため、顧客からの信頼を得て継続受注につながっています。会社のやる気を引き出すファシリテーター能力は目を見張るものがあって、彼女のファンのようなクライアントもいます。石井はこの辺りの営業管理を担当するほか、アアル以外の会社の仕事もしており、これによりいろいろな情報を共有できます。案件が急増する状況になっても対応できるように、診断士のネットワークを活かして一体となったサービスを提供できる体制が近年構築できてきています。
「独占業務がないこと」はメリットである
──診断士として仕事をしている中で、この資格の強みは何だと感じていますか。
杉山 「診断士には独占業務がないから、資格を取っても仕事にならない」といった話を見聞きしたことのある方は一定数いらっしゃるかもしれません。ですが私自身は、資格取得後そのように感じたことはありません。独占資格業務があるとそこに固執してしまい、発想の柔軟さがどうしても制限されます。例えば私の場合は薬剤師という独占資格を持っていたために、そこにフォーカスした考え方をしてしまい反省しました。そういう縛りがないのが診断士の強みだと考えます。独占業務がないのは不利に思えるかもしれませんが、資格取得当初で得意分野・専門業界がまだない状態だったとしても、補助金支援業務のように、診断士の専門性が頼りにされている分野もあります。2021年11月に事業再構築補助金事務局が公表した資料によると、最近では、診断士が支援した場合の採択率は他の士業と比較して高いことが数字で示されました。補助金申請をひとつのフックとしながらも、私のようにIT化や情報共有体制の構築を強みにするなど、やりたい分野と絡めて活躍できる点が診断士の強みだと感じています。
──今後の目標やビジョンを教えてください。
杉山 今後のキャリアとしては、引き続きIT支援や国際的な経営支援などに携わりたいと思っています。また近年はM&A案件や事業承継の必要性を感じる事業者が増えてきました。ここにもアクションを起こして、事業支援を行っていきたいと考えています。コンサルティングの分野においては、顧客社内の省力化としてITやクラウドサービスを活用したいというニーズが高まっているのを感じていて、これまでそのようなことを実施してこなかった事業者からも声が上がるようになってきました。会社としては新規案件を創出できるよう、Webを窓口にしたマーケティングに注力していき、事業支援をしながらも企業としての成長をめざしていきたいと思っています。
──最後に、キャリアを模索する方や、資格でスキルアップをめざす方へメッセージをお願いします。
杉山 キャリアを模索する中で資格取得をめざすという考え方は、私は間違っていないと思います。成長しようとすると反対意見や他の楽な方法が目に入ることもあるかと思いますが、将来の自分がどのようになっていたいかをイメージして、ブレずに道を選んでほしいと思います。
また資格受験に際して言えば、独学は一見お金もかからず自分でスケジュールを組めるので良さそうに思えますが、特に勉強開始初期は、受験指導校に通学するほうが効率が良いと思います。私は本来人に物事を習うことがとても苦手で、自学自習派だと自認しています。それでも、スケジュール管理やキャッチアップすべき競争相手がいる環境づくりを外注できるという意味で、受験指導校は本当に有用でした。
これから診断士をめざす方は、勉強をしながら実際のビジネスを想像する場面がたくさんあると思います。このような機会を大切に、お客様や具体的な仕事仲間、また自分や家族、みんなが満足いくようなバランスで限られたリソース配分をするにはどのようにしたらいいのか、その采配は自分にかかっていると思ってシミュレーションするとリアルに勉強に臨めると思います。診断士の勉強で学んだことは、生きていく上で仕事の範囲に収まらない重要なインパクトを与えてくれました。もし今迷っている方、勉強が停滞している方がいらっしゃったら、ぜひリアルなビジネスを想像しながら日々の勉強に臨んでください。合格をお祈りしています。
[『TACNEWS』 2022年4月号|特集]