経営承継アドバイザーによるコラム【第3回】

事業承継を支える対話の力:15の対話の視点®の有効活用

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事業承継をスムーズに進めるためのツール「15の対話の視点®※」

 事業承継は、単なる資産や経営権の移行だけではなく、企業の持つ知的資産や文化、経営哲学を次世代へと継承する非常に重要なプロセスです。しかし、その実現には、単なる形式的な手続き以上の深い理解と対話が求められます。ここで効果を発揮するのが「15の対話の視点®※」です。このフレームワークは、事業者と支援者が効果的な対話を通じて、事業の現状や将来のビジョンを共有し、事業承継をスムーズに進めるためのツールとなります。

 事業者との対話は「ローカルベンチマーク」といったツールを使って進めることが有益です。事業者の経営状況を評価し、改善の方向性を探るための有用なツールですが、「対話」ではなく確認事項のチェックリストになってしまい、事業や魅力の源泉についての深堀り、事業者自身の気付きにつながらない場合もあります。ローカルベンチマークがチェックリストになってしまうと、事業者にとっては形式的で興味を引かないやり取り、調査のように感じる対話になってしまいます。そうすると、事業者の本音から見える本質的な問題や潜在的な強みが語られず、気付きが得られないという結果を招く場合もあります。

 これに対して、「15の対話の視点®」は、ローカルベンチマークの枠組みを意識した補助ツールとして機能し、支援者が事業者の事業やその魅力の源泉に対して深い興味を持ち、対話を通じて事業者からそれを引き出すことを目的としています。この対話を通じて、事業者自身が自社の取り組みを振り返り、当たり前だと思っていたことの中に潜む自社の独自性や強み、すなわち知的資産に改めて気づくことができます。事業者自身(現経営者・後継者)の気づきが、経営における問題解決や未来のビジョンの形成に大きく寄与します。

 「15の対話の視点®」は、特に事業承継の場面で効果を発揮します。事業承継においては、単に経営権を引き継ぐだけでなく、企業が培ってきた知的資産や文化をいかに後継者に伝えるかが重要です。そのためには、現経営者と後継者が一緒になって、自社の現状や魅力の源泉について対話を行い、それを共有することが重要です。このプロセスを通じて、知的資産が単なる過去の遺産としてではなく、未来の発展に向けた基盤として活用されることが可能となります。

 また、「15の対話の視点®」は、親族内承継や従業員承継において、支援者が関与することで、当事者だけでは気付きにくい新たな視点からの気づきを促すことができます。親子間での承継の場合、意見や考え方の違いから対話が避けられるケースも多いですが、支援者が対話の場をつくり、ファシリテートすることで、意見の対立を乗り越え、共通の理解を深めることができます。これにより、親と子、現経営者と後継者の間で、事業に対する想いや知的資産がしっかりと共有されます。

15の対話の視点

 「15の対話の視点®」は、大きく「沿革」、「内部環境・バリューチェーン」、「外部環境」、「将来の夢・在りたい姿」の4つのテーマで構成されます。各テーマは、事業の歴史や現在の状況、外部環境との関係、そして未来に向けたビジョンを包括的にカバーしています。多角的な視点からの対話を通じて、事業者が自社の強みや課題を再確認し、将来に向けた具体的な行動計画を策定するための基盤を築くことができます。

 具体的には、創業者が事業を始めた背景や事業環境の変遷、過去の困難な時期の乗り越え方、将来のビジョン、内部の業務フローや競合他社との違い、外部環境におけるチャンスやリスクなど、多岐にわたる問いかけが含まれます。これらの問いかけに対して、事業者が自ら考え、答える過程で、自社の経営資源や知的資産が明確になり、それをどう活かすかが見えてくるのです。

 最後に、「15の対話の視点®」を活用した対話は、事業承継を成功に導くための重要な鍵であることを強調したいと思います。単なる形式的な手続きではなく、事業の本質を理解し、次世代に引き継ぐための深い対話が必要です。その対話を支援し、事業者と後継者の間で信頼関係を築き、共通のビジョンを形成するためのツールが、「15の対話の視点®」です。経営承継アドバイザーとして、事業承継を進める中で、最大限に活用し、事業の未来を共に築き上げていきましょう。

参考:「15の対話の視点®」より、視点の一例

  • 沿革

    「創業者はなぜこの事業をはじめられたのですか」、
    「事業内容が変化していますが、どのような理由があったのでしょうか」

  • 将来の夢・
    在りたい姿

    「今後はどのように事業を発展させていきたいとお考えですか」

  • 内部環境・
    バリューチェーン

    「御社の業務の流れ(業務フロー)について教えてください。何か強みとなる特徴はありますか」

  • 外部環境

    「この先御社にとってどのようなことがチャンスとなるとお考えですか」

「15の対話の視点」は、合同会社ゆわくの登録商標です。なお、「15の対話の視点®」の詳細は、経営承継アドバイザー資格認定講座「経営承継編」にてお伝えしています。

コラム監修

大山雅己氏顔写真

大山 雅己(おおやま まさみ)氏

【経歴】
1987年:筑波大学卒、三井信託銀行(現三井住友信託銀行)入社。個人相談業務、事業会社業務等を経て投資銀行部門にてDIPファイナンス、MBOファイナンス、M&A等の事業再生・事業再編・事業承継支援に従事。
2008年:ジュピター・コンサルティング株式会社設立 代表取締役就任、独立行政法人中小企業基盤整備機構 事業承継コーディネーター就任
2016年:日本証券アナリスト協会PB資格試験委員
2018年:合同会社ゆわく設立 代表社員就任
2019年:千葉商科大学商学研究科客員教授(中小企業経営管理コース 中小企業診断士登録養成課程)

メッセージ
中小企業基盤整備機構の事業承継コーディネーターとして、中小企業の承継問題にかかる施策浸透に向けた取り組みや支援マニュアルの作成等に深く関わってきました。中小・小規模事業者の事業承継を事業者の立場に立って支援できる人材がまだまだ不足しているのが現状です。「事業そのもの」の承継支援に本気で取り組みたい方は、ぜひ「経営承継アドバイザー」を取得してください。

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